こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
多くの企業がリスクマネジメントとして導入の検討や実践を進めている「ヒヤリハット」活動についてご存知でしょうか。ヒヤリハット活動は、大きな事故に繋がる前の小さなミスを発見して、重大トラブルを回避することを目的としています。今回は、様々な企業で発生したヒヤリハット事例とともに、報告書作成のポイントについて紹介します。
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、重大な事故やトラブルに直結する一歩手前の事象を指します。日常の業務の中で「ヒヤリ」としたことや「ハット」した気づきについて、企業内で情報収集および改善活動を行えば、大きな事故やトラブルの対策を立てるためのリスクマネジメントができます。
しかし、ヒヤリハットがなぜリスクマネジメントに繋がるのかイメージが湧きづらい方もいるでしょう。ヒヤリハットの重要性については、「ハインリッヒの法則」を学ぶことで具体的に理解できます。
ヒヤリハットの重要性はハインリッヒの法則で証明!
ヒヤリハットについて理解を深めるために、ベースである「ハインリッヒの法則」について紹介します。「ハインリッヒの法則」を提唱したのは、アメリカの損害保険会社に勤務していたハインリッヒです。
ハインリッヒは日々5,000件以上の事故の調査を通じて、労働災害において「1:29:300の法則」という経験則を発見しました。その内容は、「1件の重大事故の背景には29件の軽微なミスが隠れており、そのさらに背後には300件の異常が存在している」というものであり、この300件の異常こそが「ヒヤリハット」に該当します。
この内容からは、ヒヤリハットが単なる「些細な異常」ではなく、ヒヤリハットが積み重なれば重大な事故に直結するリスクをはらんでいることがわかります。ヒヤリハットを早期発見し、都度対策を立てることが軽微な事故を防ぎ、最終的には重大な事故を未然に防ぐために重要なのです。
【例文】介護のヒヤリハット
それでは、実際にどのようなヒヤリハットが報告されているのかを確認していきましょう。日本社会を構成している様々な業界では、日々ヒヤリハットが報告されています。まず初めに、介護業界におけるヒヤリハットとして、以下の5つの事例を原因と対策を合わせて紹介します。
- 移乗介助時でのヒヤリハット
- 食事・嚥下介助でのヒヤリハット
- 食前・食後でのヒヤリハット
- 入浴・衛生面でのヒヤリハット
- 怪我の危険があるヒヤリハット
移乗介助時でのヒヤリハット
まずは移乗介助時でのヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の2つです。
- 移乗介助時に手すりへ接触し、手に擦り傷を負ってしまった
- 介護士が近くにいない時に利用者が車椅子から立ち上がろうとし、転落しそうになった。
1つ目の事例の原因は、移乗介助時に手と手すりとの位置関係について、事前に把握しておくことを怠っていたためです。2つ目の事例の原因は、移乗介助を行う対象である利用者が、転落注意者として見守りが必要であったことを事前に周知されていたにもかかわらず、雑務のために移乗介助担当の介護士がその場から離れてしまっていたことです。
食事・嚥下介助でのヒヤリハット
次に食事・嚥下介助時でのヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- 吸い飲みで水分補給させる際に利用者がむせかえってしまった
- 本来はミキサー食の指示にもかかわらずキザミ食の準備がされていた
- 食事中に苦しそうな表情になっていた
1つ目の事例の原因は、嚥下状態が好ましくない利用者であるにもかかわらず、水分に含ませる「とろみ」加減の調整や、飲水中の利用者の体勢が適切ではなく、飲み水が気道に入り込む状況にあったことです。2つ目の事例の原因は、利用者の食事を準備する厨房職員が、用意すべき食事の形態を事前に確認することができていなかったことでした。
3つ目の事例の原因は、食事をする際のテーブルの高さが高く、利用者が不適切な体勢で食事する状況になっていたことでした。
食前・食後でのヒヤリハット
食前・食後でのヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- 食事後、利用者の口腔ケアを行っていた際、血が出てきた
- 夕食後の薬と朝食後の薬を間違って準備していた
- 家族の方と大福を食べていた
1つ目の事例の原因は、口腔ケアを実施する前に利用者の口内の確認を怠り、歯ブラシの先端が利用者の歯茎に接触したことでした。2つ目の事例の原因は、事前に配薬していた薬箱の確認と服薬直前の薬袋の確認が不十分であったことでした。
3つ目の事例の原因は、訪問時に家族からの差し入れなどがあるか、確認ができていなかったことでした。
入浴・衛生面でのヒヤリハット
入浴・衛生面でのヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の2つです。
- 個浴に向かう途中で利用者がふらついたが、自力でバランスを保持した
- シャワーチェアから車椅子への移乗時に利用者が尻もちをついた
1つ目の事例の原因は、シルバーカーの使用を利用者へ促さなかったことでした。2つ目の事例の原因は、入浴後の利用者の動きに合わせて車椅子の準備が間に合わなかったことでした。
怪我の危険があるヒヤリハット
怪我の危険があるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- 施設内で仰向けになっている利用者が発見された
- 利用者が寝返りをした際にベッドから転落しそうになった
- 体位交換時に利用者のおでこが壁にあたりそうになった
1つ目の事例の原因は、イスから立ち上がる時に利用者がバランスを崩してしまったことでした。2つ目の事例の原因は、該当の利用者のベッドに柵がついていなかったことでした。
3つ目の事例の原因は、利用者の頭部と壁との距離が近いにもかかわらず体位交換をしてしまったことでした。
【例文】食品製造業でのヒヤリハット
次に、食品製造業にて発生したヒヤリハットについて紹介します。食品製造業にて発生したヒヤリハットとして、以下の3つの事例について紹介します。
- 衝突によるヒヤリハット
- 巻き込まれによるヒヤリハット
- 刃物によるヒヤリハット
衝突によるヒヤリハット
衝突によるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の2つです。
- 台車で運搬中に作業員と衝突し、作業員が転倒した
- 調理室でシンクの排水溝を清掃中、配膳車に激突された
1つ目の事例の原因は、コンベアから落下した廃棄予定の焼き菓子を台車に乗せて運搬していた際に、周囲の状況を確認せずに小走りで移動していたことでした。2つ目の事例の原因は、配膳車を押して移動している際に周囲の状況を確認せず、シンク下のU字管部を洗浄している従業員の存在に気づかずにいたことでした。
巻き込まれによるヒヤリハット
巻き込まれによるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- 防寒頭巾の裾がローラーに巻き込まれそうになった
- 食器の洗浄作業中に、洗浄機に指を挟まれそうになった
- ミキサーの攪拌フックに手が巻き込まれそうになった
1つ目の事例の原因は、工場稼働中、ラインのローラーコンベア下に潜ろうとした際に防寒頭巾の裾の処理を怠ったことと、コンベアの高さについて下に潜る前に確認を十分にしていなかったことでした。2つ目の事例の原因は、食器洗浄機を使って食器の洗浄作業を行っている途中、コンベアから食器が出てくる前に食器を取ろうとしたことでした。
3つ目の事例の原因は、パン生地を作成する途中に攪拌具合を確認しようとミキサーを停止したにもかかわらず、完全にミキサーが停止しているかの確認を怠ったことでした。
刃物によるヒヤリハット
刃物によるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の2つです。
- 食肉用スライサーの刃に指が触れそうになった
- 食パンのスライス作業中にスライサーの刃へ指が触れそうになった
1つ目の事例の原因は、使用する食肉用スライサーへ安全カバーを設置するといった事前の対策を怠ったことでした。2つ目の事例の原因は、食パンスライサーを使用する際の手順である押し板の使用を順守していなかったことでした。
ヒヤリハット事例の活用だけで終わらないあらゆる人事データを統合して分析
ヒヤリハットは従業員の心身の状態や業務の負荷により引き起こされる可能性が高いため、人事労務担当者やリーダーが適切な人材管理をし、原因を解消することが重要です。人材の情報を管理・分析し重大な事故やトラブル防止に活かしましょう。
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【例文】建設業でのヒヤリハット
建設業で発生したヒヤリハットについて紹介します。以下の3つの事例について紹介します。
- 高温によるヒヤリハット
- はさまれ・巻き込まれによるヒヤリハット
- 転落によるヒヤリハット
高温によるヒヤリハット
高温によるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- 舗装工事中、暑さにより気分が悪くなった
- オーバーヒートしたユンボから蒸気が噴出し火傷しそうになった
- 暖房用のジェットヒーターで暖をとっていて火傷しそうになった
1つ目の事例の原因は、アスファルトフィニッシャを用いた作業による高温リスクに対して水分補給などの対策が不十分であったことでした。2つ目の事例の原因は、オーバーヒートしたラジエターの補水タンクへ補水後、蒸気の噴出リスクの考慮を怠り、ラジエターの補水タンクを開けたことでした。
3つ目の事例の原因は、暖房機の熱源による引火リスクを考慮せずに機器へ近づきすぎたことでした。
はさまれ・巻き込まれによるヒヤリハット
はさまれ・巻き込まれによるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- バックホウのキャタピラに足をひかれそうになった
- トラックの誘導中に電信柱とトラックの間にはさまれそうになった
- 小型チェンソーで小丸太を切断中、首に巻いたタオルがチェンソーへ巻き込まれそうになった
1つ目の事例の原因は、バックホウの誘導作業中に操縦者への声かけを怠り、歩行者の誘導作業を行ったことでした。2つ目の事例の原因は、トラックの誘導作業中に電信柱の位置等、周辺環境や障害物の位置について注意を払うことができていなかったことでした。
3つ目の事例の原因は、作業をする際に首から手ぬぐいを下げている不安全行動でした。
転落によるヒヤリハット
転落によるヒヤリハットについて紹介します。紹介する事例は、以下の3つです。
- トラックの荷台での作業中、雨で濡れた鋼板で足を滑らせてトラックから転落しそうになった
- 足場での組み立て工事中、足場板のツメが破損して板が傾き、足場から転落しそうになった
- 小型タイヤショベルによる工事作業中、路肩を踏み外し、法面を転落しそうになった
1つ目の事例の原因は、雨で鋼板が濡れていたことで滑りやすくなっていることの考慮が足りず、足元の注意を怠ったことでした。2つ目の事例の原因は、作業に使用する足場板の事前の確認を怠り、使用する資材の劣化を把握できていなかったことでした。
3つ目の事例の原因は、作業場所の周辺環境について事前の把握を怠っていたことでした。
ヒヤリハット報告書の記載ポイント
実際に自社でヒヤリハット報告を実施する場合、ヒヤリハット報告書の記載方法を定めておく必要があります。そこでヒヤリハット報告書を作成するポイントとして、以下の3点を紹介します。
- ヒヤリハットが発生した直後の作成が大事
- 5W1Hを意識して作成しよう
- 報告する事象は客観的に記載しよう
ヒヤリハットが発生した直後の作成が大事
報告書作成のタイミングは、ヒヤリハットの発生直後に行いましょう。事例の発生から時が経つと、正確かつ詳細な情報は当事者の記憶から薄れてしまい、適切な情報把握と対策の立案が難しくなります。その結果、実施すべき対策が不十分となり、未然に防げたはずの事故の対処が不十分になるリスクがあります。
5W1Hを意識して作成しよう
また発生したヒヤリハットを正確かつ詳細に社内共有するために、報告する従業員へは5W1H(なぜ、だれが、いつ、どこで、なにを、どのように)に沿った文書作成を徹底させましょう。5W1Hを意識させれば、報告書の内容が具体的になり、発生したヒヤリハットに対して適切な対策を講じることができます。
報告する事象は客観的に記載しよう
報告する内容に、当事者の主観的な考えは必要ありません。当事者の主観的な考えが報告書に盛り込まれてしまうと、必要な情報が抜け落ちていたり正しく報告されないリスクがあります。ヒヤリハットの原因を正しく捉えて対策を講じるためには、従業員へは客観的な事実のみを報告するように意識づけさせましょう。
まとめ
ヒヤリハットのひとつひとつは些細なミスだとしても、積み重なれば大きな事故に繋がるリスクをはらんでいます。それぞれの業界でも確認不足や注意不足が原因で様々な事例が発生していますが、正確な状況把握と再発防止策を立案すれば、大きな事故を未然に防げます。そのため従業員へヒヤリハット報告書を作成させる場合は、紹介したポイントを参考に指導・周知してください。
しかし、発生したヒヤリハットを報告させ、再発防止策を立てるだけでは不十分であり、社内にデータベース化して残すことが重要です。そこでタレントパレットを利用すれば、発生したヒヤリハットに関する情報をデータ化し、各社内システムと統合し分析することが可能です。分析の結果、組織の課題解決のための根拠ある施策を容易に実施できるおすすめの人事システムですので、ぜひお使いください。
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