こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
フレックスタイム制において基本的な枠組みとなるコアタイムを導入するケースは多いといえます。従業員の働きやすさにつながるだけでなく、企業の生産性の向上や長期的な発展においても重視されている状況です。しかし、コアタイムをどう取り入れたら自社にとって良いのか、明確に把握できていないというケースもあるのではないでしょうか。
この記事では、コアタイムの設定方法や注意点、フレキシブルタイムとの関係について解説します。組織の実態に合わせた働き方の制度設計をしたい場合は参考にしてみましょう。
フレックスタイム制のコアタイムとは
フレックスタイム制を導入する際には、そのシステム構築において重要な枠組みであるコアタイムの採用についても検討する必要があります。ここからは、コアタイムがどういったものかについてみていきましょう。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、従業員が出社と退社の時刻を自由に決められる、柔軟な働き方やワークライフバランスの推進ができるように設計された制度です。ただし、従業員は所定労働時間を満たして働かなくてはならないなど、これまでの勤怠管理とは異なる対応が必要となります。
フレックスタイム制では、従来の働き方よりも、従業員はそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方が可能になるといえるでしょう。一方で、企業にとっては管理コストの発生やコミュニケーション不足による生産性の低下などといった問題が起こりうるため、コアタイムの設定と活用が重要です。
「フレックスタイム制」については、こちらの記事をご確認ください。
コアタイムとは
コアタイムとは、フレックスタイム制において「すべての従業員が必ず勤務している時間帯」のことです。たとえば、10時~12時、13時~15時がコアタイムと決まっていれば、その時間帯はどの従業員も働かなければなりません。
メンバー全員が勤務しているコアタイムを設定することによって、プロジェクトの進捗状況の共有や会議などのコミュニケーションがスムーズに行えることから、生産性の向上を期待できます。
ただし、コアタイムの導入は必須ではありません。長さや頻度、時間帯は企業の判断で自由に設定可能です。コアタイムを設けないスーパーフレックスタイム制を採用している大企業もあります。
チームの目標達成にはメンバーとのコミュニケーションや情報共有が不可欠です。そのため、自社の現状に合わせて、コアタイムを設定することが大切だといえるでしょう。
コアタイムとフレキシブルタイム
フレックスタイム制において、コアタイムとフレキシブルタイムはセットとして捉える枠組みです。違いや概要についてみていきましょう。
フレキシブルタイムとは
フレキシブルタイムとは、出勤・退勤を従業員が自由に選択できる時間帯を意味します。一般的にフレキシブルタイムは、コアタイムの前後に設定される時間帯です。従業員はコアタイムを軸に、それぞれの生活に合わせて出勤と退勤の時刻を調節しなければなりません。
コアタイムとフレキシブルタイムの関係
業務をスムーズに進めるうえで必要なコアタイム、自由に勤務時間を選べるフレキシブルタイムはどちらも企業が独自に定めることが可能です。そのため、バランスの取り方によって、従業員の働きやすさに影響を及ぼします。
必ず勤務すべきコアタイムといつ出退勤しても良いフレキシブルタイムの双方を適切に設定すれば、従業員は育児や介護などの様々なシーンに合わせて働くことが可能です。多様的な働き方に対応することもできるでしょう。
ただし、コアタイムを1日の労働時間と同じ程度にしたり、フレキシブルタイムが極端に短かったりする場合には働きにくく不均衡な設計になるため、法律的にフレックスタイム制と認められないことがあります。
コアタイムとフレキシブルタイムは企業や部署ごとに最適なバランスがあるため、導入の際には事前の検証が重要です。フレキシブルタイムについてより知りたい方はこちらの記事を参照しましょう。
「フレキシブルタイム」については、こちらの記事をご確認ください。
コアタイムを導入する目的
フレックスタイム制にコアタイムを取り入れる目的について解説します。とくに、管理コストの削減については企業側にもメリットがあるといえるでしょう。
柔軟な働き方ができる
コアタイムを設定すれば、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせて働くことができます。たとえば、早朝から出社して早めに退勤したり、ラッシュ時間をずらして出勤したり、子どもの送り迎えに合わせて出退勤の時刻を調整するといった、臨機応変な対応が可能です。
企業としても、より多くの従業員が柔軟に働けるようになれば、長期的な雇用につながるため、結果的に企業が発展しやすくなるでしょう。
管理コストを削減できる
フレックスタイム制をこれから導入する場合、コアタイムを設定すれば勤怠管理のコストだけでなく、業務管理のコストも削減できます。メンバー全員が共通して勤務するコアタイムによって、プロジェクトの進捗管理や社内外のコミュニケーションを円滑に行うことができ、生産性が向上するためです。
コアタイムはコスト削減だけでなく、業務管理の効率化や生産性アップのために必要な時間といえます。フレックスタイム制による勤怠管理に悩んでいる場合、コアタイムの導入によって管理しやすくなるでしょう。
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コアタイム導入の3つのメリット
ここからは、コアタイムを採用した場合の従業員と企業のメリットを3つみていきましょう。とくに、離職率改善や離職防止にも役立つ点は今後の企業の発展にも影響します。
1. 多様な人材の確保や離職防止につながる
コアタイムを軸にした場合、従業員はライフスタイルに合わせた働き方が可能です。多くの人にとって働きやすい環境が整えば、結果として多様な人材を採用できます。リスキリング(必要なスキルを学び直すこと)や子育て、介護など多様なライフイベントに対して時間の融通を利かせて働くことが可能です。
企業として、柔軟な勤務体系が整っていれば、従業員はプライベートと仕事の両方に対応できるため退職せずに働き続けられます。結果として、企業側には持続的な労働力の確保できるという好循環が生まれるでしょう。
2. 効率的にミーティングやコミュニケーションができる
メンバー全員が勤務するコアタイムによって会議や連絡調整、コミュニケーションがスムーズに進められることで、より効果的な目標達成や生産性の向上が期待できます。従来の働き方よりもメンバーと共有する時間は短くなりますが、コアタイムを活用すればコミュニケーションや認識のすり合わせなど、業務上必要なことに集中して取り組める点はメリットだといえるでしょう。
また、決まった時間帯に円滑なコミュニケーションが取れることが把握できるため、メンバーの心理的安全性やエンゲージメント、生産性の向上を維持も可能です。
3.通勤ラッシュの時間帯を避けられる
コアタイムを10時以降などラッシュ時間より遅く設定すれば、満員電車や渋滞を避けて快適に通勤できるため、従業員のストレスの緩和が期待できます。フレキシブルタイムと合わせて、見直すことで従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
コアタイム導入のデメリット
従来型の9時~17時の働き方とは枠組みが異なるため、コアタイム導入にはデメリットがあります。とくに取引先との時間帯のズレなどは、従業員の働き方と合わせて確認する必要があるといえるでしょう。
取引先との業務が滞るおそれ
コアタイムを導入する際は、取引先への対応方法を事前に決めておきましょう。自社の従業員の就業時間が取引先と合わず場合、連絡や業務の進展状況が遅れる可能性があるためです。
たとえば、必ず連絡が取れる時間帯をステークホルダーに周知したり、会社やチーム内で対応ルールを予め決めて、取引先との報連相をスムーズに進めるようにしましょう。また、取引先に周知しておくことも効果的な方法のひとつです。
労働時間を忖度しがちになる
コアタイムやフレキシブルタイムを導入した場合であっても会社やチーム内の同調圧力に対して不本意ながらも合わせてしまい、他のメンバー達と同じ時間に出退勤する従業員も少なくありません。
従業員に労働時間を忖度させてしまっては、フレックスタイム制の目的である柔軟な働き方ができなくなってしまいます。また、働きにくさは離職につながり、結果として企業の発展から遠ざかるでしょう。
そのため、管理職はコアタイムが本当に活用できているか定期的に見直し、必要であれば個人ごとの勤務時間の管理を徹底する必要もあります。
より詳しいフレックスタイム制のデメリットを知りたい場合は、こちらの記事を参照してみましょう。
「フレックスタイム制デメリット」については、こちらの記事をご確認ください。
コアタイムの設定方法
コアタイムを採用するには、フレックスタイム制度とコアタイムを導入する旨を就業規則などに規定し、労使協定で所定の事項を定める必要があります。ここでは、コアタイムの設定方法について詳しくみていきましょう。
就業規則に明記する
コアタイムを導入するためには、フレックスタイム制の採用の文言である「就業規則に始業・終業時間を従業員本人の決定に委ねる旨」を明記します。また、フレックスタイム制を導入する場合は、就業規則を変更しているため、必ず労働基準監督署に報告しましょう。
労使協定を結ぶ
フレックスタイム制やコアタイムを採用するにあたって、労使協定では基本的な枠組みである6項目を定めましょう。コアタイムとともにフレキシブルタイムを設定する場合は、労使協定内にその旨を明記します。
労使協定において定める6項目
1. 対象となる労働者の範囲
2. 清算期間
3. 清算期間における総労働時間
4. 標準となる1日の労働時間
5. コアタイム(任意)
6. フレキシブルタイム(任意)
引用:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き
就業規則に定めることと労使協定を締結すれば、フレックスタイム制およびコアタイム・フレキシブルタイムの導入が可能です。また、コアタイムのみの導入の場合、精算期間が1ヶ月以上の場合も労使協定を労働基準監督署へ提出する必要があります。
コアタイムを設定するときの3つの注意点
ここでは、コアタイムを設定する際に、押さえておくべき3つの注意点についてみていきましょう。
1. 多くの従業員にとって働きやすい時間帯にする
より多くの従業員にとって働きやすい時間帯をコアタイムにすることが大切です。適切なコアタイムの長さや頻度、時間帯は組織や部署ごとに違います。対象となるメンバーへ事前にヒアリングを行い、どの時間帯や長さが適しているか、確認してからコアタイムを設定しましょう。
コアタイムとフレキシブルタイムをバランスよく設定できれば、従業員が出退勤の時刻を自由に選んで無理なく働き続けられます。そのため、結果として継続的な雇用や企業の評判の向上につながるでしょう。
2. 遅刻や早退への対応を事前に決めておく
コアタイムを設定することで、今までよりも遅刻や早退といった勤怠管理の問題が起こりやすくなる可能性があります。仮に、ペナルティーを設ける場合は、就業規則に別途規定を定めましょう。
フレックスタイムは、従業員が自由に出退勤の時間を決められる制度です。コアタイムを設定した場合は開始から終了時間まで、従業員は必ず勤務している必要があります。そのため、コアタイムが始まる時刻に遅れたら遅刻、コアタイム中に退勤すれば早退と判断できるでしょう。
ただし、遅刻や早退をした場合であってもすぐに賃金カットとはなりません。フレックスタイム制では、1日あたりの労働時間ではなく、一定期間内(清算期間)で実際に勤務した時間の合計によって賃金が計算されるためです。
コアタイムを採用する場合には、遅刻や早退を想定して就業規則に規定を設けるなど対処方法を予め定めておくと、勤怠管理がスムーズにできるでしょう。
3.清算期間における賃金の支払い方法が従来と異なる
フレックスタイム制を設定する際には、賃金の計算方法がこれまでとは異なるため注意が必要です。フレックスタイムでは、次のように清算期間における総労働時間と実際に勤務した時間との過不足に応じて給与の計算をします。
・実労働時間が総労働時間よりも多いときは超過分の賃金を支払う
・総労働時間に足りない場合は不足分を賃金から控除、もしくは翌月の総労働時間に加算して労働させる
なお、2019年4月の労働基準法改正により、清算期間の上限は3ヶ月となりました。清算期間が1ヶ月を超える場合は労使協定を所轄の労働基準監督所長に届け出る必要があります。
コアタイム設定・導入時のよくあるQ&A
ここでは、コアタイムを採用する際に、よくある質問と回答をみていきましょう。企業ごとの状況に合わせて導入を検討する必要があるといえます。
そもそもコアタイムとは?
コアタイムとはフレックスタイム制において、従業員が必ず勤務しなくてはならない時間帯のことです。コアタイムの設定の有無や長さ、頻度、時間帯は企業・部署ごとに設定可能できます。
コアタイムを導入する必要があるか?
必ずしも取り入れる必要はありません。しかし、コアタイムを採用すれば勤怠管理やコミュニケーションが集中して行えるため、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
コアタイムの長さはどのくらいがいい?
コアタイムは自社ごとに事前のヒアリングを行い、より多くの従業員にとって働きやすい時間帯を採用しましょう。コアタイムを長時間に設定すれば、意見の交換がしやすく業務の効率化を図れます。しかし、拘束時間の長さは従業員の働きにくさにつながるため配慮が必要です。
従業員がコアタイムに遅刻したらどうなる?
フレックスタイムの制度上、清算期間内に総労働時間をクリアしていれば賃金控除はできません。遅刻に対してペナルティを設ける場合は、就業規則にその旨を定める必要があります。
まとめ
フレックスタイム制のコアタイムについて解説しました。コアタイムとフレキシブルタイムをバランスよく設定すれば、従業員のより柔軟な働き方の実現、企業側の管理コストの削減や生産性アップといった相乗効果が目指せるでしょう。
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