アスピレーションとは?ビジネスで注目される背景と向上させる方法


アスピレーションとは?ビジネスで注目される背景と向上させる方法

近年、企業が従業員に求めるスキルが変化したことから、「アスピレーション」が注目を集めています。今回はアスピレーションの意味や高め方、他社の活用事例を解説します。自社の研修や評価処遇制度を検討する際にお役立てください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

近年、企業が従業員に求めるスキルが変化したことから、「強い願望」「大志」という意味の「アスピレーション」が注目を集めています。

優秀人材を獲得して離職を防ぐために、人事制度や評価処遇をどうするべきか、悩んでいる企業も多くなっており、アスピレーションは新しい対策として導入が進んでいます。

今回は、アスピレーションの意味や高め方、他社の活用事例を解説します。自社の研修や評価処遇制度を検討する際の参考にしてみてください。

アスピレーションとは


「アスピレーション(aspiration)」とは、英語で「強い願望・大志・憧れ」を意味します。

アスピレーションは、様々な業界で使われている用語です。しかし、ビジネスシーンや医療業界、自動車業界などではそれぞれ異なる意味で使われています。

そこで、アスピレーションの業界ごとの意味を紹介します。

ビジネスシーンでのアスピレーションの意味

ビジネスシーンにおけるアスピレーションは、達成したいことに対する熱意や志、向上心を指します。

従来の日本企業では、企業が与える成長機会に従っていればよいケースが多かったため、従業員は受け身でいられました。しかし、昨今企業の在り方が変化したことによって、従業員自身が主体的に成長していく意欲が求められるようになっています。

また、アスピレーションは省略して「アスピ」と呼ばれる場合もあり、使われ方の例として「キャリアアスピレーション」「アスピ目標」などが挙げられます。これらの単語は、主にリクルートの場面で用いられています。

アスピ目標とは、実際にできるかどうかは別にして「これだけのことを達成する」という意思を意味します。またキャリアアスピレーションとは、昇進に向けた願望を指します。

医療用語としてのアスピレーションの意味
医療業界では、アスピレーションは「誤嚥(ごえん)」という意味で使われています。

誤嚥とは、本来は食道を通って胃の中に入らなくてはならないものが、誤って気管内に入ってしまうことです。

また英語の「suction aspiration(吸引)」を略して、アスピレーションと呼ぶ場合もあります。

ほかにも、医療用語としてのアスピレーションには、気管内に異物が入る「サイレントアスピレーション」や、誤嚥が原因による肺炎を意味する「アスピレーションニューモニア」などが挙げられます。

自動車用語としてのアスピレーションの意味

自動車業界では、エンジンに空気を取り込む際の吸気方法の形式の一つに「ナチュラルアスピレーション」があります。

エンジンのピストンが下がる際に、負圧によって空気や混合気などを取り込む仕組みを指します。NAと省略して呼ばれる場合もあり、スーパーチャージャーや廃棄ターボなどの装置を用いた吸気方法と区別する目的で用いられています。

なぜアスピレーションが注目されているのか?


アスピレーションが注目されるようになった背景として、産業構造の変化についていくために、企業において個人の向上心が必要と考えられるようになった点があります。

以前は生産者から消費者への一方通行の販売方法でしたが、現在は消費者の多様なニーズへの素早い対応が生産者に求められています。また「モノ」を売るだけではなく、「モノ」に付随する価値の高い「コト」の提供も必要とされています。

以前は、従業員に対してアスピレーションを求める企業は少なく、「従順性」や「帰属意識」などを強く求める傾向にありました。しかし、終身雇用制度の衰退や個人の価値観の多様化から、従順性や帰属意識を求めることが難しくなり、時代のニーズが変わってきています。

産業構造や時代のニーズが変化した現代においては、従業員それぞれが仕事に対する「熱意」「大志」などの情熱を持ち、主体的に自身のキャリアを考えて成長していくことが必要です。

こうした背景から、アスピレーションが重要と考える企業が増えて注目されるようになっています。

アスピレーションを意識することで得られるメリット



企業においてアスピレーションを意識するメリットは、以下の2点です。

  • 従業員自ら仕事をしている意識が高まる
  • 従業員が目標に向かって向上する心を持てる


それぞれのメリットについて詳しく解説します。

従業員自ら仕事をしている意識が高まる

アスピレーションが高まると、従業員の主体性が上がり、自ら仕事に取り組んでいる意識が高まります。

「会社が与える業務や課題をこなしていれば、順調なキャリアを築ける」という環境では、従業員の主体性が上がりづらいでしょう。しかし、企業全体でアスピレーションを意識する環境になれば、従業員一人ひとりの意識の変化が期待できます。

従業員が主体的に業務に取り組み、自身の業務内容や責任領域を判断できるようになれば、業務の効率化や生産性の向上が望めるでしょう。その結果、企業の発展につながることが期待できます。

従業員が目標に向かって向上する心を持てる

アスピレーションが高まると、従業員の向上心も高まり、目標に向かうための行動を自らの意思で実行できるようになります。

また、目標達成のための高い行動力を持つ従業員が増えると、同じく向上心を持つ従業員同士の接触機会が増え、シナジー効果により新しいアイデアの創出が期待できるでしょう。

アスピレーションによって生まれた組織内のチームワークや人脈は、企業の活性化に効果的です。

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従業員のアスピレーションを高める6つの方法

従業員のアスピレーションを高める方法は、主に以下の6点です。

  • 向上心を意識する
  • 上司が成長意欲を持つ
  • 良好な社内コミュニケーションを心掛ける
  • アスピレーションを評価項目にする
  • 仕事を好きになってもらう
  • 誰もがチャレンジできる機会を多く設ける


それぞれの方法について詳しく解説します。

向上心を意識する

アスピレーションを高めるには、従業員の向上心を高めることを意識しましょう。

向上心の高い人は自ら目標を設定し、主体的に行動を起こせます。また意識が高く、失敗から前にすすむよう行動を起こせるため、アスピレーションも高まるのです。

こういった姿勢は、上司や同僚など一緒に仕事をする人達にも刺激を与え、職場の活性化につながることが期待できます。

上司が成長意欲を持つ

上司が成長意欲を持つと部下の意欲も高まります。

組織では、よくも悪くも上司の影響は大きいです。経営陣が継続的に従業員へ強いメッセージを送っても、身近で一緒に働いている上司の言動の方が強い影響を与えやすいでしょう。

そのため、上司が自分自身の成長を常に意識して行動をしている姿を部下に見せれば、部下は成長の必要性を理解して、ともに成長したいと思うことが期待できます。上司を見習い、自らの成長のために部下も行動を起こすことで、企業全体のアスピレーションが高まります。

良好な社内コミュニケーションを心掛ける

従業員同士のコミュニケーションが良好である点も、アスピレーション向上には重要です。上司から部下への縦方向だけではなく、従業員間の横方向の影響も意識する必要があります。

良好なコミュニケーションが組織にもたらす効果は、数多く存在します。安定した精神状態を保ちつつ、お互いの理解を深めていけば従業員同士の信頼関係が構築されるでしょう。

従業員同士がよい関係性を築き、個人の願望やキャリアプランを意識した対話を積み重ねていけば、自立心を高めてお互いの成長につながります。アスピレーションを評価項目にする
従業員のアスピレーションを高める方法として、アスピレーションを人事評価の項目に入れる方法もあります。

人事評価項目に入れることで、従業員に具体的な目標を設定してもらい、定期的な達成度の評価・フィードバックが可能になります。明確な目標は向上心を促し、フィードバックは行動を振り返る参考になります。また評価によって従業員の承認欲求が満たされ、モチベーションの向上が期待できます。

なお、定量的な成果だけを評価項目に設定してしまうと、達成可能なレベルでの目標設定が行われる可能性があります。そのため、周囲からの評価や従業員の熱意も評価項目に入れるとよいでしょう。

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仕事を好きになってもらう

企業側は、従業員が「この仕事が好きだ」と感じられる環境づくりを心掛けることも大切です。最近はワークライフバランスを意識した働き方を望む人が増えたり、多様性が求められる時代になったりして転職する人が増えています。そのため、企業は従業員に好きな仕事ができていると認識させる工夫が必要です。

好きな仕事ができていると感じながら働ければ、従業員のQOL向上につながり、仕事に対する考え方も前向きになるでしょう。前向きな取り組み方によって自然とアスピレーションも高まります。

誰もがチャレンジできる機会を多く設ける

チャレンジしたいと思っている従業員に挑戦できる機会を与えることも大切です。強い熱意や大志を持っていても、挑戦できる環境がなければ、従業員は消化不良を起こしてしまい、アスピレーションが低下してしまいます。従業員が掲げた目標達成のためのチャレンジができる環境を企業側で用意し、従業員の挑戦を促進しましょう。

企業におけるアスピレーションの活用事例

従業員のアスピレーション向上のために、実際にアスピレーションを活用している企業の事例を紹介します。

大手日用品メーカーでの活用事例

世界最大の消費財メーカーのP&Gでは、「勝利のアスピレーション」を、戦略のための選択肢の一つとして掲げています。勝利のアスピレーションでは、最良の顧客と最良のライバルを考え抜くことが勝利につながると考えられています。

難しい判断をする際の拠りどころとしてあるのが、勝利のアスピレーションです。どのような勝利を望んでいるのかを明確にしつつ、消費者を意識してライバルが行っている戦略の優れた点を観察して、勝利のアスピレーションを立てます。

勝利に導くには「なにをして、なにをしないのか」を明確にする必要があります。こうして立てられた勝利のアスピレーションによって、適格な選択を下せるようになるのです。

大手スポーツメーカーでの活用事例
スポーツ用品メーカーのアシックスでは、能力開発のためにアスピレーションを重視したCDP(Career Development Plan)シートを全社展開しています。CDPシートとは、キャリアアスピレーションとその実現に向けた能力開発を記入するものです。

キャリアの目標を明確化して、計画的な能力開発に取り組めば、仕事を通じた継続的な成長促進が可能です。従業員はCDPシートを作成し、CDPシートを基に上司・部下による面談で能力開発プランを合意します。合意されたプランは、OJTや各種の研修プログラムに組み込まれ、従業員一人ひとりの成長に活用されます。

まとめ


アスピレーションは、従業員の主体性や向上心を高めるために必要な要素です。産業構造の変化によって近年注目を集めているアスピレーションには、主に2つのメリットがあります。

1つ目は従業員の主体性が上がり自ら仕事に取り組む意識が高まることであり、2つ目は従業員の向上心が高くなって目標に向かうために行動に移せるようになることです。

従業員のアスピレーションを高めるための効果的な方法としては、良好なコミュニケーションを心掛ける、人事評価制度に入れるなどが挙げられます。また、実際にアスピレーションを考え方や制度として活用する企業が増えています。

しかし、アスピレーションの導入には人事制度の項目設定や従業員の成長モニタリングなどスキルの管理に課題が生まれるでしょう。こうした課題を解決するには、人材育成・スキル管理機能や人事評価機能の導入がおすすめです。

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