従業員満足度とエンゲージメントの違いは?それぞれのメリットや相違点を解説


従業員満足度とエンゲージメントの違いは?それぞれのメリットや相違点を解説

経営の重要な指標の1つとして、従業員満足度とエンゲージメントがあります。いずれも従業員に関する指標ですが、違いは具体的な内容や企業との関係性などです。この記事では、従業員満足度とエンゲージメントについて詳しく解説します。注目されている背景やそれぞれについて調査する流れなども解説するため、ぜひ参考にしてください。

エンゲージメントとは

「エンゲージメント(engagement)」を日本語で表現すると、約束や契約などです。使用するシチュエーションによっても意味は変化しますが、基本的には深いつながりや信頼関係を示す言葉として使われています。


ビジネスシーンでのエンゲージメントは、従業員と企業または自社と顧客の関係性を表している場合が多くあります。経営・管理者層や人事がエンゲージメントという言葉を用いるときは、一般的には従業員エンゲージメントを指します。


従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、会社と従業員の信頼関係を表す指標です。従業員が会社に信頼感や愛着をもち、会社の成長に貢献する行動を積極的にとるために重要な要素となります。会社は従業員の貢献に対し、適切な対応をとることも大切です。


明確な定義や測定項目があるわけではないものの、仕事のやりがいや働きやすさを感じている従業員は、従業員エンゲージメントも高い傾向があります。


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従業員エンゲージメントが注目されている背景

従業員エンゲージメントはなぜ注目されているのでしょうか。ここでは、その背景について解説します。


価値観の多様化

インターネットやSNSの普及に伴い、多様な価値観を認める雰囲気が生じるようになりました。特に、1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代は、雇用形態や労働のモチベーションについて多様な価値観をもつ傾向があります。金銭や承認といった外部からの評価ではなく、やりがいや成長など自分自身が感じる充実感を重視する人も少なくありません。このような状況では、それぞれの価値観を尊重する従業員エンゲージメントが特に重視されています。


生産年齢人口の減少

日本の生産年齢人口は、1995年以降減少しています。求職者数より求人数が多く、売り手市場です。会社が人手不足を回避するには求職者に選ばれる工夫をし、定着率を上げなければなりません。従業員エンゲージメントの向上を目指すと、従業員にとって魅力的な職場を実現できます。


※参考:令和4年版 情報通信白書 生産年齢人口の減少|総務省


国際競争の激化

日本経済は長く低迷しており、先行きが不透明です。現状を打破するには、会社の発展を後押しする社内のイノベーションが必要となります。自らイノベーションを起こせる行動力のある人材を生み出すための施策の1つとして、従業員エンゲージメントの向上が注目されるようになりました。


従業員エンゲージメントを向上させるメリット

従業員エンゲージメントを向上させると、どのようなメリットを期待できるのでしょうか。具体的なメリットについて解説します。


離職率が低下する

従業員エンゲージメントが向上すれば、離職率の低下につながります。従業員エンゲージメントが高くなると、「自社に貢献したい」や「長く働きたい」といった思いをもつ従業員が多くなるでしょう。従業員エンゲージメントが高い状態においては、従業員が自社に対して信頼感や愛着をもっているからです。


近年は人材の流動化が加速しており、単に待遇を改善するだけでは離職を防げません。従業員エンゲージメントを高め、自社で働く意味を感じてもらうことが重要です。


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生産性や業績が向上する

従業員エンゲージメントが高まると、業務へのモチベーションも上がり、業務に積極的に取り組むようになるでしょう。その結果、生産性の向上を期待できます。生産性が高い状況では自社の戦略も計画的に実行しやすくなり、業績も向上しやすいです。


業績が向上すると、組織の目標を達成できた状態になります。これにより従業員のモチベーションがさらに高まるため、全体として好循環が生まれるでしょう。


人材確保につながる

従業員エンゲージメントの向上により、人材確保がしやすくなります。近年は人手不足の会社が増え、優秀な人材の確保も難しくなりました。しかし、従業員エンゲージメントの高さはアピールポイントになるため、採用活動において自社に魅力を感じる人材を増やせます。また、従業員エンゲージメントが高い会社は、確保した優秀な人材が流出しにくいです。そのため、採用コストや教育コストの削減を期待できます。


リファラル採用につながる

リファラル採用とは、従業員から知人を紹介してもらう採用の手法です。紹介の時点で採用が確定するわけではないものの、自社を熟知している従業員から紹介される人材は自社に適している可能性が高いでしょう。ミスマッチを防ぎ、長く貢献してくれる人材を採用しやすくなります。


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メンタルヘルスの不調を防止できる

従業員エンゲージメントの高い会社は、従業員の業務に対するモチベーションや満足度も良好です。メンタルヘルスの不調が起こるリスクが抑えられ、休職や離職の可能性も低くなります。生産性の向上も期待できるでしょう。


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従業員エンゲージメントを高めるための手順

従業員エンゲージメントを高めるには、どうすればよいのでしょうか。具体的な手順を解説します。


1.目指す職場の姿を明確にする

まずは、従業員エンゲージメントを向上させるための施策に取り組む前に、どのような職場を目指すか確認しましょう。会社の経営理念やミッションなどをもとに、理想的な職場の姿をイメージする必要があります。目標が曖昧では従業員に活動の意図が伝わらず、的外れな施策になる恐れもあるため、要注意です。目指す職場の姿を可能な限り明確にし、具体的に言語化してください。


2.現状を把握する

目指すべき職場の姿が決まったら、自社の現状を把握する必要があります。主観に頼って施策に取り組んでも周囲の理解を得られないうえに、認識のズレが生じる恐れがあるでしょう。そのため、現状を明らかにし、誰もが納得できる客観的かつ数値的な根拠を示すことが大切です。


現状把握の代表的な手法として、従業員向けのサーベイがあります。従業員が率直な意見を出せるよう、目的を詳しく説明したり、匿名で回答できるようにしたりして工夫しましょう。


3.取り組むべきテーマを決める

目指す職場の姿や従業員のサーベイで得られた結果をもとに、テーマを決めましょう。よい点と課題をそれぞれ把握し、内的要因と外的要因の両方について確認することも大切です。


4.具体的な施策を決める

施策を検討する際は、まずは効果や実現性などを考えず、可能な限り多くの内容を書き出すとよいです。すべてを出し切ったところで、それぞれを比較しながら効果や実現性などを確認してください。そのうえで、1つのテーマに対して1~2つに施策を絞りましょう。


5.計画を立てて実施する

決定した施策に取り組むための具体的な計画を立てましょう。長期的な視点から詳細を検討してください。具体的には、以下の内容を決める必要があります。


・実行する施策の内容・時期

・メンバー・体制

・求める結果

・振り返りの時期


6.効果を定期的に確認する

従業員エンゲージメントを向上させるための施策に取り組むうえでは、定期的な効果測定も大切です。施策による変化とともに、成功した部分と失敗した部分を把握しましょう。従業員エンゲージメントは短期間で向上するケースは稀であるため、長期的に施策を実行する必要があります。定期的に効果測定を実施し、どのタイミングでどの程度の効果が出ているか確認してください。


従業員エンゲージメントを高める手段

従業員エンゲージメントを高めるには、どうすればよいのでしょうか。具体的にどのような手段があるか解説します。


会社におけるビジョンを言語化して浸透させる

会社におけるビジョンは、会社の存在意義とも言い換えられます。ビジョンを実現するには、従業員からの理解が不可欠です。そのため、ビジョンの言語化による浸透を重視しましょう。従業員がビジョンをよく理解すると自社で働く意味を見出しやすくなり、従業員エンゲージメントの向上にもつながります。


リーダーシップのスタイルを見直す

リーダーシップを発揮する必要があるリーダーやマネージャーなどは、従業員エンゲージメントにも影響を与えます。適切なリーダーシップで従業員を導けるよう、適宜見直しが必要です。従業員によってもどのようなリーダーシップが適切かは異なるものの、それぞれ個別に合わせられるわけではありません。全体的な傾向を捉え、なるべく多くの従業員にとって適切なリーダーシップとなるよう調整しましょう。


経営・管理者層への信頼を高める

従業員の経営・管理者層に対する信頼が高まると、従業員エンゲージメントも向上します。従業員にとって、経営・管理者層は会社の将来や方向性を示す存在です。信頼を高めるには、経営・管理者層が会社のビジョンや重要な事柄を従業員へ明確に伝えたり、従業員に権限を与えて裁量の大きい業務を任せたりする必要があります。


職場環境や制度を整える

職場環境や制度を整えると従業員を尊重する意思表示になるため、従業員エンゲージメントも向上しやすくなります。従業員がワークライフバランスを保ちながら、職務に集中してパフォーマンスを発揮できるようにサポートしましょう。そのような取り組みは、離職の可能性を下げる効果も期待できます。


適切な評価や指標を設定する

仕事の実績や成長の結果を適切に評価される環境では、従業員のエンゲージメントが向上します。承認の基準が曖昧な場合や結果のみで判断している場合、従業員が不信感をもつ原因になるため、要注意です。評価や指標が適切か判断するには、以下の項目をチェックする必要があります。


・従業員が納得できる評価や報酬になっているか

・成果を認められる機会が平等にあるか

・年齢や性別などの属性によらず正当に扱われるか


従業員の自己成長を支援する

従業員の自己成長をサポートし、成長の方向性に理解を示すことも従業員エンゲージメントを高めるために重要です。具体的には、社内の研修プログラムのテーマを選択性にしたり、外部の研修への参加費用を補助したりする方法があります。また、検定や資格の取得を奨励したり、合格者に一時金や手当を支給したりする方法も効果的です。


従業員満足度とは?

従業員満足度とは、従業員が自分の仕事や職場に対してどのくらい満足しているかを示す指標の1つです。英語では「Employee Satisfaction」と表現できるため、頭文字をとってESと略される場合もあります。従業員満足度に影響を与える要因を具体的にあげると、以下のとおりです。


・職場環境

・社内の人間関係

・働きがい

・福利厚生

・給与


働き方改革により、経営者や人事管理者は従業員満足度の向上に取り組むべきという風潮が強まっている状況です。


従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い

従業員エンゲージメントと従業員満足度は、いずれも従業員の意識を表しています。従業員エンゲージメントは、従業員が自発的に自社へ貢献しようとする意欲の程度です。一方、従業員満足度は、業務内容や給与などに対する満足度を示しています。


従業員エンゲージメントは従業員と会社の双方の関係性を表しているのに対し、従業員満足度は従業員から会社に対する一方的な評価です。


従業員エンゲージメントや従業員満足度の調査の流れ

従業員エンゲージメントや従業員満足度を調査する際は、さまざまな手順を踏まなければなりません。具体的な流れについて解説します。


1.課題を洗い出して質問を策定する

従業員エンゲージメントや従業員満足度を調査する際は、まず現状を把握して課題を洗い出しましょう。そのうえで、どのような質問をするか検討する必要があります。正確な回答を得るには、質問の内容や量が回答する従業員の負担にならないよう注意が必要です。基本的には、5〜10分程度で回答できるようにしましょう。


2.目的とスケジュールを共有する

質問の項目を決めたら従業員に周知します。従業員の協力を得るには、調査の目的や明確なスケジュールの共有が重要です。回答期間には余裕をもたせ、1〜2週間程度に設定してください。また、フィードバックの予定についても周知すると効果的です。なお、回答は基本的に業務時間内に行われるため、繁忙期は避けて調査を実施する必要があります。


3.回答を集計して分析する

集まった回答を集計し、分析しましょう。単に回答を集めるだけでは意味がないため、回答を分析して課題の解決策を見出すことが大切です。回答を分析すると、新しい課題をみつけられる可能性もあります。


4.改善策の検討やフィードバックをする

分析結果をもとに、適切な改善策を考えましょう。従業員に共有して企業の意向を伝えることも大切です。課題に対して明確な解決策を導き出せない場合も、現状について共有する必要があります。結果が分からないと回答にかけた労力が無駄だと感じ、従業員のモチベーションが低下する恐れがあるためです。


従業員満足度が向上するメリット

従業員満足度を向上させると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。


人材不足の対策になる

従業員満足度が向上すると人材の流出を阻止できるうえに、新しい人材の確保にも役立ちます。従業員満足度が高い会社は従業員が長く働きたいと思える環境であり、人材が定着しやすいです。また、魅力的な会社というイメージにより求職者が増えたり、既存の従業員から人材を紹介されたりする機会も多くなるでしょう。人材不足の対策としてだけでなく、引き継ぎや教育といった人材確保に必要なコストの削減にも効果的です。


生産性が向上する

従業員満足度が高いと従業員のモチベーションも高まり、業務に対する積極性が生まれます。従業員が主体的に活動し、効率的に作業しようとするため、生産性の向上を期待できるでしょう。また、従業員満足度が高い会社は、従業員同士の関係が良好です。それによるスムーズなコミュニケーションも生産性の向上を後押しします。


顧客満足度が向上する

従業員満足度の向上は、顧客満足度の向上も促します。自社の商品・サービスについて従業員の理解が深まり、顧客に親身な対応ができるようになるからです。


また、自社に対する帰属意識やエンゲージメントが高まれば、高品質な商品・サービスを追求する意欲も増進するでしょう。その結果、顧客満足度の向上を後押しできます。


従業員満足度が高い企業の特徴

従業員満足度が高い企業には、どのような特徴があるのでしょうか。共通する特徴について解説します。


企業理念が浸透している

企業理念が従業員に浸透している企業は、従業員満足度も高めです。企業理念に対する共感は、会社への思い入れや信頼度に影響します。単純なる待遇に対する納得感だけでは実現できない、高い従業員満足度を得られるでしょう。


適正な評価制度を設けている

適正な評価制度ある企業は従業員が納得しやすく、従業員満足度が向上しやすい傾向があります。具体的には、数値やデータによる客観的な評価ができる健全な組織を目指すべきです。


人材配置が適切にできている

自分に合う働き方を実現できたり、自分の能力を生かせたりすると、従業員満足度は向上します。そのため、適切な人材配置を実現している企業は、従業員満足度も高めです。


まとめ

従業員エンゲージメントの向上は、離職率の低下や生産性アップなどに役立ちます。そのためには、目標を明らかにし、現状を把握したうえでテーマを絞り込みましょう。そして、施策を着実に進めることが大切です。


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