こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「1つの重大事故の裏には多くのヒヤリハットがある」といわれています。この割合を統計学的に導き出したものの1つが「ハインリッヒの法則」です。
本記事では「ハインリッヒの法則」の概要、具体例、対策、定着方法などを解説します。
ハインリッヒの法則とは
ハインリッヒの法則とは、労働災害事故発生の経験則から導き出された比率で、「1件の重大事故の裏に、29件の軽微な事故、300件の怪我にいたらない事故がある」というものです。この比率から「1:29:300の法則」とも呼ばれています。
ハインリッヒの法則はいつ生み出されたのか
ハインリッヒの法則を提唱したのは、ハーバード・ウィリアム・ハインリッヒです。彼はアメリカの損害保険会社で統計分析を行っていました。工場の労働災害調査をした結果、ハインリッヒの法則を発見しています。この法則は1931年に出版された「災害防止の科学的研究」で発表されました。
ハインリッヒの法則とヒヤリハットにおける関係性
ビジネスの場で「うっかりメールを誤送信しそうになった」「大事な会議の日を間違えそうになった」などという経験をした人もいるのではないでしょうか。
途中で気が付いて重大な事故やミスには至らずに済んだものの、その一歩手前の状態を「ヒヤリハット」といいます。
ハインリッヒの法則の「300件の怪我に至らない事故」とはヒヤリハットのことを指すのです。つまり、ハインリッヒの法則にしたがうと、ヒヤリハットの数を減少することが、重大事件の発生率の低下につながります。つまり、ヒヤリハットの数を減らすことが、重大事故の防止には欠かせません。
バードの法則、タイ=ピアソンの法則との違い
ハインリッヒの法則と似た分析として、「バードの法則」や、「タイ=ピアソンの法則」があります。
バードの法則は、297社175万件にのぼる事故報告を分析したフランク・バードが1969年に発表しました。「1:10:30:600の法則」ともいわれています。それぞれの内訳は次の通りです。
1:重大災害
10:軽症災害
30:物損事故
600:ヒヤリハット
バードの法則では、600件のヒヤリハットに対して1件の重大災害が起こることがわかります。
「タイ=ピアソンの法則」は、1974年~1975年、イギリスの保険会社のデータ約100万件を分析したタイ=ピアソンによるものです。「1:3:50:80:400」の比率を導き出しました。
1:重大災害
3:軽症災害
50:応急処置
80:物損事故
400:ヒヤリハット
タイ=ピアソンの法則では400件のヒヤリハットに対して1件の重大災害が起こることがわかります。
それぞれ比率は違うものの、どれもヒヤリハット数百件に対し1件の重大災害が起きています。つまり、日常に潜むヒヤリハットを把握し対策を立てることが、重大災害の防止につながるといえるでしょう。
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ハインリッヒの法則の具体例と対策
業界別に様々なヒヤリハットが起こることがあります。ここでは、業界別のヒヤリハットの具体例及び対策例について解説します。
製造業
製造業を行う現場では様々なヒヤリハットが起きています。ここでは、「工場で使用している回転カッターの刃を交換する際、決められた手順を忘れ、うっかり素手で掴んでしまったため手を切りそうになった」という事例についてみていきましょう。
この時は重大事故には至りませんでしたが、放っておくと大けがにつながるため、早めの対策が欠かせません。
対策方法として、「注意喚起のシールを目につくところに貼る」「工具をより安全なものに変える」「カッターを扱う場では必ず専用の手袋を使用するよう再教育する」などがあげられるでしょう。
建設業
建設業の現場でもヒヤリハットが起きることがあります。ここでは、「移動式クレーンで荷下ろしをしている時に、アウトリガーが地面にめり込んだ」事例についてみていきましょう。
アウトリガーとはクレーン車が横転しないようにするための支えです。アウトリガーが地面にのめりこむと、車体横転の危険があり大変危険です。アウトリガーは固い場所に設置しなければなりません。
対策方法としては「作業前の地盤確認」があげられます。
IT企業
IT企業をはじめ、事務作業を行う際にメールに関するヒヤリハット例は少なくありません。ここでは、「うっかりメールに社外秘のファイルを添付して送信しそうになった」という事例についてみていきます。
メールにファイルを添付するのはドラッグアンドドロップで簡単にできてしまうため、添付ファイルの間違いが起こることがあります。重要データを流出すると顧客からの信頼を損なうことにもなるため、十分な注意が欠かせません。
防止するには「全てのファイル名をわかりやすいものにして、瞬時に確認できるようにする」「メール送付前に必ず一度添付ファイルを開いて確認する」といった対策を行いましょう。
ハインリッヒの法則の具体例を知ったうえで、対策や理解が間違っている場合、どういったことが起きるか把握しておくことが大切です。詳細はこちらの記事をご覧ください。
「ハインリッヒの法則間違い」については、こちらの記事をご確認ください。
ハインリッヒの法則を定着させる3つの方法
従業員の防災意識を高めるために、ハインリッヒの法則を活用できます。ハインリッヒの法則を意識することで、「ヒヤリハット対策が重要だ」と考えるようになるでしょう。企業内で「ハインリッヒの法則」を定着させるにはどうしたらいいのでしょうか。ここでは、定着方法について解説します。
現状把握からハインリッヒの法則に対する研修を行う
防災意識の強化や安全教育のために、ハインリッヒの法則やヒヤリハットについて伝えたい場合は研修を行うとよいでしょう。
その際、ただ一般論としてハインリッヒの法則を伝えるだけでなく、自社の中にどれだけヒヤリハットがあるのか、体験談を集めることも大切です。
ヒヤリハットの具体的な事案を知り、それに対して対策を立てることが重大事故の防止につながります。
ハインリッヒの法則に関する定期的なミーティングの場を設ける
安全意識は時間が経つと薄れていくことも少なくありません。定期的なミーティングを行うことで防災意識を高めましょう。
ヒヤリハットを感じた場面を共有し、具体的な対策を立てることが社内の防災意識向上につながります。
ヒヤリハットやヒューマンエラーの事例を共有すると、「注意力不足」「思い込み」「誤解」など、個人の責任だけの問題だと思うこともあるでしょう。しかし、企業として防災対策を立てる際は、個人の力だけに頼らず、組織の仕組みとしてどう安全を確保できるか考えることが大切です。
また、他の人のヒヤリハットを聞き、その都度、発生原因や対策について考えることが自身の安全意識向上にもつながります。ヒヤリハットを防止することが重大事故の防止につながるという意識を社内に根付かせ、安全意識向上につなげましょう。
ヒヤリハットを感じた場合報告書作成を徹底する
重大事故を防止するためには、ヒヤリハットを共有することが大切になります。そのためには、従業員がヒヤリハットを感じた場合、報告書を作成する仕組みを作りましょう。
ヒヤリハット情報を共有する際は、個人が広く特定されないよう配慮することで、報告書を出しやすくなります。人によって「ヒヤリハット」を感じるレベルは異なる点を把握しておかなければなりません。
また、自分自身が「ヒヤリハット」を体験せずとも、社内の「ここが危ない」「このままだと重大事故が起こりそうだ」と感じることもあるでしょう。そのような危険度の高い業務や場所に気が付いた人から適宜報告を受けることも大切です。
まとめ
ハインリッヒの法則は、1件の重大事故の裏には300件のヒヤリハットが隠れているということを表しています。
ヒヤリハットを防止することが、重大事故の防止につながります。ヒヤリハットを防止するためには、従業員のヒヤリハット体験を報告し、社内で共有して皆で防止対策を練ることが大切です。
ヒヤリハットを防止するには、個人の心がけだけに任せないことが大切です。社内の仕組みとしてヒヤリハットを防止できるよう、体制を整えていきましょう。
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