EQとは
心の知能指数とも呼ばれるEQが、人材評価の観点で注目されています。ここでは、EQの概要とIQとの違いについて解説します。
EQとは「心の知能指数」
EQは、「Emotional intelligence Quotient」の頭文字から取った言葉で、直訳すると「心の知能指数」です。イェール大学のピーター・サロイ氏とジョン・メイヤー博士が1990年に提唱しました。
兼ねてよりIQ(知能指数)だけでは人の能力を判別できない点が指摘されていたため、より正確に測るためにEQが編み出されました。
IQとの違い
EQは対人関係などの能力にも着目している点で、IQと異なります。IQとは人の知能レベルを数値化する「Intelligence Quotient」の頭文字をとった言葉です。頭の良さを測る指標として、広く知られています。
IQが高い人は高学歴で、ビジネスでも成功しやすいとする考え方が一般に浸透しています。しかし、必ずしもIQの高さだけがビジネスの成功を左右するわけではありません。ビジネスの成功には対人関係などのIQ以外の能力も必要という見方が広まり、EQが重視されるようになりました。
EQが重要視される背景
EQが重視される背景として、ビジネスで成功した人は対人関係を良好に保つ傾向にある事実が判明したことが上げられます。
さらに良好な対人関係を築くためには、自分の感情を把握しコントロールしたうえで、周囲に働きかける能力が求められます。これらの対人関係を築く能力を測る指標は、EQと名付けられました。
人間関係の構築はビジネスでは欠かせない要素であるため、昨今の企業は社員研修にEQ教育を取り入れています。社員のEQ向上を図ると、リーダーシップの改善や生産性の向上、離職率の低下、業績アップなどの効果が期待できます。
EQが高い人の特徴
EQが高い人には、次の特徴があります。
- 寛容な精神を持っている
- 高い共感力を備えている
- 素直に自分の誤りや弱さを認められる
- 粘り強さがある
- オンとオフの切り替えができる
- リーダーシップがある
各特徴について解説します。
寛容な精神を持っている
人の意見を対して寛容な態度を示せると、周囲の信頼を得られるでしょう。寛容な態度とは、自分の価値観と異なる意見に対しても偏見をもたず柔軟に受け入れる心の広さを意味します。状況の変化に対しても寛容で、トラブルにも柔軟に対応できる状態です。
高い共感力を備えている
高い共感力を備えていると、言葉だけではなく、態度や仕草からも敏感に相手の感情を察して理解できます。高い共感力を示せる人は自分の感情をコントロールできるため、心の余裕を持ちやすく、相手に思いやりの態度を示せるでしょう。
素直に自分の誤りや弱さを認められる
自分の失敗や誤りに対して素直に非を認める姿は、高いEQを備える要素の1つです。言い訳や責任転嫁をしない点には潔さが感じられるため、周囲からの信頼を集めます。
また、自分の弱みが分かっているため他のメンバーを頼れる側面もあり、周囲と協調して問題を解決する能力が高いといえます。
粘り強さがある
EQが高い人物になるためには、粘り強く物事に取り組む姿勢は欠かせません。粘り強さがあると困難に遭遇したときに、自分の感情をうまくコントロールして諦めずに課題解決を進めようとします。
コツコツと諦めずに課題に取り組み、やがて大きな成果を上げるでしょう。情熱的でストレスにも強く、簡単には投げ出さない胆力があります。
オンとオフの切り替えができる
オンとオフの切り替えができる状態とは、働きたい気持ちと休みたい気持ちをコントロールする能力に長けていることです。オンとオフを切り替えられると、ワークライフバランスを整えられます。メンタル面の消耗を防ぐ効果が期待でき、感情のコントロールを継続させやすくなるでしょう。
リーダーシップがある
EQが高い人物は、自分と周囲の状況を客観的に把握して、必要に応じて適切な行動をとれます。他人の気持ちを汲み取った対応ができるため、周囲をひきつけられます。さらにリーダーシップ力を発揮することで、団結力のあるチームの構築も可能です。
リーダーシップ力は家族や友人とのコミュニケーションを通じて自然と養われたり、訓練を通して身に付けたりできるといわれています。
EQを構成する能力
ここでは、EQを構成する4つの能力を紹介します。各能力を高めると、EQの向上が図れます。
感情の識別
感情の識別とは自らが抱く現在の気持ちを識別することです。高いEQに見合った行動を取るうえで、感情の識別は基本となる能力です。
自分の感情を識別できると、それをコントロールできるようになります。また自分の気持ちを識別できる人物は、相手が抱える気持ちの理解もできます。相手から求められている行動を取れるため、信頼を集めやすいでしょう。
感情の利用
感情の利用とは、自分の感情をコントロールして、問題や課題を解決する能力です。感情を利用できると、問題や課題解決に向かう方向へと組織を誘導できます。
例えば、課題を解決するために組織に所属する人たちの気持ちを盛り上げたり、ピンチを乗り切るために奮起させたりできます。感情を利用するためには、相手の意見に反発する気持ちをコントロールして、共感の気持ちを示す態度を意識することも大切です。
感情の理解
感情の理解とは、自他に生じる感情の変化をとらえる能力です。相手の表情や言動、その場の状況などの周囲から受け取る情報を総合的に判断して感情を理解します。周囲から受け取った情報をもとに、怒りや喜び、恐れなどの感情が生じた原因を理解すると、適切な対処法を導き出せます。
感情の調整
感情の調整とは、特定の行動を起こせるように自分の感情を整えることです。感情を整理するためには、次の手順を踏みます。
1.自分の感情を理解する
2.行動を起こすための気持ちを作る
3.実際に行動を起こす
4.行動を起こす過程で必要に応じて感情を調整する
例えば、1つのネガティブな出来事に対して、自分への教訓と捉え、次に必要な行動を起こす姿勢は感情の調整ができている状態です。一方で、ネガティブな出来事に対して、ついてないと考えてしまい、次の行動につなげられないと感情の調整ができていません。
EQを高めるメリット
EQを高めると、組織にとってのメリットと社員の能力に関連するメリットを実感できるでしょう。各メリットについて解説します。
組織にとってのメリット
EQが高い人材を指導者の立場に据えると、組織の生産性向上や風土の改善につながります。
会社の問題改善を行うときは、経営陣や管理職が発する意見の影響が大きい傾向にあります。そのため経営陣や管理職の立場にある人物は、感情をコントロールして周囲に与える影響を考えながら、意見を述べることが重要です。
EQの高い人材は自分の感情に流されずに、客観的に問題を見つめて適切な対応をとれるため、問題を効率的に改善できます。
社員の能力に関連するメリット
社員が高いEQを持つと、共感や協働を意識するようになります。その結果、チームのパフォーマンス向上や組織内でのシナジーが期待できます。
社員の対人関係も円滑になり、取引先や顧客とも良好な関係を築けるようになるでしょう。また高いEQを持つ管理職は部下から信頼されるようになり、チーム全体に指示が伝わりやすくなります。
企業がEQの高い人材を育てる方法
エグゼクティブや管理職にEQの高い人材が増えると、組織が強固になり企業成長につながります。ここでは、EQの高い人材を育てる方法を解説します。
エグゼクティブ向けのコーチングを実施する
エグゼクティブ向けのコーチングでは、経営や事業戦略、組織をテーマに扱います。企業が組織を強化するためには、経営やマネジメントの役割を担うエグゼクティブのEQを伸ばすことが大切です。エクゼクティブがEQを伸ばすと、判断力や推理力、論理的な思考力にもとづいた経営判断を実現できます。
現場に近い管理職向けのEQ研修を実施する
組織マネジメントの円滑化を図るためには、管理職のEQを向上させ、リーダーシップの底上げやハラスメントの防止に努めることが大切です。そのため、管理職向けのEQ研修を実施することもおすすめです。
管理職の立場にある上司のEQが高いと、部下のモチベーションアップにつながります。社員全体のエンゲージメント向上にも効果的でしょう。
日本のEQ教育における課題
欧米に比べて日本はEQの能力開発が遅れているといわれています。シックスセカンズジャパンの分析によると、「感情に対する自己認識力が低い」と自己評価を下した日本人は、世界基準に比べ多いことがわかりました。
EQを発揮するためには、まずは自分の感情を識別する能力が不可欠です。自分の感情を識別することで、それを利用したり、相手を理解できたりします。経済のグローバル化が進むなかで、日本の企業が競争力を獲得するためにも、社員のEQ開発による組織力強化が欠かせないといえるでしょう。
まとめ
EQとは「心の知能指数」とも呼ばれ、ビジネスには欠かせない対人関係に関する能力を図る指標として用いられます。エグゼクティブや管理職に適切なEQ教育を施すと、組織を強化できるため企業成長につながります。日本は他国に比べるとEQが低いため、一度社員のEQについて見直してみてはいかがでしょうか。
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