人事異動を拒否された場合の対応まとめ!社員に拒否権がある例外ケース4つも紹介


人事異動を拒否された場合の対応まとめ!社員に拒否権がある例外ケース4つも紹介

社員に人事異動を命じたら拒否をされたときの適切な対応方法をご存じでしょうか。本記事では、人事異動の拒否に対応するための知識や、拒否を認めるべき例外のケースについて解説します。人事異動の拒否の問題を解決したい方はぜひ参考にしてみてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「人事異動が拒否されることはあるのか」「拒否された場合はどう対処すれば良いのかわからない」とお困りではないでしょうか。


人事異動は企業に命令権があるため、原則社員は拒否できませんが、場合によっては拒否を認めなければならないケースもあります。適切な人事異動をするためにも、企業は人事異動の拒否が認められるケースについて把握しておきましょう。


本記事では、社員が人事異動を拒否できるケースや拒否された場合の対応方法、人事異動を納得してもらう説得方法について解説します。人事異動を拒否された場合の対応がわかり、トラブルを避けてスムーズに対応できるようになりますので、ぜひ最後までお読みください


人事異動は拒否されても原則異動を命じられる


人事異動の拒否をされても、企業は配転命令権を行使して異動を命じられます。配転命令権とは、社員が異動を拒否しても受け入れずに命令ができる権利のことです。就業規則や雇用契約書に「社員は企業の都合により配置転換を行う」という主旨の記載があれば、配転命令権の行使ができます。


しかし、人事異動を拒否されたときに認めなければならないケースもあるため、次項で詳しく解説します。


人事異動の拒否を認めねばならない可能性のある4つのケース


社員側に正当な理由がある場合、人事異動の拒否は認められます。社員の合意を得ないまま命令を決行すると、社員から企業を訴えられるトラブルに発展する可能性があるため、必ず把握しておきましょう。


転籍させる場合


前提として、人事異動には以下のような種類があります。


  • 配置転換(社内での異動)
  • 出向(社外への一時的な異動)
  • 転籍(別会社への異動)


配置転換と出向は、どちらも社員の同意なしに命令が可能です。


一方、現在の企業を退職させて企業が指定する別会社へ入社を指示する「転籍」は、就業規則があっても拒否されたら異動を命じられません。なぜなら、別の会社と労働契約を新たに結ぶため、社員の同意が必要になるからです。


実際に社員の転籍拒否が認められた判例もあります。「三和機材事件」では、転籍に応じないことを理由に解雇された社員が、不当な命令として裁判を起こしました。結果、合意のない転籍を理由とした退職命令は不当として、社員の解雇は撤回されています。 

参照元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構


病気や家族の介護などの事情がある場合


社員自身に特別な事情があるときは、本人の意思に反した人事異動は権利濫用にあたる可能性があります。特別な事情とは、社員の不利益が大きくなるケースです。具体的には、特定の病院でないと治療ができない場合や、家族の介護で家を離れられない場合などが挙げられます。


ただし、社員の不利益が大きいといえないために異動の拒否が認められないケースもあります。たとえば、共働きのため家族全員で転居ができない、子どもがまだ小さいなどの理由では、企業の命令を覆す根拠にはなっていないのが現状です。

人事異動の拒否に関する判例

拒否をする具体的な事情

拒否の有効・無効

明治図書事件

共働きであり、重症のアトピー性皮膚炎の
子ども2人の通院が必要である。

有効

ネスレ日本事件(1例目)

妻が精神疾患で家事ができない状態である。

有効

ネスレ日本事件(2例目)

母が要介護2であり、その他病気を
抱えている状態である。

有効

ケンウッド事件

通勤時間が長くなり、3歳の幼児の
保育園送迎ができなくなる状態である。

無効

帝国臓器製薬事件

妻と3人の子どもと別居をする必要がある。

無効

参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構

勤務形態が変わる場合


社員の採用時に勤務地限定の合意があった場合、決まっている勤務地以外には異動させられない可能性があります。なぜなら、あくまで社員の提示した条件を飲んだ上で採用しているため、取り決めを守っていない命令は権利濫用と判断されるからです。

社員と勤務地限定の合意があったとしても、本人から承諾が得られれば命令は可能です。そのため、まずは人事データで社員との取り決めの有無を確認し、事情を考慮したうえで打診をしましょう。

不当な人事異動である場合


企業や社員の成長を目的としていない異動命令は、不当と判断される場合があります。不当な場合とは、本人の能力や経験に見合わない部署に異動をさせ、退職に追い込むようなケースです。

ほかにも、労働組合の活動阻止が目的でも不当に該当します。異動を命じる際には、正当な目的や理由があるかの確認が重要です。

人事異動を拒否された場合の3つの対応


社員に拒否をされた状態のままで命令を強行すると、社員に訴えられるなどの問題に発展しかねません。そのため、一度拒まれた場合には、再度の説得を試みて命令を受け入れてもらう必要があります。


異動に前向きな姿勢を示してもらうためにも、命令を拒否された場合の対応方法について解説します。


拒否する理由を聞く


人事異動を拒否する社員に対しては、なぜ命令に従えないのか理由を尋ねる必要があります。なぜなら、理由によっては企業として命令の撤回をする可能性が出てくるからです。

  • 転籍である
  • 病気や家族の介護などの事情がある
  • 勤務形態の変更である
  • 不当な人事である


上記でも解説している理由に該当する場合は、再度検討を行いましょう。

なぜ異動対象なのかを説明する


異動対象になった理由や経緯について詳しく説明すれば、社員のマイナスイメージを払拭するきっかけになります。具体的には以下のような内容の説明が有効です。


  • 新たな部署や職務内容
  • 勤務条件
  • 異動の理由
  • 選定基準
  • 通勤への距離や時間帯的な影響


また、能力の評価や仕事の適性など前向きな理由を話すことも重要です。理由や経緯が具体的であるほど社員の納得につながります。


異動の理由について詳しく知りたい方は、別記事「人事異動理由」をあわせてご確認ください。


不利益の解消が可能な案があれば提示する


社員が抱えている不安を解消することは、企業が行える有効な対応方法です。たとえば、金銭的な部分で不安を感じている社員には、引っ越し代金のサポートや社宅の紹介を提案できます。


さらに、単身赴任に納得がいっていない場合には、帰省するための休日を与えたり、交通費支給をしたりすることも可能です。


もし企業が社員の私生活を考えず一方的な命令を出した場合、社員のモチベーションダウンは免れません。また、拒否を続けられた結果、異動が成立しない可能性もあります。そのため、企業は人事異動において社員に歩み寄る姿勢が求められます。


社員が人事異動拒否の姿勢を崩さなかった場合に行う主な3つの処置


拒否してきた社員をそのまま放置すると、命令を拒めるという前例もあります。そのため、企業として人事異動を拒否する社員には適切な処置を取りましょう。

懲戒解雇

懲戒解雇は、企業として慎重に行う必要があります。なぜなら、命令に納得できない社員が企業を訴えてくることがあるからです。

命令に従わない場合は、懲戒解雇をする旨が就業規則に記載してあることも確認しておきましょう。就業規則の確認は、正当性のある命令にするためにも重要です。

退職勧奨


退職勧奨は、社員の合意を得てから自主的な退職を促すものなので、トラブルに発展する可能性が少なくなります。退職勧奨を行うときの注意点は、退職の強要と取られないようにすることです。

あくまで社員の合意退職を目指すものなので、無理な退職を申し出ていると社員に判断された場合は、新たな問題に発展しかねません。

退職勧奨を受け入れてもらうポイントは、社員側のメリットを伝えることです。退職勧奨の場合は「会社都合退職」になり、社員が失業保険をスムーズに受給できる上に、自主退職と同じく退職金の受給も可能です。

減給や降格


命令を拒否している社員に対しては、減給や降格処分の処置もできます。懲戒解雇や退職勧奨とは違い、勤務の継続ができるのが特徴です。

社員の身勝手な理由でも拒否ができる前例を持つ企業は、以後正当な人事が成立しなくなる危険性があります。そのため、企業は社員を解雇させる必要性がないと判断した場合でも、減給や降格処分などの処置が必要です。

人事異動を拒否されにくい企業にする人事制度3選


人事異動で拒否をされないためには、企業とのミスマッチをなくす必要があります。企業が社員を知り、適切な配置ができれば、異動命令を拒否される可能性を減らせます。


企業と社員双方がメリットを感じる人事にするためには、社員の自主性を尊重できる制度の採用が有効です。すでに導入している企業もある人事制度3つを紹介します。


自己申告制度


自己申告制度とは、社員から異動希望を申告してもらう制度です。具体的には以下の内容について社員に申告を求めます。


  • 異動希望
  • 現在の仕事の満足度
  • 私生活


自己申告制度を採用すれば、企業は社員の状況を把握し、配置計画に組み込めるメリットがあります。また、社員にとっても自ら希望を出す場があることは、モチベーションの維持において有効です。


社内公募制度


社内公募制度とは、新規事業の立ち上げや、増員をしたい部署が出た場合に社内で公募を行う制度です。社員の自主的な行動をうながせるので、意欲のある社員を配置できる特徴があります。

とはいえ、新しく制度を導入するのは容易ではありません。

タレントパレットであれば、社内公募機能が標準で組み込まれているため、簡単に制度の開始ができます。社員が気づきやすい場所に社内公募のお知らせを設置できるので、意欲のある人材を逃さないしくみの実現が可能です。

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多様な正社員制度


多様な正社員制度とは、厚生労働省推奨の制度で、目的は企業と社員がお互いにメリットのある雇用形態を実現することです。

多様な正社員制度には種類があり、勤務地を狭めた雇用をする「勤務地限定正社員」や、特定の仕事内容を極める「職務限定正社員」があります。たとえば、総合職から勤務地限定正社員への転換を社員へ募れば、配置を変えてほしくない事情のある社員の希望を叶えられます。

社員の働き方を重視し、人事異動のトラブルを未然に防ぐ効果が期待できるのが多様な正社員制度です。

まとめ


人事異動は、異動の検討に時間がかかったり、本当に適した配置なのかを悩んだりするため、思ったよりも労力がかかります。せっかく企業と社員のためを思った配置を考えても、拒否をされてしまっては業務負担も増えるばかりです。社員のやる気を引き出す制度を用意しておくと良いでしょう。


タレントパレットなら、社員のデータを見ながら異動シミュレーションができるため、人材配置の手間が大幅に削減できます。また、社員の通勤時間も一覧で見られるので、転居を伴う異動でもスムーズに検討可能です。


最適な人事異動をすれば、社員に拒否をされてしまう可能性も減らせ、結果企業の利益にもつながります。社員のことを考えたトラブルのない人事を行いたい方は、まず無料でできる資料請求をおすすめします。


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