こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「人に物事を教え導くという」意味の言葉に、「啓蒙」と「啓発」があります。2つの言葉は意味が異なる部分があるため、使用する際は注意が必要です。
ここでは、啓蒙と啓発との違いやビジネス上での考え方をわかりやすく解説します。
啓蒙とは
啓蒙とは、上の立場の人が、下の立場の人に対して新たな知識や気づきなどを教えて導くことを指します。啓蒙の「啓」は「わからないことを教え、導く」という意味で、「蒙」は「幼い子供」や「おろか者」という意味です。
そのため、無知な人や何も知らない相手に対して上の立場の人が「教えてあげる」というニュアンスを含んでいる点に注意しましょう。また、教わる側が「学ぼうとする意志」を持っているとは限りません。
啓発との違い
「啓発」とは、人に対して新たな知識や気づきなどを教えて、導くことを指します。啓発の「発」は、「はっきり理解させる」という意味です。
一方で啓蒙は、「上の立場の人が下の立場の人に対して」教え、導くことを意味します。しかし、啓発にはそのような立場の違いはありません。加えて、「教わる側が学ぼうとする意志を持っている」という意味を含んでいます。
相手の知識や立場
啓蒙という言葉を使うと、「教わる側には知識がない」と差別的なニュアンスで受け取られてしまう可能性があるため、注意が必要です。
一方で啓発という言葉には、相手に対する差別的なニュアンスはありません。
主体性
啓発という言葉には、教わる側が受動的ではなく、能動的な学びを求めているという意味が含まれています。
一方、啓蒙の場合は教わる側が受動的で、主体性を持ち合わせていません。また啓蒙では、教わる側に「自ら勉強して知識を深めたい」という向上心の有無が把握できないことにも注意しましょう。
自らの知識や能力を深める行動を自己啓発といいます。従業員が自己啓発に取り組むことには、生産性の向上や人材教育の補完につながるというメリットがあります。自己啓発にはさまざまな実践方法があるため、企業に合ったものを選択するとよいでしょう。自己啓発の実践方法や企業の支援事例などについて、詳しく知りたい方はこちらへ。
「啓発」については、こちらの記事をご確認ください。
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ビジネス上での考え方
啓蒙という言葉には、「教える側が教わる側を下に見る」という意味が含まれています。
ビジネスの場で「啓蒙」という言葉を安易に使用すると、お客様や取引先を怒らせてしまうおそれがあるため注意が必要です。
状況によっては啓蒙ではなく、啓発を使うようにしましょう
啓蒙を使う際の注意点
「啓蒙」という言葉には「教わる側を下に見る」という意味が含まれるため、積極的に使うことは推奨できません。しかし、使ってもよい場面もあります。ここでは、「啓蒙」を使う際に注意すべき2点について、見ていきましょう。
教える側の立場なら使わない
啓蒙の「蒙」は、「幼い子供」や「おろか者」という意味です。相手の立場によっては、啓蒙という言葉に苛立ちを覚えることがあります。人によっては「馬鹿にされた」と感じることもあるでしょう。
自分が教える側の立場の場合、啓蒙は安易に使わないほうがよいでしょう。
教わる側の立場なら使うのもアリ
一方で教わる側が使う場合は、教える側の人に対して敬意を示すことになります。
教えてくれる相手を立てることができる言葉です。
そのため、教わる側の立場である場合は、あえて「啓蒙」という言葉を使ってみてもよいでしょう。
海外企業における啓蒙活動の事例
ここでは、海外企業の啓蒙活動事例を取り上げます。
土地などの担保を持たない貧困層に対して融資を行い、自立を促したことで、世界中から称賛されたグラミン銀行の事例について見ていきましょう。
グラミン銀行の起源は、貧困層の自立支援の1976年にバングラデシュのチッタゴン大学の教授、ムハマド・ユヌス博士が大学に隣接する村の貧困層をグループ化して融資を行ったプロジェクトです。その後徐々に対象地域を広げ、1983年に政府登録を経て独立した銀行となりました。
2006年にはその功績が称えられ、ユヌス博士とグラミン銀行はノーベル平和賞を受賞しています。
融資を受けている人の97%は女性です。この地域の貧困層の女性は、収入が少なく資産もほとんどないため、銀行からお金を借りることができませんでした。そのため、地主などから高金利でお金を借りるしかなく、貧困はさらに悪化していくという状況でした。
グラミン銀行はこの貧困層を主な対象として金融サービスを提供し、成功を収めています。
グラミン銀行の成功の理由の一つが「啓蒙活動」です。グラミン銀行は、貧困層のもとに毎週足を運び、貯蓄や融資の手続きのためのミーティングを行っています。その中で「16の誓い」を暗唱しているのです。
内容は、「子供に教育を受けさせる」「家族計画を立てる」「環境美化に励む」など多岐にわたります。一方で、「融資は必ず返しましょう」といった融資返済を促す文言は含まれていません。
それでも、グラミン銀行の融資は高い返済率を誇っています。
返済率が高い理由の一つは、借り手5人を組み合わせてグループを作り、返済不能者が出た場合に、グループ内のメンバーが肩代わりするというシステムを導入したことです。
この啓蒙活動により、多くの女性が古い価値観や因習などから脱却し、生活の質を向上させることができました。
まとめ
啓蒙とは立場が上の人が立場が下の人に対して、新たな知識や気づきなどを教え、導くことです。
教わる側を下に見るという差別的なニュアンスを含むため、ビジネスの場では「啓発」に置き換えたほうがよいでしょう。
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