こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
経営戦略は、企業の成長や事業の拡大、収益アップに欠かせません。この記事では、経営戦略を成功させた企業の事例を中心に、経営戦略の重要性を解説します。競争の激しい業界で、さらなる企業価値を創り出したい経営者の方は、有名企業の事例を参考にしてみましょう。
経営戦略とは
経営戦略とは、企業のビジョン(将来的にどのように成長し運営していくか)や、経営理念(どのような考えや価値観で経営を行うか)などを達成するために必要な、計画・方法全般のことです。
経営戦略を立てるときは、自社の市場における立ち位置や、競合他社と比較した場合の強みを把握することがポイントになります。
ビジョンや理念に基づいた課題や、補強すべき弱点も明確にし、短期・中期・長期の目的に合わせた、具体的な計画にまとめておく必要もあるでしょう。
適切な経営戦略を立てることで、従業員も目標達成のためにすべきことが明確になり、評価制度の基準も明確になります。これによって、一人一人のモチベーションが向上する効果も期待できるでしょう。
代表的な経営戦略の型
経営戦略には、いくつかの種類があります。自社にぴったりの経営戦略を立てるためにも、経営戦略の種類とその特徴をしっかり理解しておくとよいでしょう。
差別化戦略
差別化戦略とは、同じ市場で競合他社との違いを明確にすることで、優位性を確立し、シェアの獲得を目指す戦略です。
差別化戦略では、基本的には同じジャンルの商品やサービスを提供します。しかし、競合他社にはない一面を持たせたり、特定の機能やサービスを強化させたりすることで、差別化を図るのが一般的です。
差別化したポイントで顧客から選ばれるようになれば、競合他社と価格競争をせずに、利益向上が期待できます。また、新規事業(新しいライバル)の参入を防ぐ効果もあるでしょう。
反対に、市場のニーズとは違う差別化をした場合は、競合他社に顧客が流出してしまいます。その結果、シェアを失い、市場からの撤退を余儀なくされる可能性もあるため、注意が必要です。
多角化戦略
多角化戦略とは、既存市場とは別の市場において、新製品や新サービスを立ち上げ、利益を確保する戦略です。
多角化戦略では、それまで築いてきた市場の立ち位置はそのままに、新しい市場で事業を拡大します。自社の主力商品やサービスが、競争率の高い市場にある場合は、有効な成長戦略になるでしょう。
その一方で、市場選びを間違えると、利益が上がらないばかりか、さらなる競争に巻き込まれてしまう可能性もあります。
自社の持つ強みやリソースを、新しい市場・商品・サービスでどの程度活かせるのかをよくリサーチしなければなりません。そのため、多角化戦略を実行するには、時間やコストがかかる傾向にあります。
集中戦略
集中戦略とは、多角化戦略とは真逆の経営戦略で、事業の数を絞り、リソースを集中して投資し、市場での優位性を確立する経営戦略です。
平たく表現するならば、多角化戦略が「浅く広く」であるのに対し、集中戦略は「深く狭く」リソースを投入する経営方針です。コストの削減や商品に付加価値をプラスして、競合他社との差別化を図ります。
集中戦略は、それほど経営規模の大きくない企業であっても実行しやすい経営戦略です。自社の持っているリソースの活用がメインなので、リソースを投入する規模や期間も、無理のない範囲で計画できるでしょう。
その反面、もっと大きなリソースを持つ大企業が市場に参入してきた場合、物量で圧倒されてしまうリスクがあります。市場のニーズが変化した際も、対応できる範囲が限られてしまう点には注意が必要です。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略とは、これまでにない全く新しい市場を開拓したり、事業を創出することで、利益を確保する戦略です。
ブルーオーシャンの対義語はレッドオーシャンと呼ばれており、競争の激しい市場を表しています。ブルーオーシャンとは、穏やかに広がる海のように、競争のない市場を表現する言葉です。
ブルーオーシャン戦略では、競合他社がほとんど存在しないため、商品やサービスの質、価格などを自由に決められる点がメリットと言えます。顧客のニーズを創出できれば、利益を生み出しやすい市場を独自の基準で開拓していけるでしょう。
その反面、中長期的な優位性を保つ戦略も用意しておかなければ、新規参入事業者による安価な商品にシェアを奪われてしまう可能性もあります。競合他社が現れても、自社の商品をしっかり打っていけるマーケティング能力が必須と言える戦略です。
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差別化戦略の成功事例
ここからは、差別化戦略において、成功した企業の事例をご紹介していきます。自社の商品・サービス・市場の参考になる事例がないかどうか、チェックしてみてください。
スターバックス
スターバックスの差別化戦略は、内装や商品において、従来の喫茶店とは異なる店舗として売り出すものです。
それまでの「喫茶店」は、どちらかというとビジネスマンや中高年男性がターゲットのイメージがありました。しかし、スターバックスは、若者や女性もリラックスして過ごせる喫茶店作りをしてきました。
内容はおしゃれで高級感のあるものにし、メニューの数やポップなイメージのある季節のドリンクなども提供しています。高価格帯にもかかわらず、リピーターを獲得することに成功しています。
加えて、全席禁煙やバリスタの配置といった、時代に合わせた新しい喫茶店のスタイルが、差別化戦略の成功に寄与しているようです。
モスバーガー
モスバーガーは、大手ファストフードチェーン店の「マクドナルド」と肩を並べるハンバーガーチェーン店です。
モスバーガーは、価格を抑えつつ短時間で食事を済ませられるマクドナルドと異なり、高価格帯の商品を提供し、店内でも長時間過ごせる店作りで差別化戦略を図ってきました。
加えて、国産野菜を使用するなど、素材にもこだわっており、コロナ禍ではマクドナルドを上回る成長率も発表されました。モスバーガーは、「安く」「早く」が常識のファストフード市場において、差別化戦略を成功させている事例の一つと言えるでしょう。
多角化戦略の成功事例
多角化戦略では、強みのある自社製品に関係するリソースを、新しい市場でどのように活用するかがポイントになります。ここでは、多角化戦略に成功した企業の事例をご紹介していきましょう。
ソニーグループ
ソニーは、家電やゲーム機といった、エレクトロニクス事業の大手です。しかし、それ以外にも、音楽や映画といった分野でも、幅広く事業を展開しており、多角化戦略を成功させている企業の代表格と言えるかもしれません。
ソニーが多角化戦略を成功させたポイントは、エレクトロニクス事業で培ったリソースが、どの市場・事業で活用できるかをよく分析し、計画し、実行した点です。
調査や分析に基づいた計画があったからこそ、新しい市場に進出する際の組織作りや人材確保も迅速に行うことができました。
加えて、エレクトロニクス事業が低迷した際は、金融事業である生命保険にも進出するなど、リスクヘッジの面でも多角化戦略を活用しています。
富士フイルム
富士フイルムは、カメラや映像機器など、精密化学事業の大手ですが、近年では化粧品や医薬品、医療機器などでも事業を展開し、多角化戦略を成功させています。
富士フイルムの多角化戦略成功のポイントは、市場のニーズを早期に見極め、蓄積された自社の技術やノウハウを活かせる事業に着手したことです。
富士フイルムでは、機器のデジタル化やスマートフォンの普及などによって、築き上げてきた写真のフィルムという市場が縮小することを見据えていました。
その一方で、写真のフィルムで使われるコラーゲンや抗酸化作用のある成分などが、化粧品にも役立つ点に着目したのです。現在では、機能性の高い化粧品を開発し、化粧品の市場でも優位性を確立しています。
集中戦略の成功事例
集中戦略では、現在展開している事業の、どのポイントを強化し、リソースを投入するか、その見極めがポイントになります。ここでは、集中戦略を成功させた企業例をご紹介していきましょう。
しまむら
ファッションセンターの大手であるしまむらは、さまざまなニーズがある衣料品市場において、20〜50歳の女性(特に都心から離れたところに住む主婦層)をターゲットにした、集中戦略を実施しています。
この集中戦略により、しまむらは大量生産を取り止め、ニーズに合わせた分の少量生産に切り替えることで、コストを抑え、低価格帯での商品販売を可能にしました。そして、その分のリソースを、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応ができるように、体制を整えています。
この柔軟な対応は、コロナ禍でも効果を発揮しました。感染症対策によって店舗への客足が遠のいた際には、ECサイトを立ち上げ、売上の落ち込みを抑える対策をするなど、集中戦略のメリットを最大限に活かしています。
スズキ
自動車大手メーカーのスズキは、軽自動車に対しての集中戦略で成功してきました。自動車メーカーにとって、一般的には質の高い乗用車や高級車のブランド力が大きな戦略になります。しかし、国内においては、より実用性の高い車が販売台数を伸ばしています。
そこで、スズキは、軽自動車にリソースを集中させ、「軽自動車のスズキ」としてのブランド力を確立し、他社との差別化を図りました。
加えて、スズキは1983年からいち早くインドへの海外進出も果たし、高いシェア率をキープしています。自社の商品の強みを、広い視野で分析しながら集中戦略を進めたことが、スズキが成功した秘訣と言えるかもしれません。
ブルーオーシャン戦略の成功事例
新しい市場を開拓し、ニーズを創出するブルーオーシャン戦略では、これまでにない新しい発想や、計画的な戦略がポイントになります。ここでは、ブルーオーシャン戦略で成功した事例をご紹介していきましょう。
任天堂
任天堂は、1970年代ごろからゲーム機の製造・販売を始め、90年代後半〜2000年代にかけて、さまざまなゲーム機を開発してきました。ブルーオーシャン戦略の側面としては、2006年に発売された家庭用テレビゲーム機「Wii」が顕著な例として挙げられます。
任天堂が発売した「Wii」は、直感的な操作が可能な「Wiiリモコン」というコントローラーを採用したゲーム機です。どの年齢層でも楽しめるスタイルが、新しいニーズを創出しました。
従来のゲームコントローラーではうまく遊べなかった人も一緒に楽しめるゲームのアイデアは、まさにブルーオーシャン戦略の成功事例と言えるでしょう。
QBハウス
QBハウスのブルーオーシャン戦略は、「10分で1000円カット」という低価格理容室を全国展開させたものです。この安さと早さを実現するために、QBハウスは、シャンプーや髭剃りをメニューから除外しているほか、電話予約サービスなども行っていません。
本来、理容室や美容室は、予約が必要なことに加え、カットだけでも30分~1時間以上は見積もる必要がありました。QBハウスは、とにかく早く散髪を終わらせたいサラリーマンのニーズに注目して新しいスタイルの理容室を作り、成功を収めています。
経営戦略を成功させるポイント
最後に、経営資源を成功させるために大切なポイントをご紹介します。
市場のニーズを分析する
どの経営戦略においても、市場のニーズを分析することは不可欠です。顧客の求めるものだけでなく、競合他社も含め、企業が提供しているものも把握しておきます。その上で、ニーズがあるのに提供できないポイントがないかどうか、徹底的に洗い出しましょう。
さらに、自社が持つ強みと弱みを分析し、どのような経営戦略で、利益アップや市場での優位性が獲得できるかを検討していきます。
競合他社の調査から自社の強みを明確にする
競合他社の分析も徹底して行う必要があります。特に、差別化戦略や集中戦略においては、投資するリソースの方向性を間違えないことが大切です。
競合他社の製品・サービスと自社の商品について、年齢や性別などをもとに支持されるポイントを分析して比較し、需要と共有の全体像を把握していきましょう。
差別化戦略では、競合他社のカバーできていないポイントを洗い出します。集中戦略では自社の強みを明確にすることに注力するとよいかもしれません。
自社のビジョンと目標を明確にする
経営戦略を立てて実施する目的には、利益の確保や向上だけでなく、自社のビジョンと目標の達成も含まれています。
経営戦略が将来的に自社に与える影響をシミュレーションしたり、目標達成に向けた道筋を分析したりする必要もあるでしょう。
一般的なビジネスの現場では、こうした分析やシミュレーションには、フレームワークが活用されています。フレームワークにはさまざまな種類があるため、経営戦略を練る中で、適切なフレームワークを採用し、より有意義で実効性のある戦略を策定していきましょう。
フレームワークについては、下記の記事でも詳しく扱っています。
「経営戦略フレームワーク」については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
経営戦略の策定は、調査に基づいて市場のニーズを分析し、自社と競合他社の強み・弱みの明確化を行った上で、ビジョンに基づいて策定しましょう。成功事例も分析し、なぜ成功したのか、自社と共通している点はないか検証してみてください。
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