そもそも人材マネジメントとは何か
人材マネジメントとは、会社の目的や経営戦略を実現するために、人を管理・活用する人事戦略です。社員の採用から教育、評価、異動といった人事業務に一体的に取り組みます。人材マネジメントのサイクルを回すことによって、会社が抱える問題の改善や生産性の向上などが期待できます。
人材マネジメントが必要とされる3つの理由!成功させる5つのポイントや手順を解説
タレントマネジメントとの違いとは
人材マネジメントとタレントマネジメントを混同している人もいるでしょう。タレントマネジメントとは、タレント(社員)が持つ能力やスキル、経験などを最大限に生かすために、人材配置や人材育成などを戦略的に行うことを指します。タレントマネジメントの目的は、組織の競争力強化や会社としてのパフォーマンス向上などです。
一方、人材マネジメントは会社としても目的を実現することを目的としています。人材配置や育成だけでなく、採用から評価、異動などの人事業務にトータルで取り組むことが特徴です。
人事労務との違いとは
人事労務とは、社員が働きやすい環境を整えるために、労働環境を調整したり整備したりすることです。人事労務の業務としては、福利厚生の充実や保険手続き、給与計算、就業規則などの管理などが挙げられます。
一方、人材マネジメントは社員の採用や研修、定着といった就労事態を対象として管理するものです。つまり、人材マネジメントは社員個人を対象としており、人事労務は制度や環境を対象として管理するという違いがあります。
人材マネジメントが注目される背景とは
企業では人材マネジメントへの注目が高まっています。ここでは、人材マネジメントが注目される理由を確認しましょう。
1.グローバル化
グローバル化が進行していることにより、人材マネジメントへの注目が高まっています。日本では、さまざまな業種で海外の売上高の比率が増加している現状です。これには、少子高齢化が関係しているとされています。人口が減少傾向にある日本においては、世界市場への進出が必要不可欠だとされており、海外市場にも目を向けたビジネスが求められている状況です。
そのため、グローバル基準の人材マネジメントが必要とされています。従来のような日本式の人材マネジメントではなく、グローバル人材にも対応できる人材マネジメントへの移行が急務です。
2.デジタル化
デジタル化が進んでいることも、人材マネジメントが必要とされる理由の1つです。デジタル化によって、消費者のニーズは多様化したため、適した人材が求められるようになりました。そのため、企業に必要な人材像も変化しており、高度なスキルや専門的な知識を持つスペシャリストが、求められる時代になっています。
このようなスペシャリストに対応するために、人材マネジメントのニーズが高まっています。スペシャリストに対応できる採用活動や育成などを行うためには、人材マネジメントが必要です。
3.少子高齢化
日本では少子高齢化が加速化しています。少子高齢化によって生産人口は減少傾向にあり、さまざまな業界が慢性的な人手不足に悩んでいるようです。少子高齢化には歯止めがかからず、今後も状況がよくなる見込みはありません。
そのため、会社としては限られた人材を有効活用して、生産性を向上させることが求められます。少ない人材を効果的に活用するためには、自律的に動くことができ生産性が高い人材を育てることが重要です。そのような人材を育てるためにも、人材マネジメントが求められます。
人材マネジメントに取り組むメリットとは
人材マネジメントに取り組むことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、2つのメリットを解説します。
組織力が上がる
人材マネジメントに取り組むことで、生産性の向上や適材適所の人材配置などが可能です。人材マネジメントで人事業務を管理することで、人材採用や研修などが効率的に行えるようになり、よい影響が出るとされています。
社員によい影響が出る
人材マネジメントによって、エンゲージメントやモチベーションの向上につながるとされています。エンゲージメントとは会社に対する愛着や思い入れのことです。自主性や向上心、やる気などが向上することで、離職率の低下が期待できます。
人材マネジメントを構成する要素とは
人材マネジメントを6つの要素で構成されています。ここでは、人材マネジメントの6要素を詳しく解説します。
1.採用
採用とは、自社に必要な人材を採用して補填することを意味します。採用活動では、短期的な視点だけではなく長期的な視点で考えることも重要です。
採用には、新卒採用と中途採用があります。中途採用の場合は、ビジネスマナーやビジネススキルなどをある程度身に付けているため、自社での育成コストを抑えられるのがメリットです。時期を決めずに、年間を通して採用活動を行っている会社も少なくありません。
2.人材育成
人材育成にはさまざまな手法があります。たとえば、OJTやOff-JT、自己啓発などが挙げられるでしょう。従来の育成では、業務に必要なスキルや知識を身に付けることを重視しており、研修とOJTを中心としている会社がほとんどでした。
しかし、現在はビジネスに必要なスキルは多様化しており、キャリア自立も重要視されています。そのため、自己啓発に注力する会社が増えているようです。会社や上司から必要なスキルを教わるだけでなく、社員が自身で考え必要なスキルを身に付けることが重視されています。
3.評価制度
正当な評価を得られることは、社員のモチベーション向上や成長意欲の向上などにつながります。評価制度に不備があったり正当な評価が受けにくい制度だったりすると、社員が不満を感じやすくなり、エンゲージメントが低下したりするかもしれません。最悪の場合には、退職する社員が出たりする恐れもあります。
そのため、社員が納得できる公平かつ公正な評価制度を整えることが重要です。評価制度の見直しを適宜行い、改善することは人材マネジメントにおいて重要な要素といえるでしょう。
4.報酬制度
評価に基づいた適正な報酬を支払うことも重要です。公平・公正な評価が行われていたとしても、その評価が報酬に反映されていないのでは意味がありません。報酬に納得がいかずに、離職を考える社員が出てくる可能性もあります。
社員が納得できるように、報酬制度の透明性を担保することが大切です。また、社員に適切なフィードバックを行い、理解を得る必要もあります。報酬制度の透明性の確保・適切なフィードバックは、人材マネジメントに欠かせません。
5.人材配置
人材マネジメントでは、社員の適正やスキル、経験などに合った職種転換や部署移動などが不可欠です。人材配置では、社員1人ひとりの特性やスキルだけでなく、人間関係なども考慮して決定しましょう。
適切な人材配置をして、各人に合った仕事を割り振ることは、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。また、社員の能力を最大限に活かすことにもつながるため、会社全体の生産性向上も期待できるでしょう。
6.休職・復職
適切な休暇制度を設けることも人材マネジメントでは重要です。適切な休暇制度がないことで不満を抱き、エンゲージメントが低下する社員も少なくありません。そのため、病気や出産・育児などに関する休暇制度の見直しを図ることが大切です。
また、復職に関する制度も整えておきましょう。適切なタイミングで休職できるだけでなく、円滑に仕事に復帰できる環境が整っていることで社員は安心して働けるため、復職者の支援に力を入れるのもよい方法です。
人材マネジメントにおける成功のポイントとは
人材マネジメントを成功に導くためには、3つのポイントを意識しましょう。ここでは、各ポイントを詳しく解説します。
1.課題の明確化
まずは、自社が解決すべき課題を明確化しましょう。たとえば、「売上増加を目指したいが営業力が不足しており成約に至らない」「人財の定着率が低い」などです。自社の状況や課題を把握することで、経営戦略を見直すことができます。
また、人材マネジメントの成功のためには、経営戦略と社員の課題や目標に一貫性を持たせることも重要です。一貫性を持たせることで明確な判断基準ができ、社員がパフォーマンスを発揮しやすくなります。
2.現状確認
自社が目指す目標や理想の状態と現状を比較して、現状確認を行うことも重要です。目標達成のために足りない部分を洗い出しておきましょう。たとえば、現在の社員数や社員の業務スキルなどを確認します。
目標達成のために社員数が足りない、スキルが十分ではないという場合には、どの程度の人員が必要になるか、必要なスキルや能力は何かなどを検討することが大切です。そのうえで、人員補充や人事異動、人材育成などの必要な対策を検討します。
3.適切なフィードバック
状況に応じて、社員にフィードバックすることも重要です。適切なフィードバックを適宜行うことにより、社員のエンゲージメント向上やスキルアップなどにつながりやすくなります。
フィードバックを行う際には、タイミングや伝え方などに注意しましょう。フィードバックのタイミングや伝え方を誤ると逆効果になってしまい、エンゲージメントやモチベーションが低下してしまうこともあります。
人材マネジメントを推進する際によくある課題とは
人材マネジメントを推進するには課題もあります。ここでは、人材マネジメントを進める際によくある課題について解説します。
1.ミドルマネジメント層の負担
人材マネジメントを推進によって、ミドルマネジメント層の負担が増加します。人材マネジメントを成功させるには、新人の教育や育成だけではなく、中堅社員の育成も必要です。このため、ミドルマネジメント層にかかる比重は大きくなります。
過度な負担がかからないように、状況に応じて管理職の負担軽減を図ることも大切です。管理職の負担を軽減して、人材育成できる余裕を持たせる工夫をしましょう。
2.多様な働き方への対応
会社では、時代に合わせた多様な働き方への対応が求められています。グローバル化やデジタル化、少子高齢化などを背景として、求められるスキルの多様化や人材育成手法の変化など、会社を取り巻く環境は大きく変化する状況です。
このような課題に取り組むためにも、多様な働き方に対応しましょう。たとえば、テレワークの導入やフレックスタイム制の導入、短時間勤務などのさまざまな働き方の導入を検討しましょう。
3.モチベーションの向上への対応
人材マネジメントにおいて、社員のモチベーションを維持・向上させるための施策は欠かせません。さまざまな制度を構築しても、社員が人材マネジメントの必要性を理解できていない場合、効果が薄くなってしまいます。
社員のモチベーション向上を目指す際は、目標と評価を連携させて管理することや、人材マネジメントの必要性を浸透させましょう。また、1on1を導入して適切なフィードバックや、コミュニケーションを取ることも重要です。
4.情報一元化の対応
目標管理や課題の進捗状況の管理などを徹底することも、人材マネジメントには欠かせません。人材マネジメントの担当者と人事部などとの連携が取れていないと、目標が明確でない、課題の進捗状況が把握できないといった問題が起こりやすくなるため、情報の一元管理を行いましょう。
管理職や人材マネジメントの担当者だけで情報を管理するのではなく、担当する部署全体で情報を連携し、ブラックボックス化を防ぐことが重要です。
人材マネジメントを実施する手順を解説
ここでは、人材マネジメントを実施する際の詳しい手順を解説するため、ぜひ参考にしてください。
経営課題を整理する
まずは、自社における経営課題の見直しを図りましょう。人材マネジメントは、経営戦略とリンクしていること、方向性をそろえることが大切になるため、経営課題の整理は欠かせません。人材面での課題は何なのか、課題を解決するための方法があるかなどを整理し、課題を分析することが求められます。
自社における人材像を定義する
経営課題を整理したら、自社で不足している人材や新規で必要な人材像を明確化します。ポジションによって人材像は異なるため、どの部署にどのような人材が必要なのかを洗い出しましょう。そのうえで、必要な人材像を整理して定義します。人材像を誤ってしまうと、ミスマッチにつながる可能性があるため注意してください。
人材を獲得するための計画を立案・実施する
定義した人材像をもとにして、採用方法や育成方法などを検討します。たとえば、新規採用するのか、自社の人材を育成するのか、異動や配置換えなどで確保するのかなど、人材を獲得するための計画を立てましょう。人材確保は容易ではありません。そのため、人材確保のための計画書を立案して慎重に実行することが大切です。
PDCAサイクルを展開する
PDCAサイクルを回すことも大切です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(測定、評価)・Action(改善)の頭文字を取った言葉です。4つのプロセスを繰り返すことで、業務の改善を図ります。PDCAサイクルを回しブラッシュアップすることで、自社の人材マネジメントを見直すことができ、最適な方法の確立につながるでしょう。
人材マネジメントシステムとは
人材マネジメントにおける課題を解決する手段の1つとして、人材マネジメントシステムの導入が挙げられます。人材マネジメントシステムとは、人材マネジメントをサポートするシステムです。
メリット
人材マネジメントシステムを導入することで、生産性の高い社員の特性や離職者の傾向などが分析できるため、採用基準の明確化が可能です。また、社員それぞれのスキルや特性などを評価した人材配置ができるため、勘や経験を頼りにしない適材適所の人材配置が実現できます。社員それぞれに合った育成が可能になることも、大きなメリットでしょう。
デメリット
人材マネジメントシステムはコストがかかります。導入システムによってコストは異なりますが、予算や必要な機能などを考慮してシステム選びをすることが重要です。また、人材マネジメントシステムは人事だけが行うものではないため、現場の理解を得る必要があります。理解を得ないまま導入すると浸透せず、スムーズに運用できない場合もあるでしょう。
人材マネジメントの課題を解決した事例とは
ここでは、人材マネジメントの課題を解決した事例を2つ紹介します。
1.ニトリ
ニトリでは、所属部署を変えることで得られる経験を大切にしており、個人の成長を促すための施策として3年に一度の配属替えを行っています。適切な配属替えを行うためにタレントパレットを導入しました。タレントパレットなら、社員の特徴を色で把握できるため、データに基づいた最適な異動配置がしやすくなります。
2.ニチレイ
ニチレイでは36のグループの社員をまとめて可視化できるシステム、人材データの分析・活用ができるシステムを探していました。そこでタレントパレットを導入し、タレントパレットを用いて異動希望の全社公募を行ったところ、応募数が2倍以上になりました。これにより、組織活性化や離職防止などにつながっています。
まとめ
人材マネジメントとは、会社の経営戦略や目的実現のために人材を管理・活用する人事戦略です。人材マネジメントには課題もあるため、解決するためにミドルマネジメント層の負担軽減や、情報の一元化などにも取り組まなくてはいけません。効率的かつ効果的な人材マネジメントを実現するために、人材マネジメントシステムを導入するのもよいでしょう。
タレントパレットはHRテック提供企業として、大手企業をはじめとして数多くの企業に導入されている、タレントマネジメントシステムです。コンサルティングの知見もあり、サポート体制も充実しています。人材マネジメントの推進をお考えなら、お気軽にお問い合わせください。