育児休業とは?制度の概要から取得状況、申請方法や企業に出る助成金まで解説


育児休業とは?制度の概要から取得状況、申請方法や企業に出る助成金まで解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

自社の将来を担う存在である子育て世代の従業員が長く働ける環境を整えるには、育児休業の周知や整備が必要といえます。しかし、育児と仕事の両立を後押しする社会の流れから、育児休業の制度はたびたび変更されています。事業主には、常に最新の情報をキャッチアップし、積極的に対応する姿勢が求められるでしょう。

今回は、育児休業の概要や取得状況、最近の法改正の内容にも触れながら解説します。

育児休業と育児休暇の違いは?

ここでは、「育児休業」と「育児休暇」、2つの意味の違いからみていきましょう。

「育児休業」は国が設けている制度

育児休業は、「育児・介護休業法」で定められた休暇のことです。原則子どもが1歳になるまで取得できます。従業員が育児休業を取得している期間中は、一般的に事業主の賃金の支払いは不要です。しかし、従業員が無給になった場合、生活が立ち行かなくなる可能性もあります。そのため、一定の要件を満たすことで、会社が手続きを行っている雇用保険の財源から従業員に育児休業給付金が給付される点は知っておきましょう。

「育児休暇」は企業独自の休暇制度

「育児休暇」は、会社での設置が努力義務とされる休暇であり、「育児目的休暇」とも呼ばれます。

育児・介護休業法第24条によって、「企業は育児に関する目的で利用できる休暇制度の設置が努力義務」とされています。たとえば、以下のような際に取得できる休暇を整備しなければなりません。

  • 子どもの入園式・卒園式などの行事に参加する
  • 配偶者が出産する(いわゆる「配偶者出産休暇」)


育児休暇は、従業員1人につき8日以上、中小企業の場合は5日以上を分割して取得できるものである必要があります。

育児休業取得率の最新状況

育児休業の取得率は、毎年調査・公開されています。ここでは、厚生労働省が実施した「令和3年度 雇用均等基本調査」と「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」の内容をもとに、育児休業取得率の状況をみていきましょう。

育児休業取得率は女性が85%・男性が14%程度

「令和3年度 雇用均等基本調査」によると、2022年度の育児休業取得率は女性が85.1%、男性が13.97%でした。同調査によると、女性の育児休業取得率は2007年に80%を超え、以来ほぼ同じ水準で推移しています。一方、男性の育児休業取得率は上昇しているものの、14%であることから、女性に比べると低い水準です。

男性従業員の育児休業取得が進まない原因は、「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」で男性正社員626名に行った調査から、以下のように明らかになっています。

  • 収入を減らしたくなかった(39.9%)
  • 職場や周囲が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だった(22.5%)
  • 自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(22.0%)


男性従業員の育児休業取得を浸透させるためには、収入減をサポートする体制やとして育児休業に理解を示すことが重要だと考えられます。

なお政府は、2020年5月に閣議決定した「少子化社会対策大綱」で、2025年までに男性の育児休業取得率を30%にする目標を掲げています。

政府目標からすれば、今後企業にさらなる対策が求められる可能性もあるでしょう。仮に、育児休業取得を促す体制ができていない場合は、早めに対策を検討し、社内整備を進めることを推奨します。
出典:令和3年度 雇用均等基本調査|厚生労働省

育児休業取得状況の公表は義務化された

男性の育児休業取得促進を目的に2023年4月から、従業員1,000人以上の事業主には育児休業取得状況の公表が義務化されました。

公表するよう定められているのは、「公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度(公表前事業年度)における男性の育児休業等の取得割合、または育児休業等と育児目的休暇の割合」です。

「公表」の方法は細かい指定はなく、広く一般の人が確認できれば良いとされています。自社のWebサイトで公表する、厚生労働省が運営するWebサイト「両立支援のひろば」に掲載する方法もあるため、自社に合った方法を選択しましょう。

育児・介護休業法改正での大きな2つの変更点

育児・介護休業法は2021年10月に改正され、翌2022年4月1日から段階的に施行されている状況です。法改正における大きな変更点についてみていきましょう。

1.子どもが1歳までの育児休業は分割取得が可能に

育児休業はこれまで原則1回しか取得できませんでした。2022年10月から、男女ともそれぞれ2回まで取得可能になっています。つまり、夫婦で最大4回の育児休業が取得できるようになったといえます。

従来通り長期間の休業を1回取得した場合でも、短期間の休業を複数回に分けて取得しても構いません。また、子どもが1歳になった後も一定の条件を満たせば育児休業を再取得できるようになりました。

2.「出生時育児休業(産後パパ育休)」を新設

男性従業員向けの育児休業として、新たに「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新設されました。男性の育児休業取得促進のために、新設された休業であり、産後8週間以内に4週間(28日)を限度に2回に分けて取得できます。

従来の1歳までの育児休業とは別に取得できるため、今まで以上に育児に参加しやすくなるでしょう。また、産後パパ育休を取得する男性従業員と労使協定を結んでいれば、休業中でも就業は可能です。

産後パパ育休の対象者や取得を促す方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
「育児休暇男性」については、こちらの記事をご確認ください。

育児休業を取得できる従業員の条件

育児休業は、法律で定められた休暇制度です。しかし、子どもが生まれる、あるいは子どもを持つ従業員なら誰でも取得できるわけではありません。ここでは、育児休業を取得できる人と条件を解説します。

1歳未満の子を育てている労働者

育児休業を取得できるのは、原則として1歳未満の子どもを育てている従業員です。性別は問いません。また、一定の条件を満たせば、育児休業の期間を子どもが1歳6カ月または2歳になるまで延長可能です。

労働契約に期間の定めがない

育児休業を取得できるのは、現状では無期雇用の従業員のみです。正社員だけではなく、パートタイマーや契約社員、時短勤務者などでも、無期雇用であれば取得対象といえます。

取得できない例としては、日雇い労働者や子どもが1歳6カ月になる日までに労働契約期間が満了する従業員です。また、自社の労使協定で対象外としている従業員も取得できません。

パートタイマーとして働いている従業員でも、労働条件の内容によっては育児休業を取得できないケースもあります。詳細は以下の記事で解説していますので、合わせて参考にしてください。
「パート育休」については、こちらの記事をご確認ください。

育児休業を取得できる期間は?



育児休業が取得できるのは原則、子どもが1歳になるまでです。しかし、条件を満たせば1歳6カ月または2歳まで延長もできます。ここからは、育児休業を延長するために必要な条件をみていきましょう。

原則として出生日から1年間

育児休業ができる期間は、原則として「子どもが出生した日からその子どもが1歳になる日までの間」かつ従業員が申し出た期間となっています。

ただし、女性労働者には産後8週間の休業(産後休業)が認められているため、育児休業を取得できるのは産後休業終了後からです。つまり、子どもが出生した日(もしくは出生予定日)から育児休業を取得できるのは、男性従業員のみといえます。

条件を満たせば1歳6カ月または2歳まで取得可能

育児休業は、以下の条件を満たす従業員が事業主に申し出れば、子どもが1歳6カ月または2歳になるまで取得可能です。

  1. 子どもが1歳または1歳6カ月になる日に、本人または配偶者が育児休業をしている
  2. 保育所に入所できないなど、1歳または1歳6カ月を超えても育児休業が必要
  3. 1歳6カ月または2歳までの育児休業をしたことがない


なお、これ以外にも育児休業の延長が認められる要件はいくつかあります。詳細は以下の記事で解説していますので、一度確認しておきましょう。
「育児休業延長」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:育児休業の期間はいつまで?産休・育休の取得条件やもらえる給付金を解説

育児休業の取得・延長を申請する手順

育児休業の取得・延長を行う場合、従業員の申し出を受けた事業主はハローワークへ申請する必要があります。

ここでは、従業員と事業者に必要な手続きをみていきましょう。

1.従業員から事業主に申し出る

従業員が育児休業を取得する場合は、休業開始希望日の1カ月前までに事業主に申し出る必要があります。

企業として、育児休業の取得・延長を希望する場合は、なるべく早めに申し出てもらうよう周知しておくと良いでしょう。育児休業の取得・延長と給付金の支給が認められるのは、従業員の申し出を受けた事業主が必要書類をハローワークに提出し、受理されてからであるためです。

2.事業主がハローワークに必要書類を提出する

企業が従業員の申し出を受けた場合、必要書類を管轄のハローワークに提出しましょう。取得の申請(初回の申請)と延長の申請では、以下のように必要な書類が異なります。

申請内容 取得(初回の申請) 延長(2回目以降の申請)
必要書類 【提出書類】

育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

【添付書類】

賃金台帳や出勤簿など、支給申請書の内容が確認できるもの

【提出書類】

育児休業給付金支給申請書

【添付書類】

延長事由に該当することが分かる、以下のような資料

  • 保育所等の入所保留の通知書
  • 世帯全員が記載された住民票の写しと母子健康手帳
  • 保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等

    ※延長事由によって必要な資料は異なる

提出期限 育児休業開始日から4カ月を経過する日の属する月の末日まで 公共職業安定所長が指定する支給申請期間の支給申請日

(ハローワークから交付される「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」に記載)

場合によっては、従業員側で延長理由に合わせた書類を用意してもらう必要があります。そのため、余裕のある対応を行うためにも従業員と協力しながら早めに準備を進めておきましょう。

育児休業の申し出をする期間については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「育児休業期間」については、こちらの記事をご確認ください。

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育児休業中の従業員と企業に向けた給付金

育児休業中の従業員には給付金が支給されます。そして、その従業員を雇用する企業も同じく、給付金の受給が可能です。ここでは、それぞれの立場別に受け取れる給付金の扱いについて解説していきます。

従業員には「育児休業給付金」が振り込まれる

育児休業中の従業員が雇用保険加入者である場合は、雇用保険から「育児休業給付金」が振り込まれます。基本的に、企業は育児休業中の従業員には、給料を支払う義務がありません。そのため、従業員にとっては、育児休業給付金が重要な収入源となる場合もある点は知っておきましょう。

男性従業員は「出生時育児休業給付金」も出る

男性従業員が産後パパ育休を取得した場合、「出生時育児休業給付金」が給付されます。費用は、雇用保険から支払われます。

注意点として、育児休業給付金と一緒に受給も可能であるものの、両方受け取る場合は産後パパ育休の取得日数次第で金額が変動するため、支給額をよく確認しましょう。

事業主側にも様々な助成金が支給される

従業員の育児休業取得やスムーズな職場復帰に取り組む中小企業の事業主には、政府から助成金も出されます。対象となる取り組みは、以下のようなものが一例です。

対象となる取り組み 助成金額
従業員が育児休業を取得した 30万円/人
育児休業を取得した従業員が職場復帰した 30万円/人
育児休業取得者の代替要員を新規雇用した 50万円/人

ただし、助成金を受け取れる人数には上限が設けられています。また、中小企業以外の企業も対象としている助成金もあるため、厚生労働省のWebサイトで確認しましょう。

関連記事:育休中の従業員へのボーナスは支給する?免除される税金についても解説

従業員に支給される育児休業給付金の計算式



ここからは、育児休業給付金・出生時育児休業給付金の基本的な計算式を解説します。支給額について従業員から質問された場合は、計算式に従って算出しましょう。

なお、育児休業・産後パパ育休を取得している間に賃金の支払いをした場合は、賃金額に応じて調整されます。賃金を支払っていない場合と比べて金額が低くなったり、給付金が支給されなくなったりすることもある点には、注意が必要です。

育児休業給付金の計算式

育児休業給付金の支給額は以下の計算式で算出されます。

育児休業給付金の支給額=休業開始時賃金日額×育児休業の取得日数×67%(※育児休業開始から181日目以降は50%)

たとえば、休業開始時賃金日額が1万円、育児休業の取得日数が30日間の場合、育児休業給付金の支給額は10000×30×0.67=20万1,000円です。この金額は非課税で、社会保険料・雇用保険料も免除されます。なお「休業開始賃金日額」とは、育児休業開始前6カ月間の賃金を180で割った金額です。

出生時育児休業給付金の計算式

産後パパ育休取得者が受給できる出生時育児給付金の計算式は、以下のとおりとなります。

出生時育児給付金の支給額=休業開始時賃金日額×産後パパ育休の取得日数(上限28日)×67%

同じく休業開始時賃金日額が1万円、産後パパ育休の取得日数が20日間の場合、出生時育児給付金の支給額は10000×20×0.67=13万4,000円です。こちらも非課税で、社会保険料・雇用保険料は免除されます。

産後パパ育休は取得できる日数が4週(28日)までのため、計算式で使用する取得日数の上限も28日となる点が育児休業給付金との大きな違いです。

育児休業に関するQ&A

ここでは、育児休業に関して企業が知っておきたい点について解説します。特に給与の有無、退職の扱いなどは把握しておかなければなりません。

育児休業中も給与は支払うべき?

育児休業中の給与支払いは義務ではないため、支払わなくても問題ないといえます。また、支払っても良いものの、支払った金額によっては育児休業給付金から差し引かれたり、給付金そのものが支給されなくなったりするケースもあるため、事前のシミュレーションが大切です。

育児休業中のボーナス支給は必要?

従業員が育児休業中であってもボーナス算定期間中に企業に在籍している場合、ボーナスの支給対象となります。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法によって、「育児中の従業員に不当な扱いをしてはならない」と定められているためです。

ただし、算定期間中の出勤日数に応じた調整は可能です。仮に出勤がゼロの場合は、支給しなくても問題となることはありません。そのうえで、就業規則にボーナス支給の条件が記載してあることが必要となるため、就業規則を確認しましょう。なお、ボーナスは賃金ではないため、支給しても育児休業給付金から差し引く必要はありません。

就業規則での記載方法や、育児休業取得中の従業員に対するボーナスの計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
「育休中ボーナス」については、こちらの記事をご確認ください。

育児休業中の従業員に退職したいと言われたら?

育児休業取得中であっても退職は可能です。ただし、育児休業給付金が支給されなくなる可能性があります。

育児休業給付金は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金です。期間中に退職するとその要件を満たせなくなり、受給資格がないとみなされる可能性があります。

仮に退職を希望する従業員が出てきた場合は、その点を伝えて双方でよく検討しましょう。なお、育児休業の当初からすでに退職を予定している場合も育児休業給付の支給対象とはなりません。

育児休業は不要だと従業員に言われたときの対応は?

従業員から「育児休業はいらない」と言われた場合は、無理に取得させる必要はありません。ただし、育児・介護休業法第21条で定められているため、事業主の義務育児休業の制度があることだけは従業員に伝える必要があります。

従業員へ伝える方法は、面談や書面のほか、FAXやメールなどの使用も認められています。

育児休業の取得を促す方法は?


企業としての仕組みが既にある場合は、職場の雰囲気作りを優先しましょう。社長や経営者層など自社のトップが積極的に取得を推進する、従業員の働き方を見直し休暇を取りやすいマネジメントや環境作りを行うといった対策が効果的です。

関連記事:女性活躍推進法の概要|女性活躍推進の現状・課題と企業が負う義務などを徹底解説

まとめ

育児休業は現在、政府でも取得が推奨されており、法改正で新たな制度も導入されている状況です。育児休業取得状況の義務化がされている点もふまえれば、今後育児休業推進の動きは強まるといえるでしょう。

事業主には、従業員がいつ育児休業を取得しても良いような環境整備や仕組み作りが求められます。そのためにも、従業員1人ひとりのデータを把握し、有事の際にすぐに体制を整えられるように準備を行う必要があります。

タレントパレットでは、従業員のスキルや経歴、過去の異動などあらゆるデータを一元管理できます。育児休業取得希望者が出た場合も、問題なく対処できるでしょう。従業員が安心して育児休業を取得できる雰囲気を作るためにも、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。

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