フィッシュ哲学とは
フィッシュ哲学とは、アメリカのシアトルにあるパイク・プレイス・フィッシュ・マーケットにある魚屋で生まれた概念です。遊ぶ・態度を選ぶ・注意を向ける・楽しませるという考え方を取り入れて仕事に取り組むことで、職場環境が改善したという話から生まれました。
職場でのモチベーションやチームワークを高めるための考え方であり、ビジネスにおいて注目を集めています。フィッシュ哲学の目的は、職場環境をポジティブなものや楽しいものにすることです。
フィッシュ哲学を職場に取り入れる理由
フィッシュ哲学を職場に取り入れる理由としては、社員のエンゲージメント向上が挙げられます。近年では価値観や働き方の多様化によって、働くことにやりがいを求める人が増えているようです。フィッシュ哲学を取り入れることで、社員が仕事に対するやりがいや楽しさ、おもしろさなどを感じやすくなり、組織の活性化につながります。
フィッシュ哲学は業種や職種などに関わらず、どのような職場でも簡単に取り入れられる考え方です。さまざまな業種で取り入れられている考え方ですが、特に医療やサービス業などを中心に広がっています。
フィッシュ哲学における4つの行動原則
フィッシュ哲学においては、4つの行動原則があります。ここでは、それぞれの行動原則について詳しく解説します。
遊ぶ(Play)
遊ぶ(Play)とは、働く人が楽しめるようにすることです。遊びの考え方や要素を取り入れることで、働く人が楽しめるような環境を作ります。
仕事に遊びを取り入れることによって、仕事に対してやる気や好奇心を持ちやすくなるため、新しいアイデアが生まれやすくなる効果があります。また、社員同士の仲間意識の高まりやコミュニケーションの活性化にもつながるため、仕事への楽しみを感じやすくなるでしょう。
楽しませる(Make Their Day)
楽しませることも、フィッシュ哲学の行動原則の1つです。同僚や顧客を楽しませるような要素を取り入れることによって、職場の雰囲気が明るくなり風通しも改善される効果に期待できます。
この際、見返りを求めずに相手を楽しませる意識が重要です。笑顔で接する、ジェスチャーを使って表現するなどするだけでも、相手を楽しませることができます。楽しませる意識を持つことで、社員同士が良好な関係が築けるようになり、結果として職場環境の改善にもつながります。
注意を向ける(Be There)
同僚や顧客などの対面している人に対して注意を向けることも大切な行動原則です。今そこにいる人に注意を向けることで、何を相手が求めているのかを共感できるようになります。日頃からよく接する相手には対応が雑になりがちですが、しっかりと意識や注意を向けることで丁寧な対応ができるようになります。相手に注意を向けることで、コミュニケーションの改善にもつながるでしょう。また、対人だけでなく業務に活用することも可能です。
態度を選ぶ(Choose Your Attitude)
自分の態度が周囲に対してどのような影響を与えているのか考えることも重要です。周囲の状況に流されることなく、自分の責任で自分の態度を選ぶことで、職場の雰囲気をコントロールできます。
仕事でトラブルが発生したとしても不機嫌にならずにポジティブな態度を選ぶことで、職場の雰囲気がよくなるだけでなくトラブルに対して迅速な対応が取れるようになります。周囲に対してポジティブな影響を与えられるように意識するとよいでしょう。
フィッシュ哲学を職場に取り入れるメリット
フィッシュ哲学を職場に取り入れることで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。フィッシュ哲学のメリットは以下の3つです。
人間関係が改善する
フィッシュ哲学を取り入れることで、人間関係の改善が期待できます。コミュニケーションが活性化するため、職場の人間関係が良好になるでしょう。フィッシュ哲学を取り入れると、互いに対しての意識やコミュニケーションが高まるため、助け合いながら働ける環境になります。
気持ちに余裕が生まれる
フィッシュ哲学を取り入れることで、トラブルやミスなどの予期せぬ事態になったとしても余裕を持った態度を維持しやすいため、気持ちに余裕を持つことが可能です。気持ちに余裕がないと互いを思いやった行動がしにくくなりますが、余裕があれば互いに強調し合える関係が構築できます。そのため、職場にも余裕のある雰囲気が流れやすくなるでしょう。
離職率の低下につながる
社員同士が強調する環境を作れるため、離職率の低下につながるというメリットもあります。職場の雰囲気や風通しがよくなり、職場に定着しやすくなり離職率を低下させやすくなるでしょう。働きやすい職場環境を維持しやすくなるため、離職率の低下だけでなく人材確保につながることも大きなメリットです。
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社員の満足度が向上する
フィッシュ哲学では、仕事に「遊ぶ」「楽しませる」といった考え方を取り入れることが特徴です。このような考え方を取り入れることで、社員が楽しく仕事をできるようになるでしょう。仕事に対するモチベーションや好奇心が高まるため、社員の満足度向上につながり、結果として生産性の向上につながります。
顧客満足度の向上が期待できる
フィッシュ哲学においては、「楽しませる」という要素があります。この「楽しませる」という要素は社員同士だけではなく、顧客に対しても適用されます。顧客を楽しませることを意識するため、顧客サービスの向上につながるでしょう。また、社員が顧客のニーズに応えるために、自発的に行動できるようになることもメリットです。
フィッシュ哲学を職場に取り入れる際の注意点
フィッシュ哲学を職場に取り入れる場合には注意したいポイントが3つあります。ここでは、各注意点について詳しく解説します。
労働環境を整える必要がある
フィッシュ哲学を取り入れる際には、労働環境を整えなければいけません。人間関係の悪化や待遇面での不満がある場合には、フィッシュ哲学を取り入れるだけでは職場環境や雰囲気などが改善する効果が望めません。
たとえば、給与が上がらないのに労働量だけ増えるような状況では不満が溜まりやすく、フィッシュ哲学を取り入れても効果が薄いでしょう。労働環境を整えたうえでフィッシュ哲学を取り入れることが重要です。
人によっては負担になることがある
人によってはフィッシュ哲学の考え方に共感できないケースもあるでしょう。フィッシュ哲学を無理に取り入れようとすると、社員の負担になってしまい逆効果になることもあります。
フィッシュ哲学は、社員や顧客満足度の向上に有効な考え方ではありますが、全員に合う、全員が受け入れられるわけではありません。すべての社員に強要すると不満が溜まったり離職率が向上したりする可能性があるため、社員1人ひとりの状況に合わせた対応が必要です。
効果が出ないこともある
フィッシュ哲学を取り入れることで、必ず職場環境が改善するとは限りません。特に、長時間労働の状態化やハラスメントの発生、給与問題といった問題を抱えている場合には、フィッシュ哲学を取り入れても根本的な解決にはつながらないでしょう。
まずは自社の現状を把握したうえで、どのような解決策があるのか、適切な対応は何なのかを検討し、問題や課題を解決することが大切です。フィッシュ哲学は万能ではないため、職場改善の方法の1つと捉えましょう。
フィッシュ哲学を実践するための具体例
フィッシュ哲学を実践するためには、どのような方法があるのでしょうか。フィッシュ哲学には4つの行動原則がありますが、各原則によって必要な行動が異なります。ここでは、各行動原則の具体例を解説します。
「遊ぶ(Play)」の具体例
遊ぶ(Play)では、ユーモアを活用する方法や新しいアイデアを試す、失敗から学ぶといった方法があります。
ユーモアを活用する
社員が遊ぼうという意識を持って、ユーモアのある行動を意識することが大切です。それぞれが持っているユーモアを発揮して、遊びを生ませることを意識しましょう。また、周囲の人のユーモアを受け入れることも重要です。自分のユーモアを活用するだけでなく、周囲のユーモアを受け入れることで遊びが生まれやすくなります。
新しいアイデアを試す
新しいアイデアを試すこともよい方法です。ユーモアを活用して遊びを意識することによって、新しいアイデアが生まれることもあります。新しいアイデアが生まれたら、積極的に試してみるとよいでしょう。アイデアが生まれても実行しなければ意味がありません。そのため、積極的に試して楽しむことを優先しましょう。
失敗から学ぶ
アイデアを試した結果、失敗することもあります。すべてのアイデアが成功するとは限らないため、失敗を学びの機会として前向きに捉えましょう。失敗することを恐れたり、失敗を重くとらえすぎてしまったりすると、次のアイデアが生まれにくくなります。また、積極的にアイデアを試しにくくなるため、失敗は学びだと考えることが大切です。
「楽しませる(Make Their Day)」の具体例
ここでは、楽しませる(Make Their Day)の具体的な内容を解説します。
周囲の人のよい行動に着目する
一緒に働く人など、周囲の人のよい行動を見つけることが大切です。ついつい、相手のミスを気にしてしまうという人も多いでしょう。しかし、ミスだけに着目するのではなく相手のよい行動にも意識して目を向けてみます。たとえば、一緒に働く人のよかった点を何個か書き出すなどすると、よい行動に着目しやすくなります。
よい行動をした相手をほめる
周囲のよい行動に気づいただけで終わっては、相手に伝わりません。よい行動を見つけたら、そのことを相手に積極的に伝えるようにしましょう。一言伝えるだけでも構いませんし、メモを渡しても構いません。どのような方法でもよいため、よい行動だなと思ったらそのことを相手に伝えてほめるようにしましょう。
顧客のニーズや期待に応える
顧客を楽しませるためには、相手のニーズや期待を把握したうえでそれに応える行動を取ることが重要です。また、ニーズや期待に応えるだけでなく、さらに高いパフォーマンスを発揮することを意識しましょう。フィッシュ哲学では、顧客が望む以上の成果や期待を超えることが重要だとされています。
「注意を向ける(Be There)」の具体例
注意を向ける(Be There)の具体例としては、以下の3つの内容が挙げられます。
周りの人が求めているものを意識する
周囲の人が何を必要としているのか、意識的に考えてみましょう。一緒に働く人や顧客などが何を求めているのかを把握することが求められます。周囲の人が求めることが何なのかは、普段から意識して過ごさなければ見過ごしがちなポイントです。そのため、日頃から相手に意識を向けて、周囲の人のニーズを考えるようにしましょう。
現在の状況に注意を向ける
現在の状況に注意を向けることも大切です。この際、スマートフォンやモバイル端末などの電子機器の使用を控えめにするとよいでしょう。スマートフォンなどは便利な危機ですが、周囲の状況から注意をそらす原因ともなります。そのため、電子機器の使用を控えめにして周囲の状況に目を向けることを意識するとよいでしょう。
周囲に耳を傾ける
周囲の状況を理解するために、相手の話にしっかりと耳を傾けることも重要です。周囲の人の状況や顧客のニーズなどを理解するためには、その人の行動に目を向けるだけでなく話を聞くことも大切になります。行動だけでは相手の状況や考えを理解できないケースもあるため、わからない場合は会話をしてみるとよいでしょう。
「態度を選ぶ(Choose Your Attitude)」の具体例
態度を選ぶ(Choose Your Attitude)方法としては、態度の明確化や態度のチェック、理想の態度を設定するといった方法が挙げられます。
状況に応じた態度を明確にする
状況に応じて必要な態度は異なります。そのため、状況に沿った理想的な態度を明確にしておくとよいでしょう。たとえば、「トラブルが発生したら一旦落ち着いて状況を整理する」「ミスをしたら現場を離れて落ちつき、原因を考える」などのように、具体的な態度をイメージしておくことが求められます。
その日の態度をチェックする
1日の自分の態度を振り返ってみることも重要です。その日の行動が理想的な態度だったかどうかをチェックすることで、客観的な視点から自分の行動を振り返れるようになります。態度をチェックするために、チェックリストを作成してみる、1日の目標を設定して確認してみるといった方法もおすすめです。
理想となる態度を見つける
自分が理想とする態度を見つけることも効果的です。周囲に理想的な態度の人がいれば、その人を手本として同じような行動を取ってみるのもよいでしょう。手本となる人とできるだけ一緒に過ごすことで、理想の振る舞いを身に付けられます。また、周囲の人のよい態度に目を向けることは、相手を楽しませるという考え方にも役立ちます。
まとめ
フィッシュ哲学とは、組織を活性化するために役立つマネジメント手法です。フィッシュ哲学を取り入れることで、人間関係の改善や離職率の低下、社員満足度や顧客満足度の向上といったメリットが得られます。フィッシュ哲学には4つの行動原則があるため、その原則を意識して行動するとよいでしょう。
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