エンプロイエンゲージメントの概要
エンプロイエンゲージメントとは、そもそもどのような意味を持つ用語なのでしょうか。概要を解説します。
エンプロイエンゲージメントとは?
エンプロイエンゲージメントとは、社員が自社に対して抱く思い入れや共感、帰属意識などを指す造語です。例えば、事業への貢献意欲や満足度などが、エンプロイエンゲージメントに含まれます。
社員のエンプロイエンゲージメントが高い企業は、企業と社員の双方向でよりよいコミュニケーションが取れており、良好な関係が築けているといえます。
エンプロイエンゲージメントと類似用語の違い
エンプロイエンゲージメントと類似する用語は複数存在します。以下では、類似する用語との違いを解説します。
ワークエンゲージメントとの違い
ワークエンゲージメントとは、個人の仕事に対する肯定的な感情を指します。原則として活力・熱意・没頭の3つの要素がそろった状態が、「ワークエンゲージメントが高い」と定義されています。
一方、エンプロイエンゲージメントは自社と社員の関係性を示したものです。企業との関係性や仲間との信頼関係など、多様な要素が含まれる点で、ワークエンゲージメントとは意味が異なります。
従業員満足度との違い
従業員満足度とは、社員が自社での待遇や業務内容などに満足している度合いのことです。
満足度の基準はあくまでも「社員が満足しているか否か」にあります。エンプロイエンゲージメントのように、企業への愛着や忠誠心といった意味は含まれません。例えば、「企業の待遇には満足しているが、愛着はない」ケースは、従業員満足度は高いけれど、エンプロイエンゲージメントは低い状態といえます。
ロイヤルティとの違い
ロイヤルティとは、社員が企業に対して抱く帰属意識や忠誠心のことです。企業と社員を主従関係とみなすため、社員が企業へ尽くす意味合いが強くなります。
一方でエンプロイエンゲージメントは、ロイヤルティとは違い、企業と社員が対等な関係で、助け合いながらともに成長を目指す状態です。ロイヤルティとは「会社と社員の立ち位置」が違います。
モチベーションとの違い
モチベーションとは、意欲や動機づけなどのことです。社員自身の内面から湧き上がる、「楽しい」「評価されたい」といった気持ちを高めることが、仕事のパフォーマンス向上に役立ちます。
エンプロイエンゲージメントとの違いは、「誰のために頑張るか」です。エンプロイメントエンゲージメントは企業のため、モチベーションは個人のために頑張る点で意味が異なります。
エンプロイエンゲージメントが注目される理由
なぜ近年、エンプロイエンゲージメントが注目を集めているのでしょうか。主な理由を解説します。
労働市場の流動化
近年では正社員であっても、キャリアアップやよりよい職場環境を求めて転職することが、一般的になりつつあります。
このような労働市場の流動化が生じるようになった原因の1つが、終身雇用の崩壊です。入社したら退職まで働き続けるという意識が薄れた昨今、優秀な人材を確保するには、自社への愛着を高めるエンプロイエンゲージメントの向上が欠かせません。
価値観の多様化
近年では、働き方についての価値観が多様になっています。昇給や昇進に対する意識が低下し、報酬面やポジションよりも、働きがいやワークライフバランスを重視する傾向にあるためです。
多様な価値観を持つ社員を企業に定着させるには、エンプロイエンゲージメントを高めることが必要です。社員の価値観と企業のビジョンをうまく結びつけるうえで、エンプロイエンゲージメントの重要視が高まっています。
エンプロイエンゲージメントを高めるメリット
エンプロイエンゲージメントを高めると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを解説します。
エンプロイエンゲージメントによって生産性が上がる
エンプロイエンゲージメントが上がると、社員の企業への貢献意識が高まります。個々のモチベーションや主体性なども高まっている状態になるため、結果的に労働生産性の向上につなげることが可能です。
2017年に行った、アメリカの世論調査及びコンサルティングを行う企業として知られるギャラップの調査によると、エンゲージメントスコア上位企業は、下位企業よりも生産性や利益率が高まると指摘されています。
エンプロイエンゲージメントが上がれば離職率が下がる
エンプロイエンゲージメントの向上は、帰属意識の強化にもつながります。先述のとおり、近年は働き方の多様化が進み、転職が一般的になりつつあります。エンプロイエンゲージメントが上がれば、自社への愛着ややりがいなども高まって、離職率が下がるため、安定的な企業経営の継続が可能です。
エンプロイエンゲージメント向上でチームワークが強まる
エンプロイエンゲージメントが高い状態とは、社員全体に企業の理念が浸透していることを意味します。ビジョンを共有する社員間では、チームワークが強まるため、お互いのサポートや意見の尊重などにつながります。もし社員間でくい違いが生じた場合でも、団結力があればお互いの意見を大切にしながら、よりよい解決方法を探れるでしょう。
顧客エンゲージメントの向上につながる
エンプロイエンゲージメントのメリットは、企業と社員間だけでなく、顧客にも波及します。エンプロイエンゲージメントが高い企業では、社員の意欲が高いため、顧客に対しても質のよいサービスや商品を提供できる傾向にあるからです。
顧客満足度が上がれば、自社の商品やサービスを頻繁に購入・利用してもらえるだけでなく、企業価値を他者に伝えてもらうきっかけにもできます。
エンプロイエンゲージメント向上方法
エンプロイエンゲージメントを向上させるには、どうすればよいのでしょうか。主な方法を5つ解説します。
エンゲージメントサーベイを活用する
エンゲージメントサーベイとは、社員の心的なつながりであるエンゲージメントを測定し、可視化する診断ツールのことです。エンゲージメントの数値が高い状態の場合、社員が企業に貢献する意欲を持って業務に打ち込んでいるといえます。
一般的には、社員にアンケート調査を行い、回答をデータとして収集したのち、結果を分析して施策立案につなげます。回答では社員一人一人の本音が明らかになるため、改善への本質的な手段として結果の利用が可能です。
ビジョンを共有し共感を得る
ビジョンとは、企業の目標や理念などを指します。企業が事業をとおして何を実現したいのか、業務との関連性、社会・顧客にもたらす価値などに関して社員が理解することは、エンプロイエンゲージメント向上にとって不可欠です。
企業のビジョンに関して、社員の共感を得られれば、エンプロイエンゲージメントが高まります。共感だけでなく、一歩踏み込んでビジョン達成に向けた行動に移せれば、エンゲージメントがさらに高くなるでしょう。
人事制度を整えて意欲を上げる
適正な人事評価は、エンプロイエンゲージメントを高める上で必要な要素です。
例えば、これまでのような年功序列型の人事評価を行うと、キャリアアップを目指す若者や、実力重視の価値観を持つ優秀な社員の意欲や向上心の低下を招き、最悪の場合、離職につながりかねません。適切な人事評価を行い、社員の信頼やモチベーションを向上させるのはもちろん、報酬やインセンティブなども充実させることで、人材の流出を防ぐことが可能です。
職場が快適ならエンゲージメントが上がる
職場環境を改善し、働きやすくすることは、エンゲージメント向上につながります。現在の設備や制度を見直し、社員が働きやすい環境をつくりましょう。
例えば、個人席を固定しないフリーアドレスの導入、リフレッシュスペースの設置、気軽にコミュニケーションを取れるツールの利用などで、より働きやすい職場環境になります。また、設備面と合わせて、改善点を言い合える風通しのよい職場環境の構築も重要です。
ワークライフバランスを実現する
ワークライフバランスが改善されると、自社への信頼や満足度が高まるため、エンプロイエンゲージメントの向上にもつながります。ワークライフバランスとは、生活と仕事の調和を意味する言葉です。
例えば休暇の取りやすさや、残業を減らす制度、福利厚生、フレックスタイム制などの取り組み全般を指します。ワークライフバランスが保たれると、企業イメージもよくなるため、採用時に優秀な人材が集まりやすくなる点もメリットです。
エンプロイエンゲージメント向上のステップ
エンプロイエンゲージメントを向上させるには、どうすればよいのでしょうか。主な2つのステップを解説します。
エンプロイエンゲージメントを測定
まずは社員のエンゲージメントを、エンゲージメントサーベイ(アンケート調査)で測定します。測定の際には、調査の目的や企業の目指すビジョンなども、あらかじめ明確にしましょう。目的をふまえたうえで測定結果を分析することで、自社の社員が顕在・潜在的に抱えている課題が明確になるため、自社のエンプロイエンゲージメントの状況を把握できます。
改善のための施策立案
エンプロイメントサーベイで課題を見つけ出したら、次はその課題の改善策を考えます。複数の課題がある場合は、まず優先順位をつけ、最も重大かつ早く対応すべきものから着手しましょう。勘や経験に頼るのではなく、定量的な数値課題をもとに、解決のためにどの部署が何をする必要があるのか、具体的な施策を決めて実施します。
まとめ
エンプロイエンゲージメントとは、事業への貢献意欲や満足度など、社員が自社に対して抱く思い入れや共感、帰属意識などを指す言葉です。近年、労働市場の流動化や働き方の多様化などにより、この言葉が注目を集めています。社員の価値観と企業のビジョンを両立させ、事業を安定的に継続させるためには、エンプロイエンゲージメントの向上が不可欠です。
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