こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「自社の離職率が同業他社より高いのでは」と不安に感じている方が、いらっしゃるのではないでしょうか。離職率を正しく把握せずに高いまま放置すると、採用コストが増加したり企業イメージが悪化したりします。自社の離職率を計算し、産業平均や競合と比較して相対的に評価することが重要です。
そこで本記事では、離職率の調べ方と平均離職率、離職率の改善方法について解説します。自社の離職率を把握し、必要な対策を実行したい方はぜひ参考にしてみてください。
離職率の定義と計算方法
離職率とは、企業の全社員のうち一定の期間に離職した人数の割合です。正しく理解するために、以下の計算方法を確認しておきましょう。
離職率=離職人数÷社員数×100
「どの時点の社員数を採用するか」や「対象とする期間」は法的に定められておらず、会社によって異なります。企業では、期初から期末までの1年間で離職した社員の割合で計算する場合が多いです。厚生労働省の雇用動向調査で使用される離職率は、1月から12月までの離職人数を1月1日の常用労働者数でわり100を掛けて計算します。
離職率について詳しく知りたい方は、別記事「離職率」をあわせてご確認ください。
離職率の調べ方5選
自社の離職率を競合他社と比較したい場合、どのように調べれば良いのでしょうか。ここでは、主な調べ方を5つ紹介します。
- 四季報で調べる
- ハローワークに問合せる
- インターネットで検索する
- 帝国データバンクを利用する
- 求人票を確認する
どの方法なら同業他社の離職率が調べられるか、確認しながら読んでみてください。
四季報で調べる
四季報といえば、東洋経済新報社出版の「会社四季報」が有名ですが、株価や金融以外の情報を記載した「就職四季報」もあります。就職活動をする学生向けに会社の基本データに加え、企業の給与・待遇・採用に関する情報が掲載されています。
具体的には、採用数・年収・残業時間数・有給取得日数などがあり、離職率も含まれます。約5,000社の最新のデータが1冊にまとめられており、複数の企業データを確認したい場合に便利です。ただし、離職率を開示しない企業は「NA」と記載され、確認できないケースがあります。
ハローワークに問合せる
ハローワークは国が運営する総合的雇用サービスで、企業や求職者が無償で利用できます。離職者が出た場合、ハローワークでの手続きが必要なため、離職率を把握している可能性が高いです。
公的機関のため、求人票に出ていない会社のデータでも教えてもらえる可能性があります。離職率を知りたい企業を管轄しているハローワークに、問合せてみると良いでしょう。
インターネットで検索する
企業名と離職率をキーワードにして検索すると、IR資料や口コミサイトに記載された離職率がヒットする場合があります。調べたい時に、すぐに実行できる方法のため便利です。
しかし、情報元が信頼できるかや、どのような条件で計算された数値かなどを確認する必要があります。検索して出てきた数値について、精査してから活用しましょう。
帝国データバンクを利用する
帝国データバンクとは、調査員が全国の企業を訪問したり、電話で問合せたりして収集した情報をまとめたデータベースです。利用には料金がかかりますが、インターネットで調べただけでは得られない情報を確認できます。
取引先の信用調査に活用されることが多いサービスで、企業情報には社員数の推移などが含まれるため離職率を確認できます。帝国データバンクの利用は、1社単位で企業情報を網羅的に取得できるため、離職率以外の情報もあわせて収集したい場合にも有効な方法です。
求人票を確認する
ハローワークなどの求人票には、社員数や離職者数が記載されている場合があります。ただし、離職率が高い企業は、悪い印象を与えるのを避けるために記載しないケースがあります。そのため、離職率が低い企業しか確認できない可能性があるでしょう。
離職率を調べる際の3つの注意点
さまざまな方法で離職率を調べられますが、数値だけを見て判断すると誤った認識となる場合があります。ここでは、離職率を調べる際の注意点を3つ紹介します。
- 社員数が少ないと参考にならない
- 企業側が数字を良く見せている可能性がある
- 1年のデータだけで判断しない
離職率を判断する際に、ぜひ参考にしてください。
社員数が少ないと参考にならない
離職率は社員数が少ない企業では、有用な情報ではない可能性があります。たとえば、1,000人の企業で200人が離職したケースと、10人の企業で2人離職した場合では、離職率は同じ20%となります。
一気に200人も離職した場合、何か問題がある可能性が高いです。しかし、10人の会社でも2人の離職なら、起こりうる範囲でしょう。
社員数が少ない企業では、1人の差が離職率に大きく影響します。先ほどの例では、離職者が2人でしたが、1人だった場合は10%に下がります。社員数が少ない企業では、離職率が参考にならない場合があるため注意しましょう。
企業側が数字を良く見せている可能性がある
離職率は、どの期間を使用して算出するか明確に決まっていないため、数値を良く見せることが可能です。離職率の高い企業がイメージを悪化させないよう、離職者が少ない期間を使用して算出する場合があります。
例えば、社員100人の企業で、1月から6月の離職者は5人だったが、後半に20人離職したとします。1年での離職率は25%ですが、1月から6月の離職率は5%です。企業によっては、良く見える期間の離職率を使用するケースがあるため、調べる際は算出基準を確認しましょう。
1年のデータだけで判断しない
直近1年の離職率だけで、良いか悪いかは判断できません。離職率は年によって上下する場合が多く、とくに社員数の少ない企業では、違いが大きく出ます。
また、離職率が悪化しているのか改善傾向かを見るのも重要です。たとえば、直近1年の離職率が同じでも、過去5年で徐々に改善している企業の方が今後も良くなると予想できるでしょう。職場環境が、改善してきているといえるためです。
離職率が低下傾向にある企業を見つけた際は、要因を調べてみると良いでしょう。自社の対策に役立つ情報が、得られる可能性があります。
自社と比較すべき平均離職率5選
離職率は、業界や企業規模などにより、大きく異なります。そのため、自社と同じ業種の平均離職率と比較して、自社の分析を行う必要があります。
厚生労働省の雇用動向調査などから、さまざまな平均離職率を確認できます。ここでは、5つの切り口から離職率を紹介します。
- 日本全体の離職率
- 産業別別離職率
- 企業規模別離職率
- 新卒3年後離職率
- 中途採用3年離職率
自社の離職率の分析に、ぜひ参考にしてください。
日本全体の離職率
厚生労働省が実施した令和3年雇用動向調査によると、日本全体の離職率は13.9%でした。ここ数年の離職率はほぼ横ばいですが、少し低下傾向がみられます。男女別でみると、男性が12.8%、女性が15.3%で、女性で低下傾向でした。
引用元:厚生労働省|令和3年雇用動向調査結果の概要 1.入職と離職の推移
全国平均との比較により、自社の離職率がおおむね良好なのかどうかを確認できます。
産業別別離職率
厚生労働省が実施した、令和3年雇用動向調査による産業別離職率は以下のとおりです。「宿泊業、飲食サービス業」が25.6%で最も高く、続いて「生活関連サービス業、娯楽業」が22.3%「サービス業(他に分類されないもの)が18.7%となっています。
引用元:厚生労働省|令和3年雇用動向調査結果の概要 2.産業別の入職と離職
法人を対象とした産業よりも、個人を対象とした産業で離職率が高い傾向です。産業によって差が出るため、自社が所属する産業の平均を把握することが重要です。
企業規模別離職率
企業規模によっても、離職率に差があります。厚生労働省の令和3年雇用動向調査における結果は、以下のとおりです。
社員数 | 離職率 |
---|---|
1,000人以上 | 12.9% |
300~999人 | 15.5% |
100~299人 | 19.8% |
参照元:厚生労働省|雇用動向調査 年次別推移 性、企業規模別入職・離職率
社員数1,000人以上の大企業に比べて、中小企業の方が離職率が高くなっています。中小企業の場合は全国平均である13.9%より高くても、企業規模の特徴である可能性があります。
中小企業の離職率について詳しく知りたい方は、別記事「離職率高い中小企業」をあわせてご確認ください。
新卒3年後離職率
厚生労働省から2022年10月に発表されたデータで、最終学歴別の離職率が発表されています。就職後3年以内の離職率は、以下のとおりです。
中学卒 | 57.8% |
高校卒 | 35.9% |
短大等卒 | 41.9% |
大学卒 | 31.5% |
若い時期に就職した方が、離職率が高い傾向にあります。年齢が低い社員に対しては、教育やフォローアップを強化するなど、勤務し続けやすい環境を提供するのがおすすめです。
中途採用3年離職率
求人情報を提供しているエン・ジャパンが2019年に実施したアンケート調査によると「直近3年間で入社した、中途入社者の定着率はどのぐらいですか?」という質問に対し、約6割の企業が70%以上と回答しました。
参照元:エン人事のミカタ|第144回 「中途入社者の定着について」
定着率とは、入社者が一定期間後、どのくらいの割合で企業に残ったかを示す指標です。定着率の計算式は、以下のとおりです。
定着率 = (入社人数-退社人数)÷入社人数×100
たとえば、10人入社したうち3年以内に3人が離職した場合、3年間の定着率は「(10-3)÷10×100=70%」です。一方で、入社3年後の離職率は「3÷10×100=30%」となります。上記のアンケート調査の結果から離職率を計算すると、入社3年後の離職率は約6割の会社で30%以下となります。
離職率の改善方法3選
同じ産業や企業規模の平均と比較して自社の離職率が高かった場合、対策を講じる必要があります。ここでは、主な改善方法を3つ紹介します。
- 社員の満足度を上げる
- 評価基準を明確にする
- 労働条件を向上させる
自社で改善策を考える際に、参考にしてみてください。
社員の満足度を上げる
人間関係の悩みや労働条件への不満が離職につながるため、社員が満足して働ける環境を作る必要があります。まずは、社員がどのくらい満足しているのか確認しましょう。
社員の本音を知るには、アンケートが有効です。「社員が満足しているのか」「どういう点に不満があるのか」を知ることができます。また、年齢や職種ごとに分析することで傾向が見えるため、より効果的な対策が実行できるでしょう。
タレントパレットには、社員のアンケートを収集・分析できる機能があり、社員の満足度調査に活用できます。社員がどのくらい満足して勤務しているのかを調べたい企業は、ぜひ導入をご検討ください。
評価基準を明確にする
社員にとって「正当に評価されるか」と感じられることは非常に重要です。評価基準を明確にすることで客観的な評価が行えるようになり、社員の納得が得られやすくなります。さらに、社員が目指すべきゴールが明確になるため、やりがいを感じられるようになるでしょう。
企業の方向性と合致した評価基準を設けることで、自社に必要な人材を育てられるメリットもあります。
人材育成について詳しく知りたい方は、別記事「人材育成の考え方」をあわせてご確認ください。
労働条件を向上させる
過度な長時間労働は社員を疲弊させ、離職につながるため改善が必要です。できるだけ残業をなくし、社員のワークライフバランスを向上させることで、離職率の低下につながります。また、有給休暇が取得できる環境を作ることも重要です。
社員の労働時間数とともに有給休暇の取得率も確認し、改善のために対策を実施しましょう。たとえば、有給休暇取得日数の目標値を示し、評価面談時に達成度を確認する方法があります。積極的に話題にあげることで、社員の意識改革につながるでしょう。
離職率の下げ方について詳しく知りたい方は、別記事「離職率を下げるには」をあわせてご確認ください。
離職率調べ方のまとめ
離職率を調べた結果、改善が必要と判断した場合は早期に対策する必要があります。しかし、離職率が高い原因は複数ある場合が多く、全てに対処するのは難しいです。
タレントパレットには、離職対策に役立つ機能が多数あります。アンケート調査で社員の満足度を確認したり評価プロセスを可視化したりでき、複数のアプローチで対策が行えます。離職率を下げたい経営者や人事担当の方は、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。
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