行動指針とは?作り方・注意点・メリット・従業員への浸透方法などをまとめて解説


行動指針とは?作り方・注意点・メリット・従業員への浸透方法などをまとめて解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

行動指針はさまざまな企業で設けられており、企業理念の浸透や企業文化の醸成には欠かせません。

この記事では、行動指針と企業理念・行動理念の違いを解説し、行動指針のメリットや作り方・注意点なども紹介します。行動指針の作成や見直しを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

行動指針とは

行動指針は、行動の判断基準を明示したものです。行動が企業理念に沿っているか、会社や顧客のためになるかといったことを、従業員が即時に判断できるように設けられます。

行動理念を定めることで、従業員が企業の損失につながる不適切な行動を取らないようコントロールできます。一貫した行動基準が浸透すれば、企業は安定した利益を確保しやすくなるでしょう。

行動計画との違い

行動指針とよく似た言葉に「行動計画」があります。どちらも、従業員が業務中にどう行動すべきかの基準となる点は同じです。行動指針と行動計画の違いは、その適用範囲にあります。

行動指針が企業全体で「どのように行動するか」を定めたものであるのに対し、行動計画は行動指針を反映するために従業員個人がどう行動すべきかを定めたものです。行動計画のほうが、より細かく具体的に従業員個人に適用されるものといえるでしょう。

行動計画は「アクションプラン」とも呼ばれ、現場ではより重要な意味を持ちます。行動計画とは何か、また行動計画をどのように作成するかは、以下の記事で詳しく解説しています。
「行動計画」については、こちらの記事をご確認ください。
「行動計画書き方」については、こちらの記事をご確認ください。

企業理念との違い

行動指針と企業理念も混同されがちです。企業理念は英語で「Corporate philosophy」と表現され、企業の存在意義や在り方などを言語化したものといえます。

多くの場合、行動指針は企業理念を念頭において作成されます。企業がどのようにあるべきかを定めたうえで、それを実現するためにどのような行動が求められるかを定めたものが行動指針です。そのため、しっかりとした企業理念がなければ、行動指針は定められないでしょう。

企業理念とはどのようなものかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「企業理念」については、こちらの記事をご確認ください。

行動理念(MVV)との違い

同じ「行動」という言葉が付いていますが、行動理念(MVV)と行動指針にも違いがあります。

行動指針は「どのように行動すべきか」をより具体的な言葉で示しますが、行動理念(MVV)は「考え方」を重要視しています。そのため、「なぜそのように行動すべきか」を示すケースが多いようです。

行動指針と同義で行動理念を定めている企業は多いため、同じ意味として捉えても問題ないでしょう。どちらかといえば、行動指針のほうが取るべき行動をより具体的に定める傾向があります。

行動理念に関係する「ビジョン」については、以下の記事をご覧ください。
「ビジョン」については、こちらの記事をご確認ください。

行動規範との違い

行動規範にも「どのように行動するべきか」という考え方が含まれていますが、どちらかといえば「道徳」や「倫理」を重要視する表現です。望ましい言動や避けるべき行動などが定められており、行動指針と比べるとやや抽象的な表現が用いられる傾向があります。

行動指針が行動の方向性を示すものであるのに対し、行動規範は行動の範囲や取り方を表しているといえるかもしれません。

クレドとの違い

クレドという言葉をご存じでしょうか。クレドはラテン語で「約束」や「信条」を意味し、企業によっては行動指針や企業理念と同じ意味で使われています。

クレドは前述の「企業理念」や「行動規範」に加え、信念といった意味も含んでいます。行動指針を定めたいが理念や信念、規範、共有したい価値観なども含めたい場合は、クレドとして定めるとよいでしょう。

行動指針を設けるメリット


ここからは、行動指針を設けることによって企業が享受できるメリットについて詳しく解説します。

行動と判断の基準が明確になる

行動指針は業務において「どのように行動すべきか」、あるいは経営方針において「どのような方向性を保つべきか」の基準になります。行動指針があれば、従業員は迷うことなく適切な行動を取れるでしょう。

行動指針がなければ、何らかの判断を迫られたときに個々の判断で行動しなければならず、それが会社にとって損失となることもあるかもしれません。

行動指針が定まっていれば、あらゆる状況において確固たる基準に基づいて、迷いなく対応できます。

企業理念の浸透と組織の文化醸成が実現する

行動指針が定められていれば、企業理念が職場全体に浸透しやすくなります。行動指針は企業理念や信念、クレドなどに基づいて作成されるため、企業理念の浸透に役立つでしょう。

企業理念の浸透は、市場において企業の存在意義や価値を確固たるものにします。各従業員が行動指針に基づいて判断することで、自然に一体感が生まれるはずです。第三者から見ても注目すべき企業になり、社内においても組織の醸成が進むでしょう。

一定の行動指針のもとに組織文化の醸成が進めば、チームはより高いレベルの力を発揮しやすくなります。それに伴い、時代やトレンドに左右されにくいビジネス力が培われるでしょう。

従業員のモチベーションがアップする

行動指針が明確に定められていれば、従業員は迷うことなく正しい判断ができるため、余計な不安やストレスを感じにくくなります。その分仕事に集中できるため、モチベーションアップが期待できるでしょう。

失敗したり、理想どおりの結果にならなかったりした場合も、行動指針に沿って行動していれば過度な責任を感じずに済みます。

フォローする上司にとっても、行動指針に沿って行動した結果であれば部下の判断ミスをとがめることなく、今後についても建設的な話し合いができるでしょう。

加えて、行動指針があれば経営陣や上司、部下などの立場にかかわらず同じ方向を向いて業務を行えるため、チームワークが改善します。

行動指針に変更が必要な企業の特徴

行動指針を定めている企業は少なくありません。しかし、中には定めた行動指針を再考しなければならない企業もあります。ここでは、行動指針を変更する必要がある企業について解説します。

大企業病の傾向がある

行動指針は、特に大企業病の兆候がある企業にとって必要です。大企業病とは、企業の成長とともに必要な業務や管理が増えていき、それによって非効率・不要な業務が常態化している状態のことです。

例えば、増えた部署同士の連絡が多くなることで伝達ミスが発生したり、業務の引継ぎの際に必要な作業の伝達が抜け落ちたりすることが考えられます。こうした事態を避けるため、さまざまな仕組みや業務ルールが設けられるかもしれません。

しかし、これらは「現場基準のルール」であるため、行動指針が反映されないおそれがあります。

このような状態では「ウチではこうやっている」「いや、そのやり方はコチラでは都合が悪い」といった部署間の対立が起こりやすく、意思決定に時間がかかったり、従業員のストレスが増えたりします。

大企業病の兆候がある場合は行動指針を改め、会社全体として何を大切にすべきで、どの業務においても何をベースに考えるべきなのかを周知する必要があるでしょう。

ビジネスモデルが時代遅れになっている

歴史があり、これまで多くの成功を収めてきた企業でも、激しい変化についていけず、経営が不安定になることがあります。過去の成功事例にとらわれ、時代の変化に即していないのであれば、行動指針を改める必要があるでしょう。

一般的に、企業は創業→成長→安定→衰退というビジネスサイクルを経験します。衰退期に入った企業の多くはビジネスモデルが時代遅れになっているため、新たな商品開発やサービス展開を行うためには社内改革が必要です。

これまでのやり方で経営を立て直そうともがき、なかなか衰退期から抜け出せない状態を「経路依存症」(Path Dependence)や「サクセスシンドローム」(Success Syndrome)と呼びます。

こうした状態に陥っているのであれば行動指針を改め、企業に新しい風を吹き込む必要があるでしょう。これまでの行動指針が経営に及ぼしている影響を分析し、必要な変化を見極めなければなりません。

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行動指針の事例

ここからは、有名企業の行動方針を簡単に紹介します。行動指針の特徴や、学べるポイントにも注目してください。

Googleの行動指針と注目ポイント

Googleの行動指針は以下のとおりです。

・ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
・ひとつのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
・遅いより速いほうがいい。
・ウェブでも民主主義は機能する。
・情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
・悪事を働かなくてもお金は稼げる。
・世の中にはまだまだ情報があふれている。
・情報のニーズはすべての国境を越える。
・スーツがなくても真剣に仕事はできる。
・「すばらしい」では足りない。

引用:「Google が掲げる 10 の事実」

Googleの行動指針はGoogleがどうあるべきか、そしてユーザーに利用価値を感じ続けてもらうためにどのような姿勢で仕事に取り組むべきかを、さまざまな角度から示しています。

Googleは行動指針を常に意識できているか、業務内容が行動指針に沿っているかを定期的に確認するよう努めているようです。

Googleは検索機能を始め、さまざまなウェブサービスを提供している企業です。多くの企業がさまざまなウェブサービスを展開する現代社会において、Googleに価値を見出してもらうために大切なことが、この「Google が掲げる 10 の事実」に記載されています。

トヨタの行動指針と注目ポイント

トヨタ自動車は、「トヨタウェイ2020」を、行動指針と関連付けて公表しています。トヨタウェイ2020の概要は、以下のとおりです。

・誰かのために
・誠実に行動する
・好奇心で動く
・ものをよく観る
・技能を磨く
・改善を続ける
・余力を創り出す
・競争を楽しむ
・仲間を信じる
・「ありがとう」を声に出す

引用:トヨタウェイ2020

「好奇心で動く」や「ものをよく観る」といった指針は、現状に満足することなく、常に新しいアイデアを創出するうえで重要です。

日本には多くの自動車メーカーがあり、日本人は自動車を見る目が肥えています。自動車市場は新しいエコ技術や燃費の良さなど、常にワンランク上のものが求められる市場といえるでしょう。

そのような厳しい競争の中でも、常に前に進むためにトヨタ自動車が制定している行動指針には、参考になるポイントが多いのではないでしょうか。

「ムダを省く」ではなく「余力を作る」という表現もユニークです。ムダを省くだけであれば、コスト削減や業務効率化といった目線があれば十分でしょう。しかし、トヨタ自動車はそれだけでは満足せず、新たなイマジネーションを生むための「余力作り」を推奨しているのです。

東京ディズニーリゾートの行動指針と注目ポイント

東京ディズニーリゾートの5つの行動指針「The 5Keys」は、以下のとおりです。

・Safety(安全)
・Courtesy(礼儀正しさ)
・Inclusion(インクルージョン)
・Show(ショー)
・Efficiency(効率)

引用:行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」(東京ディズニーリゾート)|OLC GROUP

東京ディズニーリゾートは、最高のおもてなしをするための指針を、この「The 5Keys」で基準として定めています。

この「The 5Keys」では優先すべきものを順番に記載しており、最も優先して取り組むべきものが「Safety(安全)」です。

顧客をもてなすには「Courtesy(礼儀正しさ)」や「Show(ショー)」も大切ですが、大きな事故やケガは企業にとっても顧客にとっても重大な損失となるため、避けなければなりません。

東京ディズニーリゾートの行動指針は、自社が何を大切にすべきかを再考するうえで参考になるでしょう。

今回紹介したもの以外にも、有名企業にはさまざまな行動指針があります。各企業の行動指針は以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
「行動指針例文」については、こちらの記事をご確認ください。

行動指針の作り方


ここでは、行動指針の3つのタイプである「トップダウン型」「プロジェクト型」「ワークショップ型」について解説します。

トップダウン型

トップダウン型は、文字どおり上(経営層)から下(従業員や部下)へ指示や通達が流れるタイプです。行動指針を決定する際、従業員が多い大企業では従業員全員の意見を聞いてまとめることが難しいため、選択肢がトップダウン型しかないケースも少なくありません。

トップダウン型のメリットは対立や反対が起こりにくく、意思決定をスムーズに行えることです。日本の企業の多くはトップダウン型の経営を行ってきたため、勤続年数の長い従業員や中途採用者も行動指針を受け入れやすいでしょう。

一方で、トップダウン型は現場の声が反映されにくいというデメリットがあります。従業員の行動に影響を及ぼす行動指針を決定する際は、現場の声にも耳を傾け、多角的に情報を集めて検討する必要があるでしょう。

プロジェクト型

プロジェクト型は経営陣と従業員がチームを組み、行動指針を決定する方法です。チームを組むことができればプロジェクト型で進められるため、企業の規模に関わらず実施できるでしょう。

経営方針を決める経営陣の意見と、現場をよく知る従業員の意見の両方を取り入れ、双方が納得できる行動指針を作成しやすいのがプロジェクト型のメリットです。ただし、立場や見解の違いから、チーム内で意見が対立してしまうこともあります。

進行役を任命して、取り入れたいポイントの優先順位や譲歩できるポイントなどをあらかじめ決めておくとよいでしょう。

ワークショップ型

ワークショップ型は、全従業員で話し合って決めるタイプです。従業員が少ない企業で実施できる方法で、全員の意見を取り入れられれば、全員が納得できる行動指針が決まります。

ただし、人数が多ければ多いほど意見をまとめたり、すり合わせたりするのが難しくなります。職場での立場や負っている責任の違いから、意見が対立するかもしれません。

職位の低い従業員や少数派の意見をどのようにフォローしてくかが、全員が満足できる行動指針を決定するポイントになるでしょう。

行動指針の詳しい作り方については、以下の記事をご覧ください。
「行動指針作り方」については、こちらの記事をご確認ください。

行動指針導入時の注意点

ここからは、行動指針を導入する際に注意したいポイントを解説します。

必ず良い結果をもたらすとは限らない

行動指針を定めても、必ずしもよい結果につながるとは限りません。

特にトップダウン型で作成した行動指針の場合は、内容が現場に合っていないかもしれません。また、これまでの業務を大きく変更させるような行動指針だと、慣れない仕事のやり方に従業員から不満が出る可能性もあります。

ワークショップ型で取り決めた行動指針は、現場レベルでは当てはめやすいものになりますが、経営状態を好転させる内容にはならないかもしれません。

良い結果にならない場合は、その原因を分析して話し合い、根気強く行動指針の改善を続ける必要があります。

従業員に行動を強制しない

行動指針はあくまでも判断の方向性を示すものであり、最終的には従業員自身が自分の言動を決めます。

ルールや就業規則のように、何かを強制する力はありません。従業員の言動が行動指針にそぐわないとしても罰を与えたり、解雇をほのめかしたりしないよう注意してください。

場合によっては、行動指針とは異なる判断が良い結果をもたらすかもしれません。

良い結果になったにもかかわらず、行動指針と異なる言動だったからという理由でとがめられれば、従業員のモチベーションは下がるでしょう。現場の声に耳を傾けつつ、柔軟な姿勢を見せることで、従業員の働く意欲を刺激することができます。

行動指針を浸透させる方法

最後に、作成した行動指針を従業員に理解してもらい、浸透させるためのポイントを解説します。

企業理念と関連付けた根拠の周知

行動指針を周知させたい場合は、企業理念と紐づけて告知や周知を行うとよいでしょう。企業理念は行動指針の根拠でもあるため、行動指針の内容が必要な理由や行動指針によって達成したいことなどを、従業員に理解してもらうカギとなります。

行動指針を作成する際も、企業理念のどの部分と関連性があるかを明確にし、従業員に周知する際の準備をしておくとよいでしょう。

通常業務に行動指針を適用させる

日頃の通常業務から行動指針を当てはめてもらうよう、従業員を促しましょう。日常の細かい業務でも行動指針を念頭に置けば、判断や行動に反映させやすくなります。

それまで使用していた業務マニュアルがある場合は、行動指針の作成や更新と同時に、行動指針を反映させた業務マニュアルに更新しておきましょう。これによって、日頃の業務にも行動指針との整合性が生まれ、各従業員が行動指針を受け入れやすくなるはずです。

評価項目に行動指針を含める

行動指針に沿って判断し、行動することを評価項目に追加しておけば、従業員の意識を高められます。行動指針に沿った判断であれば結果に関わらず、その判断自体を評価対象にしましょう。

従業員が行動指針に沿った判断や行動を恐れず選べるようになり、行動指針の浸透が加速するでしょう。

行動指針に基づく表彰制度を設計する

行動指針に沿った判断や行動、その結果収めた良い成績をなど、行動指針絡みの表彰制度も用意しましょう。表彰制度に行動指針の項目が追加されれば、従業員が行動指針を意欲的に当てはめようとする動機になるかもしれません。

業務成績以外の表彰制度基準ができれば従業員のモチベーションが上がるため、業務効率や生産性の向上も狙えます。ただし、不公平にならないよう、行動指針による表彰は他の表彰基準と比べて、納得しやすいものにしましょう。

まとめ

行動指針を設ければ、企業理念の浸透や企業文化の醸成に役立ちます。ただし、行動指針の決定にはある程度の時間と労力が必要であり、必ずしも良い結果をもたらすわけではないことを覚えておきましょう。

タレントパレットには、人材の見える化や経営判断をサポートする機能があるため、自社のニーズの把握にも役立ちます。行動指針の新設や再考をお考えなら、より正確な経営判断をサポートできるタレントパレットへ、お気軽にお問い合わせください。

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