こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
組織内で優秀な能力を持つ女性や少数派の人たちが、思うように出世の機会を得られないことを「ガラスの天井」といいます。組織を活性化させるためには、障害となっている部分をできるだけ取り除く施策を実行していく必要があります。
この記事では、ガラスの天井の意味や原因、どのようにすれば解消していくのかを詳しく解説します。
ガラスの天井とは
ガラスの天井とは、能力や実績などに関係なく、女性や少数派(マイノリティー)の人たちの社会的な活躍を妨げる見えない壁を指すものです。女性の社会的進出が本格的に始まった1980年代頃から使われ始めた言葉であり、政治やビジネスの領域で用いられます。
ガラスの天井の意味
ガラスの天井は「glass ceiling」の訳語であり、組織内で優秀な能力を備えている人材が性別や人種などを理由に、低い地位に甘んじることを強いられている状態を表すものです。キャリアップを阻む「見えない天井」という言葉になぞらえた比喩表現だといえます。
ガラスの天井を解消していく取り組みが、職場における男女平等参画の実現において重要な課題となっています。
ガラスの天井の由来
ガラスの天井は、1978年にアメリカのコンサルタントであるマリリン・ローデンが女性のキャリアパスを阻んでいる見えない障害を意味する言葉として用いたのが始まりとされています。1991年にアメリカ連邦政府の労働省がガラスの天井という言葉を公的に使用し、女性や少数派における組織内の昇進について、ガラスの天井によって阻まれていることを認めました。
なぜガラスの天井があるのか
ガラスの天井がある理由として、日本においては「男は外で仕事、女は家で家事」という古い時代の名残が影響しています。例えば、単身赴任という言葉を聞いて女性をイメージする人が少なかったり、消防士はたくましい男性だというイメージがあったりするジェンダー・ステレオタイプが残っているといえるでしょう。
また、電通が2021年3月に公表した「ジェンダーに関する意識調査」において、全体の64.6%が「社会全体で男性のほうが優遇されていると感じている」との回答があります。上記のような要因はあくまで一例ですが、様々な要因が絡み合ってガラスの天井が生じていると考えられています。
ガラスの天井の具体例
ガラスの天井について、より深く学ぶには具体的な事例を把握しておきましょう。ここでは、仕事面と家庭面の両方から見ていきます。
仕事面の具体例
仕事面でのガラスの天井としては、昇進問題などがあげられます。実力や実績があっても女性の昇進には壁があり、役員クラスまで昇進するのはまだまだ難しい部分があるでしょう。
内閣府男女共同参画局が2022年に公表している「諸外国における企業役員の女性登用について」によれば、トップのフランスで女性役員の比率が45.3%であるのに対して、日本は12.6%と相対的に低い水準にあります。
家庭面の具体例
総務省が公表している2016年度の「社会生活基本調査」において、日本では夫が1日あたり1時間23分を家事や育児に充てていますが、妻は7時間34分となっており、その差は5倍近くの開きがあります。
家事の負担が大きければ、残業のある働き方はできないので、時短勤務やパート勤務などを選択せざるを得ず、夫婦間で収入格差が生じる要因にもなります。また、仕事を続けたくても育児のために断念しないといけない状況に陥りやすいともいえるでしょう。
現在の日本におけるガラスの天井
次は、日本におけるガラスの天井について見ていきましょう。ガラスの天井指数や評価項目なども解説します。
ガラスの天井指数とは
ガラスの天井指数とは、OECD(経済協力開発機構)加盟国の先進29ヶ国において、女性が男性と比較して、どのくらい平等に扱われているかを指数化したものです。女性の労働参加率、高い役職への進出率、賃金格差、高等教育を受けた人の割合などをもとに算出した指標です。
ガラスの天井指数の評価項目
イギリスのエコノミスト誌では、毎年国際女性デーにあたる3月8日に、次の10項目の要素をもとにした「ガラスの天井指数(GCI)」を公表しています。
GCIの評価項目
・高等教育 ・賃金格差 ・国会議員 ・役員 ・管理職 ・GMAT(経営大学院)受験者数 ・労働参画率 ・育児費用 ・女性の育児休暇 ・男性の育児休暇 |
日本はOECD加盟国の29ヶ国中、2021年のランキングでは28位となっています。
日本は政治と経済で順位が低い
日本のランキングが低くなっている原因は、特にGMAT受験者数と国会議員の数が最下位であり、役員数も最下位から2番目という点にあります。政治やビジネス領域で女性の社会進出が出遅れており、全体として低い結果になっているといえるでしょう。
壊れたはしごとは
ガラスの天井と並んで、「壊れたはしご」という表現も使われています。どのような意味であるのかを解説します。
壊れたはしごの意味とは
マッキンゼー・アンド・カンパニーとLeanIn.Orgの調査によって、職場における女性に関するレポート「Women in the Workplace 2019」がまとめられています。レポートによれば、男性100人に対して、ファーストレベルの管理職に就いている女性は72人であり、管理職全体で見ると女性の割合は38%という結果になっています。
ファーストレベルにおける管理職に就く機会が少ないことが、その後のキャリアを阻む原因になっていると考えられており、壊れたはしごという表現が使われているのです。
壊れたはしごとガラスの天井の違い
壊れたはしごという考えが提唱されるまでは、男女のキャリアの違いはガラスの天井にあると考えられていました。しかし、壊れたはしごの考えが広まるにつれて、女性の社会進出は最初の一段目から壊れており、なかなか上に昇れないことが明らかになりました。
ガラスの天井を解消するために、あらゆる人事データを統合して分析してみよう
個々の従業員が生き生きとした気持ちで働いていくには、ガラスの天井を解消する組織づくりが重要です。従業員の適性や能力を客観的に判断するには、人事労務に役立つツールの活用も検討してみましょう。
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ガラスの天井をなくすメリット
ガラスの天井を解消することは、企業にとっても様々なメリットがあります。主なメリットとして、次の4つがあげられます。
ガラスの天井を解消する4つのメリット
・投資家・運用会社からの評価が上がる ・会社が利益を出しやすい傾向にある ・女性の離職率が下がる ・新卒が集まりやすい |
各メリットについて、さらに詳しく解説します。
投資家・運用会社からの評価が上がる
ガラスの天井が組織内で解消すれば、投資家などからの評価が高まることが期待できます。投資家の多くが、企業業績と女性活躍に関係性があると考えており、女性がどれくらい活躍しているかを投資判断にしています。
そのため、女性の役員や管理職を積極的に登用する企業は社会的評価が高まりやすいでしょう。
会社が利益を出しやすい傾向にある
女性役員の比率が高い企業のほうが、女性役員がいない企業よりも、自己資本率やEBITマージン(利払い前・税引き前利益と売上高の比率)が高くなる傾向が見られます。利益をだしやすい組織づくりのために、女性の登用は欠かせない部分があるといえるでしょう。
女性の離職率が下がる
女性を積極的に登用することは、女性従業員の離職率を下げることにつながります。多くの管理職に女性が起用されていれば、若手従業員にとって将来のキャリアを描きやすくなるはずです。
新卒が集まりやすい
女性の登用が多い企業であれば、多様性を尊重していると考えられるので、採用活動における応募が集まりやすくなるでしょう。中長期的な人材戦略を考える上でも、女性の起用は企業にとって重要な経営課題です。
ガラスの天井を取り除くには
ガラスの天井を取り除くには、従業員の意識を変えるために制度の見直しや働き方に対する考えを柔軟に持つ必要があります。次のような取り組みを継続的に行うのが大切です。
ガラスの天井を取り除くための取り組み
・従業員面談を行う ・社内制度を整える ・産休・育休をとりやすくする ・働き方に柔軟性をもたせる ・管理職に女性を配置する ・外部企業に相談・委託する |
それぞれの取り組みについて解説します。
従業員面談を行う
ガラスの天井を取り除くには、まず従業員との面談を定期的に行いましょう。女性従業員だけでなく、男性従業員からも意見を聞くことで組織の現状が浮き彫りになってくるはずです。
女性従業員がどのようなキャリアを望んでいるかを聞いたり、自社が抱えている問題点について率直な意見を尋ねたりしてみましょう。社内の意見を集めて、必要な仕組みづくりを進めていきます。
社内制度を整える
人事評価制度の見直しなど、社内制度を改めて点検することも必要です。直属の上司からの評価だけでなく、多角的な視点で女性従業員の仕事ぶりを評価する仕組みを整えてみましょう。
また、賃金形態の見直しや福利厚生制度の改善などもあわせて行うと効果的です。
産休・育休をとりやすくする
福利厚生制度の一環として、多くの企業で育児休業や産前・産後休業の制度を設けています。しかし、実際に取得しようとすると理解不足や環境が整っておらず、効果的に運用できないところがあるといえるでしょう。
会社の状況にかかわらず、全従業員が産休や育休を取りやすい仕組みを整えることが重要です。
働き方に柔軟性をもたせる
近年ではフレックスタイム制の採用やリモートワークの普及などによって、様々な働き方が受け入れられつつあります。時間や場所にとらわれない働き方ができることで、女性従業員が仕事を続けやすくなるでしょう。
子育てをしながら仕事をしたいという女性の支援を充実させていくのが大切です。
管理職に女性を配置する
少子高齢化や労働人口の減少といった背景がある日本社会において、女性の社会進出は多くの良いメリットをもたらします。女性従業員を管理職に起用することは、企業の安定的な成長のためにも不可欠だといえるでしょう。
外部企業に相談・委託する
ガラスの天井を取り除こうとしても、従業員の多い会社や業歴の長い会社であれば、現実的な課題にぶつかる部分も多いでしょう。自社に社内制度を整えたり、環境整備を行ったりするノウハウが不足しているときは、外部企業に相談してみるのも1つの方法です。
客観的な立場の第三者に組織改革を委託すれば、これまでになかった発想で取り組みを進めていけるはずです。
外部企業に相談するメリット
外部企業に依頼をするメリットとしては、自社にないノウハウを提供してもらえる他に、コスト面での影響も大きくあります。あらかじめ委託する業務範囲を定めておけば、無駄なく業務を委託できますし、従業員の負担軽減にもつながるでしょう。
経済的なコストだけでなく、人的コストの削減にもつながるので、積極的に検討してみるのが大切です。
まとめ
ガラスの天井を解消することで企業イメージがアップし、より働きやすい職場環境を構築できます。しかし、従業員の意識を変えていくためには、継続した取り組みを行っていく必要があります。
そこで重要なカギを握るのが、「タレントマネジメントシステム」です。タレントマネジメントシステムとは、人材の能力やスキルを最大限に発揮してもらうために、人材データを集約・一元管理して、高度な意思決定を可能にするシステムを指します。
それぞれの人材のスキルや保有資格、経歴などのデータをもとに、計画的な人材育成や高度な配置戦略を練るために活用できます。タレントマネジメントシステムである『タレントパレット』は、データに基づいた科学的な人事を実現するためのシステムです。
あらゆる人事データを蓄積・統合することにより、精度の高い分析を行えるので、客観的なデータから人材を評価できます。「組織を活性化したい」「女性が活躍する場を増やしたい」という方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。