ADDIE(アディー)モデルとは?人材教育への取り入れ方、具体的な手順などを解説


ADDIE(アディー)モデルとは?人材教育への取り入れ方、具体的な手順などを解説

教育プログラムの設計から実施、評価までを通して進めるためには、体系的なアプローチが求められます。ADDIE(アディー)モデルは、インストラクショナルデザインの代表的なフレームワークとして、教育の質を高めることが可能です。この記事ではADDIEモデルの概要や利点、PDCAサイクルとの違いを解説するとともに、教育プログラムの最適化に役立てる方法も解説します。


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ADDIE(アディー)モデルとは

そもそもADDIE(アディー)モデルとは、どのようなものでしょうか。まずは概要やPDCAサイクルとの違いを押さえておきましょう。


教育プログラムを最適化するためのフレームワーク

ADDIEモデルとは教育プログラムの設計から実施、評価までを効果的に進められるフレームワークで、以下のプロセスから構成されています。


分析(Analysis):教育や研修の必要性を分析し、現状の課題を明確にする

設計(Design):分析結果をもとに教育プログラムを設計し、目標や教材を具体化する

開発(Development):必要な教材やツールを開発し、プログラムを構築する

実施(Implementation):準備したプログラムを実施する

評価(Evaluation):教育や研修の結果を評価し、必要に応じて改善を行う


ADDIEモデルもPDCAのように、プロセスを繰り返すことで教育プログラムの質が向上しやすくなります。


ADDIEモデルはインストラクショナルデザインの代表的なモデル

インストラクショナルデザインとは、教育の効果や効率、魅力を高めるための手法や理論の総称です。英語表記の頭文字を取って「ID」とも表されるインストラクショナルデザインは、学習者の行動変容を促し、学習内容を効果的に定着させることを目的としています。


ADDIEモデルはインストラクショナルデザインの代表的なモデルの1つで、インストラクショナルデザインの考え方を具体的なステップに分割し、分かりやすくしています。


PDCAとADDIEモデルの違い

PDCAは、ビジネスのさまざまな場面で使われる改善手法で、計画・実行・評価・改善の4つから成り立っています。PDCAサイクルを回すといわれるように、4つのプロセスを回し続けることで改善を重ねる手法です。


ADDIEモデルは教育や研修の場で使われる手法で、サイクルを回しながら改善を促す点はPDCAと共通しています。そのため、ADDIEモデルは「インストラクショナルデザインにおけるPDCAサイクル」ともいえるでしょう。


ADDIEモデルが注目される理由

ADDIEモデルは各ステップで何をすべきかが明確に示されているため、効果的な教育プログラムを作りやすいのが特徴です。また、教育プログラムの実施後に評価を行い、フィードバックを取り入れ、次回のサイクルに生かすことで教育や研修の質が向上します。


明確な評価基準で成果を図り、きちんと確認できるのも注目される理由の1つです。組織が必要とする目標に沿った研修が設計でき、スキルの向上やモチベーションアップにつながります。


ADDIEモデルのメリット

ADDIEモデルを活用することで得られるメリットとして、以下の3つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。


教育の品質を継続的に向上できる

ADDIEモデルでは5つのプロセスを繰り返すため、サイクルの回数を重ねるごとに教育の質を向上できるのが大きなメリットです。効果的な研修が可能となり、社員のスキルも高まりやすいでしょう。ただし、教育の質を継続的に向上していくためには、定期的に評価結果をもとにしてプログラムを見直し、改善する必要があります。


教育内容に一貫性が生まれる

ADDIEモデルは、教育プログラムの設計から評価までのプロセスを体系的に進めます。そのため、関与する担当者が異なっても一貫性のある教育を提供できるため、教育内容の質も統一されるのがメリットです。より効果の高い教育を実施するためには、分析や設計のプロセスで社員の声を拾い上げ、組み込む必要があります。


コスト効率が高い

ADDIEモデルでは回を重ねるごとに教育や研修で必要とされる内容が絞られ、よりニーズに合ったものになるでしょう。本当に必要な教育や研修のみを実施して評価することで、無駄な教育コストの削減につながります。効果的な教育や研修を提供により、社員のスキルアップが見込めるのはもちろん、組織全体の効率化も図れるでしょう。


ADDIEモデルのデメリット

ADDIEモデルにもデメリットは存在します。活用する際は、以下で解説するデメリットも踏まえておきましょう。


サイクルを崩すと効果が下がる

ADDIEモデルでは各プロセスが互いに連携して進むことを前提としているため、プロセスを1つ飛ばしたり順序を変えたりすると、全体の効果が減少する可能性があります。


たとえば、適切な分析を行わずに設計に進むと、実際のニーズには合わないプログラムができるかもしれません。評価で得られたフィードバックを次のサイクルに反映させず、そのまま新しい研修を始めると同じミスが繰り返される恐れもあります。


コストが発生する

ADDIEモデルを進めるためには教材の開発や講師の手配、会場の準備や学習環境の整備など、複数のリソースが必要です。


教育の質を高めるために各プロセスを細かく見直すと、さらなるリソースが必要となるでしょう。ADDIEモデルはコスト効率の高い手法ではあるものの、バランスを取ることが難しいフレームワークでもあります。


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ADDIEモデルの進め方

ADDIEモデルの進め方には、以下で解説する5段階のプロセスがあります。各ステップの詳細を把握しておいてください。


1.分析(Analysis)

新しく教育や研修の計画をスタートさせるときも、既存のプログラムを見直す場合でも、ADDIEモデルは必ず分析から始めます。まずは対象者にどうなってほしいのか、理想を定義しましょう。


同時に現状の把握・分析を行い、教育や研修の目的と目標を設定します。計画の概要を決める際、ステークホルダーと認識を合わせておくことで、後の段階でのやり直しもある程度防ぐことが可能です。以下で分析のプロセスをさらに詳しく解説します。


理想の定義と現状のギャップを確認する

分析のプロセスでは、まず企業や組織が目指す理想的な状態を定義します。具体的なデータや社員からのヒアリングなどを通して、企業や組織が抱える問題点や状態を把握してください。理想と現状の間にあるギャップを分析し、差を埋めるための課題を明らかにしていきます。


たとえば、理想の状態が「顧客からのクレームをゼロにする」だとしましょう。現状では顧客のフォロー不足でクレームが増加しているのなら、顧客対応の不足や遅れが課題として明らかになります。


ギャップを埋めるための施策を検討する

理想と現状の間のギャップが明確になったら、その原因を特定したうえで施策を検討しなければなりません。上記の例で原因が営業担当者のスキル不足だと判明した場合、まず営業担当者に対するフォローアップ研修の実施が考えられます。


また、マニュアルの見直しなどを検討した方がよいこともあるでしょう。必要に応じて人事制度の見直しや環境改善など、研修以外の施策も検討してください。


ステークホルダーから意見を募る

分析で得られた結果は報告書やチャートとして可視化し、ステークホルダーと共有することがポイントです。定例会議などの機会を活用して同じチームや関連部署のメンバー、上司などに見てもらい、意見を収集しましょう。集まった意見をもとに分析結果や検討していた施策をブラッシュアップし、研修計画に反映させてください。


研修の目的と目標を設定する

研修の実施を決めたら、実際に研修を通じて何を学ばせたいのか、全体の目的をまず明確にしましょう。そのうえで、受講者が研修で学ぶべき具体的なスキルや知識を設定していきます。研修後の効果を測定する基準も設定し、達成度も評価できるようにしてください。


たとえば、顧客対応力の向上を目的とした研修を実施する場合は、クレーム対応のスキル強化が目標となるでしょう。達成度の評価としては、受講後のテストや現場での実戦度合いなどで確認できます。


2.設計(Design)

分析のプロセスで目的や目標が設定されますが、いきなり細かいことを決めるわけではありません。まず教育内容や研修内容の全体像を計画したうえで、中身を詰めていきます。全体像を踏まえたうえで使用する教材や評価方法(テストやアンケートなど)、研修の実施方法やフィードバックの設計など、詳細を具体的に設計しましょう。


3.開発(Development)

開発のプロセスでは、いよいよ設計段階で決定した内容をベースに教材を作成していきます。テキストやスライド、ワークシートなど、研修内容に合わせて準備するようにしましょう。会場や研修の実施に必要なツール・機材の手配もこの段階で行います。


オンライン研修なら、eラーニングシステムやデジタルツールの準備も必須です。初めて研修を実施する場合や複雑な内容の場合は、事前にリハーサルを行うと必要な教材や進行方法を確認できます。リハーサルは実際の研修に近い環境で行うと効果的です。


4.実施(Implementation)

事前に準備してきた内容をもとに研修を実施します。企画構成に従って、受講者が学習目標を達成できるように進めましょう。研修中にも様子を見ながら受講者のサポートを行い、必要に応じて教材やシステムの使い方も指導します。よかった点や改善点はADDIEモデルを回すための重要なポイントであるため、研修後は受講者や講師からフィードバックを集めてください。


5.評価(Evaluation)

評価のプロセスでは、設計段階で準備したテストやアンケートを活用し、研修の効果を評価してください。実施の段階で受講者や講師から収集したフィードバックは、今後行う研修の質を向上させるための具体的な改善策を得る鍵になります。


フィードバックからよかった点や改善点を把握し、次回に反映させることが重要です。研修の実施で得られたデータに基づいて研修内容や実施方法を見直し、分析のプロセスに戻って再評価を行いましょう。


ADDIEモデルを人材教育に取り入れるには

ADDIEモデルを人材教育に取り入れるためにはどうすればいいのか、以下で具体的なポイントを5つ解説します。


教育の必要性を確認する

本当に教育や研修が必要なのか、まずは見極めることが重要です。判断するためには、現状の問題について原因を深く理解する必要があります。教育以外のアプローチが問題解決に効果的である場合もあるため、検討してみてください。教育が必要と判断されたら、内容や方法が問題解決に最適かどうかを確認しましょう。


解決可能な範囲を明確化する

教育や研修では、すべてを解決できるとは限りません。研修を受けさえすれば問題は解決できると思っていると、必要なフォローができないこともあります。過度な期待を防ぐためにも、教育や研修で解決可能な範囲を明確にしておくことが重要です。


受講者には研修で解決できる内容とできない内容を説明し、誤解を避けるようにする必要があります。ADDIEモデルを取り入れる際は明確な目標設定を行い、受講者が達成すべきことを明確にしておきましょう。


現場の声を反映する

ADDIEモデルでは教育や研修を実施しながら、改善点を盛り込んでサイクルを回していくことがポイントです。そのためにも、現場の専門家や関係者から意見を集める必要があります。


集めた意見を研修プログラムに取り入れると、現場の状況を反映した実践的な研修プログラムの設計が可能です。現場に即した研修内容になれば、受講者の関心やモチベーションも高められます。


スピーディーなサイクルで実施する

ADDIEモデルでは、スピーディーさも大切です。各プロセスを迅速に進め、早期にフィードバックを収集して改善につなげることを意識してください。短いサイクルでADDIEモデルを進めると、早い段階で問題やニーズを発見して対応できます。状況の変化に柔軟な対応ができるのはもちろん、研修の内容や方法も迅速に見直せるでしょう。


継続的に改善する

PDCAサイクルと同じく、ADDIEモデルでも受講者からのフィードバックや評価データをもとに、研修の内容を定期的に見直すことが重要です。研修で見つかった改善点を次回の研修プログラム作成時に取り入れることで、教育の質が向上します。


教育や研修の内容は、継続的に見直しを行うことがポイントです。継続的に改善プロセスを積み重ねていくことにより、回数を追うごとに教育の効果や受講者の満足度もさらに高められるでしょう。


ADDIEモデルの活用に役立つツール

最後にADDIEモデルの活用に役立つツールとして「タレントマネジメント」と「学習管理システム(LMS)」の2つを紹介します。


タレントマネジメント

タレントマネジメントシステムとは、社員のスキルや経験、業績などのデータを一元管理できるシステムです。各社員が持つ能力や業務の進捗状況などを把握しやすくなるため、適切な人材配置やスキル開発がしやすくなります。


個々の学習ニーズに合わせ、パーソナライズされた学習計画の策定も可能です。また、社員のスキル習得の進捗を追跡したり、必要な研修プログラムを迅速に提供したりできるため、組織全体としても効果的な人材育成が促進されます。


タレントマネジメントシステムの""これだけは外してはいけない""選び方と必要な思考


学習管理システム(LMS)

学習管理システム(LMS)は、教育コンテンツの作成はもちろん、配信や受講状況の追跡まで、一元的に管理できるオンラインシステムです。教育担当者は研修の進捗状況から成績まで、リアルタイムで把握できます。


テストの自動採点やアンケートの集計など、管理業務を効率化できる機能も多数搭載されており、教育担当者の負担軽減や研修のスムーズな運営が可能です。どこからでもアクセスできるため、受講者にとっても時間や場所に縛られずに学習が進められます。


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まとめ

ADDIEモデルは教育プログラムの設計から実施、評価までを効率的に進められるフレームワークです。分析・設計・開発・実施・評価の5つのプロセスがあり、継続的にサイクルを回すことで、研修内容の質を高められます。


タレントパレットは、人材データの一元管理に加え、人事業務に必要な機能を網羅的に搭載したタレントマネジメントシステムです。大手企業をはじめとする多くの導入実績があり、ADDIEモデルを活用した効果的な人材育成の実現をサポートしています。人事部門が抱える課題解決に向けて、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。


人材育成に役立つシステムの詳しい情報

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