日本では、2030年にさまざまな問題が起こると予測されています。企業にとって具体的にどのような影響があり、どういった対策をとるべきか早い段階で把握しておくことが大切です。この記事では、2030年問題の概要とともに、企業に対する影響や対策などを解説します。自社に対する影響を最小限に抑えるために、ぜひ参考にしてください。
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日本における2030年問題とは?
2030年問題とは、日本の高齢化や人口減少などによる人口構成の変化により、2030年に発生すると考えられている多様な問題の総称です。たとえば、企業の人材不足やそれに伴う業績の悪化などが挙げられます。
内閣府が公表した「令和6年版高齢社会白書」によれば、令和5年10月1日現在の日本の総人口は1億2,435万人でした。このうち65歳以上の人口は3,623万人です。これは、総人口の29.1%にも及びます。将来的には、65歳以上の人口が総人口の約3分の1を占めると予測されている状況です。また、総人口は1億人を下回る見込みとなっています。
※参考:令和6年版高齢社会白書|内閣府
2025年問題・2040年問題とは?
ここでは、2025年問題と2040年問題について、それぞれの概要を解説します。
2025年問題
2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる社会構造の変化に伴って生じる雇用や医療などにおける問題の総称です。団塊の世代とは、1947〜1949年の第1次ベビーブームの期間に生まれた世代を表しています。2025年になると、後期高齢者が日本の総人口の約18%を占めるといわれています。また、2025年になると、70歳以上の中小企業の経営者が約245万人になるという予測も立てられました。
※参考:中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題|中小企業庁
2040年問題
2040年問題とは、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になり、高齢者の人口がピークに達することで生じる問題の総称です。団塊ジュニア世代とは、1971〜1974年の第2次ベビーブームの期間に生まれた世代を指しています。国立社会保障・人口問題研究所の調査結果によると、2040年には65歳以上の高齢者が全人口の34.8%を占める可能性が高くあります。
生産年齢人口が減り、2040年以降は日本の経済がマイナス成長になるおそれがあると考えられています。
2030年問題が企業に与える影響
2030年問題は、企業に対してどのような影響を与えるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
人材不足
総人口の減少や高齢者の増加に伴い、労働人口の減少が懸念されています。多くの企業が人材不足に陥り、大きな課題を抱える可能性が高いです。自社にとって必要な人材を確保する難易度が上昇し、採用担当者の負担も大きくなります。企業同士の人材獲得競争も激化するため、人材を確保するには独自の戦略や工夫が必要になるでしょう。
人件費の上昇
人材獲得競争の激化により、優秀な人材を獲得するためにより魅力的な条件を提示しようとする企業が増える可能性があります。たとえば、給与の水準を上げたり、福利厚生を拡充したりするパターンが考えられるでしょう。
魅力的な条件を提示するには、人件費の上昇を避けられません。その結果、企業の利益が減少するおそれもあります。企業の運営にも影響を与えるため、慎重な判断が必要です。
業績の悪化
人材不足の状況のまま新しい人材をなかなか確保できなければ、業績が悪化するリスクがあります。必要な人材がそろっていないと、企業の生産性が低下する可能性があるためです。たとえば、IT人材が不足している場合、システムの導入が遅れて業務に支障をきたすおそれがあります。また、優秀な営業がいない場合、新しい契約を得られず売上が落ちるでしょう。最悪の場合、業績の悪化は倒産につながるため、特に注意が必要です。
2030年問題で影響が大きいと考えられる業界の例
2030年問題により特に大きな影響を受けると考えられる業界もあるため、以下で例を挙げて解説します。
IT業界
IT技術は今後ますます発展を続け、ビジネスにおいてもより需要が高くなると考えられます。クラウドサービス、ビックデータ、AIなどの最新技術はすでに欠かせない存在です。IT技術を提供するには、IT人材を確保する必要があります。しかし、全体的な人材不足に伴い、IT人材の確保も難しくなる可能性が高いです。IT人材が不足すれば、IT化を進められません。「IT 人材需給に関する調査」においても、2030年には最大79万人のIT人材が不足されると予測されています。
※参考: IT 人材需給に関する調査|経済産業省
医療・介護業界
医療・介護業界においても、深刻な人材不足が発生する可能性が高いです。医療や介護は不可欠なサービスですが、人材不足が生じれば必要な人に必要なサービスを届けられなくなります。医療や介護を必要とする高齢者の増加に伴い、すでにスタッフは不足気味です。
今後は労働人口の減少と高齢者の増加がますます顕著になるため、医療・介護業界においてはサービスの提供について大きな課題が生じると考えられます。
観光業界
観光業界も、2030年問題によって大きな影響を受ける業界の1つです。インバウンドの需要も高まっており、ホテルや旅館の人材不足が深刻化しています。帝国データバンクが実施した調査の結果によれば、旅館やホテルにおいて正社員が不足していると感じている企業は多い状況です。
政府もインバウンドの受け入れを重視していますが、このまま人材不足を解消できなければ対応が難しくなる可能性もあります。
※参考:人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)|帝国データバンク
建設業界
建設業界では専門的な技術をもつ人材が必要ですが、すでに人材が不足している状況です。日本建設業連合会が公表している資料によれば、建設業就業者数は年々減少しています。この傾向は今後も続くと考えられており、人材不足はさらに加速する可能性が高いです。
建設業に対しては、一般的に労働条件が厳しいというイメージがあります。人材不足を解消するには、そのようなイメージを払拭しつつ採用を強化するための取り組みが必要です。
2030問題と世界共通キーワード「SDGs」との関連性
SDGsとは、持続可能な開発目標のことです。国連サミットで採択され、世界的に取り組まれています。SDGsは2030年までの目標です。目標を達成できないまま2030年を迎えた場合、経済、環境、社会においてさまざまな問題が発生する可能性があります。
企業によるSDGsの取り組みは、2030年問題に対する有効な対策です。たとえば、SDGsの1つである「働きがいも 経済成長も」の達成を目指して取り組みを行うと、社員にとって魅力的な職場を提供できます。その結果、離職を防止でき、優秀な人材を確保し続けやすくなるでしょう。
2030年問題において企業がすべき対策
2030年問題に備えるには、どうすればよいのでしょうか。企業がとるべき対策について具体的に解説します。
採用活動の強化を図る
2030年問題として深刻な人材不足が挙げられるため、早い段階から採用活動を強化しましょう。自社が求める人物像を改めて見直し、自社で活躍できる人材を幅広く募集することが大切です。たとえば、シニア人材や外国人なども、自社が求めるスキルや技術を備えている場合があります。
また、システムの導入により、採用管理の生産性向上も目指すべきです。システムを活用すれば採用に関わる業務を効率化でき、人材の情報も管理しやすくなります。その結果、優秀な人材をスムーズに確保できる可能性が高まるでしょう。
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社員のスキルアップを図る
人材獲得競争が激化するなかで自社の運営を維持するには、既存の社員のスキルアップも必要です。既存の社員のスキルが高まれば、少ない人数でも業務に対応できる可能性があります。たとえば、社員のリスキリングを企業が積極的に支援することが大切です。社員がスキルアップを図りやすい環境を作り、高いスキルをもつ人材を増やしましょう。
業務のデジタル化を図る
人材不足の課題に対応するうえでは、業務のデジタル化も重要です。それまでアナログで作業していた業務にIT技術を取り入れると効率的になり、少ない人数でも短時間で業務を遂行できるようになります。
たとえば、紙の資料でやりとりしていた業務をシステム化すれば、かかる時間や手間の大幅な削減が可能です。また、ロボットにより単純な業務を自動化するRPAや、学習によりさまざまな業務に対応できるAIなども積極的に活用しましょう。
働きやすい環境づくりを行う
既存の人材の流出を防ぐため、働きやすい環境づくりにも力を入れましょう。たとえば、フレックスタイムやリモートワークなどの導入が挙げられます。また、副業の解禁や各種手当の充実に対して魅力を感じる社員は多でしょう。
さらに、多様な働き方を取り入れ、業務委託により業務を任せる方法もあります。働きやすい環境が整っていれば、求職者から興味をもたれる可能性も高くなるでしょう。
自社の採用力の強化のために検討したい戦略
自社の採用力を高めるには、さまざまな戦略を検討すべきです。以下で具体的な戦略について解説します。
採用ブランディング
採用ブランディングとは、求職者に向けて自社の魅力をアピールし、入社に対する意欲を高めてもらうための取り組みです。通常のブランディングは消費者や顧客を対象としますが、採用ブランディングでは求職者を対象とします。求職者の価値観や感情に働きかけ、信頼や興味を獲得する方法です。採用ブランディングに力を入れると自社の認知度を向上させられるため、応募者の増加を期待できます。
採用マーケティング
採用マーケティングとは、通常のマーケティングの概念やフレームワークを採用活動に応用することです。具体的には、自社が採用したい人材像をもとにペルソナを設定し、自社の存在や魅力などを伝えます。単に自社の情報を伝えるだけでなく、自社の想いやストーリーなどを理解してもらうことが大切です。採用マーケティングに取り組むと、自社にマッチする人材をより獲得しやすくなります。
2030年問題における対策の考え方・コツ
ここでは、2030年問題の対策に関する考え方やコツについて解説します。
最新情報のキャッチアップを怠らない
2030年問題に備えるには、常に最新情報を集める必要があります。ビジネスを取り巻く環境の変化が激しいため、常にトレンドのキャッチアップを怠らないよう意識しましょう。
たとえば、働く人の価値観はすでに変化しており、今後はより一層多様化していくと考えられます。その変化は少しずつ生じるため、実際の変化を確実に捉えて自社の採用活動の施策を検討しなければなりません。また、IT技術の変化は特に早く、常に情報を把握していないと追いつけなくなる可能性もあります。
未来を予測して動く
変化が激しい状況では、未来を予測して動く姿勢が重要です。予想できない変化が生じる場合もありますが、さまざまなデータをもとにすればある程度は未来の変化を予想できます。データをもとに今後起こりうる問題を把握すると、早い時期から対策が可能です。
課題が発生するとしても、早めに対策ができれば乗り越えやすくなります。競合となる他社よりも入念な対策をとれば、安定的なビジネスを維持できる可能性を高めることが可能です。
自社の課題を見える化する
すでに自社が抱えている課題を正確に捉えることも重要です。自社の課題を見落としたまま対策を怠れば、時代の変化に伴ってより大きな問題に発展するおそれがあります。自社の課題を見える化し、常に課題について向き合える状況をつくりましょう。
たとえば、離職を防ぎたいと考えている場合、社員の状態をモニタリングできるタレントマネジメントシステムを導入すると効果的です。社員に変化が生じても迅速に把握でき、必要な対策を実施できます。
OODAループで迅速な判断を実行する
OODAループとは、変化が激しい時代において迅速な判断を下すためのフレームワークです。「Observe(観察)」「Orient(方向づけ)」「Decide(決定)」「Act(行動)」のサイクルに沿って検討するため、OODAループとよばれています。
OODAループなら、実際に起きている変化を捉えたうえで必要な対策を検討でき、着実に行動に移すことが可能です。2030年問題の対策においても、OODAループの考えを積極的に取り入れると役に立ちます。
採用管理の生産性向上を図るならタレントパレット
2030年問題とは、人材不足やそれに伴う業績の悪化などです。自社にとって必要な人材を確保するには、採用管理の生産性を向上させる必要があります。タレントマネジメントシステムのタレントパレットなら、データの活用により採用管理の作業にかかる工数の削減が可能です。スケジュールや応募者も一元管理できるため、採用に関するあらゆる業務を効率的に進められます。
タレントパレットは、人事に関する幅広い機能を網羅しているシステムです。採用管理以外にも、採用した人材の評価、育成、最適配置、離職防止などさまざまな分野を強化するために利用できます。
まとめ
日本では2030年問題が懸念されており、深刻な人材不足が発生するおそれがあります。日本の総人口や生産年齢人口が減少するため、どの企業でも人材不足に悩む可能性が高いです。また、2025年問題や2040年問題においても、人材不足の課題が指摘されています。人材は企業を運営するうえで不可欠な存在であり、早いうちから対策を取り入れなければなりません。
タレントパレットは、2030年問題を含む人材戦略を総合的に支援するタレントマネジメントシステムです。採用活動の効率化から、人材データの一元管理、スキル分析、育成支援まで、人材不足時代に必要な機能を搭載。豊富な導入実績とコンサルティングノウハウを活かし、御社の人材戦略の強化をサポートします。将来の人材課題への対策として、ぜひご活用ください。
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