こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
同調性バイアスとは自分の考えではなく、周りの人の行動に自分の行動を合わせてしまう心理のことです。うまく作用すれば協調性のある行動となりますが、悪いほうに作用してしまうと、誤った選択を行う恐れもあり注意が必要です。
この記事では、同調性バイアスが企業活動に与える影響と対策について解説します。
同調性バイアスとは
同調性バイアスとは、周りの人の行動に自分の行動を合わせてしまう心理を指します。日常生活においては協調性のある行動につながりますが、災害時などの非日常の出来事が起こっているときには誤った判断を下す恐れもあるので注意が必要です。
例えば、「みんな避難していないから、きっと大丈夫だろう」と安心してしまい、避難を開始するのが遅れるといったケースがあります。逆に言えば、率先して避難をする人がいれば、それにならって同じ行動を取るので早めに避難をするともいえます。
同調性バイアスは、人間の行動心理における代表例ともいえるものでしょう。
同調性バイアスのメリットとデメリット
同調性バイアスは「同調圧力」というマイナス面に意識が向きがちですが、捉え方によってはメリットとなる部分もあります。どのように捉えていけばよいかを解説します。
同調性バイアスのメリット
同調性バイアスのメリットとして、主に次の3つがあげられます。
・良好な人間関係を築ける ・メンタルの安定につながる ・責任を伴う決定をせずに済む |
人間は基本的に自分と同じ考えを持つ相手に対して親近感を抱くので、同調性バイアスが働くことによって、人間関係が円滑になるといったメリットがあります。また、周囲と同調することによって集団に所属している実感が得られるので、メンタルの安定につながります。
さらに、多くの人は責任の伴う決定を自分で行うのにストレスを感じるものです。何か決めなければならない場面でも、周りに同調して同じ選択をすれば、決定に伴うストレスを軽減できます。
同調性バイアスのデメリット
一方、同調性バイアスが働きすぎることで、次のようなデメリットも生じます。
・自分自身で考える思考力が弱まる ・何が正しい選択であるのか判断がつかなくなる ・新しいことに挑戦しようとする意欲が薄れる |
まず周りに同調しすぎてしまうと、自分で考えたり決定したりする力が弱くなってしまうデメリットが生じます。周囲の多数派の意見を無意識に正しいと思い込むようになり、たとえその決定が間違っていたとしても、自分で正しい選択を行えなくなる恐れがあります。
そして、周りに行動を合わせすぎてしまうことによって、他人とは異なる選択をするのに恐れが出てしまい、新たなことにチャレンジする意欲が薄れてしまう傾向も見られます。
同調性バイアスを含む偏見が与える企業への影響とは
同調性バイアスだけに限った話ではありませんが、一種の思い込みによる偏見が生じてしまうと、時としてビジネスにも大きな影響が出る恐れがあります。自分でも気づいていない偏った物の見方をアンコンシャス・バイアスといいます。
アンコンシャス・バイアスはその人の知識や経験、価値観などによって様々なので人によって内容は異なります。アンコンシャス・バイアスをそのままにしておくと、企業などの組織において重大なトラブルを引き起こす恐れがあるので、事前の対策が必要です。
集団同調性バイアスとは
集団同調性バイアスとは、自分が所属する集団の意見に合わせてしまう心理をいいます。「集団の意見に合わせる」という行動が先に出てしまうため、自分のなかで物事の善悪を判断しないような行動を取ってしまう傾向が見られます。
そのため、所属する集団が誤った選択をしている場合でも意見を述べることはなく、自らもその過ちに加担してしまうケースがあるでしょう。人間は社会生活や日常生活を営む中で、どこかの集団に所属しているため、常に集団同調性バイアスの影響は受けているといえるでしょう。
集団同調性バイアスが与える企業への影響
集団同調性バイアスは所属する集団の意見に合わせてしまう心理ですが、ハラスメントにつながるようなことが社内で起こっていても、周りが特に目立った反応をしていなければ、自分も気づかないフリをしてしまう恐れがあるでしょう。
重大なコンプライアンス違反であることが後から発覚すれば、会社そのものの信用は大きく低下します。会社という組織も、1つの集団心理が働いていることを自覚しておくことが大事です。
円滑な組織運営のために、あらゆる人事データを統合して分析
同調性バイアスは人間の行動心理の1つであるため、誰にでも生じる面があります。大事なのはそうした心理を把握した上で、バイアスに振り回されない組織の仕組みを整えていくことだといえるでしょう。
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正常性バイアスと同調性バイアス
同調性バイアスと似たような言葉に、正常性バイアスというものがあります。どのような意味を持つ言葉であるのかを解説します。
正常性バイアスとは
正常性バイアスとは、予想外の出来事が起こったときに「そんなことはあり得ない」と思い込み、起こった出来事が正常の範囲内だと自動的に認識する心理をいいます。人間は日常的に様々な出来事に遭遇するため、すべての物事に反応していては過度なストレスを感じてしまうでしょう。
そのため、正常性バイアスとは本来は心の安定を図るための1つの機能だともいえます。しかし、災害などの非常時に起こる出来事に対して安易に大丈夫だと思い込むことは、かえって被害を拡大させてしまうおそれがあるので注意が必要です。
正常性バイアスが与える企業や従業員への影響
正常性バイアスの特徴の1つとして、人数が多いほどかかりやすいという点があげられます。例えば、室内で煙を発生させ、身の危険を感じて逃げるまでにどれくらいの時間がかかるのかを観測した実験があります。
このときに、「室内に1人」と「室内に3人」のパターンに分けて実験したところ、煙の発生に気づくまでの時間に違いは見られませんでしたが、室外に避難するまでにかかった時間は、「室内に1人」の場合よりも「室内に3人」の場合のほうが1分程度逃げるのが遅くなったという結果が出ています。
こうした研究結果から見ていくと、企業という集団の中においても正常性バイアスは日々至るところで起こるといえます。チーム内で誰もが責任を取ろうとしない行動を取ってしまえば、新たなチャレンジを行っていこうとする機運は高まらないでしょう。
人材育成や組織の成長といった面で、正常性バイアスが悪いほうに作用することもある点を理解しておきましょう。
正常性バイアスと同調性バイアスの違い
先に述べたように、正常性バイアスは予想外の出来事を正しいと思い込むことで心の安定を図ろうとする心理です。一方、同調性バイアスは自分の考えではなく、周りの考えに自分の行動を合わせてしまう心理をいいます。
どちらも周りに合わせてしまうという点では同じですが、悪い方向に作用するケースでみると、正常性バイアスは非常時に誤った判断を下しやすいのに対して、同調性バイアスは平時でも誤った判断を下す恐れがあります。
バイアスごとの特徴を踏まえた上で、偏見に流されてしまわないことが大切です。
正常性バイアスや同調性バイアスが起きたときの具体例
正常性バイアスや同調性バイアスが起こったときの具体例を把握しておけば、いざというときに対応しやすくなります。ここでは、3つの例を紹介します。
災害時
災害時には、心の安定を保つために正常性バイアスが働き、結果としてマイナスに作用することがあります。目の前に危機が迫っていても、危険を認識せずに逃げ遅れてしまうといったケースです。
正常性バイアスは誰にでも備わっているものであるため、そうした心理があることを理解して、災害時には冷静な行動を取ることが重要になります。
コロナ
新型コロナウイルスの感染拡大時にも、正常性バイアスが強く作用している部分がありました。毎日のように同じニュースに触れ続けることで、環境に慣れが生じてしまい、感染予防対策に油断が起こるケースも見られたといえます。
また、周りの人と同じ行動を取っていれば大丈夫だという同調性バイアスが働いていた面もあり、バイアスに振り回されやすい環境にあったといえるでしょう。
医療現場
医療や介護の現場においても、正常性バイアスにかかるケースがあります。例えば、通常とは異なる数値が検出された場合に、本来であればすぐに処置が必要な段階であっても、「機器の故障ではないか」と都合の良い解釈をしてしまい、一歩間違えば失敗を招いてしまうようなケースがあるのです。
命を預かる現場においてはミスが許されないので、常に最悪の状況を想定して行動するほうが良いといえるでしょう。
企業内での同調性バイアスを含む偏見に打ち勝つ対策方法
企業などの組織において、同調性バイアスなどの偏見に打ち勝っていくためには、具体的な対応策を知っておくことが大切です。ここでは、3つの対策について解説します。
無意識の偏見を自覚する
バイアスに支配されないためには、人間には無意識の偏見が存在していることをまずは自覚しておくことが大切です。「自分は大丈夫」「あの人が言っているから問題ない」と思い込みすぎるのではなく、異なる結果となるケースも想定して、冷静に対応する姿勢が重要です。
トレーニングを行う
バイアスから完全に逃れることは難しいですが、トレーニング次第ではバイアスに支配されにくいメンタルを得ることができます。日々のトレーニングとしては、様々なケーススタディを学んでおくと同時に、基本的な対応を繰り返しチェックして、非常時でも周りに流されないよう訓練を重ねておくことが大事です。
正しい評価基準を整える
いざというときに慌ててしまわないように、想定されるケースについては事前にガイドラインや対応マニュアルなどを整備しておくと良いでしょう。落ち着いたときに正しい評価基準を設定しておけば、急に対応しなければならなくなったときにも正しい行動を取れるようになります。
まとめ
同調性バイアスをはじめとした偏見は、その人の経験や価値観に関わらず、誰にでも生じてしまうものです。そのため、まずは正しい知識を得ると共に、いざ起こってしまったときの対処法を把握しておくと安心でしょう。
特に企業といった組織に所属するときにも、集団同調性バイアスなどが生じやすくなります。偏見に負けない組織作りを行うには、個々の人材の特性を見極め、円滑に組織運営が行えるよう、人員配置をしっかりと行う必要があります。
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