ベースアップの平均は?大企業・中小企業ごとに昇給額と昇給率を紹介


ベースアップの平均は?大企業・中小企業ごとに昇給額と昇給率を紹介

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

すべての従業員の給与が一律で上がるベースアップは、働く人の生活の安定につながります。しかし、企業のコスト増加になるため、その実施やどれくらい昇給すればいいのか判断が難しいのではないでしょうか。

この記事では、ベースアップの基本的な概念や大企業・中小企業ごとの平均額・昇給率などを解説します。ベースアップの仕組みを知り自社の人事制度に活用したい方は参考にしてみましょう。

ベースアップとは



ここでは、ベースアップについての基礎知識や勤続年数による定期昇給・成果報酬との違い、春闘との関係について紹介します。

ベースアップは全従業員の基本給が一律に上がること

ベースアップとは、すべての従業員の基本給が同額もしくは同率で上がる昇給制度です。職務給が採用される欧米には、一般的にベースアップの概念は存在しません。和製英語であり、ベアと略され、1950年代中頃から始まり約70年間続いている制度です。

ベースアップは活況時だけでなく、物価上昇時や労働力不足のタイミングで実施されます。計算方法はベースアップが2%だとすると、基本給250,000円の場合は5,000円上乗せされ、ベースアップ後の基本給は255,000円です。

毎年2~3月ごろの春闘において労働組合と企業側が折衝し、ベースアップの昇給額や昇給率が決定します。

ただし、一度ベースアップを行ったあとは従業員のモチベーション低下、不満につながるため、簡単に下げられないことから実施には注意が必要です。

では、ベースアップについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「ベースアップ」については、こちらの記事をご確認ください。

成果報酬や勤続年数による定期昇給との違い

ベースアップ以外の主な昇給制度は、成果報酬や勤続年数による定期昇給が挙げられます。
違いは以下の通りです。

  • ベースアップは全従業員に一律で実施
  • 勤続年数による定期昇給は年功序列制度
  • 成果報酬は個人の能力重視


ベースアップは全従業員の基本給が一律に底上げされることで、モチベーションの向上や生活の安定につながります。

対して、定期昇給とは、年齢や勤続年数に応じて昇給を行う年功序列型の制度です。多くの企業で従業員の定着率をあげるために実施されています。

昇給は50歳頃まで行われるのが一般的ですが、個人の成績とは無関係な昇給制度のため、成果への評価を重視するメンバーのモチベーションを下げる原因ともいえるでしょう。そのため、ベースアップとは考え方が異なります。

また、成果報酬は、個人の能力を重視した報酬制度です。求められる成果のレベルに応じて賃金が支払われ、一般的に販売額の一部が売り上げた従業員の給与に上乗せされる仕組となっています。

時代の変化とともに、年功序列制から欧米のように個人の能力主義へと昇給体制は見直されつつあります。しかし、ベースアップの仕組みは昨今でも、企業で働く従業員全員の安心や生活の安定につながるものとして重要であるため、制度を導入している企業も多いといえるでしょう。

ベースアップと昇給のより詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
「ベースアップと昇給の違い」については、こちらの記事をご確認ください。

ベースアップと春闘との関係

ベースアップは春闘の一環として、企業と労働組合が賃上げや働き方の改善について交渉を行う中で扱われ、昇給額や昇給率が決定されるものです。

4月からの新年度に向けて2~3月に折衝することから、春闘(春季生活闘争)と呼ばれるようになりました。一般的に大企業が中小企業に先駆けて回答し、その後中小企業が続きます。

交渉は企業とその労働組合との間で進めるのが基本です。ただし、労働組合単体では交渉力が弱いため、連合(日本労働組合総連合会)や同じ業種の労働組合(産業別労働組合)の方針や日程をもとに協調しながら折衝を重ねることが多い状況にあります。

各労働組合の折衝力を高めるために、同じ業種の労働組合などで協力しあい、従業員の権利向上を目的として春闘で交渉が行われた結果、ベースアップを含めて待遇の改善が図られているといえるでしょう。

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ベースアップの平均昇給額と昇給率

ここでは2022年の日本経済団体連合のデータをもとに、ベースアップの平均昇給額と昇給率を大企業・中小企業ごとに説明します。

大企業のベースアップ

2022年の最終集計では、16業種135社の大手企業の平均昇給額は7,562円、昇給率2.27%です。昇給額・昇給率ともに2021年を大きく上回りました。ベースアップを実施したのは、調査対象253社のうち202社で79.8%に及びます。

前年2021年の最終集計値では16業種130社の平均昇給額は6,124円、昇給率1.84%だったため、2022年は前年比、平均額で1,438円、昇給率は0.43ポイント上昇しました。昇給率の伸び幅は、2000年以降で2014年の0.45ポイントに次いで高い水準です。

業種別では、製造業122社の平均昇給額は7,451円、昇給率2.28%でした。前年比では平均昇給額1,298円、昇給率は0.41ポイントの増加です。

非製造業13社の平均昇給額は8,076円、昇給率2.20%でした。前年比は平均昇給額2,117円増、昇給率の上げ幅は0.52ポイントの増加です。ベースアップの平均昇給率が2.0%以上なのは16業種中10業種となり、前年の5業種から倍増しています。

2022年はコロナ禍において低迷していた経済状況が改善する中で、労働組合の賃上げ要求に対して企業側がベースアップを復活させる結果となりました。

参照:日本経済団体連合会「2022年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(最終集計)135社平均7562円、アップ率2.27%」

中小企業のベースアップ

2022年の最終集計結果によると、17業種377社の中小企業におけるベースアップの平均昇給額は5,036円、平均昇給率は1.92%となっています。これらの数値は2000年以降最高値を記録し、2021年と比べると平均昇給額は660円、平均昇給率は0.24ポイントの増加です。

業種別に見ると、製造業239社の平均昇給額は5,312円、平均昇給率1.99%でした。前年比では679円、昇給率は0.24ポイント増えています。

非製造業138社では平均昇給額4,571円、昇給率は1.80%でした。前年比600円増、昇給率は0.23ポイントの増加です。

製造業では11業種中9業種、非製造業では6業種中5業種が前年の昇給率を上回りました。

昇給額・率は大企業を下回るものの、中小企業のベースアップについてもコロナ禍からの景気回復を受け、交渉が進んだと考えられます。

参照:日本経済団体連合会「2022年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(最終集計)」377社平均5036円、アップ率1.92%

高卒と大卒における昇給額・昇給率の違い

ここでは、令和3年、4年の厚生労働省「賃金構造統計調査」をもとに、35~39歳を対象に大卒と高卒の昇給額と昇給率を割り出しました。大卒男性と高卒男性では、昇給額に7,500円ほどの差が生じます。

以下は大卒・高卒における月額平均賃金・昇給率・昇給額を男性・女性ごとにまとめたものです。

月額平均賃金 対前年昇給率 昇給額
大卒男性 375,500円 2.9% 約10,000円
高卒男性 287,200円 0.9% 約2,500円
大卒女性 307,200円 3.0% 約9,000円
高卒女性 220,200円 1.9% 約4,000円

高卒男性と大卒男性では、35~39歳になると昇給額7,500円、昇給率2.0%、月額平均賃金は10万円近くまで差が開きました。高卒女性と大卒女性でも昇給額5,000円、昇給率1.1%、月額平均賃金で9万円近く差が生じています。

学歴や性別によって、給与や昇給額・昇給率に大きな違いが出ることから、全従業員の給与が底上げされるベースアップの重要性が改めて認識できるでしょう。

参照:令和4年賃金構造基本統計調査「学歴別にみた賃金」
参照:令和3年 賃金構造基本統計調査「学歴別にみた賃金」

ベースアップを行う必要のあるケース



ここでは、企業がベースアップを実施しなくてはならないケースを解説します。とくに就業規則、最低賃金はよくチェックしなければなりません。

就業規則にベースアップが明記されている場合

ベースアップについて、法的な義務はないため必須ではないといえるでしょう。ただし、就業規則にその旨について明記されている場合は実施する必要があります。

例えば、年に1回などの定めがある場合は、必ず実施しなければなりません。

参照:労働基準法第89条第2項「(省略)昇給に関する事項」

最低賃金よりも給与が低い場合

最低賃金は毎年見直されるため、気づかないうちに給与が最低賃金を下回っていることも考えられます。長期にわたってベースアップしていない場合は、給与が最低賃金を上回っているかチェックしましょう。

最低賃金以上の給与が支払われていないと、違法になり最低賃金に満たない期間の差額分を支給する必要があります。また、罰則を受けることになるため、注意が必要です。

最低賃金には、各都道府県に定められた「地域別最低賃金」と特定の産業について制定されている「特定最低賃金」の2種類が存在しています。自社が双方に該当している際には、どちらか高い方の最低賃金を採用しましょう。

参照:厚生労働省 最低賃金額以上かどうかを確認する方法

企業がベースアップを行うメリット・デメリット

ベースアップには継続的な人材の確保というメリットがありますが、コスト増加のリスクも伴うため判断は慎重にしなくてはなりません。ここからは、ベースアップのメリットとデメリットについてみていきましょう。

従業員のモチベーションや安心感につながる

ベースアップによって給与がアップすれば、従業員のモチベーションを高められ、結果的に生産性も向上することが期待できるため、企業の収益増加につながります。

昨今の物価上昇による賃金の目減り分をベースアップによって調整することは、全メンバーの生活の安心につながり、リテンション(人材の維持・確保)も期待できるでしょう。

ただしベースアップはどの従業員に対しても一律で給与を上げるものであるため、成果報酬に慣れているメンバーからの不満が出る可能性も否定できません。

昇給による固定費増加の負担が大きい

全従業員の給与をアップさせることで大幅に人件費がかかり、企業の業績や経済動向などによっては利益率に影響するため注意が必要です。人件費の上乗せによって価格を引き上げれば、結果として競争力の低下を招く懸念があります。

企業の将来性のためには、人材の安定雇用とコスト増加のバランスを取りながらベースアップを実施することが重要です。また、実施する際には入念なシミュレーションを行いましょう。

まとめ

ここまで、ベースアップの平均的な昇給額や昇給率について大企業・中小企業ごとに紹介しました。数値から、昨今ではコロナ禍からの経済回復と物価上昇への対策として、大企業を中心にベースアップが実施されている状況だといえます。

ただし、ベースアップは、雇用の安定化と収益性の均衡を保ちつつ、自社への影響を鑑みて実施することが大切です。給与制度の設計、改善のほかにも、日頃からの従業員の適切なモチベーション管理が欠かせません。

タレントパレットでは、ベースアップも含めた人事評価に必要な情報を一元管理し、社員データと比較することで従業員の生産性向上を実現しています。特に自社の戦略に必要な人材の確保や維持を検討している方は、ぜひお問い合わせください。

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