まずは人事評価の基本を解説
人事評価のコメントの前に、まずは人事評価の基本が重要です。ここでは、企業における人事評価の基本について解説します。
人事評価制度とは?評価の具体的な構成や目的、評価内容を知ろう
そもそも人事評価の役割とは
人事評価の基本を理解するためには、人事評価の役割を理解しなければなりません。人事評価の役割には、給与の最適化や人材配置の最適化、社員の成長促進、管理者と社員間のコミュニケーションの促しなどがあります。人事評価を通して、社員を成長させることも大きな役割です。
適正な人事評価は、社員のモチベーションを向上させられて、会社全体の生産性の向上にも役立ちます。反対に、不適正な人事評価は、社員にも会社にも悪影響を与えることを深く認識しましょう。
人事評価の重要性とは
終身雇用制度はすでに形骸化し、新しい働き方や働き方の多様化などが浸透しています。人事評価制度も、従来の制度から変革しなければ、適正な評価ができなくなるでしょう。役割等級などを導入する場合は、社員を公平に評価する必要があります。
また、個人の価値基準に基づいた評価は、公平性が担保されません。社員の誰もが納得できる人事評価が重要であり、公平に評価する仕組みが必要です。
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360度評価で上司がコメントする機会が増えている
人事評価において、導入が進んでいるのが360度評価です。背景には、働き方改革により、新しい働き方や多様な働き方が広がったことがあります。人事評価が、成果主義に変わりつつあることも、背景にあるといえるでしょう。
360度評価であれば、新しい働き方や多様な働き方であっても、人事評価の公平さを担保しやすいです。また、人材育成やモチベーション向上などの効果も期待できます。
360度評価とは
360度評価は、人事評価で注目されている評価方法です。1人の社員を、上司や部下、同僚など複数人の評価者が評価します。多面評価とも呼ばれる評価方法ですが、複数の異なる立場からの評価を集めることが目的です。
多方面からの評価を得ることで、人事評価についての公平さや客観性が担保されます。また、立場の異なる複数人が多角的な観点で評価するため、社員も評価について納得しやすくなるでしょう。360度評価では、上司も部下や同僚から評価されます。
【上司向け】人事評価コメントの書き方を解説
社員への評価コメントは、内容が似通いがちです。しかし、書き方を知れば、適正な評価コメントが書きやすくなります。
2種類の評価コメントを使い分ける
評価コメントを書く際には、2種類の評価コメントを使い分けるのが書き方のポイントです。1つは、成果への評価コメントであり、もう1つは経緯への評価コメントになります。成果への評価コメントは、社員の成績やチームの貢献度や目標達成率などに対して、実施しましょう。
また、具体的な数値に対して評価することで納得を得やすくなります。経緯への評価コメントは現在に至るまでの努力や、次年度に成果を上げられるためのアドバイスなどについて、言及しましょう。
この評価コメントには、日頃からの社員の観察が重要です。日付を入れてメモをとるなどして、日報や週報と照らし合わせて評価コメントしましょう。評価者に対して評価する場合は、これまでの役職や経験などを考慮することが大切です。
問題点などは明確に記載する
評価コメントを書く際には、問題点や改善点などが明確であるかが大事です。できるだけ具体的な文章展開を意識することで、社員は理解しやすく、納得もしやすくなります。社員は問題点や改善点などが具体化することで、仕事に取り組みやすくなり、成果も上がりやすくなるものです。また、社員のモチベーション向上にも役立ちます。
過剰評価・過小評価などは控える
人事評価で注意すべきなのは、過剰評価や過小評価です。適正に評価しコメントしなければ、社員のためになりません。社員は、成果や仕事ぶりを公平に評価コメントされなければ、不満が募るでしょう。仕事に集中できなくなったり、仕事を辞めたりする社員がでる恐れもあります。上司の個人的な感情で評価したり、評価コメントしたりするのではなく、客観的な視点により公平性を担保することが大切です。
熱意やスキルを評価する
評価コメントは、仕事への熱意や業務をこなすスキルについても、明確に評価するように心がけましょう。社員の仕事に対する熱意やスキルな、正当な評価対象でもあります。これらを評価コメントするためには、社員をしっかり観察しなければなりません。表面化しにくい一面も、評価対象と認識し適正な評価コメントを書くことに努めることが求められます。
【職種別】上司向けの人事評価のコメントの例文
人事評価のコメントは、例文を参考にすると書きやすくなるでしょう。ここでは、職種別の評価コメントの例文を紹介します。
営業職に対する上司のコメントの例文
営業職に対する評価コメントは、成果をベースにすると評価しやすく、評価だけでなくコメントも書きやすくなります。営業の成果は、売上や契約件数などです。個人の成績だけでなく、チーム内での協調性やスキルアップに対する姿勢などにも目を向けましょう。
【例文】
・個人目標の達成は、営業部の目標達成の貢献度も高いと評価している。目標達成の要因を分析し、次年度移行の糧にしてほしい。
・個人目標の未達成は残念であるが、チーム内をまとめ上げた手腕は評価できる。次年度は、個人の目標達成にも注力してほしい。
・日頃の努力が実り、営業目標を達成できた。この達成により、A君(社員名)のスキルも向上している。
・チームを引っ張り、個人とチームの販売目標を達成できたのは、チームリーダーであるA君(社員名)の成果だ。今後のリーダーシップにも期待している。
事務職に対する上司のコメントの例文
事務職は、数値で評価できる職種とはいえません。スキルや資格、業務の精度、課題解決スキルなどを評価コメントすることが大事です。その際には、抽象的な表現は避けましょう。
【例文】
・業務効率が向上に貢献したオペレーションスキルを評価する。部署内の手本となるべく、さらなるスキルアップを目指してほしい。
・MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)検定の合格おめでとう。この資格を生かして活躍すれば評価も上がるはずだ。
・日頃からの精度が高い業務により、本年度のミスはなかった。精度の高い業務の継続でさらに評価を高めていただきたい。
・大きなトラブルを迅速に解決してくれた手腕が素晴らしかった。本年度もさらなる活躍を期待している
マーケティング職に対する上司のコメントの例文
マーケティング職は、専門職に近い職種であることを認識して、実績を重視した評価コメントをしましょう。データの分析、企画の立ち上げなどに関する評価コメントが求められます。結果が数値となっている場合は、それをもとに評価コメントを書きましょう。数値に表れない部分への評価コメントも重要です。
【例文】
・クライアント企業の経営に直結するデータ分析であったが、評価値が100を超える評価できる内容であり、クライアントも喜んでいる。
・クライアント企業の新しい研修企画が大きな成功を収めたため、10社を超える企業からの問い合わせがあった。経営陣も今後の企画を期待している。
・新商品のマーケティングでの尽力は、後輩社員の手本になる内容であった。集められたデータは、次の商品開発に役立たせる。
エンジニア職に対する上司のコメントの例文
エンジニア職は、専門職であるため、評価コメントは専門知識や専門的スキル、最新の技術力などを評価コメントしましょう。システムの改善の実績やコストの削減結果など数値化できるものは、数値に対しての評価コメントも取り入れます。数値化されなくても具体的な成果があれば、それを基準にすることも有効です。
【例文】
・本年度のシステム改善には、目を見張る成果があった。これまでと比較して8%のコストを抑えられことは会社の利益に直結している。
・今年度の経理システム改善は、最新の技術力を用いた内容であった。会社への貢献度も高い内容であった。
・特殊プロジェクトにおける本年度の達成度は、80%を超えた段階である。80%を超えた貢献度は高いと評価している。
コンサルタント職に対する上司のコメントの例文
コンサルタント職に対しては、社員の自己評価もチェックします。これは、コンサルタント職が、自身の判断に自信をもって、業務を遂行できるようにするためです。目に見える成果を上げたかが大きな評価コメントの基準となります。成果を上げている場合は、具体的な内容も確認して評価コメントしましょう。
【例文】
・A君(社員名)の自己評価を確認したが、その内容は正しいものであった。実際に、クライアント企業の業績が向上している。これは、クライアント企業や自社への利益に対する貢献度が高く称賛に値する。
・クライアント企業は、現時点では目に見える業績向上が見られない。しかし、本年度以降に改善される兆しがあるとのことなので、引き続き献身的なサポートを期待する。
管理職に対する上司のコメントの例文
管理職は(評価者)への評価コメントは、プレイングマネージャーでない限り、マネジメントスキルを評価するようにしましょう。チームが目的を達成するために、社員にどのような行動を取らせているかなどを、具体的なアドバイスを含んだ評価コメントが重要です。会社のために、重責を担ってくれているという敬意を、忘れないようにしましょう。
【例文】
・配下の社員が、いきいきと仕事に邁進できているのは、上司のマネジメントとコミュニケーションが良いからだ。この様子を見ていると、これまで以上の成果を期待せずにはいられない。
・本年度は、部署の目標達成に届かなかったようだが、会社に献身的な仕事をしてくれた。誰もが、来年度の巻き返しを期待している。
【職業別】上司向けの人事評価のコメントの例文
職業によっても、上司の人事評価コメントに特徴があります。ここでは、職業別の例文を紹介します。
看護師・介護師に対する上司のコメントの例文
看護師や介護士など、医療や福祉に関連する仕事の場合は、数値での評価は難しいでしょう。個々に目標を立てるように促し、それを達成したかどうかを評価コメントするとモチベーションも高められます。また、目標達成までの具体的な行動の評価コメントも重要です。目標達成までに、年間や月間など、区切りをつけさせると評価コメントも具体的になります。
【例文】
・保健師の資格が目標ですが、この1年は順調に進んでいるように見える。来年は、本番ですから、この調子を維持しよう。
・利用者に寄り添うことが目標であり、この1か月は話を聞くように努めるとのことだった。利用者への傾聴姿勢は素晴らしく、笑顔が多く見られた。来月も傾聴姿勢を磨くことが目標とのことなので、より多くの笑顔が見られるのを楽しみにしている。
公務員に対する上司のコメントの例文
公務員に対する評価は、「評価者と被評価者で面談を行い、業務目標を設定すること」と定められています。人事評価の回数も定められており、業績評価は年に2回で、能力評価は年に1回です。評価コメントに、数値などを用いるのが難しい職種でもあります。面談で設定した目標に対する達成度などで、評価コメントを記載するとよいでしょう。
【例文】
・期首の面談時にパソコンでの業務効率化が目標とあった。目標通り、パソコンスキルを発揮した仕事ぶりにより、部内の業務効率化に貢献した。
・ミスをなくすことが目標であったが、見事に達成した。提出したすべての書類にミスがなく、迅速かつ丁寧な仕事は評価できる。
保育士に対する上司のコメントの例文
保育士の評価は、数値化が難しいため、観察による人事評価が大半です。ただし、具体的な取り組みを評価し、コメントするようにしましょう。たとえば、保育児童や保護者との関わり方や保育環境の整備への配慮などです。保育園が抱える課題に対して、どのような行動を取ったのかも評価対象となります。評価者は、保育園そのものの課題や現状の課題を、保育士と共有しておかなければなりません。
【例文】
・常に観察を心がけてくれるため、保育児童の体調変化にいち早く気付いてくれる。他の手本となる評価できる姿勢。体調不良の保育児童への対応もよかった。
・保育園の課題であった雑草対策に対して、前向きに取り組んでくれたため、雑草も害虫も少なくなった。保育児童が安心して遊べる環境を共に作っていこう。
クリエイティブ職に対する上司のコメントの例文
クリエイティブ職とは、創造する職種であり、WebデザイナーやWebディレクター、編集者などがあげられます。クリエイティブ職は、納期を守らなければなりませんが、出勤や労働時間の制約などは基本的にありません。
したがって、納品物の評価や技術面の評価が中心です。チームでの制作の場合は、メンバーとのコミュニケーションなども評価します。また、業務効率化への貢献も確認し、評価コメントに入れるようにしましょう。
【例文】
・今回のデザインは素晴らしく、すでに製品化されて売上もよい。デザインスキルは一流であるため、業務効率化も視野に入れてほしい。
・プロジェクトチームの一員として役目を果たしている姿勢は評価している。しかし、チーム内のコミュニケーションへの配慮も大事だ。今後の行動の変化に注目している。
教職員に対する上司のコメントの例文
教職員の評価は数値化されないため、個々の言動や生徒への姿勢などを評価しましょう。ただし、私学の進学校などは、有名校への合格数を評価する場合があります。共通しているのは、教職員自身の自己評価のチェックです。内容を確認し、日頃の観察と照らし合わせて評価コメントすると良いでしょう。
【例文】
・自己評価によれば、生徒同士のトラブルもなく、円滑に学級運営ができているとのことである。おおむね評価の内容に相違はなく、むしろ他の学級の模範ともなり得るため、今後も円滑な学級運営に努めてほしい。
・本年度は、有名校の合格者を10名輩出できている。これは、熱心な教育の賜物であり、大いに評価している。機会があれば、他の教職員へレクチャーしてほしいと考えている。
【評価の種類別】上司向けの人事評価のコメントの例文
人事評価の主な種類には、成果評価や能力評価、情意評価があります。ここでは、企業における3つの評価について解説します。
成果評価における上司のコメントの例文
成果評価は、社員が出した成果や業績を客観的に評価することです。数値を具体的に精査し評価コメントするとよいでしょう。数値は、過去の数値と比較したり、基準や平均値と比較したりすれば、分かりやすく伝わります。
【成果評価におけるコメントの例文】
・販売職の平均売上が3,500万円であったが、A君(社員名)は5,000万円であり、目標を大幅に上回っていた。会社への貢献度も高く、飛躍の1年でもあった。次年度の目標は、本年度を超える売上と聞いているので、大いに期待している。
能力評価における上司のコメントの例文
能力評価は、社員のスキルを評価することです。スキルには、企画力や実行力、改善力、課題解決力などがあり、資格もスキルに含む場合があります。企業が定めた客観的な指標は用いるようにしましょう。その結果について、評価コメントすれば、社員も納得しやすくなります。
【能力評価におけるコメントの例文】
業務改善提案は良い内容であり採用した結果、前年よりも有給休暇の取得率が向上した。その秀でた業務改善スキルを、今年度も発揮してほしい。
情意評価における上司のコメントの例文
情意評価は、社員の業務への意欲や態度、協調性などを評価します。社員を観察し、業務に対しての取り組みや協調性などを把握しておかなければ、適正に評価しコメントすることも難しいでしょう。主体的な評価コメントではなく、具体的な評価コメントが求められます。
【情意評価におけるコメントの例文】
・誰よりも早く出勤し、業務開始時間に仕事を開始されている姿勢は、大いに評価している。他の社員とも積極的にコミュニケーションを取っており、ムードメーカーとしての役割は称賛に値する。
人事評価における上司のNGコメントとは
人事評価のコメントには、許されない項目があります。ここでは、そのなかでも重要な2つを解説します。
人格否定となるコメント
評価コメントに、社員の人格や社員の特徴などを否定するようなものは許されません。社員の性格や身体的な特徴などについてのコメントは、訴訟に発展する可能性もあります。人事評価やコメントは、あくまでも業務への取り組み方や成果などの評価であり、コメントであるべきです。
他者と比較するコメント
評価コメントを具体的にするために、社員の同期や後輩などを比較するようなコメントは避けるべきです。
どのようにすれば、評価が上がるのかを的確にアドバイスする内容となるように、心がけてコメントしましょう。どうしても、他社と比較するのであれば、褒める言葉を記載してください。貶めるようなコメントは、社員のモチベーションを下げるだけで、ハラスメントの対象となるかもしれません。
まとめ
人事評価のコメントは、成果への評価コメントと経緯への評価コメントの2つを使い分けて、書くようにしましょう。過剰評価や過小評価をせず、私見を挟まないこともポイントです。成果ばかりにとらわれず、熱意やスキルも評価しコメントすれば、社員からの納得も得やすくなります。
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