期待理論とは?意味や活用するメリット、注目されている背景などを解説


期待理論とは?意味や活用するメリット、注目されている背景などを解説

期待理論の概念はビジネスで注目を集めていますが、どのような理論なのか深く理解できていないという人もいるでしょう。この記事では期待理論の意味からメリット、注目されている背景、期待理論の注意点まで解説するため、ぜひ参考にしてください。


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期待理論とは?

期待理論とは、「何らかのアクションに対して報酬が与えられるなどの、得られる成果があると理解していることでモチベーションアップにつながる」という考え方です。


たとえば、「〇〇を達成できれば昇進につながるかもしれない」「成果を上げれば昇給するかもしれない」というような期待を社員に持たせることで、モチベーションアップにつながるという概念を指します


ブルームの期待理論とは?

ブルームの期待理論とは、1964年にビクター・ブルームによって提唱された理論です。何らかの行動をすることによって得られる期待値とそのアクションによって得られる報酬の魅力によってモチベーションが決まるという理論です。


ブルームの期待理論では、「期待」「道具性」「誘意性」の3つの要素によってモチベーションを数値化できるとされています。具体的には以下の計算式でモチベーションが求められます。


・モチベーション=「期待×道具性×誘意性」


期待

ブルームの期待理論における期待とは、努力がどれだけの成果に結びつくのかという期待値のことです。ブルームの期待理論では、期待を連鎖させることが重要だといわれています。連鎖的に期待を成立させることにより、モチベーション向上につながります。期待を連鎖させるには以下のようなポイントが重要です。


・魅力的な成果を設定する

・成果を実現するための目標を設定する

・目標を達成するための戦略を設定する


道具性

道具性とは、目標の成果がさらに次の目標を達成するためにどの程度役立つのかを示したものです。目標達成に向けて行った努力が自己実現や成長に役立つという期待が高ければ高いほど、道具性は高くなります。


たとえば、プロジェクトの成果が個人のさらなる成長につながる、プロジェクトの成功によって昇進するなど、目標を達成することによる成果が自己実現につながる場合などは道具性が高まります。


誘意性

誘意性とは、目標を達成したときに得られる報酬に対する魅力の度合いを示すものです。報酬の内容はさまざまで、昇進や昇給、新しい役職などが挙げられます。このような報酬が個人にとって価値があるのかどうかがポイントです。報酬に価値がある、魅力的だと思えるほど誘意性は高まります。


ブルームの期待理論とポーター・ローラーの期待理論との違い

リマイン・ポーター、エドワード・ローラー三世の両氏によって1968年に提唱された理論が、ポーター・ローラーの期待理論です。この理論は、努力することで得られた報酬がその後のモチベーションに影響しているという考え方となっています。


ポーター・ローラーの期待理論には「ループの発想」があることが、ブルームの期待理論との違いです。ループの発想とは、「成果が出る→報酬を得る→満足度が高まる→モチベーションアップ」とう好循環が起こるというものです。目標達成までの工程だけでなく、報酬に対する満足度がモチベーションの源になるという考え方となっています。


期待理論がビジネスで重要視されている理由

社員のモチベーション低下に悩んでいる企業も多いでしょう。実際に、弊社の調査によるとミドル世代の社員のなかには、仕事や自分の役職に対するやりがいを見出せずに、モチベーションが低下している人が一定数いるという結果が出ています。


モチベーションが低下することで業務の質や生産性が低下するおそれがあるため、やる気を保つことは重要です。そこで期待理論を取り入れることで、社員それぞれのモチベーション向上が期待できます。モチベーション向上はビジネスにおいて重要だとされているため、期待理論への注目度が高まっています。


※参考:ミドル以降の世代の働きがいとモチベーション実態調査 | PR TIMES


期待理論の他にあるモチベーション理論

期待理論以外にも、モチベーションに関する理論はあります。ここでは、2つの理論を解説します。


マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を5段階にわけて理論化したものです。マズローの欲求5段階説では、人間の欲求は以下の5つといわれています。


・生理的欲求:食欲や睡眠欲などの本能的な欲求

・安全欲求:経済的安定性や健康維持などの、安全な生活を送りたいという欲求

・社会的欲求::社会的役割を全うしたいという欲求

・承認欲求:他社から尊敬されたいなどの欲求

・自己現実欲求:自身の能力を発揮して社会貢献したいなどの欲求


ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることによって仕事の成果が上がる現象のことです。ピグマリオン効果は、ロバート・ローゼンタール氏により提唱された心理学用語で、教師期待効果やローゼンタール効果などと呼ばれることもあります。


期待されることによってその期待に応えたいというモチベーションが上がり成果が上がるという考え方です。逆に、他者からまったく期待されないことによって成果が下がるゴーレム効果もあります。


期待理論を活用するメリット

期待理論を活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、4つのメリットを解説します。


生産性向上につながる

期待理論を活用することで、生産性向上が期待できます。期待理論では、社員個々のモチベーションが向上するため、業務効率の向上や仕事の質が高まることなどが期待でき、生産性向上が見込めます。


また、新企画の開発や新プロジェクトの提案など、新しいアイデアの創出などにつながる可能性もあるでしょう。モチベーションを維持しながら仕事をすることで社員が刺激し合って業務に当たれるため、結果として企業としての業績アップにもつながります。


社員の離職防止につながる

モチベーションが高まることで、離職防止につながります。モチベーションが低下することで、社員は仕事に対するやる気を失ってしまいます。仕事に対するやりがいがない状態だと、離職が発生しやすくなるでしょう。


期待理論によってモチベーションが向上することで、仕事に対するやる気ややりがいが高まり、自社に対する愛着などが高まることも期待されます。そのため、離職防止が見込めるでしょう。


離職防止対策は人材の定着に有効な施策|原因や放置するリスク、改善策も解説


社内コミュニケーションの活性化につながる

社員のモチベーションが上がることで、社内コミュニケーションが活性化し、企業として活気が生まれやすくなります。モチベーションが高い状態で仕事をすることで仕事に対する自信が生まれて、周囲の人々とのコミュニケーションに楽しみを見出せるようになります。


また、目標達成に向けて社員同士で協力し合える環境がつくられるため、コミュニケーションが活性化するでしょう。これにより、人間関係が良好に保てるようになり、スムーズな連携が取れるようになります。


新しいアイデアが生まれる可能性が高まる

期待理論を活用することによって、新しいアイデアの創出につながる可能性が高まります。モチベーションが向上すると、仕事に対してのやる気が高まるため積極的かつ主体的なアクションができるようになります。


積極的に動くことによって社員からさまざまな意見をもらえたり、活性化したコミュニケーションによって新しい刺激をもらえたりするため、新しいアイデアが生まれやすくなるでしょう。


期待理論を活用する際のポイント

期待理論を活用するには、3つのポイントを意識しましょう。ここでは、各ポイントについて解説します。


社員に目標設定させる

まずは、社員に目標設定を指せることが重要です。ここでは、魅力的な目標を設定するようにしましょう。目標が魅力的であること、目標達成によって何らかの報酬が得られるという期待を持たせることが重要です。具体的な目標設定をすることで、ゴールを目指しやすくなるため目標には具体性を持たせましょう。


また、期待が現実になることも意識します。期待したことが実現できなかった場合、モチベーションが低下する可能性があるため注意が必要です。


企業側が目標達成のためのサポートする

社員が目標達成するためには、企業としてのバックアップも欠かせません。社員が目標達成できるように、企業としてのサポートも充実させましょう。


たとえば、必要な研修プログラムを用意して社員に提供する、コミュニケーションの場を増やすなどが効果的です。企業としてのバックアップをしっかり行うことで、社員のモチベーションや愛着心が高まる可能性があるため、適切なサポートを提供しましょう。


社員へのフィードバックを行う

目標達成のためのアクションなどに対するフィードバックも欠かせません。社員のアクションをしっかりと見ていることをアピールすることで、それに対して応えようとモチベーションが向上する可能性があります。


フィードバックを行う際には、具体性を意識しましょう。具体的にどのような行動がよかったのか、改善すべき点はどこかなど、社員それぞれの行動を見たうえで適切なフィードバックを行うことが重要です。


期待理論を活用する際は現状のモチベーションの把握も求められる

期待理論を活用した施策を進めていくうちに、社員のモチベーションは変化していきます。モチベーションは常に一定ではないため、社員の現状のモチベーションを把握することも重要です。


モチベーションを把握するには、タレントマネジメントシステムを活用することがおすすめです。タレントマネジメントシステムでは、社員それぞれの特性や経験、スキルなどを一元管理できます。人材データを分析・活用できるため、モチベーション把握だけでなく、適材適所の人材配置などもしやすくなるでしょう。その結果、エンゲージメント向上も期待できます。


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期待理論の注意点

期待理論を取り入れる際には注意したいポイントがあります。ここでは、期待理論の注意点を3つ解説します。


社員のニーズを理解しておく必要がある

期待理論は社員のモチベーションアップに効果的ですが、何によってモチベーションが向上するのかは社員によってことなります。そのため、社員それぞれのニーズやモチベーション向上の要因を把握しておくことが重要です。


企業側が社員に対して目標や報酬を設定するなど押しつけるのではなく、社員のニーズに沿った目標や報酬を設定することが重要です。アンケートなどを活用して、社員のニーズを把握することを意識しましょう。


適切な目標設定を行う必要がある

期待理論を活用する場合、目標設定が重要です。適切な目標設定を行いましょう。たとえば、実現不可能な高すぎる目標を設定してしまうと、社員のモチベーションが逆に低下してしまう可能性があります。


期待理論を活用する際には、社員の状況をしっかりと把握したうえで、適切な目標設定を行うようにしましょう。社員の性格や価値観、スキルなどに合わせた施策や目標設定を行うことで、魅力的な道具性を設定できるようになります。


まずは小規模から始める

期待理論を活用する場合には、スモールスタートしましょう。いきなり大規模で始めてしまうと成果がわかりにくくなってしまうため、まずは小規模から始めるとスムーズに運用できるようになります。


たとえば、一部の役職や部署から導入するというように、始めやすいところから実施してみることがおすすめです。すべての社員のモチベーション向上につながる施策は難しいため、まずはスモールスタートして様子を見ながら広めていきましょう。


まとめ

期待理論とは、何らかの行動に対して報酬などがあると理解することでモチベーションが上がるという考え方です。期待理論を活用することで、生産性向上や離職防止、新しいアイデアの創出といったメリットが得られます。社内のニーズを理解して、小規模から始めてみるとよいでしょう。


タレントパレットは、企業の人材マネジメントを支援するタレントマネジメントシステムです。社員のモチベーション状態の可視化から、適切な目標設定の支援、フィードバックの記録まで、一貫してサポート。多くの大手企業での導入実績とコンサルティングノウハウを活かし、効果的なモチベーション施策の実現を支援します。ぜひ導入を検討してください。


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