皆勤手当の相場やメリットは?遅刻や早退時の扱いと廃止における注意点も解説


皆勤手当の相場やメリットは?遅刻や早退時の扱いと廃止における注意点も解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

皆勤手当とは、1日も休むことなく働いた労働者に出る手当です。従業員のモチベーションをアップさせるため、皆勤手当を設けようと考えている企業も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、皆勤手当や精勤手当の定義に加え、皆勤手当を導入している業種、有給の利用や遅刻・早退があった場合の扱いについても解説しています。

また、皆勤手当を廃止する際に、トラブルを避けるための大切なポイントにみふれているため、注意事項をチェックしてみましょう。

皆勤手当とは

皆勤手当とは、設定されている出勤日に、1日も仕事を休まなかった人に支給される手当のことです。また、皆勤手当は法廷手当ではないため、すべての会社に皆勤手当が設定されているわけではありません。

皆勤手当は、通勤手当や出張手当、家族手当や子女教育手当などのように、会社が手当をつけるかどうかを自由に決められる「任意手当」に含まれます。

法定手当とは、労働基準法に定められている割増賃金のことです。法律に規定されている要件を満たした場合、必ず支払わなければなりません。法定手当には、「法定時間外労働手当(残業手当)」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」があります。

精勤手当との違い

皆勤手当とよく似た手当に精勤手当があります。精勤手当とは、仕事の内容や努力、結果に応じて支給される手当です。

精勤手当も含めて皆勤手当として支給している会社もあります。精勤手当も任意手当にあたるため、会社がその内容や条件を自由に設定できる点は同様です。

皆勤手当には税金がかかるか?

皆勤手当はほかの手当と同様に給与として支払われるため、課税対象です。支給のタイミングや基本給に含めるか否かに関わりなく、給与として支払われる限り、課税対象になります。

ただし、15万円以内の通勤手当や旅費として支払われる出張手当は非課税です。

皆勤手当の相場



皆勤手当は任意手当のため、会社が自由に設定できます。2020年の厚生労働省による調査(就労条件総合調査)によれば、皆勤手当の相場は月額9000円です。(精勤手当や通勤手当含む))

なお、従業員数が多い企業ほど、皆勤手当の金額は少ない傾向にあります。従業員100人未満の企業では、皆勤手当の相場が11,2000円であるのに対し、1000人未満の企業では7,600円、1000人以上の企業では6,400円です。

また、皆勤手当自体を廃止する企業も少なくありません。これは、そもそも労働契約を結んでいる状態であれば、労務を提供することは義務であるため、出勤に対して手当を支給することに疑問があるためです。

参照|厚生労働「省令和2年就労条件総合調査 結果の概況

皆勤手当を導入している業種

ここでは、皆勤手当は、どのような業種で導入されているかを解説していきます。

中小企業

大企業にくらべると中小企業は皆勤手当の金額相場は高く、皆勤手当を導入している企業も多い傾向です。

中小企業とは、出資総額3億円以下・従業員数300人以下の会社のことを意味します。1000人以上の社員が在籍する企業にくらべると、中小企業では一人ひとりが業務に欠かせない人員といえるでしょう。

従業員が少ない企業ほど、ひとりが欠勤すると仕事への影響や周りへの負担が大きくなりやすいため、休まないことの意義は大きいと想定されます。欠勤を減らすことで業務が滞らない皆勤手当を設定している中小企業は多い状況です。

製造業

製造業は、原材料を加工し、商品そのものや商品に必要な材料を作る産業です。衣類・繊維関連、食品関連、機械関連など多岐に渡り、精度の高い製品を作る会社も多いでしょう。

製造業は、納期とスケジュールが定められているため、業務の遅れは会社の業績や信用に直接影響します。ひとりの欠員が製造過程を遅らせることにもなりかねないため、出勤状況がそのまま生産性につながるといえるでしょう。そのため、製造業では皆勤手当を設けている企業が多いといえます。

運送業

運送業は、モノやヒトを運ぶ仕事です。鉄道・自動車・バイクなどを使う陸運、コンテナ船やタンカーを使用する海運、航空機を用いて輸送する空運などがあります。モノを運ぶドライバーなどの人員が必要になるため、欠員による影響力が大きいといえるでしょう。

しかし、運送業の慢性的な人員不足は社会問題として耳にすることも多いのは事実です。ドライバーの過労も度々ニュースになっていることから、欠員による負担のしわ寄せを防ぐ目的で、皆勤手当を設けている運送会社は多いといえます。

サービス業

サービス業と呼ばれる業種には以下のようにたくさんの種類があります。

  • 飲食店や宿泊施設、美容室やエステ
  • クリーニング店や印刷業、レンタル業や運送業、リフォームやメンテナンス、塾や英会話教室


特に、接客業は、顧客とのコミュニケーションが売上を左右するため、欠員を防ぐことで、安定した経営を続けるための大切なポイントといえるでしょう。たとえば、美容室やマッサージ店であれば「いつもの先生にお願いしたい」と希望する顧客も多いと想定されます。

また、欠員が出ることで客数が減り、売上が減ってしまうことも想定可能です。そのため、サービス業でも皆勤手当を設定している企業は少なくありません。

砂利採取業

砂利採取業は、砂利の採取を行う業種です。 営利や非営利、個人や法人に関係なく、砂利の採取や洗浄を反復継続して行うことで、砂利採取法の適用を受けた業者を差します。

砂利には、河川砂利・山砂利・陸砂利・海砂利などが含まれ、採取後は、粒の大きさなどをそろえて需要者側に供給する仕事です。

採取や運搬の作業は反復する必要があるため、砂利採取業も欠員が出た場合、供給までのスケジュールに影響が出ます。そのため、皆勤手当を設けているケースも多くなっている状況です。

採石業

採石業は、山や平地にある岩石や砂を採取し、精製したのち製品として出荷する仕事です。採石業は供給先によって、砕石業・石材採取業・工業用原料採取業などに分けられます。

どの業態でも重機の操縦や運搬、加工などに人員が必要なため、過程で欠員が出れば、業務が滞ってしまうと想定されるでしょう。また、肉体労働でもあるため、従業員のモチベーションアップも目的として、皆勤手当を設けている採石業者もあります。

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皆勤手当を出すメリット



皆勤手当を設けた場合、人件費は増えます。しかし、皆勤手当にはよい効果も期待できることから、会社にとってどのようなメリットがあるのかをみていきましょう。

職務怠慢の予防策になる

皆勤手当は、欠勤なく勤め上げた際に支給される手当のため、「休まず出勤しよう」という動機づけになります。特に、人員の少ない中小企業や欠員が出ると仕事が回らなくなってしまう業種では、ひとりの欠員が会社に中長期的なダメージを与えることもあるでしょう。

また、遅刻や無断欠勤など、職務怠慢に該当する行為が見られる従業員に対しては、無遅刻無欠勤による手当支給を用意したほうが結果的に職務怠慢を防ぐ効果が期待できるケースもあります。

「欠勤」については、こちらの記事をご確認ください。

モチベーションアップにつながる

感染症や過労の場合は別ですが、努力して出勤し続けたことが皆勤手当によって評価されることで、従業員のモチベーションアップが期待できるでしょう。

また、休まず出勤するためには、体調管理や生活リズムの調整なども必要です。たとえば、飲酒量や食事の内容を見直したり、適度な運動習慣を心がけようとする心理的な側面も期待できます。

結果的に、そうした調整や習慣がポテンシャルを発揮するきっかけになり、従業員個人の成績によい影響をもたらすこともあるでしょう。

有給や早退・遅刻があった場合

ここでは、有給休暇の取得や早退・遅刻があった場合、皆勤手当をどう設定すればよいかを解説します。

有給をとった場合

有給休暇は「休暇」であるものの、皆勤手当の条件に影響を与えることはありません。企業としても、従業員が有給休暇を取得した場合でも、皆勤手当は支給されると考えましょう。

理由は、労働基準法附則第136条で定められている、「使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」という規定があるためです。

この規定では、賞与の計算において、年休取得を欠勤扱いとし、不利益に扱うことは無効であるという判決の根拠にもなっていいます。任意手当である皆勤手当においても同様に考えることができるでしょう。

したがって、有給休暇を取得した場合でも欠勤扱いにはせず、その他の出勤を皆勤手当支給の基準にしなければなりません。

早退・遅刻があった場合

早退や遅刻は、欠勤したわけではなく、一定時間は出勤していたことになるため、皆勤手当支給の判断は難しいといえるでしょう。結論からいえば、早退や遅刻をどのように扱うかは、企業ごとのルールや就業規則に委ねられます。

たとえば、早退や遅刻を2回した場合は1日の欠勤と見なしたり、早退や遅刻の時刻でカウントしたりするケースもあるため、自社の就業規則を見直すことも大切です。

仮に、判断が難しい場合は、早退や遅刻に関する判断を就業規則に加えれば、不満や不公平感が生まれにくくなります。

皆勤手当に関する注意点

ここでは、皆勤手当に関して注意しておきたいポイントを確認しておきましょう。

同一労働同一賃金に反しないようにする

皆勤手当は賃金にあたるため、同一労働同一賃金の原則に違反していないかに注意が必要です。たとえば、同じ仕事内容・仕事量を行っている場合でも、正社員にだけ皆勤手当が支給され、パート・アルバイトには支給されない状態は違反になります。

また、皆勤手当がプラスされた従業員のほうが負担は少ないのに給与は多いという類の不公平感がないように賃金体系の見直しも大切です。

就業規則にルールを明示しておく

皆勤手当が支給される要件が就業規則に明記されているかどうかも確認しておきましょう。遅刻や早退、出張時、営業からの直帰など勤務時間にはイレギュラーがあります。

「○○で課金手当がつかないなんて聞いていない」という事態にならないためにも細かいルールも就業規則で定めておきましょう。また、そのルールを従業員に周知しておくことも必要です。

手当廃止が合理性のない不利益変更にならないようにする

皆勤手当を廃止したい場合は、「合理性のない不利益変更」にあたらないかどうか、慎重に判断しましょう。合理性のない不利益変更とは、合理的な理由がないにも関わらず、従業員にとって不利益な変更が一方的にされる状態を差します。

合理性の不利益変更は、「支給実績があるかどうか」もポイントです。たとえば、これまで皆勤手当を支給してきた実績があるとして、突然なくなった場合は、従業員にとっての不利益に該当する可能性が高いでしょう。

また、支給実績のある手当の廃止を行う際は、基本的に労働者の同意が必要です。加えて、廃止した手当を基本給に転化したり、全員に支給できる可能性のある手当に変更したりしなければなりません。

「時代遅れだから」「仕事の内容にこだわってほしいから」という一方的な理由で廃止を決行すると、トラブルになると想定されます。そのため、皆勤手当の変更や廃止は慎重に進めていきましょう。

まとめ

皆勤手当は、従業員のモチベーションアップや職務怠慢の予防策になります。しかし、出勤は労働契約のもと当たり前のもので、ほかの賞与に予算を回すべきだとする企業も増加傾向です。

皆勤手当の見直しは、自社の給与体制が同一労働同一賃金に即しているかを見直すきっかけにもなるでしょう。ただし、合理性のない不利益変更にならないよう注意も必要です。

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