職務怠慢の問題社員…正当な解雇事由となる「就業規則による懲戒処分/解雇」とは


職務怠慢の問題社員…正当な解雇事由となる「就業規則による懲戒処分/解雇」とは

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

職務怠慢の問題社員は、経営幹部や一部の従業員だけでなく、会社にとっても悩みの種になるでしょう。

この記事では、職務怠慢による懲戒解雇は可能か、解雇事由に該当するかについて解説します。労働者を守る法律や就業規則なども含めて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

職務怠慢にあたるケースとは

職務怠慢による処分を検討するためには、どのような行為が職務怠慢にあたるかをはっきりさせておかなければなりません。まずは、職務怠慢にあたるケースをいくつか見ていきましょう。

遅刻・無断欠勤・勤務成績不良

職務怠慢と見なせる行為のひとつが、正当な理由のない遅刻や無断欠勤です。定められている労働時間を守ることは、雇用主と労働者が結ぶ雇用契約の果たすべき職責・責務に含まれています。

通勤で使用している公共交通機関の遅れが出たり、体調不良になったりすることは時々ならあるでしょう。しかし、遅刻や無断欠勤が頻繁だと、周囲の従業員も迷惑しますし、真面目に働いている従業員のモチベーションまで下がるなど、会社にとっても不利益です。

遅刻や無断欠勤に加え、勤務成績も悪いとなると、やはり債務不履行と見なされるでしょう。こうした問題社員は、職務怠慢として処分できる理由が十分にあります。

なお、職務放棄について、下記の記事で解説していますので、さらに詳しく知りたい方はリンクからご覧ください。
「職務放棄」については、こちらの記事をご確認ください。

就業規則の解雇事由に該当する

職務怠慢を理由に処分できるもうひとつのケースは、就業規則に定められている「解雇事由」に該当する場合です。

たとえば、厚生労働省による「モデル就業規則」(企業が就業規則を作成する際に参考できる資料)の53条では、「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき」や、「他の職務にも転換できない等就業に適さないとき」などを解雇事由に定めています。

こうした内容を就業規則に定めていれば、該当する従業員を職務怠慢として扱えるでしょう。

引用:モデル就業規則 令和4年 11月版 厚生労働省労働基準局監督課
https://www.mhlw.go.jp/content/001018385.pdf

会社への損害が発生している

労働者が故意、あるいは過失で会社に損害を与えた場合、民法709条「不法行為責任」の要件を満たします。また、払うべき注意を怠ることによって会社に損害が発生した場合は、民法415条「雇用契約の義務違反」にあたり、職務怠慢行為と見なせるでしょう。

一例としては、道路交通法違反や不注意による事故や、点検不良による機材の破損などがこれに該当します。とはいえ、労働環境の悪化が原因だと判断されれば、職務怠慢としての解雇が認められないケースもあるようです。

残業代の不当請求

残業代の請求は労働者の権利ですが、本来定時までにできる仕事を故意に遅らせ、あえて残業代を稼ぐような行為は、職務怠慢として扱えます。

もっとも、近年はデバイスを調査・分析することで、勤務内容のデータ化・客観視が可能になっているため、不当な残業代請求の対処は難しいことではありません。

関連記事:職務給とは?職能給・役割給との違いやメリット・デメリットを解説 関連記事:職務評価による人事評価の方法について | 把握すべき手法や項目について解説

職務怠慢による解雇は可能?



海外企業と異なり、日本では従業員の解雇についてはルールが厳しく、難しいものです。職務怠慢であると判断できたとしても、実際に解雇ができるかどうかを解説します。

職務怠慢による解雇のハードルは高い

民法の解釈からすると、企業による従業員の解雇は自由です。しかし、労働基準法16条には、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、解雇は無効と判断されます。

不当解雇だと訴えられた場合、最終的に判断するのは裁判所です。会社側としては職務怠慢による解雇が妥当だと判断しても、裁判になった場合はどうなるのでしょうか。労働基準法16条と、職務怠慢とされる内容、会社の対応などを踏まえ、解雇は無効と判断されることもあります。

そのため、職務怠慢が見受けられたとしても、すぐに解雇を検討せず、必要な手順とできる対処をしたうえで、処分を決定する必要があるでしょう。

引用:労働基準法 | e-GOV 法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128

就業規則違反による普通解雇が可能

職務怠慢による解雇において、一番確かな根拠となるのは、就業規則です。解雇事由を就業規則にしっかり記載していれば、「就業規則の○○に違反しているため、解雇する」ということが可能となります。

雇用主と労働者は解雇事由も含めて雇用契約を結んでいるため、明らかな違反があった場合は、不当解雇にはなりません。ただし、労働基準法に違反する内容を、就業規則に含めることはできません。

懲戒解雇は有効性判断が厳格になる

解雇のなかでも、「懲戒解雇」は制裁の意味合いが強く、とても重い処分です。解雇される従業員にとっては、退職金や再就職にも悪影響をもたらす可能性があります。そのため、労働者保護の観点からも、より有効性を慎重に判断しなければなりません。

通常、懲戒解雇は犯罪や横領、重大な詐称、長期間の無断欠勤や悪質性の高いハラスメントなどが対象になります。しかし、懲戒解雇としては不適当だと判断されるリスクを避けるため、普通解雇にするケースも少なくありません。職務怠慢での懲戒解雇では、さらにハードルが高くなるでしょう。

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関連記事:解雇とは?不当解雇にしない!会社が従業員を解雇する際に知っておきたいルール

職務怠慢を理由とした解雇に必要なもの



ここでは、職務怠慢を理由に解雇をした場合、根拠として必要なものを解説します。

職務怠慢を客観的に証明するもの

「これは確かに職務怠慢である」と証明できるものには、出勤簿や無断欠席・遅刻・早退の記録などがあります。また、職務怠慢による実害や、目撃談、関係者によるヒアリングシートも、客観的な証拠として有効です。

加えて、書面やメールなど、何度も注意をしていることの証拠、営業日誌なども客観的な証拠として有力になります。職務怠慢が確認された際、どのような対処をしているかも重要です。

「社会通念上相当」と認められる事実

社会通念とは、社会一般に通用する常識や見解のことを指し、法解釈や裁判における判断材料のひとつでもあります。欠勤、遅刻、早退があったとしても、その回数が非常に多いというわけではないのであれば、解雇理由として無効と判断されることもあるでしょう。

また、業務命令違反を理由とする場合、単に業務命令に従わないだけであれば、懲戒解雇としては相当性を欠くと判断される可能性もあります。業務命令違反が就業規則にも違反するものであり、会社や第三者に大きな損害を出しているなど、客観的に判断できる材料も必要です。

職務怠慢と見られる社員への対応

職務怠慢が多く見られる従業員に対しては、解雇を検討してもよいでしょう。ここでは、解雇の前にできる対応について解説します。

適正な人事評価制度のもと注意や指導を行う

職務怠慢が見られる場合でも、上司の主観ではなく、人事評価制度に基づく客観的な評価が欠かせません。正当な評価に基づき、適切な注意や指導を行っていきましょう。本人自身が問題を認識していないケースもあるため、実害が出る前の早い段階で、注意や指導を行うよう心がけてください。

軽い懲戒処分

解雇を検討する前に、就業規則に則った、譴責、減給などの軽い懲戒処分を検討します。解雇の前段階として、譴責処分を行っていれば、職務怠慢から解雇に至った場合でも、「改善が見られなかった」ことの証明がしやすいでしょう。

退職勧奨を検討する

会社から解雇を通知するのではなく、労働者が自分の意志で辞めるよう退職推奨を促すことも解雇前にできる対応です。本人が熱心に仕事をする気がない、働く気がない場合の、退職推奨は円満退社につながるかもしれません。事前に面談を行うため、「一方的に解雇された」と訴えられるリスクを避ける効果もあります。

ただし、本人が難色を示している場合、何度も退職話をもちかけないように注意してください。相手がプレッシャーに感じるようだと、不当な退職強要に該当しかねないため、相手の意志を見極める必要があります。

まとめ

職務怠慢に改善が見られない場合は解雇を検討したくなりますが、職務怠慢が事実であったとしても、それを証明する客観的な証拠や相当と見られる事実が必要です。タレントパレットは、従業員の顔写真が付いたアイコンで、顔と名前を一目で把握でき、従業員の様子を記録することができます。

人材データを時系列で蓄積し可視化できるので、注意や指導、就業規則に則った懲戒処分とともに、万が一の解雇に向けた情報蓄積にもご活用ください。

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