人材育成における上司の役割
上司は人材育成においてどのような役割を果たすのでしょうか。ポイントを4つ挙げて説明します。
目の前の作業だけではなく「目的」を教える
日常業務の中で上司が部下に対して指示を出すとき、なにをするのかという作業の内容だけを伝えるのであれば、それは単なる作業指示です。
現場育成を行うのであれば、部下に対して作業の「目的」についても説明する必要があります。なぜその作業が必要なのか、他の作業とどのような関連性があるのかといったことを理解させることができれば、部下はその作業を通じて経験とともに知識を蓄積していくことができます。
解決するための「考え方」を教える
ある程度経験を積んだ部下が対象であれば、業務を進める上で問題が起きたときも、自分で考えて解決法を見い出せるよう指導をすることが求められます。
部下の理解度、対応力、応用力を高めるには、上司が最初から答えを示すのではなく、「考え方」を教えるのが有効です。具体的には、YESかNOかで答えられるような質問ではなく、オープンクエスチョンを投げかけながら対話をしていくやり方が考えられます。対話を重ねながら部下が答えを出せるようサポートしていくやり方はコーチングと呼ばれ、部下に気づきや新しい視点、選択肢をもたらします。
仕事において、問題解決や目標達成のためにどう考えるべきか、どう行動すべきかを判断できる力を身につけることは非常に重要です。これらは研修などではなかなか教えられない部分なので、上司が日々の現場で指導していくことになります。
目標設定をする
部下に目標を与えるのも上司の役割です。その際、簡単に達成できる目標ではなく、少し努力や工夫をしないと達成できないストレッチ目標を与えれば、部下のポテンシャルを引き出して成長を促すことができます。
ただし、ストレッチ目標は高すぎず低すぎず、難易度は高いものの遂行不可能ではないラインを設定しなければなりません。そのため部下の能力やスキルに対する事前の正確な把握が不可欠となります。
業務への取り組み方の規範となる
上司自身が規範となるような業務への取り組み方を示すのも大きな教育的効果をもたらします。逆に、上司の日頃の態度がリスペクトを得られないようなものだと、教育や指導の効果は半減してしまうでしょう。上司が部下を見ているのと同じように、部下も常に上司の仕事への取り組み方や態度を見ています。
上司がチーム作りのためにできること
上司がチームを率いるときに、チーム作りのためにできることを紹介します。
心理的安全性を保つ
部下が十分に実力を発揮するには、上司がチームにとっての精神的支柱として存在している必要があります。たとえばなにか問題が起きたとしても、責任は自分が引き受けるといった姿勢を示せば、部下は心理的に安定し、積極的に新しいことにチャレンジできるでしょう。チームがしっかりと機能するためにも、上司の物理的・心理的なバックアップが欠かせません。
風通しの良い環境を作る
部下が上司に報告や連絡、相談をしやすく、上司もまた部下に対して声をかけやすいような風通しの良い環境作りも重要です。コミュニケーションしやすい雰囲気があれば情報の共有も容易になり、一体感も生まれます。
人材育成という側面から見ても、コミュニケーションが活発で部下も意見をいいやすく、人間関係が良好であることがポジティブな効果を生み出します。
上司の人材育成スキルを伸ばすためにできること
上司の人材育成スキルを伸ばすにはどのような施策が有効なのでしょうか。
まず求められるのは、会社全体で組織的な成長を奨励する文化の形成です。部下を育成して成長させようという試み、そして上司である管理職も部下に対する人材育成を含むマネジメント能力を伸ばそうという意識を持つことが奨励されるようなカルチャーを根づかせなくてはなりません。
そのためには経営陣が号令をかけるだけでは不十分です。育成能力の高い上司を評価し、給与に反映させるなどの制度も設けるべきです。
また、管理職を選ぶ際は年功序列などではなく、人材育成スキルやマネジメント適性のある社員の抜擢を行う必要があります。これらのスキルを把握するにはタレントマネジメントシステムを導入し、社員の能力、潜在的適性・素質を把握して、システマティックな管理職選抜を行うことが有用です。また、適性や素質を実務的レベルにまで引き上げるには、管理職研修などを積極的に行って「管理職を育てる」体制を作っていくべきでしょう。
人材育成の中でもとくに現場育成には、上司の人材育成能力が大きな影響力を持ちます。上司自身がその役割について自覚するとともに、会社側も上司=管理職の役割の重要さを認識し、人材育成に寄与した者に対して正当な評価をすることが求められます。
また、人材育成能力を持つ社員を把握するため、あるいは部下に対してストレッチ目標を設定するなど適切な指示を与えるために必要な人材情報を管理するには、全社員の人材データを見える化して管理できるタレントパレットの機能が活用できます。科学的人事をワンストップで提供するタレントパレットを、管理職による部下の人材育成にお役立てください。