みなし残業にメリットはあるの?従業員側と経営側から解説


みなし残業にメリットはあるの?従業員側と経営側から解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

みなし残業とは、実際の残業時間にかかわらず、毎月残業代を固定で支払う制度です。実際に、みなし残業にはどのようなメリットがあるのか、気になる企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、みなし残業のメリットを従業員側と経営側、2つの視点から解説します。

従業員側のみなし残業を導入する3つのメリット



みなし残業を導入した際に従業員がどのように感じるのか気になる方は多いでしょう。ここでは、従業員視点のメリットを3つ解説します。

賃金に対して不満を持ちにくい

残業時間に応じて残業代を支払っている場合、業務効率が良く定時に終わらせる従業員よりも仕事に時間がかかる従業員の方が残業代が多くなるという矛盾が生じるケースも少なくありません。

そのため、「効率よく仕事を終わらせるよりも、時間をかけて残業をした方が収入アップにつながる」という考え方になることもあります。しかし、みなし残業を導入した場合、「仕事を効率よく終わらせた方が収入が下がる」という矛盾がなくなります。

「自分よりも仕事に時間がかかる人の方が賃金が多い」という不満を持ちにくくなる点はメリットです。

残業がなかったとしても残業代を得られる

月ごとに残業代が大きく異なると賃金の変動が激しく、生活費の予定が立てづらくなるという欠点があります。

みなし残業を導入した場合、残業がなくても残業代を得られます。残業の有無によって賃金が変動しないため、安定した生活がしやすくなる点はメリットです。

自分の裁量によって働きやすくなる

みなし残業の場合、残業時間と給料との相関関係がありません。そのため、「給料を増やすために残業をしよう」と考える従業員は皆無となります。

みなし残業を導入した場合、残業時間はできるだけ短くした方が良いと考え、効率的に仕事をこなす人が増える傾向があります。そのため、従業員は残業代のことを気にせず、自分の都合にあわせて業務をこなせるようになるでしょう。

従業員側のみなし残業を導入する3つのデメリット

ここでは、従業員側が感じる可能性がある3つのデメリットについて解説します。

帰りづらい雰囲気ができる可能性がある

みなし残業は、毎月の残業代を固定で支払う制度です。そのため、社内では「残業代を支払っているのだから、残業して当然」という雰囲気になる場合があります。

特に、上司や管理職がそのように考えている場合部署内が帰りづらい雰囲気となる可能性があります。定時で帰れなくなるだけでなく、職部の雰囲気が悪化する可能性がある点はデメリットの1つです。

残業ありきでの業務内容になる可能性がある

既に残業代を支払っているため、それに合わせて業務内容が増える可能性があります。残業は定時で終わらせることができなかった業務を、時間を作り出して終わらせる行為です。そのため、残業を前提に業務を構成すること 企業の発展にはつながりません。

残業を前提として業務内容が増える可能性がある点は、デメリットの1つといえるでしょう。

1時間当たりの賃金が割安となる可能性がある

基本給とみなし残業代の合計で給与を支給しているケースでは、その計算方法はよくチェックしましょう。みなし残業代を基本給から差し引き、1時間当たりの基本給を計算してみると、都道府県が定める最低賃金を下回るような会社も多いためです。

このような場合は、労働基準法に抵触しており違法です。しかし、気づかずに働き続けてしまうケースもあります。また、最低賃金を下回っているかどうかは、実際の基本給・みなし残業代の計算方法を聞き・調べ、基本給を時給換算しなければなりません。

経営側のみなし残業を導入する3つのメリット

ここからは、経営側にもみなし残業を導入するメリットについてみていきましょう。計算の効率化だけでなく、 従業員のモチベーションが上がることによって会社の利益にもつながります。

業務効率化が図れる

みなし残業を導入すると、従業員は時間をかけて残業しなくても残業を行ったときと同じ給料が得られます。そのため、「残業にならないように効率よく業務を終わらせよう」と考えるようになるといえるでしょう。手際よく仕事を行うといった考え方が定着するため、業務効率化につながります。

人件費の計算がしやすい

一般的な残業代の計算では、毎月の残業代に波があり、人件費の予算が立てづらい傾向にあります。残業時間は会社側だけでは調整できないことも多いためです。

しかし、みなし残業を採用した場合は、毎月の残業代の変動が小さくなります。毎月の残業時間が設定したみなし残業時間より少ない場合は、毎月の残業代が固定となり人件費が一定になるため、予算管理が簡単になる点がメリットです。

残業代計算が簡単になる

みなし残業制度では、既定の残業時間以内であれば毎月の残業代は固定で支払うこととなります。一般的な残業代の計算では、毎月全社員の残業時間を把握し残業代を計算しなければなりません。

対して、みなし残業制度を導入すると、実際の残業時間がみなし残業時間を超えない限り支払金額が一律となるため、毎月の残業代計算が楽になる点はメリットです。

経営側のみなし残業を導入する3つのデメリット

経営側もメリットだけではありません。ここでは、みなし残業の導入前に知っておきたい、経営側にとってのデメリットを3つみていきましょう。

残業時間がなくても支払いがある

みなし残業制度では、事前に一定の残業時間を定めその時間に対して残業代を支払います。しかし、みなし残業制度では既定の残業時間が発生しなくても、全額支払わなければなりません。

例えば、事前に20時間のみなし残業代をつけていて、実際には10時間の残業だった場合でも、企業には20時間分の残業代を支払う義務が生じます。

残業代に対する知識が必要となる

みなし残業を支払った場合、必ず従業員が残業をしなければならないというわけではありません。また、みなし残業代を支払っても従業員を無制限に残業させられるわけではない点は知識として知っておく必要があります。

みなし残業代としてあらかじめ設定している時間を超える残業時間となった場合は、追加の残業代を支払わなければなりません。また、みなし残業代を設定する場合、残業代の計算方法をはっきり明示する必要があります。就業規則なども変更し、周知しましょう。

みなし残業を支払う場合は、残業代に対する様々な知識が必要となる点は、デメリットの1つといえるでしょう。

未払い残業代を請求される可能性がある

次のような場合は 未払い残業代を請求される可能性があります。

・みなし残業代を支払っていた場合でも実残業時間を計算しない
・実残業時間を計算しているものの、追加の残業代を支払っていない

どちらも労働基準法違反となる可能性が高く、 実残業時間を計算していない場合は、ある日突然、従業員から告訴される可能性もあるといえるでしょう。

また、基本給が上がった場合はみなし残業代も再計算しなければなりません。みなし残業代を変更しなかった場合には、未払い残業代として差額を請求される可能性が生じます。

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みなし残業を導入する注意点



ここでは、みなし残業を導入する際の注意点を3つみていきましょう。とくに、トラブルに関しては 企業として大きなダメージを受ける可能性もあるため、 考えられるリスクを事前に想定し 対応 しておく必要があります。

明確な賃金体系などの説明が必要

みなし残業制度を導入するには、就業規則の改定や従業員への周知を行い、従業員から同意を得なければなりません。基本給と残業代の区別をつけ、どのような計算でみなし残業代を計算したのか、面談や会議、お知らせなどによって説明を行う必要があります。

トラブルの原因となる可能性がある

会社側・従業員側共にみなし残業のルールを熟知しておかなければ、以下のようなトラブルに発展する可能性があるため注意しましょう。

・みなし残業代を支払っていることを理由に、管理職が部下に残業を強要する・みなし残業時間をオーバーしても追加の残業代を払わない
・実残業時間を計算しておらず、みなし残業時間に合わせて勤務時間を改ざんしていた

勤務時間を徹底管理する

みなし残業を導入した場合は今まで以上に 勤務時間の管理を徹底する必要があるといえます。 残業代の認識に齟齬が生じやすく、1時間でもずれていた場合は 罰則の対象となる可能性があるためです。

また、 従業員側からしても正確な残業時間に合わせた給与をもらえていない可能性がある場合には、退職率の増加や モチベーションの低下につながる可能性があります。

みなし残業にはメリット・デメリットの両方があります。場合によって法律的なトラブルにつながるケースもあるため、万全の対策が必要だといえるでしょう。しかし、上手く活用できれば、みなし残業は企業活動の活性化につなげられます。

「みなし残業」については、こちらの記事をご確認ください。

みなし残業に関連する罰則を受ける事例

みなし残業は着実に法律の内容を把握しルールを守らければ、労働基準法に違反するケースも少なくありません。ここでは、罰則を受ける主な事例を3つ解説します。

時間給が最低賃金を下回っている

基本給とみなし残業代を合計したものを「基本給」として支払っている企業は少なくありません。また、そういった計算方法でも割増賃金を含めて計算されていれば 全く問題はないといえます。

しかし、基本給とみなし残業代をわけて計算し、基本給の時給を割り出すと時給が最低賃金を下回っている企業は法律違反です。

また、厚生労働省では誤解を防ぐためにも、求人などの賃金表記には基本給とみなし残業代を分けて明記するよう喚起しています。みなし残業を導入する際は、時間給が最低賃金を下回らないよう留意しましょう。

残業時間が多すぎる

みなし残業として設定できる時間は最大で月に45時間(年360時間)以下です。残業時間が月に45時間を超過した場合であれば違法となります。そのため、みなし残業時間も45時間までしか設定することはできません。

パワハラが発生する可能性がある

みなし残業代を支払っているという理由で明らかに過剰な業務量を押し付けることや残業を強要することはパワハラ(パワーハラスメント)に該当します。

リーダーやマネージャーなど、従業員をマネジメントする立場の人材に対して事前に教育や 研修を行うことでこういった事態を防ぐことが可能です。そのうえで、定期的に現状をチェックし、 どのような状況になっているのかを把握する必要もあります。

みなし残業によるトラブル防止のための体制作りのポイント

みなし残業でトラブルが引きおこる可能性もあります。そのため、みなし残業制度を導入する際は、トラブル防止のための体制作りをしておかなければなりません。

就業規則の改定・周知の徹底

みなし残業を導入する際は、就業規則の改定が必要です。また、賃金体系がよくわかるような計算表を明示しましょう。就業規則などに載せておいても問題はないといえます。

残業の強要などのパワハラが起きないよう、ルールを明確化しておかなければなりません。従業員への説明や同意を得ることも必要です。

労働時間の徹底管理

みなし残業時間を超過した場合、会社は超過分の残業代を支払わなければなりません。そのため、みなし残業制度導入後も労働時間の管理を徹底しましょう。

労働時間の管理に関しては、タイムカードや管理ツールなどを使用し 手間がかからない方法を導入することをおすすめします。

給与明細への明記

基本給とみなし残業代を分けずに支払った場合はトラブルの元となります。トラブルが起きた際に会社に違法性がないことを証明するためにも、残業代は基本給と別に給与明細に明記しておきましょう。

まとめ

みなし残業のメリットとして、「毎月の給与の固定化」「仕事に対するモチベーションアップ」などがあります。従業員の仕事に対する意欲が増し、業務効率化につながる可能性があるといえるでしょう。

しかし、扱い方によってはトラブルを引き起こす可能性があるため注意が必要です。みなし残業制度を導入する際は、事前に従業員へ丁寧に説明し、同意を得なければなりません。

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