人事異動の適切な時期|手順やトラブルを避ける3つのポイントも解説


人事異動の適切な時期|手順やトラブルを避ける3つのポイントも解説

人事異動に適した時期があるのをご存じでしょうか。人事異動の時期は特に決められていませんが、決算月に合わせて実施されるのが一般的です。本記事では、人事異動の時期や実施のポイントまで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


効果的な人事異動を行うための適切な時期や、タイミングがわからずお困りではないでしょうか。人事異動を行うべき時期は特に決められているわけではありませんが、多くの会社では決算月に実施される傾向にあります。 


有意義な人員配置をするためにも、適切な時期の人事異動の把握は必要です。そこで本記事では、人事異動に適した時期から、手順やトラブルを避けるポイントまで詳しく解説します。


人事異動の適切な時期やタイミングがわかり、適材適所の実現に近づきますので、ぜひ最後までお読みください。


人事異動の適切な時期は決算月


人事異動の多くは決算月に行われています。なぜなら、決算月は事業戦略を組み直すタイミングのため、同時に配置転換を検討しやすいからです。


たとえば、新しい事業を始めたり業務を拡大したりするときには、人事異動で組織再編を行う必要が出てきます。そのため、次年度の目標達成に向け動き出す決算月での人事異動が適切といえます。


実際の着任時期は、決算月が3月であれば4月1日です。経営の軌道を修正する機会である半期決算も異動が多い時期であり、9月であれば10月1日着任です。


とはいえ、他の月に実施をしても問題ありません。人事異動の時期にルールを定めている企業は少なく、組織を組み直すタイミングは自由に決められます。


人事異動のサイクルは3~5年が多い


人事異動は、3~5年周期で行われているケースが多い傾向があります。なぜなら、ジョブ・ローテーションの考えを採用している企業の割合が高いからです。


ジョブ・ローテーションとは短い周期に異動を繰りかえし、社員にさまざまな経験・知見を身に付けさせる人事戦略のことです。3~5年周期の人事異動には、以下のようなメリットがあります。


  • 業務の透明性確保
  • モチベーション維持
  • 社員の適性発見


ほかにも、幹部候補の育成は3~5年周期の人事異動に適しています。たとえば、新人社員からキャリア形成を図れば、企業のさまざまな部署に精通している管理職の育成が可能です。


ただし、同じ部署で長く学べないため、専門性を磨きにくいというデメリットが存在します。


人事異動の基本手順5ステップ


適切な人事異動を行うためには、基本となる5つの手順を踏む必要があります。社員が前向きに配置変更をとらえ、新しい組織で力を発揮してもらうためにも、人事異動に必要な各ステップについて学んでいきましょう。


目的の設定


目的を明確にしなければ、正しい人事異動はおこなえません。根拠のない人事異動だと、適材適所の配置ができず企業の利益につながらないためです。目的には、主に以下のようなものがあります。

  • 力を入れる部署の増員
  • 組織全体の活性化
  • 不正の防止


社員に納得性のある異動理由を説明するためにも、初めに目的をはっきりさせましょう。目的の設定方法には、各部署へのヒアリングが有効です。組織が抱えている問題や、人材の要望について聞き取りをすれば、見えていなかった目的がはっきりしてきます。 

対象者の決定


人事評価や私生活など、あらゆる社員データを集めて異動対象者を決定します。候補者を選ぶ途中でも、初めに設定した目的に沿っている人材かを都度確認しましょう。軸を見失ったままでは、新しい職場と社員のミスマッチが起こります。


異動対象になるケースが多い社員は、以下の通りです。


  • 昇任・昇格の可能性が高くなっている
  • モチベーションが低くなっている
  • 現在の仕事の適性が不足している


いずれの社員も、異動により新しい環境で力を発揮し、パフォーマンスが向上する可能性を持っています。


内示


内示は、異動の2週間~1ヶ月前までにするのが適切です。社員の心の準備やスムーズな引き継ぎのためにも、直前に伝えるのは避けるべきです。


また、あくまでも内示のため、社員がすぐに承諾をしてくれない可能性も考えられます。社員が異動に納得しない場合は説得を繰り返す必要があり、想定より時間がかかるかもしれません。


配置命令に納得してもらうには、理由や異動先について説明するのが有効です。具体的に説明すれば、社員の不安を少しでも減らせるでしょう。


異動の理由について詳しく知りたい方は、別記事「人事異動理由」をあわせてご確認ください。


辞令


辞令とは、対象者へ正式に異動の通知をする文書を出すことです。社員より内示の承諾を得られたら、すみやかに交付しましょう。


企業によっては、周知目的で辞令を社内にて公表しています。公表方法には、事務所内での掲示や、社内システム内での通知などがあります。


フォロー


人事異動後には、フォロー体制まで整える必要があります。なぜなら、異動した社員は、新しい業務や人間関係で精神が乱れている可能性があるからです。ネガティブなままの人事異動では、社員の成長につながりません。

有効なフォロー方法の1つに、定期的な面談の実施があります。不安なことがあれば相談に乗るだけで社員に安心を与えられ、退職防止にもつながります。

適切な人事異動で社員が得られるメリット3選


企業の利益拡大のためには、人事異動を有効活用し、社員を成長させる必要があります。適切な人事異動で社員が得られるメリットを知り、人事計画の策定に役立てましょう。


モチベーションの向上


同じ業務ばかりをこなしていると、マンネリ化してモチベーションが低下する社員が出てきます。異動をきっかけにすれば、モチベーションの低かった社員が意欲を持って働ける可能性があります。

社員の業務への意識が向上すると、仕事の生産性もアップし、結果的に業務拡大にもつながるでしょう。

新たなスキルの獲得


社員が今とは違う業務やポジションをこなせば、新たなスキル獲得が期待できます。幅広い技能習得により、社員の市場価値向上だけでなく、経験をかけ合わせた新しい発想を生むきっかけにもなります。

適切な人事異動を繰り返しスキルアップした社員であれば、多角的な視点を活用してハイレベルな業務をこなすことも可能です。

人脈の形成


人事異動により社内の人脈形成ができている社員は、仕事を円滑に進められます。問題に直面した際に、他部署の力を借りてスムーズに解決しやすくなるためです。

企業としても、社員の人脈形成が実現すれば組織全体の活性化が期待できます。部署間の連携ができていれば、それぞれ得た知見や業務効率化方法を積極的に共有する文化が生まれるでしょう。

適材適所の人事異動を実現するコツ


いくら人事異動の時期を考えて実施しても、適切な配置ができなくては業務拡大につながりません。この章では、人事制度やシステムを見直して、適材適所の人事異動を実現するコツを解説します。

自己申告制度を活用する


自己申告制度を活用すれば、社員の意欲を考慮した人事異動ができます。自己申告制度とは、社員自ら異動希望を出せるしくみのことです。異動したい部署やその理由、具体的なやりたい仕事を申告してもらい、人事異動の参考にします。

一般的な人事異動は、社員からすると一方的に命令されるものであり、不満が出やすい傾向にあります。社員の意志を尊重すれば、業務への意欲向上や、退職防止にもつながるでしょう。

社員の情報を可視化する


人事異動の成功には、社員の情報をどれだけ活用できるかが大事です。なぜなら、目に見える成果だけでなく、私生活の状況も考慮して初めて適切な人事異動ができるからです。

社員の人事情報や評価データなどがさまざまな場所に散らばっていると、正しい情報を集めきれません。規模の大きい企業の場合、システムの導入を検討しましょう。

タレントパレットであれば、人事異動に関わる情報を一括で管理・閲覧でき、社員の分析に役立ちます。配置計画に必要な社員の情報を可視化し、適切な人事異動を行いたい方は、ご気軽に資料請求してください。

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人事異動のトラブルを避ける3つのポイント


人事異動では、社員が内容に納得いかず拒否してくる可能性があります。

この章では、人事異動のトラブルを避けるために必要な3つのポイントについて解説します。


規定の有無を確認する


就業規則や雇用契約書に、企業が社員に人事異動を命令できる旨の記載があるかを確認しましょう。なぜなら、命令の根拠がなければ拒否を受け入れる必要があるためです。

厚生労働省が用意しているモデル就業規則には、人事異動を社員が正当な理由なく拒否できない旨が記載してあります。もし人事異動に関する規定を定めていない場合は、モデル就業規則を参考にしすみやかに変更手続きをしましょう。

参照元:厚生労働省「モデル就業規則」

就業規則を変更する場合には、労働組合や労働者の代表より内容変更の承諾が必要です。さらに、変更内容を労働基準監督署に届け出をしなければなりません。

ルールの変更には労力がかかるため、これから規則を作るのであれば、人事異動に関する項目は盛り込んでおくべきでしょう。

相手の事情に配慮する


人事異動を命令するときには、対象者の私生活に寄り添う姿勢が必要です。たとえば、病気や家族の介護などの事情がある場合、命令を取り下げる必要が出てくるかもしれません。

なぜなら、人事異動では社員の不利益が大きい場合は、拒否されれば受け入れる必要があるためです。事情を無視し、従わなかった社員を懲戒解雇すると、訴えられてしまう可能性があります。

実際に不利益の大きさが認められ、裁判で人事異動の拒否が受け入れられたケースが存在します。

参照元:公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会 明治図書出版事件


社員に異動できない事情がある場合は、企業として配慮できる部分を提示しましょう。配慮できる部分とは、社宅の用意や交通費の支給などが挙げられます。不利益が小さくなれば、それだけ社員の納得につながります。

不当な人事でないかを検討する


不当な人事とは、企業が社員に悪意のある理由で人事異動を行うことです。たとえば、退職させる目的で社員に見合わない部署へ異動させるようなケースは不当だといえます。悪意があると判断された場合、人事異動は認められません。


実際の判例でも、命令が不当な動機であれば、権利濫用となり異動が無効とされています。フジシール事件では、自発的な退職を勧める退職勧奨に応じない社員を見合わない職場へ異動したとして、不当との判決が出ています。


参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構 配転の意義
参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構 フジシール事件

人事異動の拒否について詳しく知りたい方は、別記事「人事異動拒否」をあわせてご確認ください。

まとめ


人事異動は、社員にとって大きな転換点となる可能性があります。トラブルを避けるためにも社員の事情を考慮したり、異動で得られるメリットを提示したりする必要があります。そのため、企業は人事異動の時期を見極めるとともに、最適な人員配置をしなければなりません。

タレントパレットなら、散らばっている社員データを統合し、システム内で異動シミュレーションを行えます。社員の仕事への思いや、私生活の情報を吸い上げるしくみも整えられるため、人事異動のミスマッチを防げます。

最適な人事異動により生産性を高め、事業規模の拡大をしたい経営者の方は、まずはご気軽に資料請求してください。

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