正社員と契約社員は、雇用形態が異なります。両者には似ている部分もありますが、明らかに違う部分も存在しています。この記事では正社員と契約社員の共通点や、違いについて解説します。それぞれの共通点や違いを理解し、採用や人材配置に生かしてください。
正社員と契約社員の定義
正社員と契約社員は、いくつもの違いに加えて定義も異なります。それぞれの違いを知る前に、どのように定義されているのかを理解しておくと、違いをスムーズに理解できるでしょう。ここでは簡単に正社員と契約社員の違いについて解説します。
正社員
正社員の場合は、無期雇用契約で雇用されていることに加え、フルタイムで勤務する社員という定義があります。正社員は採用されてから雇用期間の更新手続きをする必要がありません。雇用期間を定めない雇用契約となるため、転職や退職などの選択をするまで、安定的に働くことが可能です。
しかし、勤務先によっては転勤や異動を命じられるケースもあり、同じ勤務地で働き続けることが難しい可能性もあるという点に留意しておく必要があります。
契約社員
契約社員の場合は、有期雇用契約で雇用されていることに加え、フルタイムで勤務する社員という定義があります。雇用期間の定めがなく契約更新が不要な正社員に対して、契約社員は雇用契約の更新を定期的に行わなければいけません。契約社員の1回あたりの契約期間は、最長で3年と定められているため、少なくとも3年に1回は契約を更新する必要があります。
また、仕事内容が限定的であり、条件も明確化した状態で契約を締結するため、契約の範疇を超える業務や条件外の仕事をしなくても済むのが契約社員です。
正社員と契約社員の違いを把握しておく必要性
正社員と契約社員には、雇用期間をはじめとするさまざまな違いがあり、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。正社員と契約社員の定義や違いは、法律ではなく各企業の裁量で定められています。
企業によって雇用形態ごとの内容やルールは異なるケースが多く、企業と社員の間で業務内容や就業規則をはじめとするルールの適用範囲に食い違いが生じる可能性も考えられます。企業側と社員側の勘違いを避け、トラブルの発生を未然に防ぐためにも、社員の雇用形態を適切に把握しておくことが重要です。
正社員と契約社員の7つの違い
正社員と契約社員では定義が異なっており、それ以外にもさまざまな違いがあります。正社員と契約社員を雇用するにあたって、理解しておきたい7つの違いを解説するため、把握しておきましょう。
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雇用期間
先述のとおり、正社員は雇用期間を定めない無期雇用であるのに対し、契約社員は雇用期間を定める有期雇用であるのが一般的です。正社員は契約期間の定めがないため、定期的な契約更新をしなくても同じ企業に勤務し続けます。つまり退職を選択しない限り、定年退職まで同じ企業で勤務し続けるのが正社員の特徴だといえるでしょう。
一方で、契約期間が設定されている契約社員は、契約が満了を迎えるたびに更新・終了を選択することになります。1回の契約で設定できる契約期間は最長3年であり、基本的には3年以内の期間で有期雇用契約を設定しなければなりません。しかし専門性を有する場合や、特定の経験が求められる場合は、契約期間を5年として定めることができます。
給与
正社員も契約社員も、雇用契約の際に規定された金額を給与として支払われるのが基本であり、違いはありません。ただし、正社員は月給制を採用している企業が多く、1か月の賃金が固定されています。そのため、出勤日数によって収入が増減するケースはあまりなく、安定して働きやすいという特徴があります。
一方で契約社員は、月給制だけでなく、年俸制や時給制などの給与形態を採用している企業もあります。時給制を採用している企業の場合は、出勤日数で収入に変動があるため、不安定になりやすいでしょう。
ボーナス・昇給・退職金
一般的に、ボーナス・昇給・退職金は法律で定められているわけではないため、企業の裁量によって雇用形態を問わず、その有無を決定できます。雇用形態に関係なくボーナスを支払うと定められる一方で、正社員にはボーナスを発生させるが、契約社員には発生させないと定めることも可能です。
また、正社員は定期的に仕事ぶりを評価され、昇給や昇進のチャンスがあります。しかし、契約社員の場合は昇給・昇進の機会が少なく、契約時と同様の給与・ポジションで契約期間の満了を迎えることが多いといえるでしょう。
さらに、退職金については、退職金制度自体を設けない企業が増えている傾向にあります。制度を設けている企業でも、正社員には支給するが、契約社員には支給しないと定めている企業も少なくありません。
福利厚生
福利厚生には大きく分けて「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。法定福利厚生は法律で定められた福利厚生のことであり、社会保険が該当します。
一方、法定外福利厚生とは、企業が独自で定める福利厚生であり、住宅手当や扶養手当などを指すことが一般的です。これらは企業が雇用形態によって支給の有無を決定できるため、契約社員の場合は手当がないケースもあります。
また、交通費に関しては、原則としてどちらの雇用形態でも同様の対応を行わなければいけません。資格手当も交通費と共通して、「同一の資格を有している」または「同一の業務を担当している」場合の正社員・契約社員に対しては、同じ金額の手当の支給が不可欠です。
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勤務条件
勤務条件に関しては法的な定めがないため、基本的には企業ごとに就業規則で定める必要があります。一般的には、労働基準法で定められた最低日数分の休日が正社員と契約社員の両方に適用されますが、正社員のみ適用される独自の休暇制度を設けるケースもあるでしょう。
また、労働時間においても、各企業で定める必要があります。雇用形態によってフルタイム・パートタイムにしなければいけないという決まりはないため、雇用形態にこだわらず同じ勤務条件を提示しても問題ありません。
企業によっては、契約社員の方が労働時間・出勤日数が正社員よりも少なくなるように条件を設定しているケースもあるため、自社の事業内容に合わせた条件の作成が大切です。
責任
基本的に正社員と契約社員の間に明確な違いはありませんが、仕事に対する責任の重さは異なります。一般的には、契約社員と比べて正社員の方が、裁量権が大きいでしょう。
裁量権とは、自分で決断し行動する権利のことです。特に実力主義の企業では、能動的に業務に取り組む正社員の裁量権が大きい傾向にあります。裁量権が大きくなることで、背負う責任も正社員の方が重くなります。
また、正社員の場合、昇給や昇格など職位階級が上がる機会があるため、自動的に裁量権が大きくなると考えられるでしょう。一方、契約社員の場合は、職位階級があっても、雇用契約に制限されているケースもあり、裁量権が大きくなるケースは多くありません。
仕事内容
正社員と契約社員では、仕事内容にも差が生じるケースが多くあります。基本的に契約社員は雇用契約を結んだ際に、仕事の範囲と勤務地が明確です。
企業が契約社員に対して、雇用契約の範囲を超えて仕事を任せることは基本的にないため、裁量権が必要な仕事を依頼するケースは多くありません。また、転勤によって勤務先が変わることもないため、同じ場所で働き続けるのが一般的です。
一方で正社員は、担当する仕事の範囲も広く、転勤・異動の可能性もあります。任せられる業務の幅が広がり裁量権も大きくなっていくでしょう。さらに転勤や異動により、入社時とは異なった勤務地や部署で働く可能性もあります。
契約社員から正社員になる方法
契約社員から正社員を目指す場合、「正社員登用制度の活用」と「転職活動をする」という2通りの方法があります。それぞれの方法について詳しく解説します。
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正社員登用制度の活用
企業によっては正社員登用制度を設けている場合もあり、制度を活用して正社員を目指すことができます。正社員登用制度とは、契約社員をはじめとする非正規雇用の社員を正社員に切り替える制度を指します。
一から人材を募集して教育するよりも、契約社員であれば教育をすでに行っていることに加え、どのような人柄で、どのように自社へ貢献してくれるのかを把握できています。
企業としても採用活動におけるリスクを大幅に低減できる上、求人費用や採用活動のコストがかからない方法です。また、社員にとっても入社後のギャップがほとんどないため、安心して働くことができるでしょう。
転職活動をする
現在働いている勤務先に正社員登用制度がない場合は、非正規雇用の社員が正社員に慣れる見込みはあまりないといえます。勤務先が変わっても正社員になりたい場合は、転職を検討するとよいでしょう。現在の企業と業種や職種が同じ場合は、これまでの経験を評価される可能性が高く、スムーズに転職しやすくなります。
転職の方法として、転職エージェントを活用すると、効率よく転職活動に励めるようになります。転職エージェントでは面接練習や書類の添削を受けられるため、手探りで転職に挑む必要がありません。契約社員時代の経験を生かせる仕事を紹介してくれるのも、転職エージェントの特徴です。
無期労働契約では正社員にはなれない
2013年に労働契約法が改正され、有期雇用契約だった契約社員が無期労働契約へ転換できるルールが施行されました。これは「5年ルール」「無期転換ルール」とも呼ばれています。
契約社員や派遣労働、アルバイト、パートなどの有期契約で働く人が、契約更新を繰り返して働いた場合でも、有期契約だからという理由で、企業側の都合により急な雇い止めが生じる恐れがありました。
このルールは、こうした有期契約社員の不安を払しょくする目的で制定されたルールであり、有期契約が通算5年を超えた社員は、無期労働契約に転換する申請が可能になります。契約社員から申告があった場合、企業は無期雇用契約へ転換しなければならず、拒否権がありません。
ただし、無期労働契約を締結した場合でも、雇用形態は変わりません。あくまで契約社員のまま、有期契約から無期契約になるものです。
正社員と契約社員それぞれのメリット
正社員と契約社員では、さまざまな違いがあるため、メリットも異なります。ここでは正社員と契約社員それぞれのメリットについて解説します。
正社員の場合
正社員が得られるメリットには以下のようなものが挙げられます。
安定した収入を得られる
正社員の場合、月給制や年俸制を採用している企業が一般的であるため、毎月安定した収入を得られるメリットがあります。そのため、出勤日数が少ない月でも、給与に影響が出ることはほぼありません。「給与が今月は少ないかもしれない」といった不安があまりないため、精神的にも不安定になることは少ないでしょう。
また、賞与やボーナスが支給されやすいという点も、経済的な安心につながります。契約社員よりも正社員の方が賞与やボーナスが高額な傾向にあります。
福利厚生が充実している
福利厚生が充実しているという点も、正社員として働くメリットといえます。基本的な福利厚生には、社会保険を代表とする「法定福利厚生」と、住宅手当や扶養手当などの「法定外福利厚生」があり、多くの場合、正社員はその両方が支給されます。
契約社員の場合は、受けられる福利厚生が限定的な場合が多いため、福利厚生の充実度は正社員ならではといえるでしょう。
社会的な信用を獲得できる
正社員は安定した給与が見込める雇用形態です。給与が不安定になる心配が低いため、社会的信用を得られやすいというメリットがあります。社会的信用という面では、契約社員と比べるとカードローンや住宅ローンなどの審査が通りやすい傾向があります。
また、賃貸契約も結びやすいため、ほかの雇用形態と比べても困る場面は少ないといえるでしょう。
昇給・昇進のチャンスが多い
正社員であれば、昇格や昇進のチャンスを獲得しやすいという点もメリットです。正社員は無期雇用契約であり、長期的に働くことを前提として教育をしたり、仕事を任せたりするケースが多くなります。
契約社員とは違って、任される仕事の範囲が限定されていないため、多くの業務を経験可能であり、成長できる機会も多くあります。新たに任せられた仕事で成果を出せば、責任の大きい仕事も任せられるようになり、昇給や昇進のチャンスを手に入れられるでしょう。
契約社員の場合
契約社員が得られるメリットには以下のようなものが挙げられます。
転勤がない
契約社員として働く大きなメリットのひとつが、転勤がないという点でしょう。原則として契約社員の場合は、採用時に契約した場所で働き続けられます。住む場所を変えなくても済むため、好きな場所に定住しながら仕事に励むことが可能です。
同じ勤務地で働き続けたい、引っ越しができないなどの事情がある場合は、転勤がない契約社員としての働き方が適しているでしょう。
プライベートを充実させられる
契約社員の場合は、雇用契約によって仕事内容や勤務時間が決められています。自分に合わせた勤務条件で仕事を選択できるため、柔軟な働き方を実現可能です。
そのため、正社員と比べて契約社員は、ワークライフバランスを整えやすい傾向にあり、プライベートを充実させられるのも契約社員のメリットだといえるでしょう。副業もがんばりたい場合や、趣味や好きなことに時間を割きたい場合に適した働き方です。
正社員よりも責任が少ない
契約社員は正社員と比べて、仕事で背負う責任が少ないため、のびのびと働きやすいという点もメリットです。責任が少ない理由として、雇用契約で結んだ以上の業務を任せられるケースがほとんどなく、担う業務範囲が限定的であることが挙げられます。そのため、仕事の担当範囲が広い正社員と比べて、背負う責任が小さく気負いすぎずに働くことができるでしょう。
また、契約によっては残業や休日出勤などをしなくてもよいケースもあります。急な呼び出しや対応を求められる正社員に対して、契約社員はその心配が少ないのが特徴といえるでしょう。
スキルを生かして働ける
契約社員は、雇用契約に記載されている以上の業務を担当するケースは基本的にはありません。業務範囲が限定されており狭いことで、特定の業務に集中して仕事ができるという点も契約社員のメリットです。
仕事を選ぶ時点で、携わりたい仕事を選択できるうえに、生かしたいと考えていたスキルを継続的に活用し続けられます。新しい業務で一からノウハウを学ばなくてもよいため、負担も少なく働けるでしょう。
正社員と契約社員それぞれのデメリット
正社員と契約社員には、雇用形態が違うことによるデメリットの違いも生じます。デメリットを理解した上で、雇用形態を選択するのがおすすめです。ここでは正社員と契約社員それぞれのデメリットについて解説します。
正社員の場合
正社員として働くことによるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
責任が大きい
正社員は、契約社員と比較して背負う責任が大きいことがデメリットといえるでしょう。任せられる業務が多く、昇格により裁量権を得られる反面、責任も大きくなっていきます。そのため、業務を行う上でトラブルが生じた際は、対応するために休日出勤や残業が増えることもあるでしょう。役職や担う業務によっては、負担が重すぎると感じることもあるかもしれません。
転勤・異動が生じるケースがある
正社員の場合、転勤や異動が命じられる可能性があります。基本的には特別な事情がない限り、人事異動命令に従わなければいけません。特に雇用契約や就業規則で定められている場合は、断ることが難しいでしょう。
キャリアプランに合っていなかったり、希望とは異なったりする地域や部署への異動が命じられてしまう可能性もあります。慣れない勤務地や部署で大きなストレスがあると、体調を崩す恐れがあることにも注意が必要です。
副業がしにくい
近年では、多くの企業で正社員の副業が許可されています。しかし、就業規則で副業を禁止していたり、よく思わなかったりする企業もまだあります。
また、本業で多くの業務を任せられた結果、副業をする余裕がない場合も考えられるでしょう。昇進により裁量権が大きくなることで、責任が重くなり、休日出勤や残業が増える可能性もあります。副業に励むためには、時間や精神的に余裕がある状況に身を置く必要があるでしょう。
契約社員の場合
契約社員として働くことによるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
長期雇用が保証されていない
契約社員は、契約の期間が決まっている有期雇用契約であり、1回あたりの契約期間は専門性の高い仕事でない限り、3年以内であるケースがほとんどです。必ずしも契約が更新されるわけではないことを考慮すると、長く安定的に働くことは難しいと考えられるでしょう。
企業が求める結果が出せなかったり、何らかの問題があると判断されたりすると、契約更新が難しくなる恐れもあります。
また、長期雇用が保証されていないことで、正社員と比べて社会的な信用度が低い傾向にあります。
福利厚生が手薄
契約社員は、福利厚生の対象外になるケースがあるという点も、デメリットとして挙げられます。住宅手当や扶養手当などの法定外福利厚生は、その対象範囲も含め企業ごとに定める制度です。
そのため、各種手当が支払われなかったり、支払われる場合でも金額が正社員よりも少なかったりするなど、手薄になる可能性が考えられます。
年収が増えにくい
年収が増えにくい傾向にあるのも契約社員のデメリットでしょう。契約社員の場合、雇用契約で定められた内容の仕事を任せられるため、昇給や昇進の機会はあまりありません。成果を出して給与アップの対象になっても、基本的には次の契約更新時まではそのままです。
また、企業の定める就業規則によっては、ボーナスや退職金も支払われない可能性もあります。短期的に見れば多く給料が支払われるケースもありますが、長期的に見ると正社員よりも給料が少なく、年収が増えにくいといえるでしょう。
まとめ
正社員と契約社員の違いは、定義や給与、勤務形態などさまざまです。無期限で長期的に安定して働ける正社員に対して、契約社員は勤務期間が有限であり専門性を生かして柔軟に働ける特徴があります。それぞれの特徴を理解した上で雇用契約を結ぶことで、雇用後のトラブル発生を未然に防げるでしょう。
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