こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
2つの矛盾した意味を持つメッセージを同時に受け取った際に、精神的なストレスを感じることを「ダブルバインド」といいます。日常生活や職場、学校などでも起こりうる事象であり、知らないうちに相手を傷つけているケースも少なくありません。
しかし、場合によってはダブルバインドがコミュニケーションに役立つこともあります。人間関係を円滑にするためにも、ダブルバインドについて理解しておくことが大切です。
組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、本記事ではダブルバインドの意味や具体例、仕事で活用するメリットのほか、ダブルバインドをされた時の対処法などを解説します。
ダブルバインドを理解して仕事にうまく活用させたい方は、ぜひ参考にしてください。
ダブルバインドとは?
ダブルバインドとは、日常的に行うコミュニケーションの中でよく見られる事象です。ここではダブルバインドについて、意味や種類を解説します。
ダブルバインドの意味
ダブルバインドとは、2つ以上の矛盾した意味を持つメッセージを同時に受け取った際に、精神的な負荷がかかったり、混乱したりすることです。二重を表す「ダブル(Double)」と拘束を意味する「バインド(Bind)」が合わさった造語であり、日本語では「二重拘束」を意味します。
ダブルバインドは、1956年に発表された精神学の研究者グレゴリー・ベイトソンの論文「精神分裂病の理論化に向けて」の中で発表されました。統合失調症のメカニズムを説くために用いられた造語ですが、現在は直接的な原因とはいわれていません。
しかし、日常的に起こりうる事柄であり、度重なれば精神的な負荷が大きくなることが考えられます。そのため、ダブルバインドについて理解し、コミュニケーションの一つとして活かす場合は、十分注意しなければなりません。
ダブルバインドの種類
ダブルバインドは、肯定的と否定的の2種類に分類されます。肯定的ダブルバインドとは矛盾するメッセージのうち、どちらを受け取ったとしても悪い状況にはならないことです。
例えば、車を販売する際に「赤がお好みですか?それとも白がよろしいですか?」といった質問をするケースがあります。これは顧客が車を購入することが前提であり、どの色を選んでも「車を買う」ということは変わりません。
一方で否定的ダブルバインドとは、どちらのメッセージに従っても損をすることです。例えば「不明点は何でも質問してください」といっていたのにも関わらず、いざ質問をすると「これくらいは自分で考えなさい」と拒否されるような状況が該当します。
ダブルバインドの具体例
ダブルバインドは日常生活や仕事中など、さまざまなシーンで起こります。そのため、知らない間に相手に対して負荷をかけているケースも少なくありません。主な具体例として仕事上・育児の2パターンをご紹介します。
仕事上の具体例
仕事上のダブルバインドの具体例を見てみましょう。
部下:「部長、すみません。昨日の案件でミスをしてしまいました」
上司:「怒らないから、具体的に何があったか説明してください」
部下:「別の業務と掛け持ちをしていたことで注意力が散漫になり、先方への連絡を忘れていました」
上司:「それは単なるいい訳だ!」
このように、冷静にミスを受け止めるそぶりを見せた上司に対して、実際に起きたことを正直に伝えた結果、怒られたという経験をしたことがある方も多いでしょう。口頭で怒らなかったとしても、表情や態度に出ていれば、それもダブルバインドの一例です。
上司の言葉を信頼した上で正直に伝えているため、単純に叱られるよりも大きな負荷がかかります。
育児の具体例
育児におけるダブルバインドの具体例を見てみましょう。
親:「気に入ったおもちゃを一つ選んでも良いよ」
子:「このぬいぐるみが欲しい」
親:「ぬいぐるみはたくさん持っているから別のおもちゃにして」
子:「気に入ったおもちゃを選んで良いっていったのに」
子どもに対して自由な選択肢を与えておきながら、いざ好きなものを選ぶと理由をつけて拒否するケースもダブルバインドの一例です。これは、親の考えや価値観を押しつける行為であり、子どもにとっては腑に落ちない出来事といえるでしょう。
そのほか以下の例もダブルバインドに該当します。
親:「絵本を片付けなさい」
子:「まだ見てるからいやだ」
親:「今片付けないなら捨てるよ」
「捨てる」という一言で子どもを脅すことになり、上記の例と同じく親が子どもをコントロールするダブルバインドです。
ダブルバインドを仕事で活用する2つのメリット
あまり良い印象を与えないダブルバインドですが、うまく活用するとメリットが得られるケースがあります。特にビジネスシーンにおいて、肯定的ダブルバインドを取り入れて会話をすると、円滑なコミュニケーションを図ることが可能です。
メリット1.相手の選択を操作できる
ダブルバインドは、ビジネスにおける交渉シーンで活用できます。例えばセールスをする際に商品やサービスの購入を促すだけだと、顧客は「必要」「不要」の2択から選ぶことになり、「必要ない」といわれればそこで交渉は終わりです。
一方で2つの商品を提示して「どちらがよろしいですか?」と問えば、顧客に購入の意思がなかったとしても、無意識のうちに「不要」という選択肢が排除されるため、購入する前提で話が進みます。
このように相手の選択肢を意図的に絞れる点は、ダブルバインドを仕事に活かすメリットといえるでしょう。
メリット2.クレームの防止につながる
ダブルバインドを活用し、2つ以上の商品を提示した上で「どちらがお好きですか?」と問う場合、前提として購入してもらうことが含まれます。
しかし、購入を促すメッセージを伝えるわけではないため、顧客が購入したとしても自分の意思で決断したと錯覚しやすくなる点も、ダブルバインドのメリットです。
顧客に購入の意思がないにも関わらず、無理に買うことを促すような交渉をすれば、不快感を与えます。その結果、クレームに発展することも考えられるでしょう。
その点ダブルバインドを活用すると、接客態度に対して不満を持たれにくくなり、クレームの防止につながります。
ダブルバインドが持つ2つのデメリット
活用次第では、仕事の場でもメリットが得られるダブルバインドですが、デメリットがあることも理解しておかなければなりません。主なデメリットを2つ解説します。
デメリット1.心理的に相手を混乱させてしまう
ダブルバインドをうまく活用すると、矛盾した複数のメッセージが功を奏し、相手の選択をコントロールできます。しかし、会話の中にダブルバインドを多く入れすぎたり、判断しづらいメッセージを伝えたりすると、受け手は混乱してストレスを感じるでしょう。
この場合、ダブルバインドを活用しきれないばかりか、不快感を与えてしまいます。
ダブルバインドを多用したり、長時間続けたりすることは避けなければなりません。また、ビジネスに活用する際は、受け手が判断しやすい内容を伝えるように留意しましょう。
デメリット2.パフォーマンスの低下につながる
ダブルバインドが長く続くと、受け手はストレスを感じるばかりでなく、自分の行動に対して自信をなくしてしまいます。その結果、いつも相手の顔色を気にしながら、業務を進める状態になりかねません。
本来、仕事では成果を出すことが求められます。しかし「トラブルにならないように」「失敗しないように」という後ろ向きな考えが先立ってしまい、上司の指示がなければ動けなくなることが考えられるでしょう。
ダブルバインドは、使い方次第で従業員のパフォーマンスを下げる可能性があることを、十分に理解した上で活用する必要があります。
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【受け手側】ダブルバインドをされた際の対処方法
ダブルバインドをされた際の受け手側の対処方法は以下のとおりです。
・同僚や上司に相談する
・自分の気持ちを無視しない
・相手を客観的に見る
ダブルバインドをされた場合、当事者ではない同僚や上司に相談しましょう。一人で抱えてしまうと自己否定をし続けることになり、負のループから抜け出せません。他の人に話を聞いてもらうだけでも、徐々に正常な判断を取り戻すきっかけとなります。会社によっては、相談窓口を設置しているケースもあるので、躊躇せずに活用しましょう。
自分が置かれている状況を客観的に捉えられるようになると、「悲しい」「傷ついている」「怒っている」などの感情が浮かび上がります。こうした感情を無視するのではなく、しっかりと受け止めることが大切です。
例えば信頼できる人に愚痴をこぼすのも良いでしょう。落ち着ける場所や好きなお店などに出かけて、ゆったりと時間を過ごす方法もおすすめです。自分を労わることに注力し、気持ちの回復を図りましょう。
冷静になると、相手の行動を客観的に見られるようになります。ダブルバインドを起こした相手の精神的な未熟さに気づくこともあるでしょう。相手の背景が分かると、心に余裕を持ってコミュニケーションを取れます。
ダブルバインドを仕事で活用する方法
相反する複数のメッセージのどれを選んでも良い結果になる肯定的ダブルバインドは、否定的ダブルバインドを催眠治療に取り入れた心理学者ミルトン・H・エリクソンにより生み出されました。そのため、「エリクソニアン・ダブルバインド」と呼ばれることもあります。
エリクソニアン・ダブルバインドは、ビジネスシーンで活用しやすい手法です。例えば、「アンケートに答えた方全員にクオカードを進呈」というよくあるフレーズも、エリクソニアン・ダブルバインドに該当します。
一見すると不快な文言はありませんが、その裏には「クオカードをもらうためにはアンケートに答えなければならない」という意味が込められています。
また、「資料制作かデータ収集のいずれかを担当してもらえませんか?」という伝え方もエリクソニアン・ダブルバインドの一例です。「資料制作をお願い」と頼まれるよりも、選択肢を与えられた方が受け入れやすくなり、受け手の負担も軽減されます。
ダブルバインドを仕事で活用する際の3つのコツ
ダブルバインドは、相手に不快な思いをさせる可能性があるため、十分に注意しなければなりません。仕事で活用する際は、以下に挙げる3つのコツを把握しておくと安心です。それぞれのコツについて解説します。
コツ1.信頼関係が構築できている人に限定する
ダブルバインドを活用する場合、相手との信頼関係が構築できていることが重要です。心理的に距離のある相手にダブルバインドを使うと、余計な混乱や不信感を生み出す可能性があります。
肯定的ダブルバインドは、相手に意図が伝わってこそ効果がある手法です。信頼関係があれば、本来意図するところを理解してもらえますが、関係が浅いと思惑通りには進みません。
例えば、初めて顔を合わせる顧客にダブルバインドを使えば、不信感を与えるどころか、企業の信頼を失うことも考えられるでしょう。トラブルに発展しないためにも、お互いを理解し、関係性が構築された相手に使うように留意する必要があります。
コツ2.適切な選択肢を用意する
ダブルバインドとは複数の選択肢を提示することで、相手の判断を促す手法です。しかし、選択肢が多すぎると相手を混乱させる可能性があります。判断ができなければどちらも選ばないという結果になり、ダブルバインドの効果を得られません。
受け手がどれを選んだとしても良い結果となる選択肢に絞った上で、相手に伝えましょう。適切な選択肢を用意すると、受け手が選びやすくなります。また、自分の判断で決めたと捉えられるため、不満の発生を回避することにもつながるでしょう。
コツ3.ダブルバインドを乱用しない
必要以上にダブルバインドを取り入れると、受け手に強引な印象を与えてしまいます。一度、肯定的ダブルバインドが成功すると、つい多用したくなる方もいるでしょう。しかし、使用頻度を考えなければ、「いつも選択肢を強要する」と警戒されるようになり、せっかく築いた信頼関係が崩れる要因になりかねません。
ダブルバインドは、相手との会話の流れや状況を踏まえて、ベストなタイミングで活用しましょう。また、必要最低限の使用を意識し、むやみに使わないように留意することが大切です。
まとめ
ダブルバインドは、2種類以上の矛盾するメッセージを伝える手法であり、受け手を混乱させます。使い方によっては相手の判断を促す効果もありますが、不信感を与える可能性が高いため注意が必要です。
ダブルバインドを仕事に活かす場合は、今回ご紹介したコツを押さえて、慎重にメッセージを伝えるようにしましょう。
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