こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「人材開発支援助成金はいくらもらえる?」「支給申請の方法は?」このようなお悩みを抱えていないでしょうか。
人材開発支援助成金の支給対象は、訓練にかかる経費や訓練中の人件費の一部です。助成金を活用することで、効果的な人材育成を実施しつつコストを抑えられるため、社員のスキルアップや技能習得を積極的に行えます。
そこで本記事では、助成金の仕組みや金額、申請手順まで詳しく解説します。効果的な人材育成により事業を成長させたい方は、ぜひ最後までお読みください。
人材開発支援助成金とは人材育成や社員のスキルアップに使える制度
人材開発支援助成金は、企業の計画的な人材育成を支援し、訓練期間中の賃金や訓練にかかる費用を一部助成する制度です。助成対象は中小企業事業主で、9つのコースに分かれています。
制度の利用には「職業能力開発推進者」の選任や「事業内職業能力開発計画」の策定が必要です。また、社員への周知も求められているなど、利用にあたってはいくつかの条件が定められています。
人材開発支援助成金はいくらもらえるのか解説
人材開発支援助成金の助成額は企業の規模やコースごとに異なり、経費助成や賃金助成など、複数の助成で構成されています。一例を挙げると、以下の表のようになります。
【特定訓練コース】
訓練の種類 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間当たり) |
---|---|---|
OFF-JT | 45%(30%) | 780円(380円) |
※()は中小企業以外
【一般訓練コース】
訓練の種類 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間当たり) |
---|---|---|
OFF-JT | 30% | 380円 |
※()は中小企業以外
経費助成や賃金助成には、それぞれ1人当たりの限度額が決められています。1事業所当たりの年間支給額の上限は以下の通りです。
【年間支給額の上限】
特定訓練コースを含む場合 | 1,000万円 | 賃金助成(1人1時間当たり) |
---|---|---|
一般訓練コースのみ | 500万円 | 380円 |
支援助成金の対象となる9つのコース
人材開発支援助成金は9つのコースに分かれており、助成内容や受給条件が異なります。コースの詳しい内容を確認していきましょう。
特定訓練コース
10時間以上の特定の訓練、認定を受けたOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練が助成されるコースです。主な助成メニューは、以下の4つです。
- 労働生産性向上訓練(OFF-JT)
- 若年人材育成訓練
- 熟練技能育成・承継訓練
- 認定実習併用職業訓練
訓練にかかる経費や、訓練中の賃金の一部が助成されます。助成額は前述した通り、中小企業で45%、それ以外で30%です。
一般訓練コース
特定訓練コース以外で、専門的な知識や技能習得を目的とした職業訓練を実施した場合に助成が受けられるコースです。基本要件は、次の2つです。
- OFF-JT訓練である
- 訓練時間数が20時間以上
令和4年度から、通信制による訓練やeラーニングも助成対象になっています。助成額は経費助成が30%、賃金助成が380円です。
教育訓練休暇等付与コース
社員が休暇を取得しながら、自発的に職業能力開発を受ける機会を確保し、支援する助成コースです。対象となる制度は、3つあります。
- 教育訓練休暇制度
- 教育訓練短時間勤務等制度
- 長期教育訓練休暇制度
助成額は制度ごとに異なり、前2つの制度は経費助成20〜30万円のみです。一方、長期教育訓練休暇制度は、賃金助成6,000円と経費助成20万円の2つが利用できます。
特別育成訓練コース
アルバイトやパートなど有期契約労働者の訓練に使える助成コースです。正規雇用労働者への転換をめざす訓練、または処遇改善のために実施する訓練が対象となります。
具体的な対象コースは次の2つです。
- 一般職業訓練
- 有期実習型訓練
特別育成訓練コースは、育児休業中の訓練やキャリア形成訓練にも利用できます。助成額はOFF-JT分が賃金助成760円(大企業は475円)、経費助成が60〜70%です。また、OJT実施助成は1人1コース当たり10万円(大企業9万円)です。
経費助成の1人当たりの限度額は訓練時間によって異なり、15〜50万円(大企業は10〜30万円)となっています。
人への投資促進コース
人材投資を加速化するために設けられた新たなコースで、助成対象は以下の5つです。
- 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練
- 定額制訓練
- 自発的職業能力開発訓練
- 長期教育訓練休暇等制度
正規だけでなく非正規雇用者も対象で、eラーニングや通信制での訓練も助成対象になります。助成率はコースによって異なりますが、30〜75%(大企業30〜60%)、賃金助成は760〜960円(大企業380〜480円)です。
事業展開等リスキリング支援コース
新事業の立ち上げなど、新分野の知識や技能習得のための訓練を助成するコースです。令和4年から新たに創設され、企業の発展や業務の効率化を進めたいときに利用できます。
企業内のデジタル・トランスフォーメーション化や、グリーン・カーボンニュートラル化を進めるときにも活用できるのがポイントです。助成率は75%(大企業60%)、賃金助成は960円(大企業480円)です。
建設労働者認定訓練コース
建設労働者の技能向上を目的とした訓練を実施した場合に、助成が受けられるコースです。認定職業訓練や指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合や、建設労働者に対して指定の訓練を受講させた場合に助成されます。
助成の対象となる実習は複数あり、対象者にも規定があるため注意しましょう。賃金助成・経費助成の2つの助成が受けられ、経費助成は対象経費の1/6、1人1日当たりの賃金助成は3800円となっています。
建設労働者技能実習コース
若年者の育成や熟練技能の維持・向上のために設けられたコースで、キャリアに応じた技能実習を受講させた場合に助成されます。所定の労働時間内に受講させ、通常より多く賃金を支払った場合のみ対象です。
建設工事の作業に関連する実習や、技能継承にかかる指導方法の向上のための講習まで、さまざまな訓練が対象となっています。経費助成は20人以下の中小建設事業主の場合賃金の3/4、賃金助成は8550円です。
障害者職業能力開発コース
障害者への教育訓練を継続的に実施するため、施設の設置・運営を行うときに使えるコースです。職業訓練を行うための設備の設置や更新費用、運営費用が助成されます。
助成対象となるのは、障害者や高次脳機能障害、指定の難治性疾患を有する者で、助成額は費用の3/4または運営費の一部です。
人材開発支援助成金を利用する流れ
人材開発支援助成金を使って人材育成をする場合は、事前準備が必須となります。人材開発支援助成金の申請から受給までの流れは、以下の通りです。
- 職業能力開発計画を作成する
- 訓練計画書を管轄労働局に提出する
- 訓練計画書に基づき訓練を実施する
- 訓練終了から2ヶ月以内に支給申請書を労働局に提出する
- 審査後、助成金支給が決定される
申請に必要な書類は、訓練を社内で行う事業内訓練か、社外で実施する事業外訓練かで異なるため注意しましょう。訓練にかかる費用は一旦企業側で建て替え、支払っておく必要があります。
審査終了から受給完了までは約2週間ほどで、助成金は指定口座に入金されます。
人材開発支援助成金の3つのメリット
企業にとって、助成金を受けながら人材育成を行うメリットは3つあります。詳しい内容を見ていきましょう。
人材育成のための費用を抑えられる
人材開発支援助成金を使うことで、人材育成にかかる費用が抑えられ、企業にかかる負担が軽くなります。コストが理由で人材育成を行えていなかった場合は、適正な人材育成を始める大きなきっかけになるでしょう。
助成金を活用すれば、これまでよりも積極的に人材育成に取り組め、企業の成長に繋げられるはずです。
社員のモチベーションを高められる
人材開発支援助成金のコースには、正規雇用への転換を支援するコースもあり、社員のモチベーションアップに繋げられます。また、助成コースが複数用意されているため、さまざまな育成に取り組め、社員のキャリアに応じたサポートができるのもメリットです。
社員のスキルアップは個人のモチベーションアップだけでなく、企業の底上げにも繋がります。人材育成は社員だけでなく、企業側にもメリットがあると言えるでしょう。
社員の生産性向上が期待できる
助成金を利用して人材育成を行うことで、専門知識やスキルの習得ができ、社員の生産性向上が期待できます。人材育成に積極的に取り組んでいることが周知されれば、社員もスキルアップに前向きになり、双方ともにメリットを感じられるでしょう。
優秀な人材を育成・維持できれば、企業の業績にも良い影響を与えます。企業の業績が上がれば評価もあがり、優秀な人材を獲得しやすくなるため、企業の成長をさらに後押しできるでしょう。
人材開発支援助成金の2つのデメリット
助成金を使いながら人材育成を行うことで、企業はコストを抑えながら必要な人材を育成できます。しかし、助成金活用にはデメリットもあるため詳しく見ていきましょう。
申請手続きや条件が複雑
第一のデメリットは、申請手続きが複雑で必要書類も多いため、助成を受けるまでの手続き等に時間がかかることです。実施年度やコースによって申請の要件や条件が細かく異なるため、把握が難しく利用しづらい点は否めません。
コストを抑えて人材育成ができるとはいえ、申請手続きを行うための手間や時間が必要となります。人手不足が深刻な企業などは、利用を断念せざるを得ないケースもあるでしょう。
費用の立て替えが発生する
人材開発支援助成金は事業終了後に支払われる仕組みのため、人材育成にかかる費用を一旦企業側が立て替えなければなりません。そのため、育成にかかる費用を支払えるだけの余力がないと利用が難しい点もデメリットです。
人材育成に取り組めない企業がすべて使えるとは限らず、ある程度資金に余力のある企業が対象となる助成金だと言えるでしょう。
人材開発支援助成金を利用するときの3つの注意点
人材開発支援助成金を使って人材育成を行うときは、確実に助成金を受け取るために、注意しなければならないことが複数あります。具体的な注意点を確認していきましょう。
利用条件を詳しく確認する
人材開発支援助成金の各コースは、それぞれ利用できる条件が異なります。事前に利用したい訓練コースの条件について、詳しい条件を確認しておきましょう。
例えば、特定訓練コースの場合は厚生労働大臣の認定が必要なため、認定を受けてから訓練計画書を出さなければなりません。また、職業能力開発推進者の選任も必須です。年度が変わると条件が変わることがあるため、年度をまたいで検討する場合は、最新の条件を再度確認する必要があります。
助成金を受け取るためには、要件に沿った訓練が実施できるか細かく確認してから人材育成計画を立てると、スムーズに進められるでしょう。
申請スケジュールを把握する
人材開発支援助成金を使って人材育成を行う場合、訓練計画書の作成や受給申請のスケジュールを事前に確認しておくことが大切です。期限内に行わないと、助成金が受給できなくなってしまうためです。
特に気を付けたい日付は以下の2つです。
- 訓練計画書→訓練開始の1カ月前までに提出
- 助成金支給申請書→訓練終了日から2ヶ月以内に行う
どちらも申請は管轄の労働局となり、厚生労働省ではないので注意しましょう。また、訓練計画書や支給申請書などは、様式や必要書類を確認してから準備を始めます。期限を確実に守るためにも、余裕を持って取り組むことが大切です。
受講にかかる費用を準備する
人材開発支援助成金は受講終了後、審査を経てからの受給となるため、受講費用の建て替えが発生します。事前に受講にかかる費用を計算し、準備しておかなければ、費用が足りずに計画を中止しなければならなくなってしまう可能性があります。
受給申請から助成金を受け取るまでに数ヶ月、長い場合は1年半ほどかかる場合もあるため、事業に影響がないように必要な資金を準備しなければなりません。受け取りが遅れても会社に影響が及ばないよう、余裕を持って準備をしておくと良いでしょう。
人事業務の効率化、データ活用をするならタレントマネジメントシステムの導入が必須
人事業務をDX化することで、社員データの一元化・人材検索・人事評価・配置検討などの幅広い業務を効率化できるようになります。また、人材育成・最適配置・社員パフォーマンスの最大化など、組織力向上を目的とした一歩先のタレントマネジメントまで実現が可能です。
また、タレントマネジメントシステムを導入すれば、社員データを集約し人事評価のペーパーレス化や異動シミュレーション、ハイパフォーマー分析など、高度な施策が実施できます。タレントマネジメントを取り入れて、自社のリソースを最大限に活用しましょう。
人材開発支援助成金を使って人材育成をスタートさせよう
人材開発支援助成金は、中小企業がコストを抑えて人材育成を行うことができ、メリットの大きい制度です。申請に時間や手間がかかる、費用の立て替えが発生するなどのデメリットもあるが、上手に活用することでコストを抑えて人材育成に取り組めます。
特に費用面で人材育成が後回しになっている場合や、助成金を使って育成を進めたいと考えているなら、助成金を利用できないか一度検討してみると良いでしょう。
また、自社の人材育成を効率良く進めていきたいなら、タレントパレットを活用して計画的に行うことをおすすめします。社員1人ひとりに最適な育成計画を作ることができ、育成状況や成長の変化もモニタリングできます。
計画的な育成を行うことで最適な人材配置ができ、企業の成長に大きな影響を与えられます。結果的にコストを抑えた人材育成ができるようになるため、ぜひ導入を検討してみてください。