ホラクラシー組織とは?ヒエラルキーとの違いや役割、メリットなどを解説


ホラクラシー組織とは?ヒエラルキーとの違いや役割、メリットなどを解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

企業の組織形態として、ホラクラシー組織が注目されており、多くの企業がこの組織形態を取り入れ始めています。しかし、具体的な定義がわからずどういったメリットがあるのかも把握できていないケースもあるのではないでしょうか。

そこで、この記事ではホラクラシー組織の特徴やヒエラルキー型組織との違い、メリットやデメリットについて詳しく解説します。

ホラクラシー組織とは?

ここでは、ホラクラシー組織の特徴やヒエラルキー組織との違い、注目された背景などについて詳しく解説します。役職者を設けないことによって、これまでの組織と何が違うのかを把握しましょう。

ホラクラシー組織の概要

ホラクラシー組織とは、組織をまとめる役職者を設けず、従業員それぞれが決定権を持つ組織体制を指します。これまでの日本国内の組織体制は、いわゆるヒエラルキー型の組織がほとんどでした。これは、トップに代表取締役がつき、その下に経営陣が並ぶ、ピラミッド型の組織体制です。

ピラミッド型の組織は、各部門の責任者である部長職や課の責任者である課長などが実務を取り仕切り、それぞれの責任範囲のもとで業務に取り組むものです。

ホラクラシー経営とピラミッド型の組織は、組織のあり方として大きく異なることから、取り入れる場合は考え方から変えていく必要があるといえます。

なぜホラクラシー組織が注目されたのか?

ホラクラシー組織は、最初にアメリカに取り入れられました。情報の移り変わりが非常に激しい社会に適した組織体制であり、現代社会に対応するための1つの方法だといえます。

一極集中型の組織には、スピード感が劣るという欠点があります。たとえば、1つのグループがあり、意見をまとめるとしましょう。そういった場合もグループの意見を取りまとめたうえで責任者が行動を決定し、さらに上の役職者の同意を得ながら施策を決定しなければならないためです。

そのため、次のようなリスクが考えられます。

・情報の伝達速度や取得スピードが遅く、企業の競争力低下を招く
・従業員の意見が取り入れにくく、最終的にマネジメント側である役職者の意見のみを反映しやすくなる
・モチベーション低下やそれぞれの思考を把握しにくい

対して、ホラクラシー組織であれば、従業員一人ひとりの意見やモチベーションを活かしやすく、スピーディーな意思決定が可能です。また、新しい施策を実施する場合にも規則に準拠したうえで個人単位で実施できるため、情報の共有から改善までのサイクルを早めることもできます。

ホラクラシー組織と、そのほかの組織の違い



ここからは、ホラクラシー組織と他の組織における違いについて解説します。ヒエラルキー・ティール組織など、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

ヒエラルキー組織との違い

ヒエラルキー組織は、上部に権限が集まるピラミッド型の組織体制を形成しています。それぞれの部門には業務内容ごとに部長や課長などの責任者が設置され、意思決定の責任を負っているケースが多い点も特徴です。

対して、ホラクラシー組織では、グループ内の個人やグループ全体の意見により意思決定が行われます。意見の集約によって、グループ間の情報が共有されやすい体制であるといえるでしょう。意思決定がグループ全体に共有しやすくなる点は、メリットです。

ヒエラルキーとよく混同される制度の1つとしてカーストがあります。しかし、実際には意味が大きく異なるため、詳しくは下記にリンクしている記事をご覧ください。

「ヒエラルキーとカーストの違い」については、こちらの記事をご確認ください。

ティール組織との違い

ティール組織とは、管理職やリーダーが存在しない組織形態で、グループのメンバーが裁量権を持って取り組むなど、ホラクラシー組織と類似点が多い組織体制です。たとえば、次のような特徴があります。

・セルフマネジメントが主体となっている
・組織の目的がスピーディーに進化・変化していく
・個人として全体が生き残れる情報共有や多様性を認める

ティール組織の場合は、ホラクラシー組織と比較して具体的なルールがない点が違いです。

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ホラクラシー組織におけるメリット



ここからは、ホラクラシー組織におけるメリットについて解説します。とくに意思決定のスピードや従業員の主体性などは、ビジネスの発展につながる要素も多いといえるでしょう。

意思決定のスピードが速い

ホラクラシー組織には、上司や役職者が存在せず、確認や承認を行う手間が省けます。そのため、意思決定のスピードが速い点がメリットの1つです。決定権が個人にあることに加え、主体性を活かすこともできるため、よりビジネスを発展させるアイディアも生まれやすいといえるでしょう。

従業員の自立性向上

ホラクラシー組織では役職者やリーダーが配置されていません。グループ間での決まりごとは、上司に依存せず、それぞれが責任を持って判断を下す必要があるため、従業員一人ひとりの自立心が向上します。

従業員の意識が高まることでモチベーションがアップし、売上の増加などにつながりやすくなるでしょう。結果的に、生産性の向上などの効果も見込むことも可能です。

業務の効率化

ホラクラシー組織は、業務効率化につながる点もメリットです。

ヒエラルキー型の組織体制の場合、役職者が部署などをまとめるため、以下のようなマネジメントが求められます。

・お互いの意識共有や問題解決、マネジメントのため、会議の開催・検討
・何か変更があった場合、お互いの認識や方向性、進捗状況などを共有する
・役職者の承認を得るための稟議書の提出

会議の時間や稟議の作成などは、場合によっては大きな割合を負担となるケースもあるでしょう。

対して、ホラクラシー組織の場合、リーダーがいません。そのため、組織を管理するための作業もなく、情報を共有する場を別途設ける必要も不要です。会議や稟議などにかかる時間がなくなるため、業務の効率化が可能となり、スピード感を持って業務を行えるでしょう。

柔軟な組織体制が構築できる

ホラクラシー組織の場合、個人の主体性が尊重されているだけでなく、役割も明確化されていることから柔軟な組織体制を構築することが可能です。ホラクラシー組織の場合は、チームごとに業務を進めるケースが多く、それぞれの適正をみたうえでチームを組めます。

そのため、目標に対して柔軟な組織体制を組めることから、エンゲージメントの向上にも効果を発揮するでしょう。

ホラクラシー組織におけるデメリット

ここからは、ホラクラシー組織のデメリットについて解説します。とくに、役職者がいない・リーダーが存在しないことから、個人の自主性がより大切になる点はデメリットといえるでしょう。

従業員の自立が必要

ホラクラシー組織は、役職者やリーダーがいないため、組織がうまく機能しなければなにも決められない可能性が高くなるといえるでしょう。

決定権者がいないため、従業員は自立と責任感の強さを持ち、グループ間での決まりごとをうまくまとめるスキルが必要です。そのため、ホラクラシー組織に移行する場合は、従業員の自立心・責任感を高める必要があるといえるでしょう。

企業風土によっては、まったく機能しない組織になるリスクがホラクラシー組織のデメリットの1つです。

従業員の把握が難しい

ヒエラルキー組織体制では、役職者の存在によって、チームの管理がしやすいといえます。役職者がチームを管理することで、それぞれの従業員がどのような状態にあるかをつかみやすい点がヒエラルキー組織の強みです。

一方、ホラクラシー組織は、従業員の自主性により成り立つ組織です。たとえば、どんな状況や状態で仕事を行っているのか、分かりにくくなりがちです。また、グループ内の従業員の心理状態やグループにおける関係性も把握しにくい点がデメリットだといえます。

リスク管理が重要

ヒエラルキー組織の場合、複数の承認を通してプロジェクトが決められます。承認に時間がかかる反面、問題点や疑問点が比較的洗い出ししやすく、複数の責任者が確認するため、ヒューマンエラーなどに対するリスク管理もできます。

対して、ホラクラシー組織は意思決定が早い反面、複数の承認段階を経ることがありません。つまり、リスク管理においては、ヒエラルキー組織のほうが優位性が高いといえます。そのため、リスクに関しては別のチェック体制が必要です。

コストがかかる

ヒエラルキー 型の組織から、 ホロクラシー組織に変えようとした場合、多大なコストがかかります。従業員の考え方から業務の行い方まで大きく異なるため、生産性の一次的な低下やトラブルが起きる可能性も否定できません。

また、時間的コストに関しては、非常に多くかかることからある程度の負担が従業員にかかることになります。

ホラクラシー組織の重要な役割

ホラクラシー組織であれば、役職者やリーダーが配置されません。しかし、欠かせない役割(ロール)を担う3つのポジションがあります。ここからは、ホラクラシー組織の重要な3つの役割についてみていきましょう。

リードリンク

リードリンクは役職者やリーダーに似た役割を持ちます。ヒエラルキー組織では、社長や経営者がその役割に該当するといえるでしょう。

リードリンクは、目標の達成について責任を負い、行動指針の策定やリソースの配分などにおいて重要な判断を下します。

ファシリテーター

ホラクラシー組織が順調に運営できるようにサポートを行う役割がファシリテーターです。グループ内の意見収集やリードリンクが策定した行動指針が円滑に進行しているかをチェックします。

ファシリテーターには、企業内におけるスムーズなやり取りやコミュニケーション、管理能力が求められます。リードリンクとグループの架け橋的な役割といえるでしょう。

セクレタリー

セクレタリーとは、秘書や書記といった意味があり、実際に書記に近い役割を担います。議事録の作成や決定までの経過を記録しながら、自らも意見を発信という役割です。

組織における目標達成までの過程を記録し、諸会議の日程調整なども行います。グループメンバーの下支えをするポジションといえるでしょう。

ホラクラシー組織を導入する際の注意点

ここからは、ホラクラシー組織を導入する場合の注意点について解説します。

決して自由な組織という訳ではない

ホラクラシー組織は、役職者やリーダーがいないものの、決して自由な組織ではありません。

ホラクラシー組織の中にも厳格なルールがあり、ルールに沿った働き方が求められます。リードリングが決定した行動指針に基づいた行動が必要です。

役割や責任を明確にする

部署やチームの存在や責任を明確にし、チームのメンバーに 浸透させる必要があります。誰もが自由に行動してしまった場合、メンバーの行動が把握できず、非常に効率の悪い組織になってしまう可能性があるためです。

企業としての目標やチームの目的を明確にし、意識を共有し、行動指針に従った業務が求められます。それぞれの役割を明確にするだけでなく、 誰がどのように能力を発揮しプロジェクトや業務を前に進めるのかまで明確に決めておく必要があるといえるでしょう。

柔軟性を持つ

ホラクラシー組織の導入には、柔軟性も必要です。ホラクラシー組織を理解し、試行錯誤しながら企業風土に合った組織をつくるといった方向性を決めましょう。

今までの企業風土をまったく無視してホラクラシー組織をつくったとしても、うまくいかないと想定されます。ホラクラシー組織体制の一部分だけを活用し、うまく自社の企業風土とミックスさせる方法など、柔軟な視点から検討する必要があります。

スモールスタートで始める

今まで体制として、ヒエラルキー 組織を採用していた場合、ホラクラシー組織への変更はスモールスタートにしましょう。トラブルやコミュニケーションのズレが発生する確率が高いためです。スモールスタートであれば、スタートしてみるとホラクラシー組織への移行に関して、大きな混乱がなく、ノウハウが得られます。

情報をオープンにする

ホラクラシー組織に求められる体制として、業務にかかわる情報はすべてオープンにしましょう。ITツールなどを利用して情報を一元管理すれば、情報共有しやすく進捗のスピードが早まります。

グループのルールを整備しておくことによってより 早い 情報共有が可能となるといえるでしょう。

ホラクラシー組織に合う企業の傾向

ここからは、ホラクラシー組織に合う企業の傾向について解説します。向き・不向きというよりも傾向に合わせることができれば、ホラクラシー組織への変更を検討してもよいという指針にしましょう。

社内の情報が共有されている

社内の情報が共有されている企業は、ホラクラシー組織に適しています。

情報共有に優れた組織より長所を生かす組織体制へと移行することで、従業員間の方向性が定まり、エンゲージメントも高まるといえるでしょう。

また、情報が一元管理され、スピード感に強みを持つ組織体制を活かすことも可能です。

コミュニケーションがよい

ホラクラシー組織には、役職者やリーダーといった上下関係はありません。また、様々な施策や業務の方向性を決定するのはリーダーや役職者ではないため、情報が一極集中する仕組みにならず、比較的コミュニケーションが取りやすくなります。

社内間のコミュニケーションがよい企業は、ホラクラシー組織への移行がやりやすく、強みがさらに生かせる組織になりやすいといえます。たとえば、同僚や上司 だけでなく、経営陣とも 連携が取れているといった場合には、ホラクラシー組織への移行は容易でしょう。

主体性がある

ホラクラシー組織の場合、従業員ごとに主体性が求められます。そのため、現状がヒエラルキー組織であっても従業員がアイディアを出しやすい・挑戦できる環境があるといった場合には、移行は容易です。

たとえば、従業員が意見をいえる場所があり、その意見を経営に反映してきたといった場合や従業員のアイディアを元に商品や企画を検討してきたといった場合には、従業員のモチベーションやエンゲージメントも高いと想定されます。そういった環境であれば、ホラクラシー組織であっても十分に業務を行える可能性が高いといえるでしょう。

ホラクラシー組織を導入している企業事例

ここからはホラクラシー組織を導入して一定の成果を上げている企業を紹介します。自社で導入する際の参考にしてみましょう。

株式会社アトラエ

求人メディアやマッチングサイトアプリの開発などを手がけている株式会社アトラエは、プロジェクトごとにチームを組んで進められるホラクラシー組織を採用しています。

チームリーダーは存在するもののチームごとに担当が割り振られ、自分たちで役割の変更なども行うことが可能です。

株式会社OKAN

株式会社OKANは、意思決定のスピード感が落ちていることに危機感を持ち、従来のヒエラルキー組織体制からホラクラシー組織へと転換しました。

組織変更を行う前は、組織が拡大する中で部署間の連携がうまく取れず、部署間の分断も起こっていました。結果として、情報の伝達が遅れのリスクが高いと感じられたことからホラクラシー組織に変更しています。

現在では、各CEOの直下にチームをおき、チームごとに意思決定できる仕組みを構築しています。

Airbnb

Airbnbは、ホラクラシー組織の中に、エンジニアリングマネージャーを配置した体制を敷いています。エンジニアリングマネージャーは、あくまでもリーダーではなく進行状況を可視化する存在です。ホラクラシー組織の弱点である、進捗状況の確認の大変さをカバーする働きを担っています。

ホラクラシー組織の弱点を補い、進行状況が可視化しやすくなったことで、情報伝達の速度が向上しました。ホラクラシー組織体制の中でも少し変わったロールモデルといえるでしょう。

面白法人カヤック

面白法人カヤックは、全従業員が人事部に所属する組織となっています。全従業員が採用や評価、人事査定にかかわり、情報の共有をする、一部門だけのホラクラシー組織体制といえるでしょう。

ヒエラルキー型の体制を残しつつ、全員参加型のホラクラシー組織体制を構築している興味深い体制です。

まとめ

ホラクラシー組織は、情報過多の世の中において、人々の働き方の変化や市場状況の変化に、対応するための組織形態です。しかし、ホラクラシー組織には従業員の状況が把握しづらいというデメリットがあります。このデメリットを改善するためには、綿密な人事管理が欠かないといえるでしょう。

マネジメントシステム「タレントパレット」は、人事情報の一元管理や適切な人材配置による離職率の低下に効果を発揮する人事管理システムです。システムを用いてホラクラシー組織の弱点をカバーすることで、情報化社会を勝ち抜ける企業体質に変化させられるでしょう。組織変化の方法に悩む方は、活用してみましょう。

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