こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
どの職場においてもヒヤリハットの発見と対策は、重大事故発生のリスク軽減に役立ちます。そこで本記事ではヒヤリハットの対策法を業種別に解説しますので、ポイントを押さえて従業員の安全確保と企業成長につなげましょう。
ヒヤリハット対策とは?
ヒヤリハット対策とは、職場で発生しうる重大事故を防止するための対策です。ささいなヒヤリハットでも放置してしまうと、ケガや物品の破損、取引先の損害などの重大事故につながります。そこでヒヤリハット対策を職場内で徹底し共有することが重要であり、かつ従業員や取引先の信頼向上が可能です。
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、重大事故に至る前のヒヤリとしたりハッとしたりする微小な事故です。ヒヤリハットは介護や医療の現場ではインシデントとして記録され、アクシデントとは区別されます。インシデントとアクシデントの違いは以下の通りです。
- インシデント:事故に至らない程度の問題事象
- アクシデント:事故そのもの
軽微なヒヤリハット事例を見過ごさず、その都度従業員で記録することがヒヤリハット対策のポイントと言えるでしょう。
業種・業界別ヒヤリハットの事例を紹介
ヒヤリハット事例のパターンは、業種・業界によって異なります。それぞれの業種ごとに特有のヒヤリハット対策が必要です。本章では、以下の業種で想定されるヒヤリハット事例を見ていきましょう。
- 介護
- 看護
- 保育園
- 薬剤師
- 製造業
介護のヒヤリハット
介護現場はちょっとしたケアレスミスが利用者のケガや事故に直結するため、徹底したヒヤリハット対策が重要です。介護現場で想定されるヒヤリハット事例には、以下のパターンが挙げられます。
- 転倒
- 転落
- 誤薬
- 誤嚥
介護現場のヒヤリハット事例のほとんどは、利用者のケア中の事象です。また、浴室もヒヤリハットが生じやすいエリアのため注意しましょう。
看護のヒヤリハット
看護でも患者との直接的な身体接触が多いため、ヒヤリハットが起きやすい現場です。また、従業員の人員不足に起因するヒヤリハット事例も高確率で発生しています。具体例は以下の通りです。
事例:
6月8日午後3時15分、入院患者Aが車椅子で男性用トイレに入り、小便器の前で自力で立とうとしていた。足元がふらついていたため通りかかった男性看護師Bが介入し、排尿を介助したため転倒には至っていない。入院患者Aによると、病室のナースコールを数回押したものの何の返答もなかったため、自力で用を足そうとトイレに入ったという。
当該事例では、本来なら介助を要する入院患者が自力で用を足そうとしたことにより、転倒のリスクが生じました。またナースコールへの反応がなかったという入院患者Aの訴えから、現場の人員不足にともなうケア体制の慢性的な問題が把握できます。
保育園のヒヤリハット
保育園では、子どものケガに付随するヒヤリハットに注意が必要です。
事例:
7月2日午前10時30分、水を張った状態のビニールプールで児童Aが児童Bをふざけて突き飛ばしそうになった。近くにいた保育士Cがあわてて児童Bを支えたためケガはない。保育士Cが児童Aにきつく注意し危険性を伝えたところ、児童Aは反省した様子を見せている。
子ども同士のふざけ合いから重大事故につながる例も少なくありません。プール以外にも、遊具の誤った使い方によるケガも多数発生しています。
その場で感情的に怒鳴るのではなく、子ども自身に危険性を正しく理解させたり現場の人員配置を工夫したりすることなどが保育園のヒヤリハット対策では重要です。
薬剤師のヒヤリハット
薬剤師のヒヤリハットの9割は、調剤のプロセスで発生します処方量がわずかに違っただけでも重大な健康被害につながるため、注意が必要です。
事例:
9月30日午前11時45分、薬剤師Aは受け取った処方箋にしたがって男性患者にタダラフィルOD錠10mgCLを渡した。しかし3日後、患者本人の訴えにより薬の取り違えが発覚し、男性患者に渡したのはタダラフィルOD錠5mgZAだった。男性患者は服用前に気づいたため、重大な健康被害には至っていない。
薬の取り違えは薬局で注意すべき典型的なヒヤリハットです。
製造業のヒヤリハット
大型機械を取り扱う仕事の多い製造業は、ヒヤリハットが重大事故に直結しやすい現場です。
事例:
作業員Aが作業場を横断していたところ、作業員Bが操縦するフォークリフトに轢かれそうになった。作業員Bは作業場を他の作業員が歩く可能性を想定しておらず、前方注意を怠っていたという。
フォークリフトと人間が衝突すれば、深刻なケガにつながります。当該事例では作業員Bの不注意が直接の原因ですが、作業場内の動線の未整備も遠因として考えられるでしょう。
業種・業界別ヒヤリハット対策を解説
個々のヒヤリハット事例に正しく対処すれば、重大事故のリスク低減が可能です。本章では業種ごとのヒヤリハット対策を見ていきましょう。
介護のヒヤリハット対策
従業員のスキルや力量不足によるケア中のヒヤリハット対策には、事前のノウハウ共有が有効です。複雑な介護機器については、定期的な講習会で正しい使い方を説明する機会を設ければ、誤操作による故障リスクが下がります。
また利用者間で発生するヒヤリハットの場合、当事者を直接注意するのではなくケアにあたる人員を増やして、つねに誰かの目が行き届くような体制を整えることが重要です。
看護のヒヤリハット対策
看護現場で特に厳重なヒヤリハット対策が求められる事例は、以下の通りです。
- ケア中の転落や転倒
- 誤薬
身体的な接触にともなう患者の転落や転倒は、従業員の技術・知識の向上を図れば防止できます。医療器具の使用方法の定期的な共有も対策として有効です。誤薬も命にかかわるリスクが高いため、複数人によるダブル・トリプルチェックで確実に防止しましょう。
入居者のトイレでの転倒や転落など看護職が直接介入しないヒヤリハットであっても、ナースコールの長時間にわたる放置や人員不足など、構造的な問題が背景に隠されている可能性があります。
目先の原因にとらわれず、根本的な要因に焦点を当てた分析を意識しましょう。
保育園のヒヤリハット対策
保育園ではテーブルやドアの蝶番など、大人なら見過ごしてしまうような箇所でヒヤリハットが発生します。そのため角の丸いテーブルを配置したり蝶番のないドアにすれば、子どものケガを予防できるでしょう。
ケンカやからかいなど、ちょっとしたトラブルから重大なケガにつながる可能性もあります。たとえ冗談でも、子どもの暴力行為を発見した場合には行為の危険性を繰り返し説明し、暴力の結果予測される事故について理解させれば、有効な対策につながるでしょう。
薬剤師のヒヤリハット対策
薬剤師のヒヤリハット対策の中心は、ダブルチェックです。受け取った処方箋を必ず複数人でチェックすることで、薬の取り違えにともなうヒヤリハットを防止できます。
従業員の慣れや慢心を取り除く対策も重要です。データによると、薬の取り違えは平日の午前10時から正午の間に集中するという結果が出ています。統計的にミスが起きやすい時間帯を特定し、対策を強化すれば重大事故の防止にもつながるでしょう。
また、最近ではデータベースによる薬の管理や患者情報の共有など、新たなテクノロジーの導入にともなうヒヤリハットの増加が指摘されています。そのためベテラン従業員から新人までシステムの正しい使い方を共有する機会を設れば、ヒヤリハット対策につながるでしょう。
製造業のヒヤリハット対策
製造業では、ヒューマンエラーの防止が重要です。特に注意すべきポイントとしては以下の点が挙げられます。
- 機械を点検する際は必ず主電源を落とす
- 坂道ではトラックやフォークリフトのブレーキをかける
- 作業場ではフォークリフトと従業員の動線を分ける
当たり前のポイントをその都度確認するだけでも、ヒヤリハットリスクの軽減が可能です。また、疲労やストレスが溜まった状態ではヒヤリハットの発生リスクが高まるため、休日の管理や産業医の導入など従業員の健康面にも配慮しましょう。
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【全業種・職種】ヒヤリハット対策は3つのポイントを守ろう
ヒヤリハット対策では、以下の3つのポイントを特に意識しましょう。
- 従業員の負担軽減
- ツールによる業務効率化
- 再発防止の仕組みをつくる
従業員の負担軽減
ヒヤリハットの背景には従業員の疲労・ストレスの蓄積があります。業務の中で日常的に従業員の負担が溜まっていると注意力や集中力が低下し、ケアレスミスのリスクが高まるでしょう。
特に重大事故につながりやすい業務には複数人を配置したり、ダブルチェック・トリプルチェックを徹底したりすればミスの防止が可能です。
ツール活用による業務の効率化
オフィスでは最新のツールを導入すれば、業務の大幅な効率化が可能です。請求書や納品書などを手動で記入していると、どうしてもヒューマンエラーが増えてしまうため重大事故のリスクが高まります。
そのたえAIと連動したツールを導入すれば経理や労務、人事などあらゆる業務が自動化され、大幅な効率化が可能です。新規ツール導入の際は従業員に使い方を共有し、コストパフォーマンスを高めましょう。
繰り返させないしくみづくり
ヒヤリハット対策を周知するだけでは、重大事故の根本的な防止にはなりません。ヒヤリハット事例の背景にある根本的なリスク因子を従業員で共有し、再発防止の仕組みを定着させることが重要です。また仕組みの定着だけで終わらせず、定期的なフィードバックを通じてより良いシステムにアップデートするプロセスも有効でしょう。
まとめ
ヒヤリハットを放置すると重大事故につながるため、早期の対策が重要です。業種別のヒヤリハットのパターンに着目し、個々の事例から根本原因を洗い出せば重大事故の発生リスクを抑えられます。カウンセリングや有給休暇取得の推奨など、メンタルヘルスへの配慮も対策として有効です。
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