こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
ビジネスで使われているキャリアマップとは、「どのような道筋を経て昇進できるのか」を具体的に示したシステムであり、飲食店、サービス業、IT企業など様々な業界で取り入れられています。今回はキャリアマップの具体的な特徴から、実際に導入した際のメリットや活用事例をご紹介します。
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厚生労働省が示すキャリアマップとは?
キャリアマップとは、「職業評価基準」をもとに1から4までにレベル分けされた能力と、その能力を取得するための道筋を分かりやすく示したものです。厚生労働省のホームページによると、職業評価基準と各企業の資格等級制度のそれぞれのレベルを時間軸上に明示することにより、企業オリジナルのキャリアマップが作成できます。
キャリアマップでは、能力を獲得するための具体的な道筋や、それぞれのレベルを習得するために必要となる年数目安の把握が可能です。また、能力を高めてレベルアップするためのキーポイントとなる経験や実績、取得するべき資格や検定も記載されているため、キャリアアップへのイメージが掴みやすいのが特徴です。
キャリアとは?
「キャリア」という言葉は、近年ビジネスシーンでよく用いられます。一般的には仕事や経歴をキャリアといいますが、あらゆる場面で使われる言葉であるため他にも様々な意味を持っています。
キャリアは、就職や転職、昇進などだけでなく、働き方や生き方など継続的なプロセスも含みます。そのため、キャリアアップには知識や経験の蓄積に加えて、人間性を磨くことも大切です。
キャリアマップの目的とは?
そもそもなぜ人材育成にキャリアマップが必要なのかというと、社員が能力を高めてレベルアップする際の道筋を明確に示すことにより、モチベーションを高めるためです。「将来どのようにキャリア形成をしていくのか」が明確になるため、社員は自分がどのようなスキルや資格を取得するべきなのかを把握できます。
またキャリアマップの活用によって、上司と部下がキャリア形成について積極的にコミュニケーションを取ることができ、効率的にレベルアップを目指すことも可能です。
キャリアマップとキャリアパスの違いとは?
キャリアマップとよく似た言葉に「キャリアパス」があります。両者の大きな違いは、企業内での能力の高め方だけにとどまったデータであるかどうかという点です。キャリアマップは将来的なキャリア形成への道筋を表しているのに対し、キャリアパスは特定の企業内での昇進に特化した道筋を表しています。
キャリアパスでは「どうすれば昇進や昇格できるのか」といった疑問を解決するために、明確な基準や条件を表し、社員の指標とすることでモチベーションの向上が可能です。社員はやみくもに昇進や昇給を目指すのではなく、キャリアパスに従って能力を高めていくことで、早く確実に上の地位を目指せます。
キャリアマップのメリット
キャリアマップのメリットは、主に2つあります。ここでは、2つのメリットを解説します。
必要な専門知識や経験などを可視化できる
キャリアマップを活用すると、目標達成に必要な専門知識や経験などを可視化でき、ます。現在の自分の位置を把握できるだけでなく、今後必要な知識や経験も明確になります。例えば、販売員からチーフを目指すには、スタッフの指導や計数管理、販売促進などの経験が求められます。
ゴール設計に役立つ
キャリアマップは、目標を具体化し、ゴール設計に役立ちます。キャリアのステップが視覚的に整理されるため、進むべき道が明確になります。例えば、販売担当者が店長を目指す場合、販売業務を3〜4年、チーフを3〜4年経験すれば、店長を目指せるようになります。
職業能力評価基準について
キャリアマップを作成するにあたって必要なのが「職業能力評価基準」です。職業能力評価基準を用いれば、あらゆる業種で正確かつ明瞭なキャリアマップを作成可能です。
職業能力評価基準の概要や構成、レベル区分などについて詳しく説明します。
職業能力評価基準は、成果につながる知識や技術、行動の基準
職業能力評価基準とは、あらゆる業種や職務ごとに必要とされる知識や技術をはじめ、成果につながる行動例を指します。経理や人事などどのような業種でも必要とされる9個の職種をはじめ、ホテル業、在宅介護業など56業種に対してそれぞれの評価基準が用意されています。
厚生労働省のホームページには、初めてキャリアマップを取り入れる企業に向けた使い方、導入のヒント、各業種に適応したモデル評価シートも閲覧可能です。今後キャリアマップの導入を検討している方は、これらを厚生労働省のホームページからダウンロードし、参考にするとよいでしょう。
職業能力評価基準の構成
職業能力評価基準は、以下の6つのカテゴリーに細分化されています。
- 職種
- 職務
- 能力ユニット
- 能力細目
- 職務遂行のための基準
- 必要な知識
以下で、それぞれの項目について詳しく解説します。
1.職種
職種は、職務や作業の内容、特徴が似ている職業をまとめたものです。「営業」「商品開発」などが例として挙げられます。
2.職務
職務は、1人の労働者が最後まで責任を持って遂行すべき作業を指します。「検査」「溶接」「機械加工」などが例として挙げられます。
3.能力ユニット
能力ユニットは、仕事を効率的におこなうために必要な能力を活動単位ごとにまとめたものです。作業に必要な一般的な能力「共通能力ユニット」と、各職務特有の能力「選択能力ユニット」の2つに分けられます。
4.能力細目
能力細目は、能力ユニットを作業単位で細分化したものです。「企画・計画の立案」「担当業務の作業方法・手順の検討」などが該当します。
5.職務遂行のための基準
職務を遂行するための基準は、能力細目に従って作業を行えるかを判断するための行動例や、必要な技術・技能をリストにしたものです。「法令や職場のルール、慣行などを遵守している」「余裕がある場合には、周囲の忙しそうな人の仕事を手伝っている」などがリストアップの一例です。
6.必要な知識
必要な知識は、能力ユニットに対する職務を進めるために、前提として必要とされる知識を指します。「コミュニケーション能力」「顧客訪問時の手順」などが例として挙げられます。
職業能力評価基準のレベル区分
職業能力評価基準では、必要とされる能力や知識の難易度、重要度に応じて4つにレベル分けをおこなっています。レベル1は主に担当者に当てはまり、上司の指示や助言をもとに着実に業務をこなすのに必要とされる能力基準です。
レベル2は、主に係長や主任が当てはまります。プロジェクトメンバーやグループの中心人物となり、多岐にわたる工夫をしながら自主的に意見の発言や判断を下す際に必要とされる能力基準です。
レベル3は、主に課長やマネージャーが当てはまります。上層部の方針を踏まえながら利益を出すための工夫をおこなうのに必要な能力水準です。
レベル4は、企業において責任のあるポストや役割であり、本部長や部長が当てはまります。大規模の組織責任者や専門家として、全体の意思決定を実施し、企業利益に基づいて業務を遂行するのに必要な能力水準です。
職業能力評価基準のカスタマイズ
厚生労働省が公開している職業能力基準はそのままでも活用可能ですが、それぞれの企業でよりオリジナリティな内容として利用するためには、「自社版」としてのカスタマイズもおすすめです。
自社版としてカスタマイズするためのポイントは、以下のとおりです。
- 職務や能力ユニットの削除
- 職務や能力ユニットの追加
- 職務や能力ユニットの組みかえ
- レベル区分・段階の調整
例えば、公開されている職業能力評価基準を参照した時に、自社には存在しない作業や能力があった場合は削除し、逆に必要な作業や能力が記述されていない場合は追加します。
また、自社の職務分担の形に合わせて職務や能力ユニットを自由に組みかえ、本来4段階に分けられているレベル区分を調整するなども可能です。
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キャリアマップ以外の活用ツール
職業能力評価基準は、キャリアマップと合わせて活用できます。また、職業能力評価基準を軸にした人材育成システムとしての応用やモデル評価シートやモデルカリキュラムとしても利用可能で、採用や人事評価のシーンでも活用できるのが特徴です。
職業能力評価基準にキャリアマップ以外の活用ツールについて詳しく解説します。
職業能力評価シート
職業能力シートとは、「職業能力評価基準」をもとに抽出したそれぞれの職種やレベル別に定められた「職務遂行をおこなうための基準」をチェックするシートです。チェック方式のシートを用いることによって、「自分や部下の能力はどの程度なのか」や「もう一つ上のレベルに上がるため不足しているものは何か」などが明確に分かります。
チェックシートにより、充実しているところと不足しているところを自分と上司が判断できるため、能力を高めるためのコミュニケーションもスムーズに進むでしょう。社員ひとりひとりの強みや弱みを本人以外のほかの社員も把握できることにより、組織全体の改善点や問題点も明確に見えてきます。
モデル評価シート
モデル評価シートの概要の前に、モデル評価シートと深い関係にあるジョブ・カード制度について説明します。ジョブ・カード制度とは、社員をはじめ、求職者や学生など幅広いジャンルの人々のキャリアを形成するための能力証明カードです。自分が持つ能力をチェックシート方式にして明示することにより、職業能力開発や求職活動に非常に役立ちます。
モデル評価シートとは、ジョブ・カード制度を用いて職業訓練をおこなう企業向けのチェックシートです。その人材が持っている能力を把握するとともに、不足している部分に対して研修や面談、資格取得支援などのアプローチをおこないます。
キャリアマップを活用した職業能力評価基準の導入手順
キャリアマップを活用して職業能力評価基準を取り入れることで、企業における人材育成に役立つでしょう。実際にキャリアマップを導入する際に必要な手順は、以下のとおりです。
- 導入の目的を明確にする
- 自社版にアレンジする
- レベルを設定する
- 現場の意見を取り入れる
4つの導入手順について詳しく説明します。
導入の目的を明確にする
まずは導入目的を明確にしておく必要があります。明確な目的がなくても導入は可能ですが、目に見える効果が出ない可能性があるでしょう。また社員、人事部ともにキャリアマップの導入で混乱を引き起こしてしまう可能性もあります。
自社の人材育成における現状や課題を分析し、何のためにキャリアマップや職業能力評価基準を導入するべきなのか把握した上で導入しましょう。目的の明確化により、社員が「具体的に何をすればキャリアのアップにつながるのか」を意識できるため、意欲向上を促し、結果的に企業成長へとつながっていきます。
自社版にアレンジし、設計する
厚生労働省が公開している職業能力評価基準はそのままでも使えますが、、職業や職務によっては足りていない項目や不必要な項目が出てくるケースもあるでしょう。そこで職業能力評価基準をそれぞれの企業に合った形式、内容にアレンジすれば、自社に適したオンリーワンのキャリアマップが作成できます。
まずは全ての項目を確認し、必要のない項目を削除する作業から進めていきましょう。その後、不足していると思われる項目を追加し、必要があれば項目やレベルの増減や組みかえも実施します。
レベルを設定する
職業能力評価基準やキャリアマップを用いる際には、誰もが一目見て内容を理解できる必要があります。例えば「◯年間勤めたらレベル◯に昇格する」など、経験年次ごとにレベルが上がっていく仕組みにすると分かりやすいでしょう。
また人材育成システムに関しては公正公平でなければならないため、誰もが納得できるレベル設定も必要です。あまりにも高いレベル設定にしてしまうと、昇進が期待できずに社員のモチベーションが下がってしまいます。場合によっては、既存の職業能力評価基準と大きく変わるレベル設定が必要になる可能性もあるでしょう。
現場の意見を取り入れる
キャリアマップや職業能力評価基準を導入する際に重要になるのが、現場の声です。人事部や上層部のみで制度を構築すれば、現場とキャリアマップの内容に差が生じるでしょう。現場ではどのような問題が起こっているのか、どうすれば改善できるのかなどを事前にヒアリングするとキャリアマップに取り入れやすいです。
現場の意見を取り入れることによってキャリアマップを有効活用でき、社員の生産性も上がって企業成長にもつながるでしょう。
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キャリアマップの活用事例
厚生労働省は、様々なキャリアマップの活用事例を公開しています。キャリアマップは、自分のレベルや企業が求める能力を明確にすることにより、求人や転職にも活用可能です。また方向性における会社と社員のマッチングにも活用でき、キャリアマップの使い道は多岐にわたります。
そこで、各業種でのキャリアマップの活用事例を紹介します。
スーパーマーケット業
食品スーパーマーケット業を展開する企業では、若手社員育成を目的として、新卒入社する正社員に向けたキャリアマップを作成しています。キャリアマップ作成時には、企業独自の項目の追加や階層設定の修正をおこなっているのが特徴です。
結果として、どの階層の社員にとっても「何をすれば上に上がれるのか」が明確になったと喜びの声が挙がっているそうです。
ホテル業
ホテル業界の企業でもキャリアマップが導入されています。ホテル業以外にも、食品メーカーへの卸売業も運営する企業であり、社員の職務遂行能力や知識の量や正確さを把握するためにキャリアマップを導入しました。実際に取り入れた結果として、一部では高い数値が出ているものの、ほかの部門に関しては今後改善が必要であることが判明したそうです。
このように、社員の能力を確かめるだけではなく、企業全体の問題点をも抽出可能な点がキャリアマップの強みといえるでしょう。
まとめ
厚生労働省が整理し公開した職業能力評価基準を用いて、企業独自のキャリアマップを作成可能です。初めてキャリアマップを導入する際には、導入の目的を明確にし、現場の意見をヒアリングした上でシステムを整えていく必要があります。
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