ケイパビリティの意味とは?活用するメリットや分析方法などを解説


ケイパビリティの意味とは?活用するメリットや分析方法などを解説

新しいテクノロジーやビジネスモデルの登場により、ビジネス社会は大きく変化しています。変化の激しい今、企業はケイパビリティを強化することが求められています。

今回は、ケイパビリティの意味を説明し、活用のメリットや分析方法まで詳しく解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

新しいテクノロジーやビジネスモデルの登場により、ビジネス社会は大きく変化しています。このような変化の激しい現代では、企業は常に最新の技術やトレンドに対応して、自社のケイパビリティを高めることが求められています。

今回は、ケイパビリティの意味を説明して、活用のメリットや分析方法まで詳しく解説します。ケイパビリティを意識した人材強化を検討中の経営者や人事担当者は、本記事を参考にしてみてください。

経営におけるケイパビリティの意味とは


一般に、ケイパビリティは日本語で能力・才能といった意味があります。ビジネス領域で使用される場合には、個人の能力ではなく企業の能力に対して使われます。

経営学用語としての「ケイパビリティ」とは、企業全体が持つ能力や優位性のことです。企業が強みとして持っている力は、営業力やマーケティング力、生産力など、企業によってさまざまです。

例えば、営業力をケイパビリティとしている企業では、営業部門全体が顧客と長期的な接点を持つ仕組みがあり、徹底したアフターフォローのオペレーションが整っているといった強みがあります。この時、成果が出せる営業マンがいるから自社の長所は営業力だ、といった考え方はできません。なぜなら、個の力からは企業としての能力ではないためです。

このように、企業が組織として他社より強みを持つ部分をケイパビリティといいます。

ケイパビリティが注目されるようになった背景

近年、ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。新型コロナウイルスの影響で働き方が変わったり、最新のAI技術が発表されたりなど、従来の方法で事業活動を行っていくことが困難となる事態に直面する企業も多くなりました。

企業はこれからも事業を続けていくために、より一層組織力を上げて、他社より優位性を保つ必要があります。そういった状況で注目されるのが、企業のケイパビリティです。景気の要因で左右される優位性では、先が不透明なVUCA時代を生き残っていけません。

事業内容や価格設定、差別化を図るポイントだけでなく、これまでの業務フローや組織体制から見直しを行い、プロジェクトの上流から下流まで俯瞰して、自社の強みを見出していくことが求められています。特筆した技術力や信頼できる対応といった自社特有のセールスポイントを武器にしてグローバル化する社会のなかで戦っていく力が必要です。

コアコンピタンスとの相違点

ケイパビリティと似た言葉に「コアコンピタンス」という言葉があります。どちらも企業の持つ能力を指す言葉ですが、意味は異なります。

ケイパビリティが企業の組織的な能力を指す一方で、コアコンピタンスとは、企業が持つ技術力・製造能力など一部の能力のことです。企業全体ではなく、企業の中核となる特定の能力を指します。

コアコンピタンスは、企業の持つ6つの資源(人、物、金、情報、時間、知的財産)から導き出されています。それは具体的に、顧客に利益をもたらすものであることかつ、競合他社が真似できない、他の商品や分野にも応用できるようなものである必要があります。この能力があれば、市場で優位に立てるといったものをコアコンピタンスとして定義しています。

ケイパビリティとコアコンピタンスは相互に必要な概念であり、どちらかが欠けていては企業として成り立ちません。そのため、どちらも言葉の意味を理解しておくことが重要です。

関連記事:コアコンピタンスとは何のこと?自社のコアコンピタンスを見つける方法を紹介

ケイパビリティを活用した企業の事例

ケイパビリティを正しく理解するために、いくつか他社の事例を紹介します。

まずはiPhoneを販売するアップルの事例です。アップルでは、世界各国の販売網をケイパビリティとして確立しました。自社の販売店を各国にオープンさせることはコストがかかり、とはいえ家電量販店で販売するだけでは自社のブランドがアピールできません。そこで、直営店を各地に展開する手法をとって、コストをかけずにブランド価値を守ることに成功しています。

星野リゾートでは、IT化に力を入れて時代の変化に対応したケイパビリティを確立しています。2020年に新型コロナウイルスの影響で売り上げが激変し、組織の再構築を進めていました。具体的には、予約システムを一つの大きなアプリケーションに統合したり、自社でエンジニアを採用して体制を整えたりなどして、これからのIT時代に対応した組織づくり戦略を行なっています。

最後にホンダでは、優れた技術力というコアコンピタンスと同時に、ディーラー管理というケイパビリティを持っています。各地域で店舗経営を行うディーラーに徹底した研修を行って、営業・サービス手法や店舗のレイアウト方法に至るまで、さまざまなノウハウを伝授し、企業全体としてクオリティの高いサービスを実現しています。

関連記事:ケイパビリティとは?企業におけるメリットや活用方法を解説

ケイパビリティを活用するメリットとデメリットとは

ケイパビリティは、企業が市場で優位性を確立するために重要な概念です。自社の優れた点を明確に把握しておくことには、さまざまな利点があります。一方で、アドバンテージを確立していくうえで難しい側面もあります。

メリット・デメリットの両側面を把握し、事業の運営に正しく活用していきましょう。以下で、ケイパビリティを活用するメリットとデメリットをそれぞれ説明します。

ケイパビリティを活用するメリット

活用するメリットとして、「競合と差別化できること」と「事業の持続性が上がること」の2点が挙げられます。

まず、ケイパビリティは組織を運営していくうえで確立した強みであり、競合他社が簡単に模倣できるものではありません。そのため、組織全体の仕組みとしての優位性は、大きな差別化につながります。

持続性の向上というメリットも同様に、一度高められた特色の強さによって地位が簡単に変わらないことから生まれます。企業が長く運営していくための土台として、組織力は大きな役割を果たします。

ケイパビリティを活用するデメリット

反対にデメリットとしては、「結果が反映されるまでに時間がかかること」と「流れを見極める力が必要であること」の2点が挙げられます。

ケイパビリティは、組織の仕組みづくりだけでなく人材力で確立されていくものです。そのため、一朝一夕に出来上がるものではなく、長い時間をかけて育成する必要があります。

また、市場や社会情勢は時代によって大きく変化します。周囲に合わせて柔軟に変化していかないと生き残れないビジネスも多く存在するため、取り柄も外部要因に合わせて変化させていくことが大切です。

ケイパビリティを活用したビジネス戦略

企業がケイパビリティを活用するために、「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と「ダイナミック・ケイパビリティ戦略」の2つの考え方があります。

ケイパビリティ・ベース競争戦略とは企業が持つケイパビリティを活用して競争優位性を獲得する戦略であり、ダイナミック・ケイパビリティ戦略は企業が環境変化に適応するためのフレームワークです。

以下で、それぞれ詳しく説明します。

1:ケイパビリティ・ベース競争戦略

ケイパビリティ・ベース競争戦略は、企業の強みを活かして優位性の獲得を目指すことが目的です。「ビジネスプロセスを重視」「主要なビジネスプロセスを変換」「部門間のインフラを整備」「トップの推進」といった、4つの原則を基本としています。

まず「ビジネスプロセスを重視」とは、戦略を考える際に市場や商品力ではなく、組織の体制やプロセスといった組織力を最も重視することを指します。そのうえで、「主要なビジネスプロセスを変換」にて、限られた経営資源を有効活用するために、主要なビジネスプロセスに注目することが大切です。

「部門間のインフラを整備」のステップでは、組織の推進を邪魔しないように、部門間を結び付けるインフラを整える必要があります。さらに「トップの推進」にて、ケイパビリティ戦略はトップが推進することを唱えています。

ケイパビリティの確立には組織全体の体制を構築することが重要なため、組織全体を動かす力のある経営陣が積極的に推進することが最も重要です。

2:ダイナミック・ケイパビリティ戦略

ダイナミック・ケイパビリティ戦略は、企業が環境に適応することを重視し、企業自ら変革していくことで競争優位性を獲得することを目的としています。「センシング(感知)」「シージング(補足)」「トランスフォーミング(変革)」の3つを軸として、企業の内部要因だけでなく、顧客や取引先といった外部要因も含めて考えることが特徴です。

具体的な戦略としては次のとおりです。まず「センシング(感知)」にて、市場や競合他社の動向を常に監視します。環境の変化を敏感に察知することが重要です。さまざまな変化に対応するために、「シージング(捕捉)」にて新たな機会を捕捉します。必要に応じて、新たな市場や技術を開拓することがポイントです。

さらに環境に適応するために、企業自体が組織体制といったこれまでのやり方を変えていく「トランスフォーミング(変革)」を行います。組織の柔軟性を高め、新たなケイパビリティを獲得することが目的です。

ダイナミック・ケイパビリティ戦略を活用して、デジタル化社会の急激な変化に対応して、長期的に存続する組織体制を整えることができます。

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企業独自のケイパビリティを見出す方法

ケイパビリティは、企業の優位性を保ち、長く存続する組織に改革するために重要な要素です。もし自社の利点が明確でない場合には、どのようにケイパビリティを見出せばいいのでしょうか。

強みを発見する方法として、「バリューチェーン分析」と「SWOT分析」の2つが挙げられます。それぞれ詳しく説明します。

バリューチェーンを分析する

バリューチェーンとは、商品・サービスなどが顧客に提供されるまでのさまざまな活動を機能ごとに分けて、付加価値が生まれる場所を見出すためのフレームワークです。バリューチェーンを分析することによって、企業の強みが分かります。

具体的には、事業の主活動となる購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスのほか、事業を行ううえでの全体管理や人事労務管理、技術開発、調達活動といったバックオフィスについても併せてすべての活動を洗い出し、それぞれ領域において競合優位性を分析します。

事業の全容を改めて書き出すことで、自社の製造工程においてベテランの作業員が多いことや、販売において独自のネットワークを築いていることなど、さまざまな強みに気づくことができるでしょう。

こうして出てきた強みを俯瞰してみることで、自社特有のケイパビリティが見出せます。直接的に売上に関わらない部門についても分析することで、別の業績への貢献度や自社が外部から評価されているポイントに改めて気づくことができ、経営全体を見直す良い機会にもなるでしょう。

SWOT分析を実施する

SWOT分析とは、自社の内部環境ならびに外部環境を、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素で分析する手法です。自社を取り巻く周囲の環境を把握することで、自社の立ち位置が明確になり、具体的な有利性を見つけることが可能になります。

まずは内部要因として、自社の強みと弱みを洗い出します。強みとしては、優れた技術力や高いブランド力、優秀な人材などが挙げられるでしょう。一方で、弱みとしては技術力の不足、ブランド力の低下、人材不足などが考えられます。項目を洗い出したら、それらが現状のどのような経営資源や組織体制に基づいているかを分析してください。

外部要因では、機会の分析と脅威の分析を行います。自社が持つ強みを活かすことができる外部の機会と自社が持つ強みを脅かす要因を洗い出します。

これらの4要素を相対的に評価することで、顧客や市場に評価されるポイントが見出せます。

企業のケイパビリティを強化する方法とは

さまざまな手法を利用して、自社だけのケイパビリティが確認できます。それでは、確立した利点をさらに高めていくためには、企業としてどのような動きをするべきでしょうか。

以下に、企業のケイパビリティを強化するための3つの方法を解説します。それぞれのステップを見直し、組織力向上のための参考にしてみてください。

方法1:独自のケイパビリティを定義する

まず、自社のケイパビリティを把握することから始める必要があります。

ケイパビリティとは、企業が持つ組織的な能力であり、競合他社に真似されにくいものです。企業は、企業の分析を行って、自社が持つ独自の強みを明確にし、それを活かす戦略を立てることが必要です。

前述したような「バリューチェーン分析」や「SWOT分析」といったフレームワークを活用して、自社だからこその強みとして活きるケイパビリティを見出し、明確に定義しておきましょう。

方法2:体制を見直す

方法1にてケイパビリティの方向性が決まった後は、それに沿って社内の体制を見直す必要があります。

企業は、組織体制を見直すことで、ケイパビリティを強めることができます。例えば、部門間の連携を強化したり、製造力を継承する人材を配置したりするなどが挙げられます。また、流動性の高い組織とすることで、柔軟性を高め、環境変化に適応できることも期待できます。

現状把握から、社内の状況を見直すことで、必要な人材配置を検討するといった的確な行動が取れるでしょう。

方法3:人材育成に力を入れる

事業内容や経営資源ではなく、組織の活動を支えているものは人材力です。毎日現場を動かしている人材をサポートすることで、より組織力を強化したケイパビリティが期待できます。企業は人材力強化のために、経済研修制度や勉強に対する支援など、知識を深めるサポートを行う必要があります。

企業が積極的に従業員のスキルアップやキャリアアップの支援を行うことで、従業員の帰属意識や積極性を育てることができます。これにより組織全体が活性化したり、時代に先んじた技術力が手に入ったりなど、新たなケイパビリティを獲得することにつながります。

関連記事:人材育成の手法にはどんなものがある? 一覧とそれぞれの特徴を紹介

まとめ


ケイパビリティは、企業が市場で戦っていける強みです。正しく特長を把握することで、長期的に生き残る企業となったり、時代の変化に柔軟に対応した企業となったりすることが期待できます。

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