育児休業の期間はいつまで?産休・育休の取得条件やもらえる給付金を解説


育児休業の期間はいつまで?産休・育休の取得条件やもらえる給付金を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

人事担当者が産休や育児休業(育休)制度を知っているという安心感は従業員の働く意欲に影響を与えます。たとえば、休業期間や取得条件、申請方法などの知識があれば、スムーズな手続きが可能になるだけでなく、従業員が安心して働ける環境を提供できるでしょう。

本記事では、産休と育休の期間をはじめとした制度のポイントや休業中に得られる一時金や給付金について解説します。

産休の期間

産休は正式には産前産後休暇と呼ばれるものであり、出産前後の母体を保護するための制度です。労働基準法第65条で定められているため、出産予定の全ての女性が対象となります。

出産前の準備のため取得できる「産前休業」と、出産後に体を回復させるために休む「産後休業」に分けてみていきましょう。

産前は出産予定日6週前から

産前休業の開始は、出産予定日を含む6週間(42日)前からです。たとえば、2023年8月3日が出産予定日の場合、産前休業は2023年6月23日からとなります。

また、双子など多胎妊娠の場合の休業は14週間(98日)前からです。産前休業は出産に向けた準備と体調管理に専念するための制度であり、多胎出産では体の負担が重くなることを考慮した制度だといえるでしょう。実際の出産日が予定日より遅れた場合は、遅れた日数分も産前休業に含まれます。

産後は8週まで

産後休業は、出産後の女性が体を回復させるための休業です。期間は出産日の翌日から8週間(56日)になります。仮に、2023年8月3日に出産した場合、産後休業は2023年9月28日までです。

出産前の産前休業は、従業員本人による申請で取得できます。対して、産後休業は本人の申し出の有無は無関係です。産後の回復に要する時間を考慮し、必ず休まなければならないため、会社は、産後8週間以内の従業員を就業させられません。ただし、産後6週間経過後、本人が働くことを希望し、かつ医師から支障がないと判断された場合は就業を許可できます。

関連記事:女性活躍推進法の概要|女性活躍推進の現状・課題と企業が負う義務などを徹底解説

育休の期間は子どもが1歳まで



育児休業(育休)は、「育児・介護休業法」によって規定されている、出産後に親が子育てに専念するために取得できる休業です。子どもが1歳になるまで取得できることが明記されています。

母親が育休を取得できるのは、産後休業終了の翌日からです。産後休業がない男性は出産予定日から1歳になるまでの12カ月間、育休を取得できます。育休は基本的に従業員が希望すれば取得可能です。

また、育児・介護休業法第10条には、会社は育休の申し出と取得を理由とした解雇や不利益な扱いをしてはならないことが規定されています。以前は1人の子どもについて育休を取得できるのは1回だけとされていました。しかし、法改正により2022年10月以降は分割取得が可能になっている点も知っておきましょう。

育児休業は、会社が独自に設ける育児休暇とは異なり、法律で規定された制度です。育児休業の詳細は次の記事もご覧ください。

「育児休業」については、こちらの記事をご確認ください。

2歳まで延長可能

育休は1歳未満の子どもを育てるために定められた制度です。しかし、条件を満たせば子どもが1歳を迎えても育休期間を延長できます。

延長の条件は、仕事を休まなければ子どもを育てられないやむを得ない事情があることです。子どもが1歳6カ月になるまで延長したうえで、必要があれば、2歳になるまで復帰を遅らせられます。

父母ともに育休を取得する場合、1歳2カ月まで育休期間を延長できる制度「パパ・ママ育休プラス制度」もあり、取得条件は次のとおりです。

  • 配偶者が子どもの1歳の誕生日前日に育児休業をしていること
  • 本人の育休開始予定日が子どもの1歳の誕生日以前であること
  • 本人の育休開始予定日が配偶者の育休の初日以降であること


育休期間は1年~1年半が最多の3割超

育休の取得期間は、一般的には1年〜1年半が多くなっています。令和3年度雇用均等基本調査(厚生労働省)によると、女性の育児休業期間の割合は次のとおりでした。

育児休業期間の割合(上位)

12カ月~18カ月未満 34.0%
10カ月~12カ月未満 30.0%
18カ月~24カ月未満 11.1%

※調査期間は2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日

対して、男性は「5日〜2週間未満」が26.5%と最も多く、次いで「5日未満」が25.0%となっています。2週間未満が5割を超えていることから、女性に比べて男性の育休取得が難しい環境になっているといえるでしょう。

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産休・育休の取得条件

ここでは、産休と育休を取得するための条件について、それぞれ解説していきます。育休に関してはより細かい条件がある点を知っておきましょう。

産休取得に特別な条件はない

母体と子どもの健康を守るための制度である産休には、取得のための特別な条件はありません。パートタイマーや派遣社員といった雇用形態は関係なく、全ての労働者が取得できる権利です。

入社してからの年数も問われません。産休は新入社員でも取得可能です。会社によっては、法律で定められた期間以上の産休取得を認めている場合もあります。

育休の取得条件は雇用形態で異なる

特別な条件なく取得できる産休とは異なり、育児休業の取得には一定の条件が設けられています。育休は、原則として1歳に満たない子を養育する労働者が取得できるものです。しかし、1日単位で雇用される労働者は対象になりません。また、雇用契約に期間の定めがある場合や退職が決まっている場合は対象にならず、その契約が1歳6カ月までの間に満了しないことが明らかであることも条件となります。

以前は「引き続き雇用された期間が1年以上」という条件があったものの、2022年4月から撤廃されていることを人事担当者は知っておきましょう。ただ、引き続き雇用された期間が1年未満の場合は労使協定で対象外とすることも可能です。

育休の延長については、休業しなければ子どもを育てる人がいないことが条件となります。具体的には次のような内容です。

  • 保育所が定員に達しており入所できなかった
  • 配偶者や祖父母などのケガや病気によって養育が困難になった
  • 配偶者と別居した


保育所に入所できない場合には、入園申し込みと入所希望日が1歳の誕生日より前であることも条件となっているため、制度解説を行う場合は条件をまとめておきましょう。

産休・育休の申請方法



従業員が産休と育休を取得する場合、一定期間内に会社への届け出が必要です。ここでは、産休と育休のそれぞれについて申請方法を解説します。

産休は出産予定日6週前までに申請

産休を取得する場合は、出産予定日の6週間前までに従業員が会社に申請する必要があります。社内規程で定めた申請書に記入し、出産手当金の受給に必要な申請書や医師の証明書などの提出も必要です。

育休は休業開始予定日1カ月前までに申請

育児休業を取得する場合は、従業員が休業開始予定日の1カ月前までに会社に書面で申請するしなければなりません。一般的な記載事項は、従業員の氏名や子どもの氏名、生年月日、休業開始予定日・終了日などです。

産前・産後休業に続けて育休を利用する場合は、産休に入る前や産休中に申請を行うことになるため、社内で案内する場合も注意しましょう。また、休業期間を1歳6カ月、2歳まで延長したい場合の申請期限は、延長を開始したい日の2週間前までと決まっています。1歳6カ月までの延長なら1歳の誕生日の2週間前まで、2歳までの延長なら1歳6カ月に達する日の翌日の2週間前までに申請を行いましょう。

育児休業の延長に関しては次の記事も参考にされることをおすすめします。

「育児休業延長」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:育児休業とは?制度の概要から取得状況、申請方法や企業に出る助成金まで解説

パパ向け新制度の創設

男性の育休取得を促進するための新制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」が、2022年10月に導入されました。出生後8週間(56日)以内に最大4週間(28日)まで休暇取得が可能です。2回に分割して取得もできます。

産後パパ育休のポイントは、子どもが1歳になるまで取得できる育児休業とは別枠となっている点です。そのため、産後パパ育休を取得した後に、子どもが1歳になるまでは通常の育休も取得できます。

産後パパ育休の申請期限は、休業を取得する2週間前までです。通常の育児休業は原則1カ月前までの申請が必要なうえ、就業できません。産後パパ育休は、労使協定を締結している場合、休業中でも労働者が合意した範囲で就業可能です。

企業として、男性従業員からの育休申請があった場合には説明できるようにしておきましょう。男性の育休についてさらに詳しく知りたい方は、本サイトの別記事を参照してください。

「育児休暇男性」については、こちらの記事をご確認ください。

産休・育休中の従業員への経済支援

ここでは、公的機関による各種経済支援について簡単に解説します。産休や育児休業を取得する労働者にとって最も気掛かりとなるのは、休業中の収入です。期間中は会社から給与が支給されないケースが多く、生活を支援する仕組みが不可欠だといえるでしょう。

社会保険料の免除

産休や育休中であれば、社会保険料の支払いが免除されます。産休中は就労しなかった期間、育休中は休業終了日の翌日が属する月の前月までの期間が免除対象です。ただし、育休終了日の月に14日以上育休を取得していれば、その月の月額保険料も免除されます。

社会保険料の免除は、従業員から産休や育休取得申請を受けた場合に、会社を通して「産前産後休業取得者申出書」や「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出する必要がある点には注意しましょう。

出産手当金

出産手当金は、産休のため就業できなかった期間に対して支給される手当です。協会けんぽや会社の健康保険組合に加入している従業員が対象であり、国民健康保険の場合は対象外となります。

1日当たりの支給額は、以下のとおりです。

1日当たりの出産手当金 = 支給開始日の12カ月前からの標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3


標準報酬月額は社会保険料の計算の基礎となる金額で、従業員に支払われる給与から算出されます。出産手当金の受給には、「出産手当金支給申請」の提出が必要です。従業員を通じて医師などに必要事項を記入してもらい、会社も必要事項を記入した上で協会けんぽや健康保険組合に提出する必要があります。

出産育児一時金

出産育児一時金は、協会けんぽや会社の健康保険などの被保険者が出産したときに支給されます。国民健康保険の加入者も対象です。

支給額は2023年4月以降は、子ども1人につき50万円に引き上げられました。なお、次のケースの出産育児一時金は48万8,000円となります。

  • 公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合
  • 産科医療補償制度に加入している医療機関で妊娠22週未満で出産した場合


出産一時金を申請する方法は2通りあります。1つは、医療機関が協会けんぽなどに直接請求して支払を受ける直接支払制度を利用する方法、もう1つは被保険者自ら健康保険に申請する方法です。

直接支払制度は、出産した本人が医療機関に出産費用を支払う必要がないメリットを受けられます。

育児休業給付金(育休手当)

育児休業給付金(育休手当)は、雇用保険の被保険者が育休を取得した場合に支給されます。育休開始前の時点で一定の労働日数に達しているなど受給条件を満たしていなければなりません。申請は会社を通じてハローワークに対して行います。

支給額の基本となる計算は次のとおりです。

育児休業給付金の支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(または50%)


休業開始時賃金日額は、育児休業開始前6カ月間の賃金を180日で割った金額です。育休開始から6カ月が経過すると、掛け率は67%から50%になります。

出生時育児休業給付金

出生時育児休業給付金は、2022年10月に導入された産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した人に雇用保険から支給されます。受給するには、育児休業給付金と同様、休業開始前に一定の労働日数に達しているなどの条件を満たしていることが必要です。申請は、会社を通じてハローワークに対して行われます。

支給額の基本となる計算は次のとおりです。

出生時育児休業給付金の支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%


育児休業中に賃金が支払われた場合は、その額に応じて減額されるので注意してください。

関連記事:育休中の従業員へのボーナスは支給する?免除される税金についても解説

まとめ

出産を控えた従業員がいる場合、人事担当者は、育児休業の期間や休業中の経済的支援について十分に理解しておくことが大切です。会社側が産休や育休、産後パパ育休といった制度を深く理解し、的確に説明できれば、従業員が安心して出産に備えられるようになるでしょう。

就業継続率は増加傾向にあるものの、育休取得の促進や働く環境の整備など、従業員の労働環境の改善や離職防止に対する取り組みが欠かせないといえるでしょう。

さまざまな理由が考えられる離職の予防には、タレントマネジメントシステムの「タレントパレット」が有効です。アンケートや満足度調査などを通じた多角的な分析により、従業員が抱える不安や課題の解決に向けた対応を行うことで、離職を防ぐ効果が期待できます。とくに、労働環境の改善・人材の就労状況の確認に悩んでいる場合はタレントパレットの導入を検討してみましょう。

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