採用活動では、履歴書や職務経歴書などの他にキャリアシートを活用している企業もあります。キャリアシートを人材育成に生かすには、具体的に何を見ればよいか理解したうえで導入することが大切です。本記事では、キャリアシートの役割や他の書類との違いなどを解説します。具体的な内容や企業が見るべきポイントなどもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に
キャリアシートの役割
キャリアシートは、採用活動の書類審査において応募者に提出を求める書類の1つです。応募者の経験、スキル、資格などを分かりやすくまとめた書類であり「レジュメ」と呼ぶ場合もあります。
また、採用活動以外では、社員のキャリア形成を目的として、キャリアシートを作成するケースも少なくありません。この場合、キャリアシートは「キャリアプランシート」の略称として使用されます。キャリアシートには、仕事に関するさまざまな求職者や社員の情報を記載するため、具体的なキャリアを考えるうえで役に立つでしょう。
キャリアの意味とは?定義や判断基準、キャリアアップの方法について解説!
キャリアシートと履歴書・職務経歴書の違い
採用活動では、履歴書と職務経歴書をもとに書類審査を行うケースが一般的です。キャリアシートは、履歴書や職務経歴書と何が異なるのでしょうか。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
キャリアシートと履歴書の違い
履歴書とは、氏名、住所、生年月日といった応募者の基本情報とともに、学歴、経歴、資格などをまとめた書類です。あくまで実際の状況に関する概要のみが記載されています。履歴書によっては、志望動機、本人の希望、交通手段などの欄が設けられている場合もあるでしょう。
キャリアシートにも履歴書と被る内容が一部記載されています。加えて、応募者の自信があるアピールポイントについても詳細の確認が可能です。
キャリアシートと職務経歴書の違い
職務経歴書とは、仕事の経歴やスキルなどの詳細をまとめた書類です。概要のみを記載する履歴書とは異なり、主に仕事に関する経験について詳しく記載されています。具体的な職歴、資格、自己PRなどを盛り込んだ内容を応募者自身が作成するもので、フォーマットは特にありません。
ただし、職務経歴書は職歴が中心ですから、新卒の応募者は作成できないでしょう。キャリアシートなら職歴だけでなく、スキルや資格などについても詳しく記載できます。強みや将来のキャリアプランについても盛り込めるため、応募者の素質の見極めに役立てることが可能です。
キャリアシートを活用する企業が増えた背景
従来、書類審査の後は、面接で応募者の経歴やスキルなどを深堀していました。しかし、コロナ禍をきっかけに多くの企業がオンライン面接へ移行しています。オンライン面接は時間が限られているうえに、採用担当者が1日に対応する面接の件数も増えている状況です。
よって、自社に合う応募者を見極めるには、書類審査がより重要になりました。キャリアシートには応募者に関する情報が詳しく記載されているため、注目する企業が増えています。キャリアシートで応募者に対する理解を深められると、要点を絞って面接ができて効率的です。
キャリアシートを採用活動で活用する目的
ここでは、企業がキャリアシートを採用活動で活用する目的について解説します。
応募者のこれまでの経験やスキルを知る
キャリアシートは、応募者の経験やスキルを把握するために利用できます。また、応募者は企業の方針や業務内容を意識したうえで自分の強みを記載するため、自社にマッチする人材を見極めやすい点も特徴です。キャリアシートを作成する応募者自身も、自分自身のキャリアについて見直すきっかけになります。
企業と応募者のミスマッチを防ぐ
キャリアシートで応募者について詳しく把握すれば、自社との相性も確認できます。事前に相性を判断しておくと、入社後のミスマッチも防止可能です。万が一、ミスマッチが起きた場合、早期退職につながる恐れがあります。キャリアシートを活用すれば、自社で生かせる能力があって活躍できるか見極めやすいでしょう。
応募者がどのようなキャリアを希望しているのかを把握する
キャリアシートには、過去の経験や現在のスキルだけでなく、キャリアプランに対する応募者の希望も記載できます。応募者の希望を事前に確認しておくと、入社後の育成の参考にすることが可能です。
その結果、応募者の強みと弱みを把握したうえで、本人の希望に合う目標を意識した育成を実現できます。応募者のやる気を引き出しつつ、自社で活躍できる人材として育つ可能性が高まるでしょう。
「キャリアの棚卸し」の機会になる
キャリアシートを作成するには、応募者が自分の経験やスキルについて向き合う必要があります。そのため、応募者自身が改めてキャリアを見つめ直すよい機会になるでしょう。自分の強みや弱みを具体的に認識できると、目標や将来のビジョンも自然と明らかになります。それを踏まえて自分が成長できると感じる企業へ応募できるため、採用後のミスマッチも防ぐことが可能です。
キャリアシートには応募者の能力や今後に対する期待がまとめられており、企業にとっても役に立つ資料になります。採用活動の参考になるだけでなく、採用後の育成指標としての活用も可能です。
キャリアシートに記載される内容
キャリアシートには、どのような内容が記載されているのでしょうか。ここでは、キャリアシートの具体的な内容について解説します。
応募者の基本情報
キャリアシートには、氏名、住所、生年月日、連絡先などの基本情報を記載する必要があります。履歴書と一緒に提出してもらうなら、それぞれの内容に違いがないかチェックしましょう。ただし、キャリアシートに記載された内容は応募の時点における情報です。採用後は適切に管理し、変更が生じたら速やかに情報を更新してください。
応募者の強みと弱み
応募者が自分自身を客観的に捉え、強みと弱みの両方を記載する項目もあります。強みについては、根拠として提示されているストーリーに説得力があるか注目しましょう。一方、弱みについては単に事実を述べるだけでなく、克服のための努力や、本人が意識していることなども記載されているか確認してください。弱みの対策が的確かどうかも判断する必要があります。
応募者の職務経歴と特記事項
キャリアシートには、過去の勤務先、役職、業務内容などについても記載されています。特記事項の欄を見ると、仕事で身につけたスキルや成し遂げた成果などを知ることが可能です。応募者がどのような仕事に取り組み、どの立場で実績を積んできたか分かります。応募者の経験やスキルを自社で生かせるか判断するために役立つでしょう。
応募者の将来のビジョンや希望するキャリア
応募者が今後どう働き、どのようなキャリアを目指したいかについてもキャリアシートで把握できます。これまでの経験や身につけたスキルを生かし、応募者が何を目指したいか確認できる項目です。
単に自分の希望や思いを記しているのではなく、自社に対してどのように貢献するつもりなのか、記載内容を細かくチェックしましょう。目標も明確なら、入社後も高い意欲を持って活躍できる可能性が高まります。
応募者が保有している免許や資格
応募者が保有する免許や資格についても、キャリアシートで確認することが可能です。取得時期が時系列でまとめられており、保有している免許や資格の具体的な名称やレベルなども把握できます。高レベルな免許や資格があるかどうかではなく、自社で生かせる免許や資格を保有しているかチェックすることが大切です。
キャリアシートのチェックポイント
キャリアシートを確認する際は、さまざまな部分に着目する必要があります。具体的なチェックポイントを解説します。
5W1Hを意識されているか
キャリアシートを確認する際は、5W1Hが含まれているか確認しましょう。5W1Hとは「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」のことです。キャリアシートの内容は端的になりやすく、本人のスペックや目標などを把握しにくいケースもあります。
5W1Hが意識されている内容であれば、具体的で分かりやすく、応募者が自身の情報を正確に伝えようとしている意志を感じられるでしょう。
具体的な数値を用いているか
具体的な数値が記載されていると、キャリアシートの説得力が増します。たとえば「20社以上の企業と契約した」「営業成績を40%向上させた」といった記載があれば、応募者が上げた成果について正確に把握できるでしょう。数値だけでなく、学校名や社名、部署、資格の名称なども、正式名称で記載されているかチェックする必要があります。
客観的な視点で書かれているか
キャリアシートの内容が客観的な視点に基づいているかどうかも重要です。自分を客観視できる人材は、自分の課題や弱点も把握できます。それらの克服を意識したキャリアプランやビジョンを描けるため、自社で活躍できる可能性が高いでしょう。
主観的な視点でしか捉えられないと、キャリアシートが偏った内容になります。本人の感情に基づく記載も多くなりがちで、人物像を正確に捉えることは簡単ではありません。
自社の求人内容とマッチしているか
キャリアシートの内容は、自社の求人内容が合っているかもチェックが必要です。応募者の経歴が自社の方向性や業務内容と合っていれば、応募者が培ってきたスキルや知識などをそのまま生かせます。応募者の経歴やビジョンが自社とかけ離れている場合、採用後にミスマッチが生じやすいでしょう。長く働いてもらえず、早期離職につながる恐れもあります。
キャリアシートを活用する方法
キャリアシートは、どのように活用すればよいのでしょうか。ここでは、キャリアシートを活用する方法について解説します。
応募者の価値観や現状を把握する
キャリアシートに記載されている内容を確認すれば、応募者の価値観や置かれている状況などを詳しく把握できます。現状の何を課題として捉え、どのような部分で成長したいかについても示されているため、採用後の育成において参考になる情報も豊富です。また、応募者の経験、スキル、考え方なども深く理解でき、適材適所の人材配置を実現しやすくなります。
応募者の描くビジョンに向けたプロセスを提案する
応募者が求めている将来のビジョンやキャリアプランを把握できると、自社が用意できるプロセスについても提示できます。応募者にとって、自分が成長できる環境かどうかは入社を決断するうえで重要な要素です。
採用した人材に長く働いてもらい、自社に貢献してもらうには、企業も応募者の希望に配慮する必要があります。応募者が自分のイメージに近い環境で成長できるよう、可能な限りサポートしましょう。
人材採用・育成に重要なキャリアプランとキャリアパスとは
キャリアシートと似た言葉として、キャリアプランとキャリアパスがあります。いずれも採用活動や人材育成において重要です。ここでは、それぞれの言葉の意味について解説します。
人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に
キャリアプランとは?
キャリアプランとは、仕事の目標やその達成に向けた計画のことです。たとえば「30歳までにリーダーに昇格し、40歳までに管理職に就く」「営業のスキルを身につけて、40歳までに独立する」といった内容が挙げられます。
人材が意欲的に働くには、明確なキャリアプランの設定が効果的です。また、具体的なキャリアプランがあると、企業の人材育成やキャリア形成支援などにも役立てられます。
キャリアパスとは?
キャリアパスとは、特定の役職、ポジション、職務に就くために必要なプロセスです。また、キャリアパスを明確にし、社内で制度化したものを「キャリアパス制度」と呼びます。たとえば「資格取得によりチームリーダーに任命される」「営業成績が90%以上、勤続年数が10年以上で部長に昇格できる」など、キャリアに関する条件や基準を明確化したものです。
キャリアパス制度は、社員が希望するキャリアを実現するための具体的な指針となります。積極的に仕事に取り組む社員が増え、自主性を身につけさせることが可能です。
採用後のキャリア開発にはシステム活用がおすすめ
キャリアシートを活用して自社にマッチする人材を採用したら、人材育成に取り組む必要があります。自社でより活躍できる人材になってもらうためです。それぞれの人材の現状を把握して的確な人材育成を実現しましょう。キャリアシートの内容は応募の時点における情報であるため、入社後の変化についても把握すべきです。
入社後に社員が身につけたスキルや経験を把握するには、タレントマネジメントシステムの活用が向いています。人事データを一元管理でき、効率的な人材育成の実現が可能です。また、データの分析により、今後の採用活動、最適配置、離職防止などにもつなげられます。
まとめ
キャリアシートを活用すれば、履歴書や職務経歴書だけでは分からない応募者の情報を把握できます。応募者のやる気や将来に対する希望なども感じられ、採用活動を成功させるために役立つ資料です。具体的な内容が客観的な視点で記載されているか確認しながら、応募者について理解を深めましょう。
タレントパレットは、社員情報を一元管理できる先進的なシステムです。大手企業を含む多数の導入実績があり、豊富なコンサルティング経験に基づいた機能設計が特徴です。社員の経験とスキルを適切に把握し、組織に貢献する人材を育成するために、ぜひタレントパレットの活用をご検討ください。