こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
企業が危機的状況に陥ったときに、社外へ適切に情報発信することをクライシスコミュニケーションといいます。対応に失敗すれば、企業活動に支障をきたすことも考えられ、適切な行動をすることが重要です。
今回は、クライシスコミュニケーションに対応する際のポイントや事前準備の仕方を詳しく解説します。クライシスコミュニケーションの方法を知りたい人事担当者は本記事を参考にしてみてください。
クライシスコミュニケーションとは
クライシスコミュニケーションとは、緊急事態が発生したときに企業が行う対応の一つです。
ここでは、具体的な意味や似た言葉との違いについて解説していきます。
クライシスコミュニケーションの意味
クライシスコミュニケーションとは、企業の信頼を損なうような不測の事態が発生した際に、事態の早期収拾のため、対外的に説明・謝罪を行う活動のことを指します。
企業が不祥事を起こしてしまったり、重大な事件、事故を引き起こしてしまったりなど場合には、消費者や関係者に事態の説明・謝罪が必要です。多くの場合は、マスコミを通してクライシスコミュニケーションをとることがあります。
予期せぬ危機に対しては迅速に対応することが重要です。そのため、クライシスの解決だけでなく、対外的なコミュニケーションの対応方法についても事前に準備しておく必要があります。事前に危機管理計画の策定を行い、迅速かつ正確な情報提供のために社内で情報収集や情報分析の体制を整えることが大切です。
クライシスコミュニケーションは、企業や組織の信頼回復にもつながります。経営層や従業員も含め、クライシスコミュニケーションについての重要性を理解し、適切な対応ができるよう準備しておきましょう。
リスクコミュニケーションとの違いとは
クライシスコミュニケーションと似ている言葉に、「リスクコミュニケーション」があります。それぞれ言葉の意味が異なるため、正しく認識しておくことが重要です。
クライシスコミュニケーションは、危機的事態が発生したあとに対外的にとるコミュニケーションです。一方で、リスクコミュニケーションとは、危険が起こる前にとるコミュニケーションのことを指します。
リスクコミュニケーションはリスクに関する情報の収集や分析を関係者に提供し、リスクを回避するための対策を講じることが目的です。例えば、工場を新しく建設する際に、周辺住民や関係者に工場を運営する過程で起こり得る危険性を先んじて共有することなどがあります。
このように、リスクコミュニケーションはリスクの発生を未然に防ぐためのコミュニケーション活動であり、クライシスコミュニケーションは事態を収束させるためのコミュニケーション活動であることが大きな違いです。
クライシスコミュニケーションの重要性
事態を早期収束させるためのクライシスコミュニケーションは、さまざまな点で重要な役割を果たします。
例えば、企業の不祥事や事件・事故により、一般市民に危険が迫っている場合が考えられます。その際、迅速なクライシスコミュニケーションによって正確な情報が提供できれば、市民は安全に行動でき、被害を少なくすることができるでしょう。
具体的な危機には、リコール問題や個人情報流出問題、商品の不具合問題などです。どの問題も、被害が拡大すれば人の命に関わるような事態に発展する可能性もあるでしょう。人体に直接的な影響がないと判断した場合でも、「たいしたことはない」と発表してしまっては「事態を軽視している」と捉えられる可能性があります。そうなっては企業の信頼を損なうだけでなく、二次的な被害が発生する恐れもあり危険です。
企業は、起こってしまったことに対して、迅速に対応するだけでなく、誠実かつ正確に情報を伝える姿勢を心がけなくてはいけません。そのためにも、どういった対応を行うべきか事前に社内で検討しておくことが重要です。
クライシスコミュニケーションのポイント
情報を伝え被害を最小限にとどめたり、企業の信用を守ったりするためにクライシスコミュニケーションは重要な行動です。実際にクライシスコミュニケーションを行う際には、いくつか留意しておきたいポイントがあります。以下に、注意点を4つ紹介します。
初動の対応が重要
まず、クライシスコミュニケーションには初動の対応が重要であることを覚えておきましょう。
特にスピード感が重要で、クライシス発生後30分以内にメディアに対応することが大切です。対応が遅くなってしまった場合には、公式の発表がないまま悪い推測が飛び交うようになり、説明の場を設けた際には批判的な視点で見られることがあります。
人々が情報を得る速度は、想定よりも早いと考えたほうがよいでしょう。1時間、2時間と経過すると「何かよくない事実を隠そうとしているのではないか」「深刻な事態である認識をしていないのではないか」といった疑いが生じる要因にもなります。
不測の事態が起こった際には、決して事実をとりつくろって嘘をついたり、隠そうとしたりしてはいけません。そのため、適切に情報が伝えられるように、メディアに対応する体制を事前に整えておくことが重要です。
受け身の姿勢ではなく、必要に応じて記者会見を開くといった、積極的な情報開示を行うことがポイントです。
経営者の的確かつ迅速な判断が必要
クライシスコミュニケーションがうまくいかない組織の特徴としては、経営トップの意思決定スピードが遅い傾向にあることが挙げられます。意思決定が遅れた結果、事態はさらに悪化するでしょう。
特に大企業の場合には、意思決定のトップの座につくために企業のなかで厳しい競争を勝ち抜いてきた人材です。そのため、地位に固着する傾向があり、自分の代で不祥事が起こった場合、世間に報告することを消極的になる人もいます。
一刻を争うクライシスコミュニケーションの正しい対応方法が分からない場合には、外部から専門家を雇うことも方法の一つです。法律に詳しい弁護士やPRの専門家だけでなく、企業の危機に対応するために第三者目線での意見をとり入れるといった、さまざまな対応策をとる企業が増えてきています。
的確で迅速な対応のためには、意思決定者のリーダーシップが重要です。いざというときに備えて、素早い意思決定ができる体制を整えておきましょう。
4Cの方式を活用する
クライシス発生時は、迅速かつ正確な情報を発信しなければなりません。そのために、4Cの考え方を活用することをおすすめします。4Cとは、「Concern(配慮)」「Action(行動)」「Context(文脈)」「Call to action(行動の呼びかけ)」の4つのCのことです。
まず「Concern(配慮)」では、被災者や関係者の気持ちに配慮して、共感し信頼関係を築くことを重視しています。「Action(行動)」では、状況を把握して、適切な情報提供を行うことで、被災者や関係者の不安をとり除くことです。「Context(文脈)」では、行動の背景にある視点や考え方を伝え、正確な情報提供を行うことを重要としています。最後に、「Call to action(行動の呼びかけ)」では、情報を伝えた結果、どう感じて欲しいのか、どう行動して欲しいのかを具体的に発信します。
これらのポイントを意識することで、危機的情報のなかでも適切なクライシスコミュニケーションがとれるでしょう。
企業の情報を開示する
クライシスコミュニケーションは、外部への情報発信だけでなく社内への情報発信も含まれます。経営トップが何を行っているのか、どのような決定を下すのかをクライシス時であっても従業員に開示することが重要です。
企業の不測の事態については、従業員が不安を抱えていることが多いでしょう。そのようなときに、真っ先にトップが従業員に今後の対応方針を伝えておくことで、従業員は安心できます。また、「これ以上のクライシスは起こらない」と公言することで、一人ひとりが落ち着いて行動することにもつながるでしょう。
この際に、情報をスムーズに社内全体に伝達するために、社内の環境を整えておくことも大切です。社内広報部が主体となって行動するだけでなく、日頃から意思決定の情報伝達経路をはっきりさせておきましょう。
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クライシスコミュニケーションが遅れるケース
クライシスコミュニケーションは、社内外に不信感を抱かせないためにも、素早い対応が重要です。しかし、さまざまな理由で対応が遅れるケースもあります。
クライシスコミュニケーションが遅れるケースを事前に把握し、対応方法を検討しておくことをおすすめします。
報道される期間が長くなる
企業から公式の情報公開が遅くなると、マスメディアの報道が長くなるケースが多い傾向にあります。これは、情報公開の遅さに不信感をつのらせたマスメディアが批判的な内容で報道し続けるためです。
初動が遅いだけで「何か隠し事があるのではないか」と、初めから疑いの目で情報を取得することになります。同じ情報でも、受け取り方の姿勢で悪く感じ取られることは起こり得ます。
また、メディアによってネガティブな内容で報道され続けると、インターネット上の口コミなどでも強く糾弾する人が増えて、被害はさらに拡大するでしょう。
これまでの事例でも、初動のスピードで報道される内容に差が出ることは明白です。クライシスコミュニケーションの失敗により、企業の売上や株価、利益が大きく下がり、その結果倒産してしまった企業もあります。そのため、早期収束のため、初動の速さを十分に意識して行動することが重要です。
情報公開が遅れた原因
クライシスコミュニケーションが失敗する原因は初動の遅さです。初動が遅れる理由は、危険発生から調査、検討、意思決定のそれぞれの段階で時間がかかってしまったことが考えられます。
まず、クライシス発生時には、実際にどこで何が起こったのか、何が原因なのかといった現場の状況を把握することが必要です。その際に、うまく社内で情報伝達が行われず、事態の把握に時間がかかってしまう場合があります。
検討段階とは、社内からクライシスの状況報告を受けた意思決定層が、状況にどう対応するのが的確か検討するフェーズのことです。ここで、リーダーシップを発揮できない指導者は対応が遅れるケースがあります。
最後に意思決定の段階で、トップが「そんなに大きな問題ではない」と判断したり、「報道することで問題が大きくなる可能性があるので、大々的に発表しないほうがよい」と判断したりされることがあります。この判断が間違っており、クライシスコミュニケーションの対応が遅れるケースがあるでしょう。
遅れないためにもクライシスコミュニケーションに対する意識を正しく持ち、社内の情報伝達方法や意思決定層の認識を改めて考えておく必要があります。
クライシスコミュニケーションの事前準備
危機が起こった際には、迅速な情報公開を行うことが重要です。しかし、危険発生から意思決定までの段階でさまざまな弊害が発生する可能性もあります。素早い情報公開を行うためには、いくつかの対応策について確認しておくことがポイントです。
クライシスコミュニケーションへの対応を想定する
実際に他社で行われたクライシスコミュニケーションの対応の悪い例やよい例を集めて、自社であればどのように対応するかを想定しておきましょう。
自社商品による被害や情報漏洩、自然災害など、さまざまなクライシスが予想されるなかで、迅速に対応したことにより被害を最小限にとどめられた事例もあります。それらの企業はどのように対応したのかを調査し、自社で行う際の参考にすることが大切です。
緊急時の体制を決めておく
クライシスに対して迅速かつ正確な情報を発信するために、連絡体制を整えておくことも大切です。
まずはクライシスを早期発見するために、情報を常に収集している担当者を決める必要があります。また、危機が起きてしまった場合には、的確に状況を確認・分析できる責任者や素早くトップまで報告ができるような連絡網の体制が必要です。こういった社内体制がスムーズに機能することで、クライシスの早期対応につながるでしょう。
また、連絡体制は社内だけでなく社外に対しても確認しておく必要があります。クライシスが起きてしまった際の情報提供先を明確にし、利害関係者のリストアップを行うことで、スピード感のある情報発信が行えるようになります。
クライシスコミュニケーションのマニュアルを用意する
クライシス発生時の対応マニュアルを用意しておくことも有効です。実際に起きてから、どこにどういった文面で情報を発信すべきか考えるようでは、対応が遅れてしまいます。
まずはどのように第一報を発信するか、事前にマニュアルを用意しておきましょう。また、この際には、経営トップが不在の場合の対応者を決めておくことが重要です。あらゆる不測の事態を想定し、どのような状況であっても誰であっても対応できるようなマニュアルであることが理想的です。
また、問い合わせが殺到する恐れも考えられるため、その場合の広報担当者は誰が窓口となりどのように対応するのか、記者会見を実施する場合はどこで行い誰が進めるのかなど、細部まで決めておくことが重要です。
マニュアルに沿って訓練を行う
クライシスコミュニケーションのマニュアルを作成したら、マニュアルに沿って実際に模擬訓練を行いましょう。意思決定を行う経営層だけでなく、緊急の対応が必要な広報担当者や緊急事態発生時の連絡網を把握すべき社内の責任者なども参加することが大切です。
またこの際には、実際の記者会見に予想される質疑応答への対応も実践するとよいでしょう。考えられる限りの質問を載せた問答集を作成し、いざというときに的確な回答ができるよう備えておくことがポイントです。
十分に対応策を検討していたとしても、緊急事態が起こると誰もが焦り、落ち着いた行動がとれなくなる可能性があります。そんな状態でメディアの前で不審な行動をとったり、失言をしたりすると大きな問題に発展します。そうならないためにも、事前に社内で実践訓練を行っておきましょう。
まとめ
クライシスコミュニケーションは、企業の信頼を損なわないためにも重要です。早期に事態を収束し、被害を拡大させないために、事前準備を整えておきましょう。また、クライシスコミュニケーションでは、適切に対応するために社内体制を整えておくことも重要です。
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