雇い入れ時健康診断の基礎知識|法令に基づく実施時期や検査項目を解説


雇い入れ時健康診断の基礎知識|法令に基づく実施時期や検査項目を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

従業員の健康管理は企業の重要な責務のひとつです。企業には法令に基づき、従業員に必要な健康診断を受けさせることが求められています。そのため企業経営においては、健康診断に関する基本的な知識を得ておくことが大切です。

このコラムでは、新しく従業員を雇い入れる際に必ず受けさせなくてはならない「雇い入れ時健康診断」を取り上げます。対象者や実施時期、検査項目、費用、事後措置について解説しますので、ぜひお読みください。

雇い入れ時健康診断とは 

企業が従業員に対して実施しなければならない5つの健康診断を、「一般健康診断」と呼びます。このうちのひとつが「雇い入れ時健康診断」です。雇い入れ時健康診断の実施は、労働安全衛生規則第43条に、企業の義務として定められています。

昭和47年の労働省労働基準局長の通達によると、雇い入れ時健康診断の目的は、「労働者の適正配置および入職後の健康管理に資すること」とされています(昭和47年9月18日基発第601号の1)。

雇い入れ時健康診断は、従業員が健康に働き続けるために行うものであることです。本人だけでなく企業にとっても重要なものとして、前向きに取り組むことが求められていると言えるでしょう。

雇い入れ時健康診断受診の対象者

 雇い入れ時健康診断受診の対象者は、「常時使用する労働者」である、と法令に定められています。常時使用する労働者とは、以下の(1)(2)の条件を満たす者のことを指します。

(1)以下のいずれかに該当する場合
・契約で働く期間が定められていない
・契約で働く期間が定められているが、1年以上(※)雇用される予定である
・契約で働く期間が定められているが、すでに1年以上(※)雇用されている
※特定業務従事者の場合は6カ月以上

(2)1週間の労働時間数が、同じ事業所で同種の業務を行う通常の労働者の4分の3以上である場合
上記(1)(2)の条件を満たせば、パート従業員も雇い入れ時健康診断の対象です。

一方、派遣社員の一般健康診断の実施義務は派遣元の企業に課せられます。

従業員に雇い入れ時健康診断を受診させる時期

雇い入れ時健康診断の受診時期について、法令による規定はありません。しかし、多くの場合は、一般的に目安とされる期間に実施されています。雇い入れ時健康診断受診時期の目安と、受診そのものを省略できる場合について見ていきましょう。

受診時期はおおむね入社前3カ月以内または入社後1カ月以内

雇い入れ時健康診断の受診時期は、「おおむね入社前3カ月以内または入社後1カ月以内」と考えるのが一般的です。この考え方は、昭和中期に発出された労働省労働基準局長の通達において、雇い入れ時健康診断の受診時期を「雇い入れの直前または直後」と解釈していたことが根拠となっています。

受診を省略できるケース

前述の考え方に基づき、従業員が入社前3カ月以内に必要な項目を満たす検査を受診したときは、雇い入れ時健康診断は必要ありません。法令では、該当期間での検査受診を証明する健康診断書を提出すれば、従業員は雇い入れ時健康診断を受診しなくてもよいとされています(労働安全衛生規則第43条)。

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雇い入れ時健康診断で検査する項目


雇い入れ時健康診断で必須とされる検査項目は、法令で定められています(労働安全衛生規則第43条)。ここでは、雇い入れ時健康診断での検査項目について確認しましょう。

雇い入れ時健康診断の検査項目

雇い入れ時健康診断では、以下の11項目についての検査が求められています。

1.既往歴・業務歴の調査
2.自覚症状・他覚症状の有無
3.身長・体重・腹囲・聴力・視力
4.胸部X線検査
5.血圧測定
6.貧血検査(血色素量・赤血球数)
7.肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)
8.血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)
9.血糖検査
10.尿検査(尿中の糖・蛋白の有無)
11.心電図検査

定期健康診断との違い

雇い入れ時健康診断以外に企業に義務づけられている従業員の一般健康診断のひとつに、「定期健康診断」があります。定期健康診断は常時使用する労働者を対象に、1年以内に1回以上の頻度で実施するものです。

雇い入れ時健康診断と定期健康診断の検査項目は、定期健康診断に「喀痰検査」が追加される点を除き、共通しています。

一方、省略の可否には両者に違いがあるため注意しましょう。定期健康診断では一定の基準に基づき医師が必要ないと判断すれば、一部検査の省略が認められています。これに対し、雇い入れ時健康診断では検査項目の省略は認められていません。

雇い入れ時健康診断の費用

続いて、雇い入れ時健康診断の費用は誰が負担するか、どのくらいの費用がかかるかについて見ていきましょう。

雇い入れ時健康診断の費用は企業負担が原則

厚生労働省のWebサイトには、よくある質問として「健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するか」という項目が挙げられています。

健康診断の実施は法令により事業者に義務づけられているため、厚生労働省は、「健康診断の費用は事業者が負担すべきものとされる」と述べています。

雇い入れ時健康診断の費用の目安

雇い入れ時健康診断の費用の目安は1〜1.5万円程度です。

自治体が小規模事業所向けの健康診断の機会を提供している場合は、これらの受診により代替することも認められています。その場合、費用をより低く抑えられるかもしれません。ただし、雇い入れ時健康診断に必要な検査項目が満たされていないこともあるため、利用を検討する場合には注意しましょう。
 

雇い入れ時健康診断実施後に企業が行うべきこと


法令では、雇い入れ時健康診断の後にも、企業に複数の措置の実施が義務づけられています(労働安全衛生法第66条)。企業が行わなければならない措置の概要について知っておきましょう。

健康診断の結果の記録

まず、企業は健康診断の結果を受けて「健康診断個人票」を作成し、従業員個別にその内容を記録しなければなりません。この記録は、健康診断の結果を受けて行われた医師などからの意見聴取や措置の内容を含むものとされています(労働安全衛生法第66条の3)。

医師などからの意見聴取

従業員が健康診断を受診した結果、異常の所見があるとされた場合、企業は必要な措置について医師などから意見を聴取することとされています(労働安全衛生法第66条の4)。

聴取において医師が就業制限や休業が必要であると判断した場合、必要に応じて対象の従業員の就業場所や業務内容を変更したり、労働時間を短縮したりするなどの措置を講じる必要があります(労働安全衛生法第66条の5)。

健康診断結果の従業員への通知および指導

企業には健康診断を受診したすべての従業員に対して、その結果を通知する義務があります(労働安全衛生法第66条の6)。

さらに、健康診断の結果を受けて「特に健康保持に努める必要がある」と判断された従業員には、医師や保健師による保健指導を行う努力をしなければなりません。一方、保健指導を受けた従業員は、その指導を元に健康の保持に努めることとされています(労働安全衛生法第66条の7)。
 

まとめ

雇い入れ時健康診断の実施は企業が遵守しなければならない法令上の義務であることから、企業は自社の従業員に必ず受診させる必要があります。

しかしながら、従業員ひとりひとりの受診状況を把握してその結果を管理し、必要な通知や措置を漏れなく行うことは、企業にとって負担になる場合もあるでしょう。

タレントマネジメントシステム「タレントパレット」は、健康診断の管理にも有用です。あらゆる人材データを一元化することによって、雇い入れ時健康診断を含むさまざまな健康診断に関連する情報の管理を容易にし、企業に義務づけられた従業員の健康管理をサポートします。

すべての従業員が健やかに働く職場づくりに、ぜひタレントパレットをお役立てください。

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