社内公募制度とは?取り組むメリットやデメリットを徹底解説


社内公募制度とは?取り組むメリットやデメリットを徹底解説

社員のマインド変化への適切な対応方法の1つとして、「社内公募制度」に注目が集まっています。社員の働きがいを重視する人事制度として取り入れる企業も増加していて、生産性向上や離職率の低下など多くの要素に影響することが期待されています。本記事では社内公募制度の概要からメリットデメリット、時代に合っている理由など網羅的に解説します。

社内公募制度の概要

まずは社内公募制度の基本的な概要と、重要視されている背景について解説します。

社内公募制度とは

社内公募制度とは、社内における人事異動制度であり、人材を増やしたい部署が自社の社員に向けて公募するのが特徴です。上層部による異動命令とは違い、社員による自発的な応募を前提として実施されます。

命令による異動の場合、社員によっては意にそぐわない結果となって会社へのエンゲージメントを低下させる恐れがあります。その点、社内公募制度は社員が自らの意思で異動を志願するため、モチベーションの向上・維持に期待できます。

社内公募制度が必要になった背景

社内公募制度が近年注目されている理由には、産業構造の変化、グローバル化の進展、労働人口の減少などが背景にあります。人材採用が簡単ではなくなり、採用コストも高騰していることから、社内公募制度で人手不足を補うことも選択肢の1つです。

そのほか、厚生労働省が「グッドキャリア企業アワード」を発表するなど、社員が自律してキャリア形成を行うように促進していることも、社内公募制度が活性化する要因として考えられます。

社内公募制度と社内FA制度の違いとは

社内FAとは、社員がこれまでの経歴や実績をアピールして、他部署に自分を売り込む制度を意味します。社内FAは社員から求職をすることから「PUSH型」に分類されますが、社内公募制度はポストを募集して人材を集めることから「PULL型」に分類されるという違いがあります。

時代に即した人事制度として注目されている

社内公募は、雇用している優秀な人材を社内で流動的に異動して活用する環境を整えることにつながります。優秀な人材が仕事に飽きたり、キャリアアップを目指して転職したりといった形による人材流出を防ぐことが可能です。

少子高齢化社会によって採用コストが多くかかる時代になっているため、人材流出を防げる社内公募制度の導入にはメリットがあります。また、上長や人事の目線だけではない人事異動を実現できることから、社員の適材適所を促すことも可能です。

ほかにも、社内公募制度に応募規定を設けることで、キャリアアップを目指す社員が積極的にスキルアップに取り組むケースにも期待できます。

社内公募制度に取り組むメリットについて

社内公募制度への取り組みは、企業・社員に多くのメリットを与えます。

社員の生産性向上・モチベーション向上につながる

社内公募制度の導入は、社員がやりたい業務に挑戦できるチャンスを作ることになるため、モチベーションアップや生産性向上につながるメリットがあります。優秀な社員は特にキャリアアップへの高い意欲があるため、社内公募制度が将来の目的とフィットするケースが多いです。

社内公募制度で社内のポジション要項が周知されることで、社員のキャリア設計やスキルアップにつながる点もメリットです。どのような人材が自社で求められているのかが明確になるため、社員に今後の目標を提示することにつながるでしょう。「スキルアップしたいけど、具体的に何をすればいいのか分からない」といった社員も社内公募制度をきっかけに行動に移れる可能性があります。

関連記事:モチベーション向上に有効な施策とは?重要性や低下する原因、測定方法なども解説

離職率を下げられる

社内公募制度は社員のやりたいことを他部署で実現できる機会を与えられるため、優秀な人材の離職・流出を抑えられるメリットがあります。現在の仕事で満足できていない社員は、自然とエンゲージメントとモチベーションが低下します。優秀な人材ほど転職や独立する力があるため、仕事に満足できない状態を放置すると会社から出ていってしまう可能性が増加するでしょう。

また、社内公募制度によって他部署に行くことで、仕事のやりがいなどを再発見できるケースにも期待できます。

関連記事:離職率の改善のためにできることは?離職の原因や改善する方法を解説

採用コスト削減につながる

社内公募制度の実施は離職率を下げ、会社への定着率を上げられるため、採用コスト削減につながる点もメリットです。本来ならさまざまな企業に転職して経験を積んでいくキャリアパスを社内で完結できます。社員にとっても転職にかかるコストの削減も可能です。

職場環境改善につながる

社内公募の導入は、各部署の職場環境改善につながる可能性もあります。例えば、他部署に比べて募集が集まらない場合、職場環境が悪くて社員から人気がないことが想定されます。「社内公募への応募者を増やすために、職場環境を改善しなければならない」という緊張感を醸成できるため、より社員が働きやすい環境の整備につながるでしょう。環境改善は社内公募に応募する社員だけでなく、その部署ですでに働いている社員にもメリットがあります。

社内公募制度のデメリットについて

社内公募制度には上記のメリットがある一方で、いくつか注意すべきデメリットもあります。

人事部の負担や業務が大きくなる

社内公募が当たり前の制度になると、人事部の負担が大きくなるデメリットがあります。例えば各部署における人員調整や、社内公募によって発生した欠員の補充などは、人事部の担当業務となります。社内公募制度が定着することで、それに対応するための業務量が増加する点は、事前に把握しておく必要があるでしょう。

社内公募制度を導入する際には、各部署が自由に募集するのではなく、必ず人事部を通して実施するなど、明確なルール作りを進めるのがポイントです。

希望ベースのため適材適所にならないケースもある

社内公募では社員の興味や希望によって異動が決まることもあるため、能力ベースでの異動にならないケースが増加します。例えば本来は営業向きの人材が、デザイナー部門に異動することになると、適材適所の人事にならない可能性があるでしょう。

そのほか、人気部署にばかり人が集まってしまい、他部署のモチベーションが下がることもあります。社内公募における社員向けのルールを制定したり、ヒアリングや面談を実施してその人に適した職場への異動が叶うように調整するのも重要です。

人事評価制度を見直す必要が発生する

社内公募制度をはじめる場合、従来の人事評価制度を見直さなければならないこともあります。例えば「1つの部署で3年間働けば昇格する」など暗黙のルールがあった場合、社内公募制度に応募する人材がいなくなる可能性が懸念されるでしょう。

成果ベースによる評価を行っている場合も、評価項目や基準を見直して社内公募制度に合った内容に調整することが求められます。

関連記事:人事評価システムとは?導入するメリットや自社に適したツールの選び方を解説

社内公募制度を実施するプロセス・手順

社内公募制度を実施する手順は、具体的に以下の流れになります。

必要性について社内で共通認識を持つ

社内公募制度を導入するメリットや必要性を社内で共有し、共通の認識を確保します。社内公募制度についての理解が追いついていないと、なんとなく応募する社員が増えたり、目的のないまま人材を増やすためだけに募集を開始する部署が増加する恐れがあります。

なぜ社内公募制度を導入したのか、社員や部署はどのように活用すればいいのかを研修などを通して周知させるのがポイントです。

実施するプロセスを詳細に決める

社内公募制度を実施するプロセスの詳細を、明確に決定します。職種・募集者・応募者・募集内容・応募方法・告知方法など、募集するために必要な情報や提示方法を決めておくのが基本です。

想定されるデメリットへの対応を考える

社内公募制度による人材の異動で欠員が発生した際に、どのように対処するか事前に決めておく必要があります。欠員が出た場所にとにかく人を異動させて穴埋めをするような形では、組織全体で適材適所の人事ができなくなる可能性があるでしょう。

そのほか、異動した人材の人事評価をどのように行うのかも考える必要があります。途中から部署を異動した人材の評価基準を別途用意しておかなければ、不公平な評価になる恐れがあるでしょう。

上記のように社内公募制度がもたらすデメリットや問題点を事前に想定し、対応策を考慮しておくことも実施のプロセスに含まれます。

まとめ

社内公募制度は、社内にいる優秀な人材を循環させて組織全体を活性化させられる魅力的な手法です。自主的な異動は社員のスキルアップを促し、会社への積極的な貢献につながります。この機会に社内公募制度のメリットや実施方法を確認し、導入のための準備をしてみてはいかがでしょうか。


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