働き方が多様化する現代では、コミュニケーションの方法も多種多様になっています。そのため、社内コミュニケーションに課題を抱える企業も少なくありません。この記事では、社内コミュニケーションの課題が生まれる理由や不足することで発生する影響などを解説します。社内コミュニケーションの改善方法や手順についても述べるため、参考にしてください。
社内コミュニケーションとは?
社内コミュニケーションとは、社内のメンバー同士が日常的に行う会話や情報共有を指します。普段の何気ない雑談、業務上のやり取りをはじめ、対面に限らず電話、メール、Web会議、メモや書類のやり取りなども社内コミュニケーションに含まれます。
社内コミュニケーションがなぜ重要視されるのか?
ほとんどの仕事は1人で完結させることができません。通常は、社員同士の連携によって進められます。仕事をするうえで、情報共有、進捗の報告、指導など、コミュニケーションはさまざまな場面で必要です。社内コミュニケーションは、意見交換や会議なども含まれるため、組織で活動するためには欠かせません。
社内コミュニケーションに課題が生まれる理由とは?
社内コミュニケーションが組織活動において重要であるものの、多くの企業では以下のような課題が生まれています。
社内コミュニケーションの不足による課題
近年は、フレックス制、時短勤務など多様な働き方を導入する企業が増えました。しかし、働き方が多様化することで、出社時間や休憩時間が異なるなどコミュニケーションの機会が以前よりも不足しています。また、コロナ禍の影響で、以前よりも飲み会、社員旅行、レクリエーションなどの社外活動が縮小されている傾向も社内コミュニケーションが不足する原因です。
社内コミュニケーションの習慣による課題
もともと経営層、上司と部下、部署間、チーム間などの立場が違う役職や部署との交流が少ない社内習慣があるケースです。業務効率化を優先することで、社員同士が気軽に話せない雰囲気が生まれています。
社内コミュニケーションの環境による課題
集中力を高める目的で席をパーティションで区切るなど、環境による影響で社内コミュニケーションが生まれにくいケースもあります。席が区切られている場合などは、周りの人とあまりコミュニケーションが取れません。
自然な会話が生まれやすい食堂や休憩室などの場所が社内にない場合も、社内コミュニケーションが生まれにくくなります。
社内コミュニケーションツールによる課題
昔は対面や電話でコミュニケーションを取ることが一般的でした。現代はパソコンやスマートフォンの普及によって文字で連絡を取り合えるようになったため、社内コミュニケーションの機会が減っています。
リモートワーク、チャットツール、ビデオ会議システムなどが普及し、社員同士が直接顔を合わせる機会が減ることも社内コミュニケーションが不足する原因です。
社内コミュニケーションの課題改善が必要な理由とは?
社内コミュニケーションの不足は企業にさまざまな影響を及ぼします。社内コミュニケーションの課題改善が必要な理由は以下のとおりです。
企業の効率性や創造性を高めるため
社内コミュニケーションが活性化されると、情報共有や意思決定の早さが向上します。トラブルが発生した場合も良好な関係があれば、社員同士が協力し合って直ちに問題を解決できるでしょう。
チームワークが改善することで業務プロセスも効率化され、組織全体の生産性が向上します。また、何でも話せる雰囲気があると、意見交換やアイデアを話す機会が増え、新たな発想が生まれやすくなるでしょう。
社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるため
社内コミュニケーションが活性化している企業は、情報共有が円滑に行われており、社員自身が役割や責任を明確に認識できる傾向にあります。自分の役割や責任を認識できる社員はモチベーションが向上し、前向きに業務に取り組めるでしょう。
社内に相談しやすい雰囲気や雑談がしやすい環境があれば、日頃のちょっとした疑問や不安を解消することができるので、エンゲージメントの向上にもつながります。
情報を共有して意識の統一を図るため
社内コミュニケーションが活発になると、意思疎通にかかる時間や精神的ストレスが減り、情報共有がスムーズにできるようになります。情報共有が円滑になると重要な情報が漏れたり、誤解を生んだりすることも少なくなるでしょう。
社員同士の関係性を高めるため
コミュニケーションが活発になると社員同士の信頼関係が生まれ、職場全体の雰囲気も改善できるでしょう。その結果、人間関係の構築が苦手な社員の孤立も防げます。
社内コミュニケーションに課題がある割合と課題を感じる関係性は?
総務・人事に特化した専門紙が行った調査によると、8割以上の企業が社内コミュニケーションに課題を抱えていることがわかりました。コミュニケーションの課題を感じる関係性で最も多かったのは、部門間のコミュニケーション、続いて上司・部下間のコミュニケーションです。
※参考:8割以上の企業が社内コミュニケーションに課題あり。課題内容は「社員の参加意識の醸成」が最多|月刊総務オンライン
社内コミュニケーション不足が課題の企業に起こる影響とは?
社内コミュニケーション不足の問題を抱えていると、以下のような影響を及ぼします。
社員のストレスが増加する
社内コミュニケーションが不足していることで情報の共有がうまくいかない場合は、誤解や不満が生じてストレスを感じやすくなります。普段コミュニケーションを取っていないと、あいまいな指示や表現に認識のズレが生じてしまうこともあるでしょう。結果的に指示した人も指示を受けた人もストレスを抱える状態になってしまいます。
社員のモチベーションが低下する
コミュニケーションが取りにくい相手と仕事をすることで、社員のモチベーションが低下してパフォーマンスにも影響します。また、誰かの協力が必要な場面でも、助けを求められない場合は業務の質が下がるため、罪悪感が生まれたりやる気を失ってしまったりするでしょう。
企業の人材育成が滞る
日頃からコミュニケーションをうまく取れていれば、ちょっとした業務のなかで技術、スキル、知識、コツなどを気軽に共有できるでしょう。しかし、コミュニケーションが取れていない間柄の場合は、人材育成を行う際にも意思疎通に時間がかかってしまいます。
最終的には、新入社員や中途入社の社員にも「効率的ではない」「時間がかかり過ぎる」などの印象を与えてしまうでしょう。
社員の離職が増える
仕事の相談をする人や悩みを共有できる人がいない場合や、気軽に質問できない雰囲気がある場合は、社員が1人で悩みを抱え込んでしまうこともあるでしょう。悩みが解決できない場合は、離職に至るケースもあるので注意が必要です。また、社員が悩んでいることに周囲が気づけず、悩んでいることさえ知らないまま突然離職されるケースもあります。
連携不足によるミスやトラブルが増える
小さなことでも連絡や報告をできる雰囲気がない場合は、ミスやトラブルが増加する傾向にあります。違う役職や部門同士でも連携不足が起こりやすくなるでしょう。連携が取れていない場合は、ミスを解決した後のフォローもうまく行われないため、ミスやトラブルが再発しやすくなります。
業務がスムーズに進まない
気軽に質問や相談をできる相手がいない場合は、技術、スキル、知識などを磨く機会が生まれません。他者との交流がないことで、仕事の幅も広がりにくいでしょう。他部署と交流が薄い場合は「営業は良い仕事を取ってこない」「他部署のせいでスケジュールが停滞している」などの誤解を生み、部署間の衝突が起きやすくなります。
チームワークが低下する
自分が苦手な分野・業務であっても、チームで互いの能力を引き出し合うことでチームワークは発揮されます。反対に、個々のスキルが高くても協力し合えない場合は、スキルに対して成果が伴わないこともあるでしょう。
信頼関係が築けない
コミュニケーションが不足していると仕事以外での会話はほとんど行われません。社員同士の信頼関係が築きにくいため、機械的なやり取りしかできず、他者や他部門を信頼できなくなります。
企業理念やビジョンが浸透せず意識の差が生まれる
経営層がよい理念を掲げても、社員の悩みやストレスを経営層が理解できていなければ意識に差が出て亀裂が入りやすくなります。経営層の言葉が入りづらくなることで、企業理念や方針も社員に浸透しづらくなるでしょう。
企業の方向性が統一できていない場合は、生産性の低下や離職を招いてしまいます。社員が企業理念や方針を意識できていないと、業務にも反映できません。
ノウハウが蓄積しない
社内コミュニケーションが不足していると情報が共有されず、属人化しやすくなります。ほかの社員の仕事内容や進捗がわからず、急に休まれると仕事が回りません。また、成功体験や失敗体験を話す機会がないため、社内ナレッジも積み上がりにくくなります。
不正やコンプライアンス違反を抑制しづらい
社内コミュニケーションが不足している場合は、誰が何をやっているのかがわかりにくくなるでしょう。不正やコンプライアンス違反が起きても気づきにくいため、重大な問題に発展する恐れがあります。
セキュリティリスクが増える
社内コミュニケーションが不足している場合や、ルールをチェックする体制が築かれていない場合は、情報漏洩やウイルス感染などのリスクが高まります。ウイルス感染などの報告・連絡が遅くなると被害が広がることもあるでしょう。
セキュリティリスクに対する警戒心がない場合は、誤送信、不正アクセス、ウイルス感染などの被害が増えるため、社員が学ぶ機会を提供することも必要です。
新しいアイデアやイノベーションが生まれない
多くのイノベーションは、何気ない雑談や自由な発想から生まれたなどのエピソードがあります。コミュニケーションを取ることで、自分では気づかない斬新なアイデアが生まれることもあるでしょう。
顧客満足度が低下する
顧客からのクレームや業務に関する注意事項が共有されない場合は、結果的に顧客満足度に影響してしまいます。連携不足によって顧客への迅速な対応ができずに、信頼を失うこともあるでしょう。部門間で連携が取れずに大きな契約を逃すなど、営業機会の損失にもつながります。
社内コミュニケーションの課題を見つける方法
社内コミュニケーションの課題を見つけるには、以下のような方法が有効です。
アンケート・エンゲージメント調査
社内コミュニケーションの課題を把握するためには、社員アンケートやエンゲージメント調査を活用することがおすすめです。これらを定期的に実施することで、社員の満足度や業務状況を把握しやすくなり、課題を早期に発見し、迅速に対処できるようになります。ただし、社員が警戒しないためにも、調査する理由は事前に伝えておくことが重要です。
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意見箱・ホットライン
経営層や上司の目が気になり、アンケート・エンゲージメント調査では自由な意見を発しにくいと考える社員もいます。幅広く自由な意見を募りたいときは、匿名で意見を募ることが効果的です。意見箱やホットラインは匿名性が高いため、自由な意見が出やすくなります。
退職理由調査
退職者の退職理由を調査すると、自社の課題や不足している点が明確になる可能性があります。他の社員が似たような理由で悩んでいる場合も、対策がわかっていればフォローできることもあるでしょう。退職理由を調査するには、退職面談、退職アンケート、第三者機関による調査などのさまざまな方法があります。
社内コミュニケーションの課題を解決する方法
社内コミュニケーションの課題解決には、以下のような方法が効果的です。
社内コミュニケーションの場所を提供・整備する
社内コミュニケーションが取りやすい場所を作ることが効果的です。社員食堂、リフレッシュスペース、休憩室などは雑談をしやすく、社員同士の交流が深まります。オフィス内にミーティングスペースを設けることも有効です。オープンスペースで気軽に打ち合わせができるようになります。
オフィスのレイアウトを工夫して社員同士が交流しやすい動線を設けたり、フリーアドレス制を導入したりすることも効果的です。
社内コミュニケーションが目的のイベントを開催する
社員同士が直接触れ合う機会として、社内イベントを開催することもよいでしょう。業務面では、全社での社員研修やワークショップ、業務外では、飲み会、バーベキュー、スポーツ大会などの交流イベントが有効です。全社規模で行う社内イベントは、他部署や個人に対しての理解を深められます。
社内コミュニケーションツールを導入する
社員同士が気軽に交流できるツールを導入し、コミュニケーションを活性化させることも効果的です。社内SNSやグループウェア、チャットツール、ビデオ会議システムなど、さまざまな選択肢があります。気軽に集まることが難しい企業、複数に拠点がある企業、リモートワークをはじめとする多様な働き方を導入している企業には特に効果的です。
社員コミュニケーション能力の育成を図る
コミュニケーション研修を行い、社員にコミュニケーションの重要性や必要性を理解してもらうこともおすすめです。コミュニケーションのスタイルは、時代によって変化しているため、外部の講座やコミュニケーション研修を活用することもよいでしょう。
社内コミュニケーションの課題を解決する手順
社内コミュニケーションの課題を効率よく解決するために、以下のような手順で進めてみましょう。
社内コミュニケーションの課題を洗い出す
自社の課題を明らかにするために現状を分析し、課題を抽出して整理しましょう。現状分析や課題整理を行うときは、現場の意見を取り入れることが重要です。全社員に調査するとさまざまな意見を集めることができるだけではなく、多角的な視点から企業の現状を把握できます。場合によってはコンサルティング会社など、外部に相談して実態を把握することもよいでしょう。
社内コミュニケーションの目標を決める
社内コミュニケーションの課題がわかったら、取り組むべき目標を決めます。社内コミュニケーションの課題は、ただちに解決できるものではありません。長期的に取り組むことが重要です。ただし、単に「社内コミュニケーションを活性化させる」というだけでは効果的に取り組めません。長期的に目標をクリアしていくために、以下のような項目を意識しましょう。
・担当者
・期間
・手段
・評価基準
・最終目標
・優先順位
社内コミュニケーションの重要性を社員に周知する
社内コミュニケーションを解決するには、社員の協力が欠かせません。全社員に理解を求めることが重要です。施策の内容をただ伝えるのではなく、社内コミュニケーションが不足し続けた場合、どのような問題が発生するか、取り組むことでどのようなメリットが得られるのかを伝えます。ただし、強制ではなく、協力してもらうというスタンスで伝えることが大切です。
社内コミュニケーションの課題が解決しないときの対処法
社内コミュニケーションの活性化の成果が出ない場合は、実際に取り組みに成功した事例を参考にすることもよいでしょう。自社と似た課題の企業事例を見つけ、どのように解決したかを分析することがおすすめです。自社の課題を解決するための何らかのヒントになります。外部のコンサルタントなどに依頼して、問題点を解決してもらうこともおすすめです。
まとめ
社内コミュニケーションの活性化は企業に多くのメリットをもたらします。しかし、習慣や環境によって課題を解決することは難しいと考える企業も多いでしょう。この記事では、社内コミュニケーションの課題を見つける方法や課題の解決方法を解説したので、ぜひ参考にしてください。
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