エンパシーとは?ビジネスで必要とされる理由、向上させる方法を解説


エンパシーとは?ビジネスで必要とされる理由、向上させる方法を解説

エンパシーとは、立場が異なる相手の考え方を想像する能力です。エンパシーが高い人は、さまざまな価値観や背景の人と協働できます。しかし、具体的にどのような考え方や習慣がエンパシーの向上につながるか、わからない人もいるのではないでしょうか。本記事では、エンパシーとは何かについて、ビジネスで必要とされる理由や、向上させる方法を解説します。ぜひ参考にしてください。

人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に

エンパシーとは?

エンパシーの定義について、似た言葉のシンパシーとの違いについて述べつつ解説します。

エンパシーの定義

エンパシーとは、他者の感情や思考を想像する能力のことです。エンパシーを和訳すると、共感・感情移入・自己移入と表現できます。

エンパシーの語源であるギリシャ語の「emphatheia」は、「心の状態」という意味で使われてきました。当初は美術、哲学、心理学の分野で使われたエンパシーですが、近年では、人間関係を構築する際に重要な能力として認識されています。

エンパシー・シンパシーの違い

エンパシーと似た言葉であるシンパシーは、自分の価値観や経験を基準に、他者の状況に対して理解や同情を示す気持ちです。

一方、エンパシーは、自分とは異なる価値観や経験を持つ人の心情を想像し、その人の視点から状況を捉えようとする能力を指します。つまり、エンパシーとシンパシーの違いは、自分の立ち位置です。

ビジネスにおけるエンパシーの重要性

ビジネスシーンにおいて、社会人にはエンパシーが強く求められています。特にダイバーシティへの重要性が高まる近年は、多様な背景や価値観を持つ人々への理解が、より一層必要とされるようになりました。

エンパシーを備えた人は、場面に応じた適切な言葉遣いや態度を選び取り、円滑で生産的な人間関係を構築できます。特にリーダーシップの役割を担う人にとって、エンパシーは不可欠な能力です。メンバーの多様なニーズや視点を理解して信頼関係を築くと、良好なチームワークを発揮できます。

ビジネスでエンパシーが重視される背景

ビジネスでエンパシーが重視される背景は、どのようなものがあるのでしょうか。AIの発展と、ユーザーのニーズの把握に役立つ点に触れつつ解説します。

AIの時代こそエンパシーが重要

AIの時代において人としての価値を高めるには、エンパシーの向上が重要です。近年、AIの技術は急速に進化し、ビジネスシーンでの活用が拡大しています。

AIは処理能力や分析力に優れる反面、人のような深い共感力を持ち合わせていません。しかし、ビジネスにおいて人と向き合う場面では、相手の感情や状況を理解し適切に対応する能力が不可欠です。AI時代において人ならではの価値を発揮するために、エンパシーを向上させましょう。

ユーザーのニーズを理解するためのフレームワークとして用いられている

エンパシーは、ユーザーのニーズを深く理解する際に役立ちます。エンパシーマップ(共感マップ)は、特定のユーザーの感情・考え・価値観などを可視化するフレームワークです。

エンパシーマップを作成すると、自社の商品やサービスに対するユーザーの反応をより詳細に予測し、客観的な判断が可能になります。ユーザー中心の製品開発やサービス改善に向けて、エンパシーマップを活用しましょう。

ビジネスにおけるエンパシーの種類

ビジネスにおけるエンパシーの種類を解説します。以下で紹介する4つのエンパシーを理解し、より円滑で生産的な人間関係を構築しましょう。

エモーショナル・エンパシー

感情的共感とも呼ばれるエモーショナル・エンパシーは、他者の感情を直感的に感じ取り、共感する能力です。たとえば、エモーショナル・エンパシーが備わっている人は、目標達成に失敗したメンバーに対して、その人が味わっているであろう悔しさや悲しみを自然に感じ取れます。相手の気持ちに寄り添えると、適切な励ましの言葉をかけられるでしょう。ビジネスシーンでは、信頼関係の強化、モチベーション向上などに役立ちます。

コグニティブ・エンパシー

認知的共感とも呼ばれるコグニティブ・エンパシーは、他者の視点や考え方を論理的に理解して推察する能力です。コグニティブ・エンパシーは、多様な価値観を持つメンバーとの協働や、異なる立場にある顧客との交渉において重視されます。

ビジネスシーンでは、時に価値観や背景が大きく異なる人々との関わりが求められるでしょう。コグニティブ・エンパシーを備えた人は、自分とは異なる考え方を持つ相手でも、その人の思考プロセスや意図を客観的に把握できます。

コンパッショネイト・エンパシー

コンパッショネイト・エンパシーは、思いやりや慈悲を意味するコンパッション(Compassion)から派生した言葉です。コンパッショネイト・エンパシーを備えた人は、他者の辛い状況に共感するだけではなく、状況を改善するための積極的な行動を取ります。

特にリーダーにとって、コンパッショネイト・エンパシーは重要です。その能力があれば、メンバーの課題を深く理解し、適切なサポートや具体的な解決策を提供できるでしょう。

ソマティック・エンパシー

身体的共感とも呼ばれるソマティック・エンパシーが備わった人は、他者の身体的な状態や感覚を、自分の身体で起きているように感じます。たとえば、緊張している人を見て自分も緊張を感じたり、痛みを訴える人を見て自分も同様の不快感を覚えたりする人は、ソマティック・エンパシーの傾向が強いかもしれません。

ソマティックは、身体を意味する言葉です。したがって、ソマティック・エンパシーは身体感覚に焦点が向いた共感ともいえます。

エンパシーが高い人の特徴

エンパシーが高い人は、好奇心旺盛で傾聴力が高い傾向です。エンパシーが高い人の特徴について解説します。


好奇心旺盛である

好奇心旺盛で、幅広いことに興味を持ち理解しようとする人は、エンパシーが高い傾向です。幅広い興味を持ち、さまざまな状況を前向きに理解しようとする人は、他者の立場や感情を想像しやくなります。自分とは考え方が異なると感じても、相手の視点に立って円滑にコミュニケーションを取れるでしょう。


傾聴力が高い

エンパシーの高い人は優れた傾聴力を持つ傾向があります。傾聴力とは、相手の言葉に真摯に耳を傾け、偏見を持たずにあるがままに受け入れようとする能力のことです。


傾聴力が高い人は、相手からの信頼を得ることで、心の内を話してもらいやすくなります。相手をよく理解するほど、その人の視点に立って感情や思考をより正確に想像できるでしょう。


エンパシーが低い人の特徴

立場が異なる相手に対する思いやりが不足しがちな人は、エンパシーが低い傾向があります。エンパシーが低い人は、共感が難しい相手に対して、理解を拒みがちです。たとえば、他者の感情に無関心で冷淡な態度を取る人は、エンパシーが低いかもしれません。


エンパシーの欠如がもたらす問題

相手の気持ちを理解せずに行動する人は、意図せずに相手を傷つけたり、不適切な言葉を放ったりする恐れがあります。エンパシーの欠如がもたらす問題を、以下に示しました。


・人間関係のトラブル

・コミュニケーション不足によるミス

・ハラスメント


エンパシーの欠如は、組織の雰囲気を悪化させ、生産性の低下や人材の流出につながる可能性があります。


離職率を下げるにはエンゲージメント向上が重要!理由と具体的な方法7選


ビジネスでエンパシーを発揮する方法

ビジネスでエンパシーを発揮するには、どのような方法があるのでしょうか。思い込みや偏見を排し、相手に寄り添う姿勢を大切にしましょう。


人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に

相手の視点に立って考える

ビジネスでエンパシーを発揮するためには、相手の視点に立つことが重要です。自分の主観を一旦脇に置き、「もし相手の立場だったら」と想像してみましょう。相手の状況や環境を深く理解しようと努めるうちに、自分の視点からは気づきにくい感情や考えに着目できます。


相手の話をじっくり聞く

先入観や思い込みを避け、開かれた心で相手の言葉に耳を傾けましょう。相手の真意を理解するためには、適切な質問やアイコンタクトも欠かせません。また、傾聴を心がけると、自分自身の価値観や偏見に気づくきっかけを得られます。


ビジネスにおけるエンパシーの具体例

エンパシーを発揮する方法がわかったところで、具体的にはどのように行動していくとよいのでしょうか。ビジネスにおけるエンパシーの具体例を、上司と部下の立場から紹介します。


上司から部下へのエンパシー

上司が部下に対してエンパシーを示すには、日頃からの信頼関係の構築が大切です。部下の意見に賛同できない場合でも、まずは話を否定せず最後まで傾聴する必要があります。また、部下の能力や状況を考慮して業務を割り振ると、思いやりの気持ちが伝わり、信頼関係の強化につながるでしょう。


上司がエンパシーを意識しているケース

エンパシーを意識する上司は、部下の業務状況を適切に把握しています。たとえば、急ぎの要件を依頼する際、部下が抱えている他の業務の優先順位を見直したり、必要に応じて期限の調整を図ったりする配慮が可能です。


上司のエンパシーが欠如しているケース

エンパシーが欠如した上司は、立場の弱さを利用して業務を依頼する傾向があります。他の業務で多忙な部下に対して、急ぎの要件を期限直前に割り振ることもあるかもしれません。


部下から上司へのエンパシー

部下が上司に対してエンパシーを示すには、上司の立場や状況を想像し、指示の背景にある意図を理解する努力が必要です。部下からのエンパシーは、業務の円滑な進行に大きく影響します。たとえば、上司から進捗を尋ねられた際に、上司の現在の状況や目的を考慮すると、どの程度詳細な回答が求められているかを適切に判断できるでしょう。


部下がエンパシーを意識しているケース

エンパシーを意識する部下は、業務進捗を尋ねられた際に上司の立場や状況を理解し、必要な情報を提供するよう心がけます。たとえば、単なる進捗状況の報告にとどまらず、完了の見込み時期や現在直面している課題まで盛り込んで、報告できるでしょう。


部下のエンパシーが欠如しているケース

エンパシーが欠如した部下は、業務進捗を尋ねられたときに曖昧な回答をしがちです。たとえば、具体的に進捗状況を報告できず、上司に尋ねられない限り、完了予定などの情報も伝えようとしません。


ビジネスでエンパシーを生かせる場面

エンパシーはさまざまな状況で必要とされます。ビジネスでエンパシーを生かせる場面を解説します。


営業活動

営業活動におけるエンパシーは、取引先との信頼関係の構築に役立ちます。エンパシーを意識して対話すると、取引先の立場や感情をより深く理解し、信頼される振る舞いができるためです。さらに、エンパシーを通じて取引先のニーズを的確に把握すると、課題解決に焦点を当てた効果的な提案が可能となります。自分や自社を理解してもらえたと取引先に考えてもらえると、長期的かつ強固なビジネス関係を構築できるでしょう。


商品開発

商品開発においても、エンパシーは重要な要素といえます。ターゲットとなる顧客の年齢・性別・生活状況などを深く理解すると、潜在的なニーズを発見し、本当に必要とされている商品やサービスを見極められるためです。


さらに、エンパシーを発揮すると、顧客の価値観や経済状況を考慮して、魅力的な機能やデザイン、適切な価格設定などを実現できます。


マーケティング

エンパシーを発揮すると、商品やサービスを効果的にアピールする戦略を立案可能です。優れた商品やサービスを開発するだけでは、必ずしも売上につながるとは限りません。しかし、エンパシーを発揮すると、ターゲット層の視点の視点に立ったマーケティングが可能です。


顧客の心理や行動を深く理解できると、適切なターゲット層を見極められます。また、ターゲット層の視点で心に響く広告や宣伝を企画・実施できると、効果的に購買行動を促せるでしょう。


エンパシーの学習・向上方法

エンパシーについて学習し、能力を向上させるためには、他者と対話・交流する機会を積極的に増やすことが重要です。異なる価値観を持つ人々や文化に接する過程で、視野が広げられます。


文学作品を通じて登場人物の心理や感情を深く理解する練習も、エンパシーの向上に効果的です。日常生活では、周囲の人々の感情や行動の背景を考察するよう意識すると、徐々にエンパシーを高められるでしょう。


エンパシーを成長させるアクティビティ

エンパシーを成長させるための効果的なアクティビティとして、ストーリーテリングと対話トレーニングが挙げられます。ストーリーテリングは個人の体験や経験を通して、自分の考えや感情を相手に伝えるコミュニケーション手法です。ストーリーテリングを学ぶと、相手の共感性に訴えかける能力を養えます。対話トレーニングでは、相手の話を真摯に聞き理解しようとする、傾聴の姿勢を身に付けさせましょう。


エンパシーを育む環境づくり

以下の職場環境は、社員のエンパシーを育みます。


・意見を自由に発表する機会が多い職場

・気軽にコミュニケーションがとれる職場


遠慮なく意見を述べやすい環境を整え、活発なコミュニケーションを通じて、多様な視点や考えに触れる機会を創出しましょう。


また、気軽にコミュニケーションがとれる環境も、社員のエンパシーを育みます。エンパシーの向上には、継続的で自然な交流が求められるためです。


人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に


まとめ

エンパシーとは、他者の立場に立って感情や思考を理解し、適切に反応する能力を指します。エンパシーは、業界や職種を問わず、あらゆる職場で必要です。社員のエンパシーを向上させ、良好なチームワークやよりよい職場環境の実現に努めましょう。

タレントパレットは、多くの導入実績を持つタレントマネジメントシステムです。HRテック分野で蓄積された豊富な経験と最新の知見をもとに開発され、導入時だけではなく、運営段階でもコンサルティングの知見を活かしたサポートを受けられます。エンパシーの高い人材を育てたいとお考えの人は、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。

人材育成に役立つシステムの詳しい情報はこちら
人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に