こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
自ら設定したキャリアプランに必要なスキル・知識を身に付けることを「キャリア形成」といいます。テクノロジーの進化や働き方改革により刻々と変化する社会において、企業が事業活動を維持するためには、従業員が自発的にキャリア形成することが大切です。
こうした背景もあり、従業員のキャリア形成をサポートする企業が増えています。しかし、どのように対応すべきか分からない方も多いでしょう。
組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、本記事ではキャリア形成の概要や必要とされる背景、メリットなどを解説します。従業員のキャリア形成をサポートし、企業全体のレベルアップを図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア形成とは?
従業員自身が計画したキャリアプランをもとに、必要なスキルや知識を身に付けることを「キャリア形成」といいます。「キャリア」には過去から未来にわたって、継続的に積み重ねた職務経験という意味があり、その語源は「轍(わだち)」です。つまり、経験値を上げるために歩んだ軌跡こそがキャリアといえます。
従来の企業では、上司の指示通りにキャリアを積み重ねるケースが一般的でした。しかし、近年は働き方が多様化し、従業員が主体的にキャリアプランを立てる傾向にあります。キャリア形成はビジネスでよく使われる言葉ですが、仕事だけでなく人生そのものを考えたときに、将来どのような自分になっていたいかを考えることも大切です。
キャリア形成の目的
キャリア形成の大きな目的は、キャリアプランを実現するために今やるべき行動を明確にすることです。仕事に対する考え方を見直し、働くこと自体に価値を見出せるようになると、自分自身で未来を開拓する力を身に付けられます。
その結果、スムーズになりたい自分に近付けるほか、より適した職種を選べるようになるでしょう。
未来に向けて長い職業人生を歩む中で、壁にぶつかることも少なくありません。キャリア形成ができていなければ、その都度進むべき道に迷ってしまい、目指す理想像にたどり着けない可能性があります。こうしたリスクを回避するためにも、キャリア形成は重要なプロセスです。
キャリア形成が必要とされる背景・理由
キャリア形成は、近年一層注目を集めています。その背景や理由として挙げられるのが、「社会・環境の変化」と「個人の意識変化」です。それぞれの変化について詳しく解説します。
日本の雇用制度・社会・環境の変化
従来の日本の企業では、企業側から解雇することのない終身雇用制度を採用しているケースが一般的でした。また、年齢に応じて給与や役職が上がっていく年功序列も、終身雇用制度と同様に日本雇用制度の根幹といわれていました。
しかし、近年はこうした古い体制が崩壊しつつあります。テクノロジーの進化や働き方改革、グローバル化などに伴いビジネスのスピードが進化する中で、即戦力となる人材が不可欠です。雇用される側にも、自発的なキャリアアップが求められます。
副業や兼業が認められるようになった点も、キャリア形成が注目される理由です。最近では、多様な選択肢の中から働き方を選べるようになりました。将来の計画を立てる上でも、キャリア形成が必要とされています。
個人の意識変化
社会や環境の変化だけでなく、個人の意識が変わってきていることもキャリア形成が重視される背景といえます。内閣府でも「仕事と生活の調和」を推進しているように、近年はワークライフバランスの重要性が注目されるようになりました。
実際に、仕事よりも生活や趣味を重視するケースが増えており、キャリア形成もライフスタイルに合わせて考えていく傾向にあります。
従来は「定年=キャリアのゴール」と考える人が多くいましたが、人生100年時代といわれる現代でその考え方では適応できません。キャリア形成を企業に依存するのではなく、自分自身で開拓し、働き方を選択する必要があります。
こうした個人の意識変化もキャリア形成が注目される理由といえるでしょう。
働き方の多様化
従来は「定年=キャリアのゴール」と考える人が多くいましたが、人生100年時代といわれる現代でその考え方では適応できません。キャリア形成を企業に依存するのではなく、自分自身で開拓し、働き方を選択する必要があります。
こうした個人の意識変化や働き方の多様化も、キャリア形成が注目される理由といえるでしょう。
国も推進「キャリア形成促進プログラム」
キャリア形成の重要性が高まるなか、国は2019年4月から「キャリア形成促進プログラム」による積極的な支援を行っています。このプログラムは、専修学校の専門課程または特別な課程において、職業に必要な実践的かつ専門的な能力を育成する教育プログラムを、文部科学大臣が認定する制度です。認定された課程の多くは教育訓練給付金の対象となり、最大で受講費用の70%が支給されます。金銭的な支援が得られるだけでなく、社会人が受講しやすい工夫された時間や時期・場所などの配慮もされている点が特徴です。
キャリア形成によるメリットとは何か?
従業員がキャリア形成を行うことで、企業も様々なメリットを得られます。どのようなメリットがあるか理解しておくと、キャリア形成をサポートする上で参考になるでしょう。続いては、企業と社員それぞれが得られるメリットとは何かを解説します。
社員のメリット
キャリア形成による社員の主なメリットは、以下の3つです。
自分が望む未来を明確にできる
日々の業務に追われていると、社員は自分のキャリアの方向性を見失いがちです。しかし、意識的にキャリア形成に取り組むことで、職業人生を通じて実現したい未来像を具体的に描くことができます。将来の目標が明確になれば、それを達成するために取るべき行動も自ずと見えてくるものです。複数の選択肢で迷った際も、描いた未来像と照らし合わせることで、より適切な判断を下せるようになります。
スキルや意識を高められる
企業全体が成長していくためには、従業員のスキルや意識の向上が欠かせません。しかし、企業側がキャリア形成を命じても、従業員は「やらされている」という感覚に陥りやすく、モチベーションを保ちづらいでしょう。
一方で、従業員が主体的に行うキャリア形成では、自身が立てたキャリアアップに沿って行動を起こします。自分が望む未来に向けた行動であり、意欲を持ってチャレンジできるでしょう。同時にスキルアップも図れるため、その分生産性の向上も期待できます。
自分の強みや役割を認識できる
社員がキャリア形成に取り組むことは、自分を客観的に分析するきっかけになります。弱みは、ミスやトラブルから気付きやすいものの、なぜ成果を上げられているのか、どういった点が評価されているのかといった強みの分析は後回しになりがちです。キャリア形成を通して、社員が自身の適性や得意分野を把握でき、組織のなかでの自分が提供できる価値や担う役割を考えることができます。
企業のメリット
キャリア形成による企業の主なメリットは、以下の6つです。
企業全体の成長になる
各従業員が自主的にキャリアアップに向けた学びや行動をするようになると、企業全体の底上げが可能です。
キャリア形成により、一人ひとりが明確なキャリアプランを描いた結果、自分がすべき業務や習得すべきスキルを見定められます。その結果、率先して業務やスキルアップに取り組めるようになり、企業全体のレベル向上によい影響を与えるでしょう。
加えて、モチベーションが高く仕事に対して前向きな考えを持つ従業員が増えると、企業の活性化にもつながります。良好なチームワーク体制が構築され、問題や課題が生じても互いにサポートし合いながら乗り越えられるようになるでしょう。
仕事の生産性や効率アップにつながる
キャリアアップを目指してキャリア形成をすると、従業員自身が自分の特性に合う業務を把握できるようになります。その結果、企業側も適切な人員配置が可能です。
各従業員が自分のスキルを発揮しやすい業務を担当すると、仕事の生産性が上がります。その結果、上司から高く評価され、モチベーションアップにつながるでしょう。誰もが自発的に行動するようになるとコミュニケーションも活発化するため、チーム間での作業効率の向上も期待できます。
自主性の育成につながる
キャリア形成をすると、目標に向かってどのような行動を取るべきか明確になります。闇雲に進めると、本来すべき行動が分からなくなるばかりか、将来像すら曖昧になってしまうでしょう。
一方で進むべき道がはっきりしていれば、途中で壁にぶつかっても、計画を見直しつつ自分自身で軌道修正が可能になります。
従来は、従業員のキャリアアップに向けたマネジメントを、企業が行うケースが一般的でした。しかしキャリア形成は従業員が自ら管理するため、自主性を育成することにつながります。その結果、従業員全体のレベルが上がり、強固な企業へと成長できるでしょう。
企業価値を向上できる
従業員がキャリアプランを考える際、自分に求める役割を踏まえて検討する必要があります。そのためには、企業理念や企業が向かう道をしっかり把握しなければなりません。
その結果、従業員の企業に対する理解が深まり、エンゲージメント向上が期待できます。また自分の行動が、企業の成長にも大きく影響していることがイメージできるようになるため、企業への貢献意欲も上がるでしょう。
このように従業員と企業の関係性が強固になると、優秀な人材が離職しにくくなります。さらには収益性や生産性が上がりやすい環境づくりにつながり、企業価値の向上にもつながるでしょう。
人材育成|タレントマネジメントシステムなら「タレントパレット」
人材開発支援助成金の制度を利用できる
従業員のキャリア形成を促す場合、「人材開発支援助成金」を受け取れる点もメリットの一つです。以前は「キャリア形成促進助成金」という名称でしたが、2017年から現名称に変更されました。
企業が従業員に対して、職務に関係する専門的な知識やスキルを習得させるための訓練を行う際の、費用や訓練中の賃金を一部助成する制度です。
7つのコースが設けられており、そのうち「人材育成支援コース」では、職務に必要な知識や技能を学ぶためのOFF-JT(職場外研修)を、10時間以上実施した際に助成されます。
いずれのコースも、将来にわたり自分のスキルを存分に発揮できる人材を育てることを目標としており、プランに沿った訓練の実施を前提とした助成金です。
従業員のキャリア形成だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な経営課題と向き合えます。
・あらゆる人事情報を一元集約
・人材の見える化で埋もれた人材を発掘
・AIシミュレーションで最適配置を実現
・簡単操作で高度な人事分析が可能
キャリア形成で必要な5つのスキル
キャリア形成をするにあたって必要なスキルとして、以下の5つが挙げられます。
・自分の状況を客観視するスキル
・自分の課題を解決するスキル
・計画に沿って実行するスキル
・スキルをブラッシュアップするスキル
・自分の将来を推測するスキル
それぞれのスキルについて、以下で解説します。
自分の状況を客観視するスキル
自分の状況を客観視できなければ、正しいキャリア形成に進めません。闇雲にキャリアを築いても、途中で挫折する可能性があるでしょう。
自分の課題を解決するスキル
キャリアアップをする過程には、様々な課題が立ちはだかります。目標達成を目指しつつ課題を解決するスキルも必要です。
計画に沿って実行するスキル
客観視した上でプランを立てたとしても、実行するスキルがなければ、望み通りのキャリアを築くことは困難です。そのため、プランに沿って実行するスキルも求められます。
スキルをブラッシュアップするスキル
難易度の高い課題に挑む際には、スキルをブラッシュアップする力も必要でしょう。努力を惜しまず、一歩一歩高みを目指す意欲が大切です。
自分の将来を推測するスキル
後悔のないプランを立てるためには、現状だけを見ていてもうまく行きません。社会情勢や自分の将来像、ライフスタイルなど多角的な視点を持って将来を推測する力も必要です。
キャリア形成の手順
キャリア形成は段階的に進めていくと効果的です。具体的な手順を4段階に分けて解説します。
1.自己理解を深める
現在の自分を正確に把握することは、キャリア形成の第一歩になります。社員には、「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(やるべきこと)」という、3つの観点から自己分析を行わせると効果的です。自分の価値観や興味、得意分野、現在のスキルレベル、周囲から期待されている役割などを丁寧に見つめ直すことで、今後の方向性を定める基盤を作れます。
2.理想の姿・目標を具体的に設定する
自己理解をベースに、社員が将来目指したい姿を具体的にイメージしてもらいます。漠然とした目標では実現が難しいため、「いつまでに」「どんな立場で」「何をしている」状態を目指すのかを、できるだけ詳しく描くことが大切です。身近な先輩や業界で活躍する人物をロールモデルとして参考にすることで、より具体的な目標設定が可能になります。
3.プランを立てる
目標が決まったら、それを実現するための具体的な行動計画を立てましょう。必要なスキルや資格、経験を洗い出し、それらをいつまでに、どのような方法で獲得していくかを時系列で整理します。大きな目標をいくつかの小さな目標に分割し、達成可能な形にすることがポイントです。
4.実行・見直しをする
立てたプランに基づいて具体的な行動を開始します。ただし、すべてが計画通りに進むとは限りません。目標達成が思うように進んでいない場合は、軌道修正することも必要です。また、環境の変化や新たな経験を通じて価値観が変化することもあります。最初に立てた計画に固執せず、現状に即して柔軟に修正を加えながら、着実に社員のキャリア形成をしていきましょう。
年代別のキャリア形成具体例
キャリア形成の方向性は、年代によって異なります。ここでは、各年代に応じた効果的なキャリア形成の進め方を解説します。
20代のキャリア形成
20代は、社会人としての基礎を築く重要な時期です。若さと時間を活かし、挑戦や経験を積むことがポイントになります。たとえば、裁量の大きなプロジェクトに携わることで、プロジェクト管理やリーダーシップのスキルを早期に習得できます。また、上司や先輩との良好な関係を築くことで、的確なフィードバックを得ながら、自身の強みや適性を見極めていくことも大切です。
30代のキャリア形成
30代は、キャリアの中盤に差し掛かる時期です。専門技術の習得やマネジメント経験を積むことが重要になります。中間管理職として部下の育成に携わりながら、組織での目標達成を目指すポジションです。また、この時期は出産・育児といったライフステージの変化が起きやすいため、ワークライフバランスを考慮したキャリアプランを立てるとよいでしょう。
40代のキャリア形成
40代は、次期経営層へのステップアップが視野に入ってくる時期です。戦略的思考や意思決定力を磨き、ビジネス会計や経営戦略に関する知識を習得します。社内外の人脈形成にも注力し、業界関係者や異業種の経営者との交流を深めることが重要です。一方で、自身のキャリアを見つめ直す時期でもあるため、必要に応じて新たなスキル習得に取り組むのもよいでしょう。
50代のキャリア形成
50代は、豊富な経験を活かしながら、定年後を見据えた準備を始める時期です。リスキリングとして新しい技術や知識を習得したり、これまでの経験を活かしたコンサルタントやアドバイザーとしての道を模索したりします。また、若手社員への指導・育成役として、自身の知識や経験を次世代に継承していく重要な役割も担います。
キャリア形成のために企業ができる支援方法とポイント
従業員がキャリア形成をするにあたって、どのようなサポートができるか悩む方も多いでしょう。キャリア形成のために企業ができる支援とは何か詳しく解説します。
企業側がキャリア形成の重要性を理解する
キャリア形成は、個人の課題というよりも企業全体で取り組むべき課題です。社員の成長を支援することは、企業の持続的な発展にもつながります。特に、マネジメント層の理解と協力が不可欠となります。たとえば、直属の上司がキャリア形成の重要性を理解していないと、部下は必要な行動を起こしにくいでしょう。目の前の業務遂行だけを重視し、長期的な視点での人材育成がおろそかになってしまうケースもあります。企業としてキャリア支援制度を整備すると同時に、研修や教育といったマネジメント層の理解を深める機会を設けましょう。企業全体でキャリア形成の重要性を共有し、社員の成長を支援できる環境づくりを進めることが大切です。
支援に前向きであることを周知する
キャリア形成のサポートを積極的に実施していても、従業員が認知していなければ、効果的に活用できません。そのため、企業側がスキルアップやキャリア形成について、前向きに支援していることを周知する必要があります。
また単にサポートするのではなく、自社の方針とマッチする支援を行うことも重要です。自社の業務に必要な人材を洗い出し、有効なサポート方法を検討した上で従業員に伝えましょう。事業内容やビジネス環境が変わると、必要な人材の特性が変わる可能性があるため、定期的な見直しも大切です。
キャリア教育に社外セミナーも積極的に取り入れる
加速化するテクノロジーの進化や働き方の多様化により、自社だけではサポートしきれない可能性があります。より時代に即したキャリア形成の支援を行うためにも、社外セミナーを積極的に積極的に取り入れましょう。
中には社外セミナーの活用によって自社以外の魅力を知り、転職を希望する従業員が増えることを不安視する経営者もいます。しかし、広い視野により自社の仕事に対する魅力を、再確認する方も少なくありません。
また、社外の視点から自社業務を確認することで、これまで抱えてきた課題を解決するアイデアにつながるケースもあります。こうしたメリットを踏まえて、社外で学ぶ機会の提供を前向きに検討することをおすすめします。
相談しやすい環境を整える
従来は企業が主体となって、従業員のキャリア形成を行うケースが一般的でした。そのため、自発的に行動することに戸惑う従業員もいます。
誰もがスムーズにキャリア形成を行えるように、企業側は相談しやすい環境を整えることが大切です。例えば上司と相談できる機会を頻繁に設けたり、気軽に相談できる窓口を設置したりといった方法が挙げられます。
ただしあくまでもサポートであり、企業が主導権を握らないように注意しなければなりません。従業員が自分で考えながらキャリア形成ができるように、助言する程度にしましょう。
異動や職種転換の機会も与える
キャリア形成のために企業ができるサポートの一例が、配置転換の機会をつくることです。キャリア形成を進めると、従業員が自分に見合った業務を見出せるようになります。企業は従業員の意向を尊重し、必要であれば異動や職種転換を行いましょう。
ポイントとなるのは、従業員のニーズに沿った柔軟な対応です。配置転換を決定する前に、従業員との面談を実施して慎重にヒアリングをしましょう。
まとめ
キャリア形成は、従業員自身がキャリアアップを目指しやすくなるだけでなく、企業の生産性や企業価値の向上にもつながります。また変化の激しい現代において、企業が事業活動を継続する上でも大切なことです。
従来は企業側が主体となり、キャリア形成をするケースが一般的だったため、従業員が主体となることに慣れない経営者も多いでしょう。ポイントは従業員の現状や目標を理解した上で、あくまでサポートすることです。
「タレントパレット」とは様々な人材データを一元管理・分析して、経営力を上げるためのマネジメントシステムです。人事業務の効率化だけでなく、キャリア形成や従業員のスキルアップに貢献するシステムであり、企業価値の向上と業務効率化にも役立ちます。
従業員のキャリア形成支援を検討している経営者や人事担当者の方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。