醸成を高めることで企業の一体感を強固に|醸成を高めるメリットや方法などを解説


醸成を高めることで企業の一体感を強固に|醸成を高めるメリットや方法などを解説

醸成と聞けば、日本酒やワインなどの酒や醤油などの生産を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。ビジネスシーンにも、醸成という言葉は取り入れられています。具体的には、社内や部署内で重要な一体感の醸成やそれを高めるという意味で使われます。

企業を成長させるためには、一体感の醸成を高めることが不可欠な要素です。社内や部署内に一体感がなければ、生産性も高まらないでしょう。本記事では、醸成の意味から、企業に一体感の醸成が必要な理由などを解説します。一体感の醸成を高める方法なども、詳しく紹介するので参考にしてください。

「醸成」の言葉の意味

醸成には、一般的に使われる意味とビジネスシーンで使われる意味があります。ここでは、それぞれの意味を解説し例文を紹介します。

製造で使われる「醸成」

醸成の本来の意味は、原料を発酵させて酒や醤油、味噌などを生産することです。発酵は、微生物が増えることで起こる変化を利用しています。食品を製造する際には、相当の月日をかけることも少なくありません。発酵させて醸成することで、原料は次のように変わります。

大豆:醤油や味噌
米:日本酒や酢
麦:ビールや味噌

酒や醤油などを原料からつくるという体験は日常的ではないため、醸成という言葉に馴染めない人も少なくありません。しかし、ビジネスシーンでの醸成を深く理解するためにも、醸成の本来の意味を知識として理解しておいても損はないでしょう。

ビジネスシーンで使われる「醸成」

ビジネスシーンで使われる醸成も、本来の意味を踏襲して、徐々に目的の状態をつくり出すことです。製造で使われる醸成でも、多くの時間が必要であり、急いで醸成すれば失敗に終わるでしょう。製造で使われる醸成を応用して、雰囲気や気運を徐々につくることをビジネスシーンやマネージメントにも醸成が使われるようになりました。

あくまでも、徐々に雰囲気や状態をつくることを指す意味であり、急激な変化を求める際には、醸成は適していません。また、急激な醸成を求めても、製造のように失敗に終わるケースが多いでしょう。

ビジネスで使われる「醸成を高める」の意味と例文

ビジネスで使われる「醸成を高める」という言葉は、「醸成を促す」と同じ意味です。また、「醸成を図る」という意味も、「醸成を高める」と同じ意味で使われこともあります。「醸成を高める」は、多種多様な意味を持つため、次の例文を参考に理解を深めましょう。

【例文】
・今回の所長会議は、所長としての自覚の醸成を高める会議にしたい。
・リーダーが、プレイングマネージャーとして率先して動くことにより、チームの主体性の醸成を高められた。
・営業部では、社員同士の信頼関係の醸成を高める目的で、週に1回の全体ミーティングを行っている。
・今日の会議では、社員の仲間意識の醸成を高めるための方法を検討しよう。

これらの例文のように、醸成の施策は早期の結果を求めないことが特徴です。醸成は一朝一夕に結果を求めるものではなく、社員の意識を変える必要もあります。人の意識が簡単に変わるケースは少なく、時間をかけて粘り強く継続しなければ、結果も得られないでしょう。長期的な視野や息の長い活動によって、成果を得られるものであるとの認識が重要です。

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企業で一体感の醸成を高める理由

企業が、一体感の醸成を高めるのには、さまざまな理由があるからです。ここでは、代表的な理由を3つ解説します。

働き方が多様化しているから

新型コロナウイルスの蔓延によるパンデミックや働き方改革の推進もあり、働き方が多様化しました。これらの要素もあり、ライフスタイルも急速に変化していて、ライフワークバランスを重要視する傾向も顕著です。企業では、時差通勤やテレワークなどを導入して対応しています。

働き方の多様化に対応すれば、社員エンゲージメントの向上やコスト削減の効果があります。その反面、社員同士が対面で会話したり、直接会議に参加したりする機会が減少しました。社内コミュニケーションも必然的に減少し、これまでのような社内の一体感が薄れている企業が少なくありません。

社内の一体感は、企業の成長に欠かせない要素です。それが希薄になれば、社員間の連携もスムーズにいかないため、一体感の醸成を高める必要があります。

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生産性の向上が期待できるから

一体感の醸成は、作業効率を上げたり業績を向上させたりするために不可欠な要素です。社内に一体感があれば、社員同士の結束が強くなります。結束により、チームワークが強化され、よりよい仕事をするという社内風土が生まれるでしょう。

困難な仕事に対しても、仲間で乗り越えるため、乗り越えた後の喜びは社員の心に残り続けます。このように、社内連携がよくなれば、仕事の効率やクオリティも上昇します。バックオフィスも含めて、企業全体の生産性を高められるでしょう。

人材定着率の向上が狙えるから

働き方の多様化により、収入を得られる手段が増えました。また、テレワークなどの出勤しない働き方も定着しています。スキルがあれば、企業に属さなくても収入を得られるという考え方も若い人材を中心に浸透傾向です。これらの影響により、人材の定着率を下げる傾向がみられます。

企業は、人材定着率を上げることが大きな課題となりました。そこで重要なのが、社内の一体感の醸成を高めることです。社内の居心地がよくて、一体感が醸成されていれば、離職する理由が大幅に減少します。転職リスクよりも定着を選び、安定と安心を得る社員が増えるでしょう。

人材の定着率があがれば、人材採用の労力やコストも削減可能です。社員同士が協力して、仕事を進める機会も増えるため、相互理解の醸成も深まります。社内で、新プロジェクトを立ち上げる際に、チーム構成も行いやすくなるでしょう。

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一体感の醸成が必要な状況

企業が一体感の醸成を高める理由は理解できましたが、具体的にどのような状態になったら一体感の醸成が必要となるのでしょうか。一体感がない職場で起こっている具体例は次のようになります。

・社内のコミュニケーションが不足している
・社員間の会話がギスギスしている
・社内に活気がなく静まり返っている
・部署内の雰囲気が暗く生気がない
・社員のモチベーションが低く生産性が低い社員が多い
・所属部署の目標を知らない社員がいる
・社是や経営理念を覚えていない社員がいる
・企業の方針が現場まで浸透していない
・他部署とのやり取りがなく部署間の連携もない
・あいさつをしない社員が増加している
・指示待ち社員が増加している
・主体的に仕事に取り組む社員がつぎつぎと退職している
・休まず遅刻せず働かずという風潮が蔓延している

自社で、このような状態が少しでも見かけられたら、一体感の醸成が必要です。これらのなかには、末期的な状態となっているケースもあるため、長期的視野で取り組まなければなりません。一体感はすぐに取り戻すことができないため、多くの時間が必要となる場合もあります。売上や利益が上がらない理由には、上記のような状態があるかもしれません。

企業の一体感の醸成を高めるメリット

社内の一体感の醸成を高めれば、企業は多くのメリットを得られるでしょう。ここでは、代表的なメリットを紹介します。

コミュニケーションが活発になり社内の雰囲気がよくなる

一体感の醸成に成功すれば、社員間で一体感を感じられるようになります。そうなれば、コミュニケーションも活発になるでしょう。コミュニケーションが活発な企業の社内や部署内は、雰囲気も明るくて活気もあります。取引先や顧客へ好印象を与えるため、商談のスムーズな進行にも影響を与えます。

また、企業と社員や社員間での信頼関係構築もスムーズになるでしょう。信頼関係が構築できれば、誰もが意見を発言できる環境となり、画期的なアイデアが生まれる土壌にもなります。課題や悩みを相談できて、互いに協力して解決できる社風となれば、課題を1人で抱えずに済みます。加えて、企業業績の向上にも期待でき、役割分担が自然と発生するため、円滑に仕事を進められる環境にもなります。

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連帯感が高まり主体性が生まれる

社員間や社内の一体感が醸成され、それが高まれば、企業の目標や部署の目標の共有や浸透も容易になります。企業のビジョンや経営方針も、いままで以上に深く理解できるでしょう。これらの理解が深まれば、自然と社内や部署内に連帯感が生まれます。

目標と経営理念に対して、連帯感が備われば、社員は主体的な仕事ができるようになるのです。社員自身の存在意義や目標が明確になり、企業や仲間の社員のためにできることを考えるようにもなります。与えられた仕事の意義も理解するため、単に完遂するだけでなく、仕事の品質向上にもつながるでしょう。このような状態になれば、自主的に動ける社員が増えるため、社内の機運も上昇します。

モチベーションが上がり生産性が向上する

一体感が醸成され、社員がそれを深く感じられる職場環境であれば、仕事へのモチベーションも高まるでしょう。これまで以上に、前向きな姿勢で仕事に取り組めるため、仕事への集中力も上がります。このような職場環境であれば、生産性の向上が見込めるため、労働時間の削減も可能です。

ただし、生産性が向上して労働時間を削減できたことは、社員の増収につながなければなりません。これで、減収になれば、社員のモチベーションは一気に下がります。労働時間が短縮となっても、生産性が向上し成果が出ているのであれば、収入が上がるように人事評価制度を整備しましょう。

また、成果を上げて労働時間を短縮できれば、社員のワークライフバランスも向上します。社内のこのような事例は、一体感を通じて他の社員へ伝播するものです。そうなればこれまで以上に、働きやすく仕事のやりがいを感じる職場環境となるでしょう。

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組織が活性化するため売上や利益が向上する

一体感の醸成を高めることができれば、組織が活性化します。連帯感や主体性が生まれ、社員のモチベーションが高まることは先に述べた通りです。さらに、製品や仕事、サービスなどの品質も向上するため、顧客満足度が高まることも期待できます。顧客が、リピーターやロイヤルカスタマーとなれば、売上や利益向上を見込めるでしょう。

そして企業業績も向上し、社員エンゲージメントも高まります。企業や社員、顧客にとってメリットがある一体感の醸成は、次のように進めるのが理想的です。なお、一体感の醸成を高める方法は、次項で詳しく解説します。

社内や部署の雰囲気をよくする(一体感の醸成)

連帯感が高まり主体性が生まれる

モチベーションが上がり生産性が向上する

売上や利益が向上する

業績アップや社員エクスペリエンスの満足度が向上する

企業において一体感の醸成を高める方法

一体感の醸成を高めるメリットを享受するために、どのように一体感を醸成し高めていけばよいか、その方法を解説します。

目的やゴールを正確に伝達する

まずは、目的やゴールを正確に伝えましょう。仕事の目的やゴールを正確に伝えて、社員が理解すれば、社員間で共通意識が生まれます。仕事やプロジェクトをスタートする前に、それらを伝えれば、社員は納得して同じ目標に向かえるのです。目指す方向や目的がバラバラでは、一体感は生まれません。

また、仕事のプロセスがまちまちな場合も、一体感は生まれず、情報の伝達さえ齟齬が生じる可能性があります。目的やゴールを社員と共有できれば、自然と一体感が生まれます。この一体感を大事に醸成させれば、仕事が円滑に進み、情報伝達の齟齬もなくなるでしょう。この一体感を醸成し高められれば、企業への帰属意識や社員間での仲間意識を育めます。

ビジョンや理念を周知する

一体感の醸成を高めるには、企業のビジョンや経営理念を社員に周知し、理解を得る必要があります。社是や経営理念は、すべての社員が理解することが望ましいです。企業のビジョンや経営理念が周知できていなければ、社員はこの企業で働いている意義を見いだせません。また、企業が進んでいる方向性を理解するのも難しいでしょう。

そうなれば、社員自身が進むべき方向が分からなくなります。企業のビジョンや経営理念は、社員全員が同じ方向へ進むための指針です。これらは、周知だけでなく浸透させて理解を得なければなりません。理解を得るためには、朝礼で繰り返し説明したり、社内の複数か所に掲示したりするなどの対策を講じましょう。企業のビジョンや経営理念の理解度を人事評価に組み込むのも効果的です。

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コミュニケーションを強化する

社内のコミュニケーションを活性化も、一体感の醸成を高めるために重要です。社員同士の信頼関係は、対話やテキストのやり取り(コミュニケーション)を通して築かれます。コミュニケーションの少ない職場環境では、相手と信頼関係を築くのが難しく、互いを信頼できないケースも少なくありません。

また、コミュニケーションが少なければ、一体感や連帯感も生じにくくなります。コミュニケーション強化は、相手の心境や考えをさらに深く理解できる施策が有効です。感情の共有ができる施策を選択し実行しましょう。具体例としては、次のような施策の実行です。

・360度評価の導入
・チャットツールの導入と活用
・定期的な社内交流イベントの開催

上記以外にも、さまざまな施策があるため、自社の風土に適したものを導入し実行しましょう。また、テレワークを導入している企業は、コミュニケーションの活性化が重要です。テレワークでは、テキストのみでやり取りすることが多く、相手の表情や感情が判断しにくくなります。テレワーカーには、Web会議前後の雑談時間やオンライン昼食会などを活用しましょう。互いの顔を見ながら、コミュニケーションが取れる場を提供することが有効です。

しかし、信頼関係が構築される期間には個人差があるため、配慮しなければなりません。オンラインとはいえ、業務とは関係のないイベントへの参加を強要することは避けましょう。企業は、コミュニケーションの場を設けて、サポートする側に徹します。コミュニケーションのペースは、社員同士に任せることが賢明です。

一体感の醸成を高める際の注意点

一体感の醸成を高めるためには、注意点を理解しておくことが大事です。ここでは、代表的な注意点を解説します。

短期間での成果を求めない

社内や部署内で、一体感を醸成させるためには、一定程度の時間が必要です。急激に一体感を得るために、派手なイベントや飲み会などを開催することは、逆効果になる可能性が高いといえます。交流の場が増えるだけでは、一体感の醸成につながらないケースが多いのです。

企業は、社員同士が急激に仲良くなるケースは、レアなケースであると理解しましょう。長期的な視点で、社員を見守る心掛けが重要です。一体感を醸成するためには、短期間で成果を求めてはいけません。醸成には、時間がかかるという基本を忘れないようにしましょう。

社員に無理強いをしない

社員に、無理強いをしないことも重要です。一体感を醸成が目的のイベントであっても、参加やツールの利用などを、社員に強要することは避けましょう。一体感を醸成できる施策であっても、逆効果になる可能性も高くなります。社員の多くは、強制や強要を快く受け止めることはありません。企業への反発心が生まれてしまうリスクの方が高まるでしょう。

イベントなどの参加は、社員の納得感を得ることが重要です。社員は丁寧な説明を受けて納得すれば、主体的に一体感の醸成を高める役目を果たすようになります。

まとめ

醸成と聞くと、日本酒や味噌などの製造を想像するかもしれません。しかし、ビジネスシーンでも醸成という言葉が重要になっています。特に、社内や部署内の一体感を醸成することは、喫緊の課題といっても過言ではありません。しかし醸成は、時間をかけて高めるたり促進したりするものであるため、早急な施策では効果を得られません。

社内や部署内で、一体感を醸成し高めるためにはノウハウが必要です。そのノウハウがある企業は少なく、自社でのノウハウの醸成は不可欠といえるでしょう。タレントパレットを活用すれば、一体感の醸成に役立ち、それを高めることも可能となります。

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