ヒト・モノ・カネ・情報からなる経営資源を一元管理することで無駄を省けるため、より効果的な活用が可能になります。一元管理とは、組織内のデータを活用しやすい形で、1つの場所に集中的に保存することです。本記事では、一元管理について解説します。一元管理のメリットやデメリット、管理できる経営資源の詳細、システムを切り替えるコツなども紹介するので参考にしてください。
一元管理と関連する言葉
一元管理や、一元管理と関連する集中管理、一括管理などの概念について詳しく解説します。それぞれの特徴や違いを理解することで、より効果的な管理体制の構築が可能です。
一元管理とは
一元管理とは、組織内のデータを単一の場所で集中的に管理する手法を指します。一元管理されたデータは適切に整理・分類されている点が特徴です。単純にデータを集約するだけではなく、必要なデータにアクセスできるよう構造化された状態で保存されています。
集中管理・一括管理とは
集中管理や一括管理は、該当するデータを単一の場所にまとめて保存する手法です。ただし、データの形式や管理方法は、各部門や用途によってバラバラになっています。
一元管理とは異なり、集中管理や一括管理ではデータが構造化されていません。データを効果的に活用するためには、集中管理や一括管理よりも、一元管理の方が望ましいといえます。
同期とは
同期は、複数のデバイス間でデータの内容を同一の状態に保つことです。同期が正常になされると、どのデバイスからアクセスしても最新のデータを確認できます。
DXとは
DXは、「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。デジタル技術を活用して企業の事業モデルや組織を変革し、新しい価値を創造する取り組みを指します。
一元管理の導入は、DXのひとつです。DXは業務効率化にとどまらず、イノベーションの創出により企業の競争力を高める、戦略的な施策として注目されています。
一元管理に適した経営資源
企業経営において、ヒト・モノ・カネ・情報は重要な経営資源です。経営資源を効果的に一元管理すると、企業価値の向上や競争力の強化につながります。各経営資源の特徴と一元管理の意義を見ていきましょう。
ヒト(人材)
企業活動を支える「ヒト」は、「モノ」に価値を付与して「カネ」を生み出す最も重要な経営資源です。少子高齢化が進む現代社会において、ヒトの価値は一層高まっています。人材データを一元管理すると、社員個々の能力や経験を適切に評価し、最適な配置を実現可能です。社員の潜在能力を最大限に引き出すことで、企業の持続的な成長を支えられるでしょう。
モノ(商品・サービス・設備など)
「モノ」は、企業が顧客に提供する商品やサービス、事業運営に必要な設備や原材料などです。モノを一元管理すると、在庫状況をリアルタイムで把握でき、生産から販売までの一連のプロセスを効率的に運営できます。また、適切な在庫管理は、業務効率化やコスト削減だけでなく、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
カネ(資金)
「カネ」は事業資金です。人材の採用や設備投資、原材料の調達など、あらゆる企業活動には「カネ」が欠かせません。カネを一元管理すると、正確な財務状況の把握が可能となり、業務効率の向上やヒューマンエラーの防止、コスト削減を実現できます。
情報(顧客データ・ノウハウなど)
情報化社会において、「情報」は企業の競争力を左右する重要な無形資産です。顧客データや業務ノウハウなどの情報を一元管理すると、企業は迅速な意思決定と効果的な顧客対応が可能になります。技術の発展に伴い、ますます価値が高まる情報を戦略的に活用しましょう。
一元管理が求められる理由
企業が競争力を維持し、成長し続けるには、経営資源の効果的な一元管理が必要です。一元管理が求められる背景を、生産性とセキュリティ体制、コンプライアンスの観点から解説します。
生産性を高めるため
一元管理が求められる理由として、まずは生産性向上が挙げられるでしょう。複数のシステムを並行して使用する従来の管理方法では、業務効率の低下は避けられません。たとえば、同一のデータを異なるシステムに何度も入力すると、その都度、人的リソースが必要です。また、システムごとに専門の管理者を配置すれば、人件費も増加します。
セキュリティ体制を強化するため
セキュリティ体制の強化も、一元管理が求められる理由のひとつです。近年の企業には、オンプレミスやクラウドを含め、多様なシステムが混在しています。タイプが違う複数のシステムを個別に管理する場合、包括的なセキュリティ対策は難しくなりがちです。
一方、一元管理システムを導入すると、データの追跡や保護が容易になり、セキュリティ体制を強化できます。また、担当者の退職によって重要な情報の所在が不明になったり、個人のパソコンから機密情報が流出したりといったリスクも、防ぎやすくなるでしょう。
コンプライアンス違反を防ぐため
コンプライアンス違反を防ぐためにも、一元管理は重要です。データを個人や部署・部門単位で管理していると、十分に管理していたつもりでも、コンプライアンス違反を起こすかもしれません。
一元管理すると、セキュリティポリシーの適用が容易になり、管理者の業務負担を軽減しつつ企業の信頼性を確保できるでしょう。
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一元管理するメリット
一元管理システムを導入するメリットは、業務効率の向上から組織の活性化まで多岐にわたります。一元管理により企業が得られる主なメリットを解説するので、参考にして自社への導入イメージを描いていきましょう。
自社のDXを推進できる
データの一元管理は、企業におけるDX推進の第一歩となります。集約されたデータを分析すると、業務プロセスの非効率な部分や改善が必要な領域を、正確に特定できるためです。具体的な課題を絞り込めると、実情に合ったDX施策の立案と実行が可能になります。
急速に変化するビジネス環境において、DX推進は企業の競争力維持に不可欠です。データの一元管理から、自社のDXを推進させましょう。
業務を効率化できる
DX推進により従来は手作業で行っていた業務の多くを自動化できると、コスト削減につながります。データ入力や帳票作成などの作業が自動化される結果、人手不足の解消や、業務効率の向上も可能となるでしょう。
また、定型業務から解放された社員は、時間に余裕ができる分、より付加価値の高い業務に注力することが可能です。業務の質が高まれば、生産性や顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
データをスムーズに共有できる
前述のように、一元管理されたデータは、適切に整理・分類され、構造化された状態で保存されています。したがって、従来のようにデータを持っている担当者を探したり、共有可能な形式に変換してもらったりする手間がかかりません。組織全体でスムーズにデータを共有できると、意思決定や業務を迅速に進められるでしょう。
コミュニケーションが円滑になる
スムーズなデータの共有は、部署・部門間の垣根を引き下げ、組織全体の連携を強化します。また、経営層の方針や意思決定の内容が必要なデータとともに共有されると、組織全体での理解が深まるでしょう。さらに、検討に必要なデータを即座に参照できると、経営判断のスピードが向上し、より質の高い施策を実行することが可能です。
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正確な情報を共有できる
一元管理によりデータ入力や転記時のヒューマンエラーが削減されると、情報の正確性が向上します。また、情報の重複がなくなれば最新データの特定が容易になり、関係者間での確実な情報共有も実現可能です。
人材を適切なポジションに配置できる
人材データの一元管理により、組織全体の人材配置を最適化できます。個々の社員の能力や経験、キャリアビジョンなどを総合的に把握することで、適材適所の人材配置を実行できるでしょう。また、組織全体の人材状況を正確に把握できるため、人事異動による部署・部門の機能低下を未然に防ぐことが可能です。
一元管理するデメリット
一元管理システムの導入には多くのメリットがある一方で、導入や運用に関する課題も存在します。課題を事前に理解して適切な対策を講じ、円滑な活用を目指しましょう。
コストがかかる
一元管理システムの導入には、相応の初期費用と維持費が必要です。具体的には、システムの購入費用やカスタマイズ費用、保守費用などが発生します。
ただし、業務効率化やヒューマンエラーの削減に成功すると、コスト削減効果が見込めるでしょう。一元管理システムを導入する際は、長期的な視点で費用対効果を検討することが重要です。
システムが受け入れられるまで時間がかかる
一元管理システムの導入時には、組織全体での受け入れまでに一定の期間が必要となります。社員の理解を得られても、移行期間中は、従来の業務プロセスとの違いによる予期せぬ混乱や、一時的な業務効率の低下が発生するかもしれません。
特に一元管理システムの操作方法が複雑な場合は、定着までにより多くの時間を要します。円滑な移行のためには、詳細なマニュアルの整備や、明確な使用ルールの策定が不可欠です。また、一部の部署・部門のみでスモールスタートで始めるなど、段階的な導入を検討すると、トラブル発生時の影響を最小限に抑えられます。
社員の意識改革に時間がかかる
既存のシステムやワークフローに慣れた社員のなかには、新しい一元管理システムの必要性を実感できない人もいるかもしれません。一元管理システムの利点や導入目的を十分に理解してもらわないと、効果的な活用は難しいでしょう。
社員の意識改革には、一元管理および新しいシステムに関する定期的な研修の実施や、気軽に相談できるサポート窓口の整備などが有効です。また、一元管理システム導入による具体的なメリットの説明や、業界内での成功事例の共有を通じて、全社的な理解と協力を促進しましょう。
システムの故障に備える必要がある
一元管理システムに故障などの障害が発生した場合、企業活動全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、定期的なデータバックアップはもちろん、代替システムの整備など複数の対策が欠かせません。
一元管理システムの障害を想定した対策は、事業継続計画(BCP)の核となります。BCPとは、災害やシステム障害などの予期せぬ事態が発生した際でも、重要な業務を継続または早期に復旧できるようにするための計画です。
特に、一元管理システムは企業の基幹業務を担うため、障害による業務停止を最小限に抑えるための対策が必須となります。
一元管理に円滑に切り替えるポイント
一元管理システムへの移行を成功させるためには、適切な準備と計画が不可欠です。ここでは、円滑な導入を実現するためのポイントや、主な一元管理システムを紹介します。
一元管理の対象を決める
効果的な一元管理に向け、まず社内のデータを適切に分類し、管理対象を明確にしましょう。情報セキュリティの観点からも、事前にデータの棚卸しを行い、一元管理すべき対象を選定してください。
多くの社員が日常的に利用するデータや、売上データや顧客データなど、数値化が容易なデータは一元管理に向いています。データの統合により、業務効率の大幅な向上が期待できるでしょう。一方で、特定の部署・部門が使用するデータや、数値化が困難なデータ、高度な機密性を要するデータは、個別の管理方法を検討する方が適切な場合があります。
一元管理に向け各部門が協力する
一元管理システムの導入を成功させるには、組織全体の理解と協力が欠かせません。まず、組織のニーズに適したシステムを選定するために、各部門からの具体的な要望や課題を収集しましょう。経営層のリーダーシップのもと、各部門の責任者を巻き込んで一元管理を推進すると、取り組みの重要性が社員に明確に伝わり、スムーズな導入が可能です。
自社に合うシステムを選ぶ
主な一元管理システムには、企業の基幹業務全体を統合するERP、顧客データを管理するCRM、営業活動のデータを管理するSFAなどが挙げられます。
ERPは、販売・生産・会計・人事などの幅広い基幹業務が管理対象です。一方、CRMは顧客とのコミュニケーションデータを、SFAは営業活動に関するデータを中心に管理します。システムの選定にあたっては、まず自社の導入目的に応じて適切なタイプを選んだ後で、各ベンダーの製品を比較検討しましょう。
無料トライアルなどを活用して実際の操作性を確認し、ユーザビリティや機能面、費用面などから総合的に判断すると、自社にとって最適なシステムを選定できます。
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まとめ
一元管理とは、組織内のデータを活用しやすい形で、1つの場所に集中的に保存・管理する手法を指します。企業の競争力を高め、社員や組織が成長し続ける環境を整えるには、一元管理に切り替える必要があるでしょう。
一元管理システムは、自社に合ったものを選ぶことが大切です。特に、人材データの一元管理には、タレントマネジメントシステムが適しています。
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