会社法とは?人事担当が知っておくべき規定や目的をわかりやすく解説


会社法とは?人事担当が知っておくべき規定や目的をわかりやすく解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

会社法は株主や経営者、会社そのものに関するルールを定めた法律です。人事政策を担う人事担当者が会社法を理解しておくことで、業務を円滑に進めることができます。

日本企業の9割を占める株式会社のルールについて、特に詳細に説明されている会社法の概要と成立の背景、8編に分かれている構成などを紹介します。会社法の理解を深めることで、株式会社を運営する機関と仕組みを把握できますので、ぜひ参考にしてください。

会社法とは

会社法は2005年に成立し、2006年に施行された比較的新しい法律です。

会社法の概要と目的

会社法は、会社の設立や運営、清算などのルールを詳細に定める他、株式会社の取締役や会計参与、監査役など、企業内部の運営機関の役割や義務も明確にしています。企業活動を円滑に進めるとともに、不正行為を防ぎながら経営の適正化を図る内容になっています。

会社法の目的は、会社経営の機動性向上や健全性確保を図ることです。例えばM&A(企業の合併・買収)が増加する中、柔軟な移行手続きが求められています。会社法では吸収合併を行う際、消滅する会社の株主に対し、現金や親会社株式といった存続会社の株式以外の財産を交付することなどが認められました。

健全性の確保では、株主が不正な利益を得ようとして行う株主代表訴訟を認めないこととした他、中小企業の計算書類の正確性向上を目指して会計参与制度を創設するといったルールを設けています。

会社法成立の背景

会社法が制定された背景には、社会経済情勢の変化に対応するため会社法制の見直しが必要になったことがあります。会社法施行前の会社法制は、明治期に制定された商法や昭和初期の有限会社法など、複数の法律にまたがっていました。

商法は商業全般について定めたもので、会社について定めた第2編が会社法制の一部を構成していました。カタカナや文語体の表記で現代になじまなくなっていたこともあり、わかりやすさを重視してひらがなや口語体に変更されています。

会社法では、株式会社よりも設立条件が緩かった有限会社が新設できなくなって株式会社と統合され、株式会社設立時は1,000万円、有限会社設立時は300万円必要とされた最低資本金制度が廃止されました。

最低資本金制度は、株主や債権者などへの責任として設けられた制度でした。しかし、起業のハードルが上がるというマイナスの側面もあったため、会社法では資本金1円から設立登記ができるよう緩和されています。

会社法を構成する8編



会社法を構成する8編について、それぞれの内容を解説します。

第1編 総則

第1編の総則では、会社の種類や会社法で使う用語の定義、基本的なルールなど、会社法全体を通じて押さえておくべき基本が記載されています。例えば、会社の商号には「株式会社」や「合名会社」など会社の種類を含めるとするルール(第6条2項)などが明記されています。

第2編 株式会社

第2編では、株式会社の設立方法や株式の譲渡・併合などの取り扱い、新株予約券の扱いなどが記載されています。会社を所有する株主が集まる株主総会や、経営を担う取締役で構成される取締役会といった運営機関の決まりなども詳細に定められています。

また会計の原則や会社の解散、清算についても記載されており、全979条の過半数を占める会社法の中心となる項目です。運営の仕組みについては、記事後半の「株式会社の運営機関」の章で詳しく説明します。

第3編 持分会社

合名会社、合資会社、合同会社といった株式会社以外の持分会社について規定しているのが第3編です。設立手順や解散、清算に関する取り決めが記載されています。

会社の所有と経営が株主と取締役に分離される株式会社と異なり、持分会社は出資者である「社員」が経営も担います。一般的に社員と従業員は同義ですが、会社法における社員は出資者を指します。

第4編 社債

第4編では、会社が発行する社債のルールを定めています。募集社債の総額や利率、償還方法、期限などを決め、それらを記載した社債原簿を作成することや、銀行・信託会社などの社債管理者を定めることなどが明記されています。

第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付

第5編には、会社組織を変更する場合のルールなどが定められています。株式会社が持分会社に、あるいは持分会社が株式会社に変更する組織変更の他、他の会社と合併する際や会社を分割する際に必要となる株式交換または移転の手続きなどを規定しています。

第6編 外国会社

外国の法令に準拠して設立された「外国会社」に関する取り決めを定めたのが、第6編です。日本で継続して取引を行う場合は、日本における代表者を決めなければならないことや、そのうち1人以上は日本に住所がある人でなければならないことなどが記載されています。

第7編 雑則

第7編の雑則では、裁判所が実施する会社に対する解散命令や、会社に関連する訴訟手続き、商業登記簿への登記に関するルールが定められています。これらの他、株主や債権者、取引先などの利害関係者に決算や組織変更といった重要事項を伝える「公告」に関する取り決めも記載されています。

第8編 罰則

不正行為を行った役員らへの罰則を規定しているのが、第8編です。自己の利益を目的に任務に背く行為を行って株式会社に損害を与えて特別背任罪に問われた場合や、職務にかかわる不正な依頼を受け、利益を享受して贈収賄罪に当たる場合などが対象です。

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会社の種類は2つ



会社の種類には株式会社と持分会社があり、持分会社はさらに合名会社、合資会社、合同会社の3つに分けられます。それぞれの形態と違いを解説します。

株式会社

株式会社は、株式を発行して不特定多数から出資を受ける会社形態です。会社の所有と経営が分離している点が特徴で、株主がオーナーとなって株主が選んだ取締役が経営を担います。事業活動で得た利益は、株主に対して配当によって還元されます。

仮に会社が債務超過などで事業を継続できなくなって倒産しても、株主の損失は出資額のみです。

株主が負う責任は「間接有限責任」といい、債権者に直接責任を負う必要がないのが特徴です。これにより出資者のリスクが抑えられ、出資金を集めやすいことが株式会社の大きなメリットといえます。

国税庁の会社標本調査結果(令和2年)によると、株式会社は 258万3,472社で全体の92.1%を占めます。

持分会社

所有と経営が分離されている株式会社と異なり、持分会社は出資者が経営も担うため、高い自由度で事業活動を行えるのが特徴です。

出資者の責任範囲によって、以下のように合名会社、合資会社、合同会社の3つに分類されます。株式会社は出資分を自由に譲渡できますが、持分会社は自由に譲渡できません。

名称 概要
合名会社 会社倒産時などに債権者に負債の全額を支払う責任を負う「無限責任社員」で構成される会社。無限責任社員は、個人資産を債務弁済の原資にしなければならない場合もある
合資会社 「無限責任社員」の他に、債権者に対して出資額を限度に責任を負う「有限責任社員」も加わる会社
合同会社 「有限責任社員」のみで構成される会社。出資者が有限責任を負う点は株式会社と同じだが、所有と経営が一体となっている点が株式会社と異なる。会社法で新設
※会社法では、社員は従業員ではなく出資者を指します

国税庁の会社標本調査結果(令和2年)によると、合名会社が3,352社で株式会社を含む会社全体の0.1%、合資会社が1万2,969社で0.5%、合同会社が13万4,142社で4.8%となっています。

株式会社の運営機関

株式会社の特徴である所有と経営の分離は、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化につながるというメリットがあります。実際の会社運営でも、各機関が役割を果たすことでガバナンスの強化を図っています。

株主・株主総会

出資者である株主が集まる会議が株主総会です。株主総会は「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」(第295条)最高意思決定機関です。定款の変更や新株発行、役員の選任・解任などの重要事項が議題とされます。

決議は多数決で行われ、1株につき議決権を1つ行使できるのが原則です。そのため、多くの株式を保有している株主は総会での影響力が大きくなります。

取締役・取締役会

取締役は株主総会で選任され、会社の業務を執行する責任者です。株式会社には、1人以上の取締役を置かなければなりません。取締役会は取締役の間で業務に関する議論や意思決定を行う機関で、取締役が3人以上いる場合に設置できます。

取締役会を設置した場合は、会社業務に関するすべての権限を持つ責任者である代表取締役を選定する必要があり、取締役の互選または株主総会の決議で取締役の中から定めることになっています。

会計参与

会計参与は、株式会社において取締役と共同で貸借対照表や損益計算書といった計算書類などを作成します。会計参与になれるのは、税理士や税理士法人、公認会計士、監査法人に限られます。会計参与は法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければなりません。

監査役・監査役会

監査役は取締役の職務執行を監査し、監査報告書を作成します。原則として、取締役会設置会社は監査役を置く必要があり、大会社で公開会社の場合は監査役で構成される監査役会を設置する必要があります。監査役会はすべての監査役で7構成され、監査報告の作成や監査方針などを決定する機関です。

なお、会社法における大会社とは、貸借対照表の資本金が5億円以上または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の株式会社を指します。

会計監査人

株式会社の取締役や会計参与らが作成した計算書類と附属明細書などを監査し、会計監査報告を作成するのが会計監査人です。

大会社の他、次項以降で説明する監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならないことになっています。会計監査人は、公認会計士か監査法人でなければなりません。

監査等委員会

監査等委員会は、取締役が務める監査等委員で構成される組織です。取締役や会計参与の職務執行を監査し、監査報告を作成するのが主な役割です。株主総会に提出する会計監査人の選任や解任などの議案も決定します。

監査等委員会設置会社と監査役設置会社の違いは、役割分担にあります。監査等委員会設置会社の監査等委員会は、監査を行うと同時に取締役として会社の業務執行にも携わります。一方で監査役会設置会社の監査役は監査を担うことが責務であり、業務を執行するのは取締役です。

指名委員会等・執行役

指名委員会等とは「指名委員会」「監査委員会」「報酬委員会」の各委員会を指し、それぞれ3人以上の委員で組織されます。委員は、取締役の中から取締役会の決議で選定されます。

指名委員会は取締役候補者の選定、監査委員会は取締役の職務執行の監査、報酬委員会は役員報酬の決定などをそれぞれ行います。

指名委員会等設置会社に1人以上置く必要がある役職が、執行役です。執行役には、業務執行の決定を取締役会から委任することができます。各委員会は、執行役の監督を分担して担います。

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まとめ

会社法は、主に株式会社の運営を円滑かつ健全に進めることを目指して制定されました。

会社の健全性や透明性の確保・向上は、人事政策を担う人事担当にとっても非常に重要なテーマです。会社運営の仕組みを押さえておくことで、業務を適切に行いやすくなります。会社法の枠組みを踏まえて、人事戦略を練ることが大切です。

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