育休中の従業員へのボーナスは支給する?免除される税金についても解説


育休中の従業員へのボーナスは支給する?免除される税金についても解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

2022年10月に育児・介護休業法が改正され、男女とも従業員が育児休業(以下、育休)を取得しやすい環境の整備が企業にも求められます。育休を取得している従業員には給与が支給されないケースが一般的です。しかし、企業として対応する場合、賞与の支給はどのように考えればよいのでしょうか。実際には、支給日の時点で育休取得中の従業員に対しても、ボーナスの支給が必要なケースもあります。

本記事では、育休中の従業員に対するボーナス支給をどのような考え方で行うべきか解説します。

産休・育休中のボーナス支給の考え方



育休中のボーナスは、育児・介護休業法や男女雇用機会均等法といった法律面と就業規則や給与規定など会社独自のルールの両面から考える必要があります。詳しくみていきましょう。

育児・介護休業法と男女雇用機会均等法

原則として、ボーナスの支給の有無や支給額は企業側が決めるものです。しかし、育児・介護休業法(第10条・第16条の4・第16条の9など)では「育休などの取得による不利益取扱いの禁止」、男女雇用機会均等法(第9条)では「婚姻、妊娠・出産等を理由として女性に不利益な取扱い等をすることは禁止」と定められています。

そのため、ボーナス算定期間に勤務していた期間があるにもかかわらず、従業員が育休を取得したことを理由にボーナスを支給しない、または減額するした場合は違法となる可能性があるといえるでしょう。最悪の場合、企業名の公表や最大20万円の過料が課せられるため、遵守しなければなりません。行政からの指導にも対応する必要があります。

育児休業の基本的な情報については、以下の記事で解説しています。

「育児休業」については、こちらの記事をご確認ください。

就業規則と給与規定

育休中の給与や賞与は、就業規則や給与規定に基づいて支給が行われます。そのため、しっかり規定しておく必要があります。前提として、就業規則と給与規定は法律よりも優先されない点も知っておきましょう。

厚生労働省のガイドラインには「賃金、退職金又は賞与の算定に当たり、休業等により労務を提供しなかった期間を働かなかったものとして取り扱うことは不利益な取扱いに該当しません」とされています。そのため、就業規則や給与規定に「算定期間に出勤がない育児休業中の従業員には賞与を支払わない」といった旨を記入することは可能でしょう。

一方、支給日の時点で育休取得中の従業員がボーナス算定期間内に勤務した実績があった場合は、規定に基づいてボーナスを支給する必要があります。こういった場合は、厚生労働省の記入例に基づいて以下のように規定・設定しておくことが推奨されます。

厚生労働省による給与規定への記入例:

(給与等の取り扱い)
1 育児・介護休業の期間については、基本給その他の月毎に支払われる給与は支給しない。
2 賞与については、その算定対象期間に育児・介護休業をした期間が含まれる場合には、出勤日数により日割りで計算した額を支給する。
出典:育児・介護休業等に関する規則の規定例|厚生労働省

就業規則や給与規定に「育休中の従業員には一律賞与を支払わない」と規定することは認められません。育児休暇の取得を理由とした「不利益な扱い」に該当するためです。

関連記事:育児休業とは?制度の概要から取得状況、申請方法や企業に出る助成金まで解説

産休・育休中のボーナスの計算方法

ボーナスは、産休・育休中のボーナスは「算定期間にどのくらいの出勤があったか」によって支給額が変わります。従業員が育休中であっても、適切な金額を計算して支給しなければなりません。仮に、出勤がなかった場合は計算が不要となる可能性があるものの、出勤の記録を確認したうえで、専門家の相談も必要です。

ボーナス算定期間の出勤分は原則支給

ボーナスの支給額は、算定期間中の出勤日数によって決まる場合が一般的には多いと考えられます。仮に、6月に夏のボーナスが支給される場合は、算定期間は前年12月~5月か1月~6月などと定めることが可能です。

計算を行うタイミングは産休や育休から復帰した場合や新たに休暇取得に入る場合が想定されます。算定期間内に勤務した実績が少しでもあれば、その分を日割り計算で支給しましょう。

支給額=本来満額の支給額×(従業員の出勤日数/算定期間内の勤務日数)で計算すると、

仮に満額の支給額が60万円で対象となる日数が120日、そのうちの出勤が75日であった場合、60万円×75(出勤日数)/120=37万5,000円となります。

ボーナス算定期間に出勤がない場合は支給しなくてよい

厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例」には「賃金、退職金又は賞与の算定に当たり、休業等により労務を提供しなかった期間を働かなかったものとして取り扱うことは不利益な取扱いに該当しません」と記載されています。

そのため、就業規則や給与規定に「賞与に関しては、その算定対象期間に育児・介護休業をした期間が含まれる場合には、出勤日数により日割りで計算した額を支給する」などと規定すれば支給しないことに法的な問題はありません。ただし、法的な問題が絡むため、専門家に確認後、対処しましょう。

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関連記事:育児休業の期間はいつまで?産休・育休の取得条件やもらえる給付金を解説

育休中のボーナスに対する税金や保険料



育休中に支給されるボーナスに対して社会保険料や所得税などが免除されるのか、控除はどのように行われるのか、不安に思う従業員から質問を受ける場面も想定されます。

ここからは、税金や保険料の免除は事業主側にもメリットがあるため、どのような扱いになるのかをみていきましょう。

社会保険料は免除される

3歳に満たない子どもを養育するための育児休業等期間では、健康保険・厚生年金保険の保険料が事業主負担分・被保険者負担分ともに免除されます。ただし、そのような扱いを行うためには、事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出しなければなりません。

また、ボーナスに対する社会保険料は、2022年4月から仕組みが変更され、ボーナス支給月の末日を含む連続した1か月を超える育休等を取得した場合に免除されるようになりました。

たとえば、支給日が9月5日で、従業員が9月15日から育休を取得したケースでは、育休が10月14日までに終了すれば社会保険料がかかり、10月15日以降に育休が終了する場合には免除されます。

育休を延長した場合にも社会保険料は免除されます。詳しくは以下の記事で確認しましょう。

「育児休業延長」については、こちらの記事をご確認ください。

所得税、住民税、雇用保険料がかかる

社会保険料は免除されますが所得税や住民税、雇用保険料は、通常通りの支払いが必要です。一般的に育休中は会社からの給与が支払われないため、会社では控除手続き(天引き)ができません。したがって産休・育休中は従業員自身が支払い手続きを行う必要があります。

1年分の住民税を4回に分けて支払うため、1回あたりの金額が高額になる可能性なども従業員に解説しておくとよいでしょう。たとえば、図表で分かりやすく解説した資料を作り、周知するだけでも効果はあると想定されます

関連記事:女性活躍推進法の概要|女性活躍推進の現状・課題と企業が負う義務などを徹底解説

まとめ

育児休業中の従業員のボーナスは、「従業員が育休中だから」という理由で支給額を減らす、または無支給にしてしまった場合、法律で定められた「不利益な扱い」に当たる可能性が高いといえるでしょう。そのため、育休中であっても、ボーナス算定期間に従業員の出勤があれば、その出勤分を基に計算して支給する必要があります。

タレントパレットでは、さまざまな角度から人事評価ができる仕組みがあります。ひとりひとりの状況を把握できるため、育休前後の期間に間違いのない対応が可能です。

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