エンプロイージャーニーとは
エンプロイージャーニーとは、社員のエンゲージメントを高めるものとして近年注目されている手法です。ここでは、エンプロイージャーニーの概要について解説します。
エンプロイージャーニーの概要
エンプロイージャーニーとは、社員が入社から退職までにさまざまな経験を通して成長する道のりのことを指します。「エンプロイー(employee)」は社員、「ジャーニー(journey)」は旅として、社員採用から退職までの一連のプロセスを旅になぞらえています。
カスタマージャーニーという言葉がすでに有名なので、カスタマー部分を社員に置き換えたものとして認識すると、比較的イメージしやすいでしょう。
エンプロイーエクスペリエンスの概要
エンプロイー・エクスペリエンスとは、社員が働くことを通じて得られる体験のことです。エンプロイー・エクスペリエンスの概念自体は当初アメリカからスタートしたものですが、日本でも徐々に浸透しつつあります。
マーケティング業界では以前より、製品の物質的な価値以外の快適さや雰囲気の良さといった体験的な価値を提供することで、ロイヤルティを向上させる「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)」といった概念が一般的でした。
つまりエンプロイーエクスペリエンスとは、顧客を社員に置き換えて職場環境や働きがいといった金銭的価値以外の要素で、社員のエンゲージメントを高める施策のことを指します。
エンプロイージャーニーマップの概要
「エンプロイーエクスペリエンス」を高める施策を考えるうえで、「エンプロイージャーニーマップ」が注目されています。企業との出会いから選択して入社、社員として働き退社に至るまでの一連の流れを設計し、各フェーズに応じた施策・取り組みを計画実行します。
この流れの中で社員がどのような経験を期待し、どのような感情を抱くのかを体系立てて整理します。簡単にいえば、社員目線で社員のキャリアデザインを組み立てることを目的とした施策です。
エンプロイージャーニーマップ作成の目的
エンプロイージャーニーマップのゴールは、「エンプロイーエクスペリエンスの向上」です。エンプロイーエクスペリエンスを向上させるには、「現代人が抱く仕事への価値観」を取り込み、社員の視点から組織の在り方を考えなければなりません。エンプロイージャーニーマップの作成により、人事がこれまで見落としてきた施策の抜けや漏れを発見できる可能性が高いといえるでしょう。
加えて、エンプロイージャーニーマップを作ることで、チーム全員で現状の共通認識を持つことが可能です。マップを作る際は、マーケティング・営業・エンジニア・クライアントなど組織を横断して巻き込むことで、施策の立案・検討がスムーズになり精度が高くなります。
また、全てのフェーズの課題を洗い出しそれぞれの課題の緊急度・重要性を比較できるため、解決すべき課題の優先度を明確にし、改善のスケジュールを改めて見直すことも可能です。
エンプロイージャーニーマップ作成時のポイントと手順
エンプロイージャーニーマップを作成する場合は、目的に応じた適切な手順で作成することが望ましいです。ここでは、エンプロイージャーニーマップ作成時のポイントと手順について解説します。
ヒアリング
エンプロイージャーニーマップを作成するためには社員が具体的に何に困り、どのような状況に置かれていて、どう感じているかをヒアリングすることが必要です。
マップ作成前のヒアリング内容例
・現状の研修についてどう感じているのか
・学習に関してどのようなニーズがあるのか
なるべく多くの社員から話を聞き、部署や職種、性別や年代などに偏りがないことが望ましいです。
ペルソナ設計
エンプロイージャーニーマップを作成する場合は、社員が抱える課題や問題、感情や行動パターンを細かく分類した「ペルソナ(社員像)」を設定します。ペルソナ設計を行う際は、年齢や性別、家族構成や趣味嗜好などの要素を細かく決めていき、リアルなペルソナを作り上げます。
詳細なペルソナを作成することで、社員が抱えている悩みや問題点をイメージすることが可能です。同時に企業側が思い描く理想像を、押しつけすぎないことも大切です。
フェーズ分類
入社から退職までのフェーズを、細分化して分類します。各フェーズにおいてペルソナが直面しそうな課題を洗い出し、対応策を考えていきます。
フェーズ分類の例
・入社
・研修
・配属
・実務
・育成
・退職
テンプレートにこだわらず、目的にあったフェーズの設定を行いましょう。
アクションプラン策定
ヒアリングからフェーズ分類まで終了した後は、社員の豊かなエンプロイーエクスペリエンスを実現するために企業ができる、具体的なアクションプランを策定します。
アクションプランを策定すれば、やるべきタスクを明確化しアクションの遂行に責任を持つ部署や担当者を決められます。良いアクションプランには、目標達成に必要な全ての手順が盛り込まれていますが、思わぬ見落としを防ぐために、PDCAサイクルも合わせて取り入れるとよいでしょう。
エンプロイージャーニーマップでエクスペリエンスを高めるためのポイント
エンプロイージャーニーマップを作成する際は、社員のエクスペリエンスが向上する内容を意識して作成することが重要です。ここでは、エンプロイージャーニーマップでエクスペリエンスを高めるためのポイントについて解説します。
組織の目的を明確にする
社員のエクスペリエンスを高めるには、エンプロイージャーニーマップを作成する目的や目標を、事前に決めておきましょう。
事業を継続的に発展させて行くことは、会社のみならず社員がその業界で生き残る事につながります。その過程で自社の目指すべき姿と自身の業務のつながりを見出すことで、業務へのやりがいや会社へのエンゲージメントを高めるきっかけとなります。
「社員の定着」や「エンゲージメント向上」といった具体的な目標がなければ、思ったような効果が出ないこともあります。そのためにも、組織の目的を明確化しておくことは必須であるといえるでしょう。
社員主体の制度を意識する
エクスペリエンスを高めるには、これまで企業目線でポイントごとに作られていた施策を社員目線に転換することが重要です。社員の現状を考えて、「社員のあるべき姿」や「足りないものは何か」という視点に立ち、不足している経験を生み出すにはどういった対策が必要かと考えていくことが必要です。そうすることで、施策そのものの効果も高まります。
加えて、エンプロイージャーニーマップ作成時には、話し合いや手続きを誰でも確認できるようにしましょう。閉じられたコミュニケーション内で作業を進めると、社員に不信感を抱かせる可能性があります。
社員が価値ある存在だと伝える
エクスペリエンスを高めるために最も必要なことは、それらを通じて社員が自分の「価値」を認識できることです。社員主体の制度が整ったとしても、社員にとってメリットが伝わられなければ意味がありません。
各種教育制度やキャリア形成が自身の成長にどうつながるかを、メッセージとして発信する必要があります。また、社員が参加しやすい気軽な相談会などを社員同士の交流の場を兼ねて開くことも有効です。
まとめ
エンプロイーエクスペリエンスの向上には、個々の社員へアプローチする仕組み作りが重要です。その仕組みの一貫として、エンプロイージャーニーマップの作成は社員のエクスペリエンス向上に大きく役立つでしょう。
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