こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
ビジネスにおける「多様性」の実現は、もはや国際的に重要なテーマといっても過言ではありません。多様性に対する社会的な関心が強まるにつれて、企業には「単に多種多様な人材を雇用する」というだけでなく、「真に多様な人材が活躍できる」という一歩踏み込んだ価値が求められるようになっています。
そこで重要となるのが、「インクルージョン」です。今回はインクルージョンの意味やダイバーシティ(多様性)との違い、導入する際の注意点やコツについて見ていきましょう。
インクルージョンとは
「インクルージョン」とは、包括や包含といった意味を持ちます。ビジネスでは、企業や組織内のすべての従業員が置き去りにならず、個々の能力を存分に発揮できている状態を示します。まずは、インクルージョンの基本的な意味や成り立ちについて詳しく見ていきましょう。
インクルージョンの意味
インクルージョンについて理解するには、対義語である「エクスクルージョン」について知っておきましょう。エクスクルージョンとは、排除という意味の英単語であり、社会学的には異分子を既存の枠組みから追い出すことを指します。
それに対して、インクルージョンは個々の異なる属性が受け入れられ、互いに尊重されている状態を指します。マイノリティを排除するのではなく、それぞれの属性を尊重したうえで、ともに活躍していく理想的な状態といえるでしょう。
インクルーシブとは
インクルーシブとは、インクルージョンの動詞形であり、「包括する」という意味があります。主に社会学や教育学などの分野で用いられることが多く、歴史的に排除されてきたマイノリティに焦点を当て、誰もが分け隔てなく対象となる様子を表す言葉です。
たとえば、「インクルーシブ教育」といえば、障害の有無に関係なくともに学び、ともに育っていけるような教育環境・システム・概念を指します。
インクルージョンの歴史
インクルージョンという用語のルーツは、1970~1980年代にヨーロッパで主流となった社会福祉政策の理念にあります。当時のフランスをはじめとする欧州では、移民の増加や深刻な経済格差によって、「ソーシャル・エクスクルージョン」が重大な社会問題となっていました。
ソーシャル・エクスクルージョンとは、本来なら誰でも享受できるはずのサービスや機会、権利が、差別によって特定のグループ・個人の利用を妨げられている状態を意味します 。その対策として、誰もが社会に参加する機会を持っているという「ソーシャル・インクルージョン」の概念が展開されていったのです。
それ以降、社会福祉以外の分野でもインクルージョンの理念が浸透し、教育やビジネスでも重要なテーマとしてとらえられるようになっています。
教育 面のインクルージョン
教育の分野におけるインクルージョンは、1994年にUNESCOが提言したサマランカ声明により、インクルーシブ教育が国際的な課題として扱われたことが大きなきっかけとなって発展しています。たとえば、従来の日本における教育システムでは、障害を持った児童が就学の免除を余儀なくされていた歴史があります。
その後、1980年代以降は養護学校などで障害児の就学制度が設けられたものの、健常者とは分離されていたことから、結果として社会から排除されてしまう構図には変化があり ませんでした。そうしたなか、2006年に国連で採択された障害者権利条約の第24条で、「誰でも生涯にわたり」「地域社会のなかで」インクルーシブ教育を受ける権利があることが明記されたことで、障害児教育に関する考え方に変化が見られました。
排除や分離ではなく、包括という真の意味での共生社会を実現する方向へと仕組みが転換されているといえるでしょう。
インテグレーションとの違い
インテグレーションとは「結合」を意味する言葉であり、インクルージョンと混同されやすい概念でもあります。インテグレーションはマジョリティの集団のなかに、マイノリティの枠組みを組み込んで「同一化」する側面があります。
一方 インクルージョンでは集団として単にまとまるのではなく、1人ひとりのスキルや能力をそのまま活かせる側面を持っています。そうした意味では、インクルージョンのほうが、インテグレーションよりも建設的で発展的な考え方といえるでしょう。
ダイバーシティとは
インクルージョンに関連する用語として、「ダイバーシティ」という言葉も広く知られています。インクルージョンとの違いも含めて、ダイバーシティの意味や両者の関係性について見ていきましょう。
ダイバーシティの意味
ダイバーシティは「多様性」を意味する言葉であり、ビジネスでは「多様な属性や価値観、経験を持った従業員が組織にいる状態」を表します。また、多様な人材が活躍しやすい環境整備やマネジメントといった観点もダイバーシティにもとづく考え方です。
様々なタイプの人材を登用すれば、組織の生産性や競争力を高め、全体としてのパフォーマンスを向上させられる方法としても注目されています。
ダイバーシティとインクルージョンを同時に行うことが重要
ダイバーシティは「人員構成」や「職場のシステム」のように、わかりやすい面に着目できる特徴があります。たとえば、「自社の女性従業員は〇%以上」「外国人採用枠の設定」といった具体的な指標です。
しかし、実際に女性従業員の割合を増やしても、活躍できる風土も構築されているとは限りません。男性の発言だけが重視されやすい状況がそのまま残っていたり、女性を名前ばかりの管理職に登用したりするだけでは、多様な人材が活躍できているとはいえないのです。
そこで重要となるのが、それぞれの能力や個性を受容して生かしていくインクルージョンです。そのため、ダイバーシティとインクルージョンは、両者不可分の存在として考えられるのです。
なぜインクルージョンが求められているのか
インクルージョンは「誰1人取り残さない」というSDGsの理念に合致していることから、国際的にも重要なテーマとして考えられています。様々な国やエリアで、インクルージョンを踏まえた社会制度・福祉・教育分野の整備に力点が置かれているのです。
そのうえで、ビジネスでインクルージョンが重視される理由について解説します。
離職率を下げることに繋がる
少子高齢化に伴う労働人口に減少によって、人材の確保は多くの企業で主要な課題となっています。また 、従来と比べて転職市場の動きも活発になっていることから、従業員の定着率向上がそのまま企業の競争力強化につながるケースもめずらしくありません。
そこで多様な人材の価値を見出し、柔軟に実力を発揮させていくインクルージョンの考え方は、離職率の低下をもたらすことが期待されています。
他社との差別化に繋がる
インクルージョンの概念が反映された組織やチームは、多様な視点で商品・サービスに向き合えるのが強みとなります。これまで見落とされがちであったマイノリティにもしっかりと目を向けられるため、思ってもみなかったニーズを発見したり、新たなアイデアを投入できたりするようになるのです。
その結果、企業全体としてアウトプットの質が向上し、競合他社との差別化を実現しやすくなります。
あらゆる人事データを統合して分析
インクルージョンの概念を自社に反映させるためには、多様な人材を受容できるだけの土台が必要となります。自社の人材データをきちんと管理し、柔軟に活用できる状態を整えることで、はじめて新たな個性を包括できるようになるのです。
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インクルージョンをするメリット
自社でインクルージョンを推進することには、様々なメリットがあります。そこで、代表的な4つのメリットをご紹介します。
優秀な人材を確保できる
インクルージョンの考え方が浸透すれば、性別や国籍、信条などにとらわれず、広く有能な人材を雇用できるようになります。また、それぞれの個性を抑制せずに思う存分実力を発揮してもらえるため、組織としてのパフォーマンスは大幅に向上するでしょう。
多様な意見を取り入れやすくなる
多様な背景を持つ人材によって、組織の発想力や創造力も自然と豊かになっていきます。様々な視点からの意見を取り入れられるため、イノベーションの創出が起こりやすい土壌を耕していけるのです。
これまでになかった新しい事業や商品・サービスが生まれるきっかけにもなり、企業を大きく成長させる武器になる場合も少なくありません。また、組織全体に柔軟性が生まれるため、急激な環境の変化に対応しやすくなる点もメリットです。
従業員のモチベーションがあがる
様々なタイプの従業員が活躍すれば、組織全体のモチベーションも向上していきます。他者の発想や姿勢が、お互いに良い刺激を与えていくため、従業員それぞれに好奇心や向上心が芽生えていく効果が期待できるのです。
企業のイメージアップにつながる
インクルージョンが実現されれば、従業員の自社に対するイメージの向上が期待できます。「長く働きやすい」「柔軟にキャリア形成を描きやすい」といった印象を与えられ るため、従業員の定着率も自然と向上するでしょう。
また 顧客や取引先に対しても、自社の価値観を明確に提示できます。多様な考えを大事にしている点や国際的に開かれた感覚を持っている点などが自然とアピールできるため、自社のイメージアップに大きな影響を与えます。
インクルージョンをするデメリット
インクルージョンの推進には、いくつか気をつけておきたいデメリットも存在します。
従業員の理解を得にくい
インクルージョンは組織全体に影響を与えます。そのため、理念や推進の理由について理解を得られていないまま進めてしまうと、既存の従業員から反発されてしまう可能性があります。
特に従業員数が多く、歴史も長い大企業などでは、大掛かりな組織改革に抵抗感を抱くメンバーがいることも理解しておかなければなりません。そのため長く勤めている従業員などには、インクルージョンの研修を行うなどの配慮が必要です。
制度や設備に時間がかかる
インクルージョンを導入するうえでは、既存のシステムや採用制度を見直す必要があります。また、社内のメンバーや既存の事業などに対して、実際にどのような影響を及ぼすのかも十分に検証しなければなりません。
そのため、制度の導入については長期的な期間を設定して取り組むことが大切です。
数値化しにくく、評価が難しい
インクルージョンは、導入をスタートしたからといってすぐに業績に変化が生まれるものではありません。そのため、取り組みの数値化や効果測定が難しいというデメリット があります。
また、従業員個人の取り組みについても評価は難しい面があります。インクルージョンが浸透しているかどうかは、顕在化しにくいやりとりや態度といった側面にも強く表れるため、人事評価などに組み込むのはあまり現実的ではありません。
インクルージョンを導入するコツ
自社にインクルージョンを導入する際には、メリットとデメリットを十分に理解したうえで、スムーズに推進するためのコツをおさえておくことも大切です。そこで、導入時の注意点を3つご紹介します。
従業員の意見を聞き入れる体制を整える
多様な人材を生かすには、誰もが安心して発言できるような環境づくりを行うことが大切です。そのためには、「心理的安全性」を向上させるための取り組みを実施するのも1つの方法です。
心理的安全性とは、「組織やチーム内で誰がどのような発言をしても、それを拒絶されたり罰せられたりする心配がない状態」を指します。簡単に表現すれば、「風通しの良さ」や「何でも言い合える雰囲気」ともいえるでしょう。
心理的安全性を構築するためには、「発言の機会を均等に設ける」「業務以外で会話できる機会を用意する」「メンター制度や1on1ミーティングを取り入れる」といった方法が効果的でしょう。
多様な人材が活躍できる環境を整える
インクルージョンを導入するうえでは、組織のシステムも見直す必要があります。たとえば、「外国人の採用枠を設ける」といった採用面からのアプローチだけでなく、「テレワークや時短勤務の導入」を行い、育児で忙しい従業員も安心して働けるようにするのも重要な施策です。
外部企業に委託できるところを探す
インクルージョンの推進にはさまざまな準備が必要となるため、自社の基幹業務を圧迫してしまわないように十分な注意を払うことが大切です。すべてを社内のリソースで済ませようとするのではなく、一部の手続きは外部企業に委託してしまうのも有効な方法といえるでしょう。
たとえば、社内アンケートや満足度調査の実施、人材データの分析などは、比較的に委託しやすい業務です。タレントマネジメントシステムの『タレントパレット』は、細かな人材データ分析や労務管理、人事評価、離職防止といったさまざまな分野の業務をオールインワンで任せられるサービスです。
多様な人材の採用や管理、最適な配置などにも生かせるので、ぜひサービスの仕組みや特長をチェックしてみてください。
まとめ
インクルージョンは多様な背景を持つ人材が個性を認め合い、誰もが思う存分に活躍できる状態のことです。多種多様な人材の獲得やイノベーションの創出、競争力の向上といったさまざまなメリットをもたらすため、企業の長期持続的な発展においては重要な課題となります。
一方、「既存の従業員の理解を得るのが難しい」「大掛かりな組織変革を行うにはリソースが不足しがち」といった注意点があるのも事実です。そこで重要なカギを握るのが、「タレントマネジメントシステム」です。
タレントマネジメントシステムとは、人材の能力やスキルを最大限に発揮してもらうために、人材データを集約・一元管理して、高度な意思決定を可能にするシステムのことです。各人材のスキルや保有資格、経歴などのデータをもとに、計画的な人材育成や高度な配置戦略を練るために活用できます。
多様な人材を管理し、本来の個性を発揮してもらえるという点で、インクルージョンの実現に直結するサービスといえるでしょう。タレントマネジメントシステム『タレントパレット』は、データに基づいた科学的な人事を実現するためのシステムです。
あらゆる人事データを蓄積・統合することにより、精度の高い分析を行い、人事や経営課題についても根拠のある施策を打ち出せるようになるのが強みです。「ダイバーシティ&インクルージョンの実現に関心がある」「多様な人材を生かして組織力を高めたい」という方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。
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