組織図とは、企業や組織の内部構造を示す図式のことです。組織図を作成すると、コミュニケーションの円滑化をはじめとする複数のメリットを得られます。ただし、組織図を作成する際は注意も必要です。本記事では、組織図の種類やメリット・デメリットとともに、組織図の作り方を解説します。作成に役立つツールや注意点などもまとめているため、ぜひ参考にしてください。
組織図とは?
組織図は、企業や組織の内部構造を視覚的に表現した図で、部署の配置や社員の氏名、役職などの情報が記載されます。記載内容は用途や目的に応じて異なり、顔写真や連絡先などの詳細情報が含まれることもありますが、状況に応じた判断が必要です。
また、組織図は情報の過不足を避け、必要な内容を的確に示すことが求められます。たとえば、新入社員向けに簡潔な組織図を用意する一方で、プロジェクト管理用には詳細な情報を盛り込むことが有効です。どのような情報を記載する場合も、指揮命令系統を明確に示さなければなりません。
社内向け・社外向け組織図の違い
組織図には、社内向けと社外向けがあります。それぞれの違いについて、以下で詳しく解説するため、参考にしてください。
社内向け組織図
社内向け組織図は、自社で働いている社員に見せるために作成します。社内向け組織図を確認すれば、社員が所属する部署の役割や指示体系などを一目で理解することが可能です。部署やチームの名称だけでなく、所属する社員の名前、内線番号、担当業務、メールアドレスなどの細かい情報を記載する場合もあります。社内向け組織図があれば、部署を超えた連携もスムーズです。
社外向け組織図
社外向け組織図は、自社以外の相手に社内の体制を示す目的で作成します。具体的には、株主・投資家・取引先などを想定しているケースが一般的です。多くの場合、組織構造を簡単に示すために作成し、部署やチーム名のみを記載します。社外に公開するため、社員の名前や連絡先などの個人情報は基本的に記載しません。
組織図の種類・特徴
組織図にはさまざまな種類があるため、以下ではそれぞれの特徴を解説します。
ピラミッド型(階層型)
ピラミッド型(階層型)の組織図は、社長や取締役会といった企業のトップを頂点にし、下の方に枝分かれしていく形式です。企業のトップの下に、部長、課長、係長などの順で役職が続くケースが多くなっています。部門ごとに組織図を作成する場合、企業のトップ以下の順序は部門、部署、チームなどです。
ピラミッド型(階層型)の組織図を作成すれば、社内の上下関係を一目で把握できます。また、どの部署の誰からどのような流れで情報が伝達されるかについても明確です。情報伝達のプロセスを確認するうえでも役に立ちます。
フラット型
フラット型組織図は、階層を最小限に抑えた構造で、通常は社長、マネージャー、一般社員の3階層で構成されます。この形式は、役職者や社員数が少ない企業や組織に適しており、情報伝達の迅速化が期待できます。
また、意思決定までのプロセスが簡略化されるため、柔軟で迅速な対応が可能です。一方で、社員1人ひとりの責任範囲が広がることや、管理者の負担が増える点には注意が必要です。組織規模や業務内容に応じて、適切なバランスを考慮して活用しましょう。
マトリックス型
マトリックス型の組織図は、縦軸と横軸に複数の要素を盛り込んだ形式です。たとえば、縦軸をプロジェクトの種類、横軸を職務とし、それぞれをクロスオーバーさせて組織の構造を示します。
マトリックス型であれば、イノベーションが起こりやすいことが特徴です。ただし、示す情報が複雑になるため、指揮命令系統がわかりにくくなる恐れもあります。マトリックス型をうまく活用するには、あらかじめ共通認識を持つことが大切です。単に組織図を作成するだけでなく、適切に利用するための工夫を取り入れましょう。
最適な組織図は体制により異なる
組織図の代表的な種類は、ピラミッド型(階層型)・フラット型・マトリックス型の3つです。ただし、目的や組織の状況によって最適な形式は異なります。組織図を有効活用するには、自社に合う形式を選択することが大切です。
たとえば、役職者や社員数が少ないなら、フラット型の組織図が向いています。一方、組織の拡大を目指している場合は、将来のビジョンを見据えたうえで組織図の種類を選ぶべきです。意義のある組織図を作成するためには、自社に適した種類を見極める必要があります。
組織図を作る5つのメリット
組織図を作成すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で具体的に解説します。
自身の立ち位置や関連性を認識しやすい
組織図を作成すると内部構造を可視化でき、社内における立ち位置を客観的に認識できます。また、自分が所属している部署と他部署の関連性も把握しやすいです。
特に、事業を複数展開している企業や支社が多い企業などが組織図を作成すれば、社員や部署の関係を簡単に理解できるようになります。よりスムーズな連携を実現可能です。また、状況に応じて適切な相手に連絡しやすくなるため、社員同士のコミュニケーションを活性化する効果も期待できます。
指揮系統を明確にできる
組織図の作成により、指揮命令系統を明らかにすることも可能です。組織図があれば責任の所在を明らかにでき、手間をかけずに報告や相談をすべき相手がわかります。たとえ社内でトラブルが発生してもスムーズに対応できるでしょう。
また、組織図があると決裁権についても簡単に把握できます。円滑な情報伝達を実現でき、業務効率化も実現可能です。情報伝達のミスや無駄も生じにくくなります。
人員過多や不足に気づける
役職や社員の氏名を記載した組織図を作成すれば、社内の体制を見直すうえでも便利です。組織図を見るだけで各部署に所属している社員数を確認できます。どの部署に何人の社員がいるか一目でチェックできるため、人員の過不足にも気がつきやすいでしょう。人材配置の見直しもスムーズに行えます。配置転換や新しい人材の採用などを検討する作業は煩雑になりやすいものの、組織図があれば効率よく進められるでしょう。
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部署編成を最適化しやすくなる
組織図を活用すると組織全体を俯瞰できるため、部署の編成の見直しも容易です。たとえば、組織の成長に応じて部署を新設した結果、似た部署が複数存在するパターンも少なくありません。組織図を活用すれば、そのような組織の統合もスムーズに行えます。
また、組織図を作成しておけば、部署の新設や統合に取り組む際に活用することも可能です。部署間で業務の負担に偏りがある場合、負担の大きい部署の仕事を新設した部署に振り分けられます。
健全性アピールになる
社外向けの組織図も作成すれば、自社の健全性をアピールするために役立ちます。株主や取引先からの評価につながり、より有利にビジネスを進めやすくなるでしょう。
たとえば、社内に監査役・監査等委員会を設置している場合、組織図に盛り込んで示せば、社内の不正をチェックする体制が整っているとアピールできます。上場企業のなかには責任の所在を明らかにするために、社外向けの組織図を公開しているところもあります。
組織図を作るデメリット
組織図を作る際はデメリットに注意が必要です。具体的にどのようなデメリットがあるか解説します。
作成・管理にリソースが必要な場合もある
組織図を活用するうえでは、組織図を常に最新の状態に保つ必要があります。内容が古い組織図では正確な状況を確認できず、役に立ちません。組織図を手入力で作成している場合、作成時だけでなく更新にも手間がかかります。
ヒューマンエラーにより間違いが生じる可能性もあり、注意して作成しなければなりません。また、組織図の管理にも社内のリソースを割く必要があるため、運用方法についてよく検討しましょう。
正しく機能しないと業務が滞る
正しい情報が記載された組織図なら、業務を円滑にするために役立ちます。しかし、情報に誤りがあったり、古い情報が更新されていなかったりすれば、本来の組織図のメリットを得られません。修正や対応の手間が余計にかかり、かえって業務効率を低下させる原因になる可能性もあります。
組織図には正確な情報を記載し、組織の実態と乖離がないように維持することが重要です。組織図の内容に誤りがあると混乱を招くため、注意しましょう。
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組織図の作り方
組織図はどのように作成すればよいのか、具体的に解説します。
1:目的の明確化
組織図を作成する際は、まずその目的を明確にすることが重要です。たとえば、指揮命令系統の明確化や社内コミュニケーションの促進などが考えられます。目的を具体的に定めることで、関係者間の認識のズレを防ぎ、効果的な組織図の作成が可能となります。また、目的の設定により、社内向けと社外向けのどちらを作成すべきかも明らかになります。
2:対象範囲の決定
目的を明らかにしたあとは、組織図に記載する対象範囲を決めましょう。組織図の対象範囲は、社内全体・部内・チームなど企業によってさまざまです。目的に合わせ、組織図の最適な対象範囲を決定する必要があります。
あらかじめ対象範囲を絞り込むと、組織図に記載すべき情報をスムーズに収集することが可能です。後から不足に気づいて情報収集をやり直したり、必要以上の情報を集めたりしなくて済むため、組織図の作成にかかる手間や時間を最小限に抑えられます。
3:情報収集
組織図の対象範囲に合わせて必要な情報を集めましょう。すでに述べているとおり、組織図に記載する情報は企業によって異なります。たとえば、部署やチームの名称、社員の名前、内線番号、担当業務、メールアドレスなどです。
情報収集においては、メールやチャットツールなどを活用すると作業が効率よく進みます。社員が多い企業の場合、リスト化して管理することで情報収集の進捗を把握しやすいでしょう。対象範囲が特に広いなら、部署ごとに情報収集の担当者を決めるとより効率的です。
4:組織図の形式を選定
先述したとおり、組織図の形式としては、ピラミッド型(階層型)・フラット型・マトリックス型があります。それぞれ特徴が異なるため、違いを事前によく理解しておきましょう。また、形式を選ぶ際は、対象範囲や自社の体制を考慮することが大切です。
なお、将来的に組織の拡大を予定しているなら、拡大した後の組織体制に合うかどうかも考慮しつつ、慎重に形式を選択する必要があります。
5:組織図の作成
情報収集や形式の選定などの準備が整ったら、組織図を実際に作成しましょう。選択した組織図の形式に対し、集めた情報を当てはめていく作業です。組織図を作成するときは、事前にルールを定めておく必要があります。
たとえば、同じ等級の社員を複数人羅列する場合は、入社年次順や五十音順で記載するなど方法がよいでしょう。記載方法に明確なルールがあれば、統一感のある組織図を作成できるだけでなく、完成した組織図を活用する際も容易に内容を把握できます。
6:レイアウトの調整
組織図を活用しやすくするには、レイアウトにも配慮しましょう。組織図のレイアウトが見やすければ、誰でも内容を瞬時に理解できるからです。
たとえば、部署ごとにフォントを変えたり、色を分けたりすると見やすくなります。ただし、やりすぎにならないよう注意しましょう。フォントの種類や色が多すぎると、かえって見にくくなります。レイアウトの調整においては、組織図全体の一貫性を重視すべきです。
7:複数名によるチェック後、完成
レイアウトの調整が済んだら、組織図の内容に誤りがないかチェックしましょう。担当者が1人で見返すだけでなく、複数名で確認することが大切です。チェックに携わる人数が多いほど、間違いを発見できる可能性が高くなります。
組織図を共有する際はPDF化したり、権限を閲覧のみに限定したりしましょう。担当者以外が書き換えられる状態では、手違いにより誤った情報に更新される恐れがあります。
8:定期的な更新・管理
組織図を作成した後は、常に最新の情報を保つ必要があります。そのためには継続的に組織図を管理し、状況に応じて更新しなければなりません。組織体制に変更が生じた場合、誰がどのタイミングで組織図を変更するか明らかにしておきましょう。
近年は、クラウド上で組織図を変更できるツールやシステムもあり、導入する企業も増えています。ただし、共同編集の機能があるため、編集権限の付与には注意が必要です。担当者以外が誤った情報を更新するミスが生じないように気をつけましょう。
組織図の作成に役立つツール4選
組織図はさまざまなツールにより作成可能です。ここでは、役立つツールを厳選して紹介します。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、Googleが提供する表計算ソフトです。グラフを生成する機能を活用すれば無料で組織図も作成できます。オンライン上で利用でき、離れた場所にいる複数人が同時に作業することも可能です。閲覧のみの権限も設定できるため、担当者以外にチェックを任せる際も安心して利用できます。また、Googleスプレッドシート上で人事情報の表を事前に作成している場合、組織図に情報を簡単に反映可能です。
作成手順
Googleスプレッドシートでは、グラフの種類の1つとして組織図が用意されています。組織図を作成する際の手順は以下のとおりです。
1.A列にすべての部署名、チーム名、氏名を入力する
2.B列に、A列の内容を紐づけるための場所を入力する
3.組織図に含める対象範囲を選択し、挿入タブの「グラフ」をクリックする
4.グラフの種類を「その他」の「組織図」に設定する
5.色や文字サイズなどを調整する
Microsoft OfficeのSmartArt機能
Microsoft OfficeのSmartArt機能でも、組織図の作成が可能です。SmartArt機能は、Microsoftが提供しているWord、Excel、PowerPointなどのOfficeソフトに搭載されています。テンプレートが用意されており、必要な情報を入力するだけで組織図の作成が可能です。
また、図形に文字を入れたり、色やデザインを変更したりできます。テンプレートを活用しつつ、オリジナルの組織図を作成できるツールです。
作成手順(Excelの場合)
Microsoft OfficeのSmartArt機能を利用し、組織図を作成するには以下の手順を踏みます。
1.挿入タブ内にある図タブを開き「SmartArt」をクリックする
2.階層構造から、作成したい組織図のテンプレートを選んで「OK」をクリックする
3.表示された各ボックスに部署名、チーム名、氏名などの情報を入力する
4.ホームまたはもしくはSmartArtのデザインのタブを選び、色や文字のサイズなどを調整する
Canva
Canvaは、オンライン上でデザインコンテンツを無料で作成できるツールです。組織図に限らず豊富なテンプレートが用意されており、テキストや画像などを自由に追加できます。デザイン性に優れたテンプレートも多数あるため、レイアウトにこだわりたい場合にもおすすめです。
スプレッドシートと同様、離れた場所にいる複数人が同時に作業できます。役割分担をして組織図を作成したいときも便利です。
作成手順
Canva は簡単な操作のみで組織図を作成できます。Canvaを使って組織図を作成する際の手順は以下のとおりです。
1.「組織図」と検索し、テンプレートを選択する
2.各ボックス内に部署名、チーム名、氏名などの情報を入力する
3.ボックスを追加する場合、画面の左側にある「素材」をクリックして図形や線を選択する
4.文字の大きさや色などを調整する
人材管理システム
人材管理システムは、人材管理を効率よく適切に進めるためのツールです。たとえば、社員の名簿管理の業務を自動化できます。多くの人材管理システムには組織図の作成機能が備わっており、既存の組織や人材情報を活用して簡単に組織図を生成できます。手動での作成作業が不要となり、担当者の負担を大幅に軽減できるため、他の業務に注力することが可能です。なお、タレントマネジメントシステムなら人材管理や組織図の作成以外に、各社員の能力や状況についてより細かく管理できます。
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組織図を作る際の注意点
組織図を作る場合の注意点について、以下で詳しく解説します。
組織改編に対応できる仕様にする
組織図は、基本的に現在の組織体制をもとに作成します。ただし、将来的に起こりうる組織改編も見据えておくことが大切です。組織図のレイアウトに余裕がない場合、組織改編後に情報を更新できない恐れがあります。改めて組織図を作り直すには手間がかかるため、注意が必要です。組織図を作成する際はレイアウトに余裕を残し、後からでも編集しやすくしておきましょう。
仮に大幅な組織改編の予定がないとしても、どの企業でも人員が増加する可能性はあります。組織がどのように変化しても対応できるよう、柔軟性のある組織図を作成してください。
更新担当・タイミングを決めておく
組織図は、一度作るだけで終わるケースはほとんどありません。すでに触れているとおり、社員の増加や組織改編に合わせて内容を修正する必要があります。そのため、組織図の更新に対応する担当者や、更新のタイミングについても決めておきましょう。
担当者やタイミングが決まっていない場合、組織図の作成後に更新が行われない可能性もあります。組織図は常に最新の状態に保つべきであるため、更新については社内全体で共通の認識を持つことが重要です。
まとめ
組織図は、社内の体制を分かりやすく示すために役立ちます。組織図を作ることで、組織の状況が明らかになるだけでなく、人員の過不足にいち早く気づいたり、健全性を社外にアピールしたりすることも可能です。また、組織図の作成に役立つツールも複数あります。特に、人材管理システムなら、もともと管理している情報に基づいて手間なく組織図を作成できて便利です。
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