こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
リーダーシップに関する情報や知識を収集するなかで、「コンティンジェンシー理論」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。コンティンジェンシー理論は、変化の激しい現代の経営環境において、特に注目度が高まっている概念の1つでもあります。
今回は、コンティンジェンシー理論の基本的な意味やメリット、導入時の注意点などをご紹介します。
コンティンジェンシー理論の意味とは?
「コンティンジェンシー理論」は、現代における新しいリーダー像として注目を集めている理論の1つです。ここではまず、コンティンジェンシー理論の基本的な定義や、誕生した経緯について見ていきましょう。
コンティンジェンシー理論の定義
そもそも、「コンティンジェンシー」とは、「偶発性」や「不確実性」を意味する英単語です。コンティンジェンシー理論は、環境の不確実性を踏まえて、「どのような状況下でも最高のパフォーマンスを発揮できるリーダーシップは存在しない」という考え方です。
「いかなる場合でも最善となるリーダーシップはない」という前提のもと、リーダーの資質のみに依存するのではなく、環境の変化に応じて組織の管理方針も変えていくというのがコンティンジェンシー理論の基本的な概念です。
コンティンジェンシー理論が誕生した背景
リーダーシップに関する学問は古くから研究されており、現代のリーダーシップ理論は1900年代前半から誕生したとされています。1940年代には、リーダーとしての資質を先天的な特性として捉える「特性理論」という考え方が提唱されました。
生まれながらにしてリーダーに適している人物像と、そうでないとされる人物像を区別する研究が盛んに行われたのです。その後、1960年代頃までは、優秀なリーダーが見せる行動の特徴や共通点を研究対象とした、「行動理論」と呼ばれる理論モデルが広まるようになりました。
しかし、研究されるなかで「前職で優秀なリーダーシップを発揮していたとしても、自社で同じパフォーマンスが発揮できるわけではない」という根本的な課題が見つかりました。そこで、「取り巻く環境によって優秀なリーダーシップの要因が変わる」のではないかという仮説が立てられるようになります。
そうしたなかで、1964年にアメリカの研究者フィードラーが提唱したのが、コンティンジェンシー理論です。
類義語の条件適合理論とは
コンティンジェンシー理論は、周囲の環境に応じたリーダーシップの変化を捉える考え方であることから、「状況適合理論」とも呼ばれます。リーダーシップに関する理論には「条件適合理論」という考え方もあり、両者は字面が似ていることから混同されることも多いです。
条件適合理論は、行動理論によって示唆されているリーダーの行動が、常に効果を発揮するわけではないという考え方に基づいて生まれました。単にリーダーの行動のみを研究するのではなく、「どんな行動」が「どんな条件」で生まれるのかにまで目を向け、行動理論を深めていくという考え方です。
そして、行動と条件(環境)の関係性について研究するなかで、コンティンジェンシー理論が誕生していきました。つまり、コンティンジェンシー理論は、条件適合理論の1種であるといえるでしょう。
コンティンジェンシー理論の導入メリット
コンティンジェンシー理論をリーダーシップの形成に用いると、具体的にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。ここでは、3つのポイントに分けてご紹介します。
フラットな人事体系になる
コンティンジェンシー理論におけるリーダーの役割は、状況に応じて変化が求められるのが特徴です。リーダー自身が「環境に適応していかなければならない」という意識を持つため、現場の意見や声を謙虚な姿勢で聞けるようになり、フラットで風通しの良い関係性が築かれていくのです。
柔軟性のある組織になる
コンティンジェンシー理論を前提としたリーダーは、どんな状況でも自分が正しいと考えるのではなく、社会の変化に応じて考えや行動を変えていく必要性に気づいているのが特徴です。
そのため、固定観念にとらわれることなく、柔軟性のある組織づくりが行えるようになります。
対応力のあるリーダーが育つ
コンティンジェンシー理論は、環境の変化に対応できるリーダーを育成するのに役立ちます。そのときどきによって、自身のとるべき行動が異なると考えるため、ゼネラリストとしての力が身につきやすくなるのです。
また、意思決定において多様な意見を吸い上げられるようになるため、対人関係スキルも自然と向上していきます。
コンティンジェンシー理論の導入デメリット
続いて、コンティンジェンシー理論のデメリットについても見ていきましょう。
状況の変化に対応できる組織管理が重要
コンティンジェンシー理論を反映させたリーダーによって、組織がフラットになると、軌道修正が難しくなってしまうというデメリットも生じます。組織が誤った方向性に進んでしまったときには、強烈なリーダーシップで率いるリーダーのほうが、速やかに正しい方向へ切り返すことができるでしょう。
専門性を高めにくい
組織の構成にコンティンジェンシー理論を用いると、状況の変化によってリーダーの配置換えを行う必要性も出てきます。その結果、組織は環境の変化に対応できる一方、リーダーの専門性は養われていきません。
また、リーダーの方針によって組織の動きもコロコロ変化するため、組織内にも特定の分野に関する知識やノウハウが蓄積されにくいという側面があります。長期的に見れば、そのことが企業の競争優位性を損なう原因になってしまうこともあるでしょう。
現代の変化が目まぐるしい
現代のビジネス環境は、コンティンジェンシー理論が提唱された当時と比べて、ますます変化の激しい時代を迎えているといえます。コンティンジェンシー理論のみにこだわりすぎると、社会の変化に合わせて必要以上に方針を変えることとなり、組織に混乱を招くリスクもあるでしょう。
新たなリーダーを育成するなら、あらゆる人事データを統合して分析
コンティンジェンシー理論は、柔軟性の高いリーダーを育成するうえで重要な基盤となる考え方です。しかし、そうしたリーダーシップが存分に発揮されるためには、組織全体にも柔軟でスピード感のある動きが求められます。
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コンティンジェンシー理論を批判するドナルドソン
コンティンジェンシー理論に対しては、批判的な意見があるのも確かです。研究者のドナルドソンは、「環境への適合を判断する基準があいまいであること」「環境への対応にはいくつもの解があること」「事業の不確定性が考慮されていないこと」などを主な課題として取り上げました。
実務的な問題に対する具体的な解が示されていないことから、コンティンジェンシー理論それのみでは、実際の経営や組織づくりに活かせないと考えられる面もあります。
コンティンジェンシー理論を活用する具体的な方法は?
コンティンジェンシー理論を活用するためには、具体的にどのような施策に目を向けるべきなのでしょうか。ここでは、3つのテーマについて解説します。
グローバル化
企業を取り巻く環境の変化のなかでも、特に大きな影響を与えるのが、グローバリゼーションです。急速な技術革新や諸外国との関係性の変化などにより、国内のビジネス環境にも大きな影響が生まれています。
コンティンジェンシー理論を踏まえ、リーダーは多様な文化を理解する力や幅広くコミュニケーションを図れる力などを身につける必要があるといえるでしょう。
社内環境
目まぐるしい変化に対応するためには、組織のシステムや仕組みといったハード面からのアプローチも重要となります。たとえば、多様な働き方を受け入れる必要性を感じた場合には、「時短勤務ができる業務内容の構築」や「属人化を防ぐ仕組みづくり」など、それを実現できるだけの環境整備が求められます。
また、組織に新たな概念を持ち込むうえでは、従業員の理解や共感を得るための時間や機会も必要となるでしょう。
多様な人材
柔軟な組織づくりを行ううえでは、多様な人材を確保することもポイントとなります。年齢や国籍、価値観、性別といった枠組みにとらわれず、幅広い視点で人材採用を行うことで、変化に強い組織を構築できるようになります。
コンティンジェンシー理論の部門ごと具体例
具体的なコンティンジェンシー理論の活かし方として、ここでは部門ごとに導入された場合の影響を見ていきましょう。
研究開発部門
研究開発の部門は、特に情報の不確実性が高いとされており、環境変化に適応する高いスピード感が求められる分野です。そのため、各メンバーとの綿密なコミュニケーションを大事にする参加型のリーダーシップが重要となります。
製造部門
製造部門においては、単品の大量生産を行う業務と、複雑な技術を用いる業務とで必要な管理体制が異なります。複雑な技術が複合する業務では、情報や権限が適度に分散している「有機的組織」のほうが向いているとされており、それにはコンティンジェンシー理論を踏まえたリーダーが適しているといえます。
運輸部門
運輸部門においては、業務の安定性と同質性が重要なテーマとなるため、どちらかといえば権限が集中するような組織が向いているとされています。個人の目標達成よりも組織全体の目標達成が重視されるため、その他の部門との違いを踏まえて最適なリーダーシップを発揮することが大切です。
コンティンジェンシー理論のおすすめ本
コンティンジェンシー理論について深く理解するためには、書籍での学習も必要です。ここでは、理解をサポートするおすすめの本を2冊ご紹介します。
日本の組織におけるフォロワーシップ
フォロワーシップとは、リーダーや組織のために考えて行動するフォロワー(従業員)の能力や資質を表す用語です。リーダーシップの研究に対して、フォロワーシップの研究は遅れており、体系的に解説されている書籍や資料はそれほど多くありません。
しかし、コンティンジェンシー理論を組織づくりに活用するには、フォロワーの存在やあり方も重要な鍵を握ります。部下の振る舞いや視点について学ぶためには、本書がおすすめの一冊といえるでしょう。
組織論再入門
本書は、野村総合研究所で人事コンサルティング領域を立ち上げた野田稔氏の著書です。組織戦略や組織構造に関する理論を体系的に学べるとともに、筆者の実務経験をもとに、具体例を通じて理解を深められるのが特徴です。
まとめ
コンティンジェンシー理論は、どんな状況でも最善となるリーダーシップはないという前提に立ち、環境の変化を想定しながら方針を変えていく考え方を指します。うまくいった過去の事例や、過去の優れたリーダーを過大評価することなく、現状を見据えて変化させていくことの重要性を提唱した理論です。
コンティンジェンシー理論を活用するためには、リーダーだけでなく組織そのものも変化に適応できるだけの力をつける必要があります。それには、的確かつ速やかな情報共有と1人ひとりの柔軟な思考力、変化を迎え入れられるだけの余力が必要です。
そうした組織づくりを実現するには、「タレントマネジメントシステム」を活用することが重要です。タレントマネジメントシステムとは、人材の能力やスキルを最大限に発揮してもらうために、人材データを集約・一元管理して、高度な意思決定を可能にするシステムをいいます。
人材一人ひとりのスキルや保有資格、経歴などのデータをもとに、計画的な人材育成や高度な配置戦略を練るために活用できます。また、タレントマネジメントシステムである『タレントパレット』は、データに基づいた科学的な人事を実現するためのシステムです。
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